読切小説
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何で払う?
うす暗い店内で常連客の女性と小奇麗な格好をした男が話している。

「借金生活から今みたいに自分の店開いてあなたは本当に偉いわね」

「開いてというよりも、開かされてるんですけどね……」

「あら、そうなの?」

「あれは今から一年ぐらい前ですよ……」

       *         *

俺は一年ぐらい前までは今日を生きるのが精いっぱいの暮らしをしていた。とうとう、貯金も底をつき金を借りることにしたが、借りた相手が悪かった。

「それで、あんたはお金をなんぼ借りたいんだ?」

「一両ほど……」

「よし、貸そうやないか。でも、借金には利子というのがあんのを忘れんようにな」

「はい」

「ほな、返済日にまた会いましょう」

それから俺は毎日汗水たらして働いた。そして、返済するには十分なほどまで貯金をすることが
できた。

「これが返済分です」

「ん?これだけっていうのはおかしいんやないか?」

「きっちり利子の分までですよ」

「いや、こんなはずは無い無い。あんたの借金は十両やで」

「ちょっと待って下さいよ!それは明らかに違法ですよ!」

「人間では違法かもしれんけど、私たちの間では合法なんや」

「私たちってあなたも人間じゃないですか」

「はっははは!やっぱ私の変化は我ながら一流やということやな!」

彼女がそう言うとあたりは煙に包まれた。

「けほっ、いきなりなんですか」

「ほれ、私の頭の上を見な」

そこにはさっきまでは無かった小さな栗色の耳がちょこんと付いていた。

「なっ!あなたはもしかして……」

「私はこのへんで商いしたり金貸ししてる刑部狸のヤツメや!よろしゅうに」

「え……」

「鳩が豆鉄砲くろうたような顔して。まぁ、あんたが驚こうが借金はきっちり耳そろえて返してもらうで」

「そんなこと言われても、そんなに返せないですよ」

「ならあんたの身体でその借金分はろうてもらおうかな」

「俺はまだ経験は無いですし、そんなことはできないです。ましてや人間以外の相手とは」

「はぁ、あんたはなにを言うとるんや。あんたには私の店で働いてもらう、借金分返すまでな!」

「えっ!?そんなので良いんですか!」

「そんなのって、炊事洗濯、店番、配達、仕入れから全部やってもらうぞ?それとあんたの家は私のもんにするからな」

「俺の家まではあんまりですよ、俺はどこに住んだらいいんですか?」

「そんなもん、私の店に住んだら良いんやないか。食事ぐらいは面倒見てあげるよ」

「えぇ……」

「ほんなら、決まりや!んで、あんたの名前は?」

「はぁ、カイと言います」

「じゃぁ、カイ今日からよろしゅうに」

        *       *

「そんなことがあったのね……」

「ヤツメさんのおかげかは分からないですけど今良い暮らしできているのは助かります」

「おい、カイ!今日の分の買い出しに行くぞ!」

「あなたの彼女がお呼びよ」

「ちゃかすのはやめて下さいよ、俺は雇われているだけです」

「まぁ、仲良くやりなさい。じゃぁ」

「はい、ありがとうございました。またどうぞ」

「カイ、早くしな!」

「はい、今すぐー!」

一年後、人間と刑部狸の夫婦が営む店はこの地域で一番の店へとなった。







13/03/11 20:19更新 / うぐいす

■作者メッセージ
初投稿です!

これから悪いところなどは直していこうと思うので宜しくお願いします

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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