読切小説
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バフォメット観察日記
○月×日△曜日 晴れ


バフォ「あ¨あ¨〜、暇なのじゃ〜」

そこには、テレビの前に寝転がり肉球で器用にゲームのコントローラを動かすバフォ様の姿があった。

バフォ「ここんとこサバトの入会希望者もめっきり減ったしのう…やはりもっと『ろびいかつどう』とやらをしなくてはならんのかのう…」

そう呟く彼女の口元は少しニヤついた。最近テレビで知ったばかりの単語を使えて嬉しいのだろう。使い方が合っているかどうかはさておき。

バフォ「ふふん、最近ワシは色んな言葉を覚えたのじゃ!『ばいがえし』、『さんぼんのや』、『らぶちゅうにゅう』…ふふ、ワシは博識じゃのう!」

最近と言うには少しばかり古い情報もあった気がするが、そこは永い年月を生きてきたバフォ様。多分十年以内なら全て最近なのだ。だが、彼女が覚えた言葉を再び使う事は恐らく無いだろう。

バフォ「それにしても、このゲームは一体何なのじゃ?ワシは格ゲーを買ったつもりじゃったのに、これではまるでソーシャルゲームではないか。グラフィックはいいのにのう…」

そう呟く彼女の目には、悲しさとも虚しさともとれる色が伺えた。発売前のpvが神レベル…いや、魔王レベルに良かったため、落差も大きい。やはりバン○ムではダメなんだ…金儲けに走るから嫌いなんだ…ダメダメ。

バフォ「我が妹たちも皆遊んでくれんしのう…会員が減ったのにも関わらず仕事は倍増じゃ…暇だからと言って、ワシだけお兄様捜しという訳にもいかんし…」

バフォ様の部下にして最愛の妹、魔女。現在サバトは実質彼女たちが動かしている。魔具の開発、サバトへの勧誘、資金繰り、etc、etc…とはいえ、全く時間が無い訳ではない。実は魔女たちは魔女たちで各々勝手にお兄様を捜しているのだが、バフォ様はそれを知る由もない。

バフォ「うう、気分が沈んできたのう…そうじゃ!こんな時こそワシが自ら勧誘に出掛けるのじゃ!新しい妹が増えれば心も爽快じゃ!」

そう呟く言うなり、彼女はゲームを中断し、出掛ける準備を始めた。最近は黄色のポーチがお気に入りらしく、勧誘用のチラシや財布など何もかもをそこに突っ込む。整理整頓とは無縁のポーチだ。そこがバフォ様らしいといえばバフォ様らしいのだが。

ーー街の広場にてーー

バフォ「サバト、サバトはいかがですかなのじゃ〜!今なら入会特典としてバフォメットストラッププレゼントなのじゃ!あ、そこのコカトリスさん、若さを保ちたいとは…お、思わないですかなのじゃ…ねぇ、そこのお兄様…はホルスタウロス連れか…」

今の所、入会希望者は0人、チラシも受け取って貰えていない。あの半泣きのバフォ様を見るだけで胸が締め付けられるようだ。よく見ればそこかしこにバフォ様を見守る老若男女がいるのだが、皆あの表情をまだ見ていたいのかチラシを受け取る様子は無い。

バフォ「うう、今日は帰るのじゃ…(ひっく)、明日こそ、(ぐすっ)
明日こそ…」

見物人がざっと数えても二桁は倒れた。皆一様に胸を抑え、顔を赤らめハアハア言っている。これは明日の勧誘は期待できそうだ。だがそんな周囲には気付かず、バフォ様は歩みを進める。
トボトボと歩く彼女の背中には、哀愁が漂っていた。頑張れバフォ様!負けるなバフォ様!

バフォ「ックチュン!誰か噂でもしておるのかの…?そういえば、見られているような感覚が…」

そろそろ感づかれたようだ。この辺で今日のバフォ様観察は終了だ。ああ、今日も一日愛らしかった。明日バフォ様に新しいポーチでもプレゼントしよう…

13/10/13 01:09更新 / チャールズ

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