読切小説
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唐傘が目を開くとき
「いつもありがとう」

__________お礼を言いたいのはこちらです


「僕には君が必要なんだ」

__________私は貴方様だけのものです



「いつもつかってばかりでごめん。今日はやすんでね」


いいえ。

__________私は雨の日以外も必要とされたいのです、どんな時もずっと



雨が降っていた。少年はぼんやりと雨空を眺めている。傍らには古びた傘が置いてあった。
幼いその表情は傘を撫でるとき以外いかなる感情も読み取れなかった。

少年は孤独だった。その理由は本人にもわかっていなかった。今は亡き宗教にはまってし
まった両親のせいか。それとも金銭面以外では目を向けようともしない「育ての親」のせいか。
もしくはそんな環境で自ら心を閉ざしてしまったのかもしれない。

「お前も」

少年は語りかけた。と言っても周りには誰もいない。

「使うのが僕じゃなければ、もっといい目を見られたのに」

傘は何も答えない。答えることは無い。しかし、それを心地よくさえ感じていた。彼が触れ合った人達は誰もが憐みの言葉をかけ、口先で自分を慰め「通り過ぎて」いった。自分は誰からも必要とされない、生きているだけの人生。

「誰も、僕はいらないんだ」

「いいえ」

「私が貴方を求めています」

少年が振り向くと、いつの間にか傘が後ろにいてじっと見ていた。そう、傘は見ていた。なぜかその傘にはあるはずのない眼があったから。

「え?」

驚く暇もなく、傘の下から蛙のように長い舌が伸びてきた。
「うわあっ」
少年を逃げる暇もなくグルグルと絡め取ってしまい傘に飲み込んでしまった。

ちゅ……ちゅぴ……

「はむ、んん、チュプ」

どれくらいの時間たったのだろうか。
何かをなめるような音に目を覚ますと、白い肢体が目に入った。女の子が股間を嘗めていた。
「だ、誰…んんっ!」

疑問を口から出し終わる前にむ、ず痒い衝動が走り、何かが込み上げてくる感覚にうめき声をあげる。

「うっ!!」

とうとう堪え切れずに女の子の口内に射精してしまった。女の子は慌てることなく、むしろ嬉しそうにそれを飲み込む。

「んん…、ごくっ」

そして息を吐くと、少年の方をむき笑顔になる。見惚れるほど美しい笑みであった。

「やっとお話しできますね、貴方様。この時をお持ちしていました」

淡い紫陽花のような髪を撫でると、自己紹介を始める。

「私は唐笠お化けの佐奈、貴方様にお使いいただいていた傘でございます」

「君が…あの傘?」

「はい」

少女の金色の瞳は嘘を言っているようには見えなかった。何よりも今この状況が何よりもそれを物語っているように見えた。

「このたび、魔物娘としての力を頂いたので宗太様に恩返しをさせて頂きたいのです」

少年は一呼吸ほどの沈黙の後、黙って首を振った。

「別に、いい…」

「そういうわけにはまいりません、大丈夫です。宗太様はじっとしてるだけで」

先ほど絡みついてきた大きな舌が宗太の体を包むと、佐奈はゆっくりと腰を下ろした。

「んっ…」

そして、彼女の膣が股間のものを飲み込んだ。

「うわぁっ」

幾度も腰を振り、顔を赤く染める佐奈。濃厚な性の匂いが傘の中に蔓延する。叩き付けるような水音と少年と少女の声だけが響いていた。


「何かが…くるっ」

「そのまま出してください」

佐奈のその声と共に、宗太の中のものが注がれた。二人は抱き合ったまま、言葉を交わさなかった。

どれくらいの時が立っただろうか?二人はずっと交わり続けている。佐奈は宗太にキスをすると、微笑む。

「私がこれから宗太様をお守りいたします」

「うん…ずっと一緒だよ、佐奈」

宗太は生まれてから感じたことのない満足感を感じながら目を閉じた。

雨空の中、傘は外へ飛んで行った。

誰もその傘に気に留めることは無かった。ただ一人の女性を除いて。満足そうにそれを眺めた女性は蝙蝠のような黒いツバサを広げると、いずこかへと飛び去って行った。
14/07/07 01:46更新 / キンダー

■作者メッセージ
初っ端から暗いお話になってしまった…もっと精進します。

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