読切小説
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魔物娘絵本「『独り』のおうさま」
昔々あるところに独りの王様がいました。両親は早くに亡くなっていて若い所か若干子どもながらに王の座を継ぎました。けど死ぬ間際の父君からノウハウを叩き込まれ、小さな名君だと囁かれる程、傀儡にならずやってこれました。そう、同年代の子が持つような無邪気さなど、甘える心など、わがままなど切り捨てて。

そんな時、魔物娘の使節としてデーモンのお姉さんがやってきました。王様の国は反・親どちらでもない中立国だったので話くらいは聞こう、という流れになりました。
「このような片田舎まで、御足労傷み入ります。」
「とんでもございません。この国には前々から是非訪れたいと思っていましたので。」
「これはどうも、お世辞にしても嬉しいですね。さて……どのようなご用件でしょうか。
……いえ、正直見当はついています。『魔物娘とのさらなる交流』を求めて、といった所でしょうか。」
「流石です。私、話の早い方は好きですよ♡
というより、もう好きですの。貴方の事は前々から興味がありまして……ね、交流の件とあわせてお願い申し上げます。私の旦那様になっていただけないでしょうか?」
「……はは……何やら恥ずかしいものがありますね。面と向かって好意を


「どうかお答え……願えますか」


かないませんね……。」
少し強めの声で遮られます。お姉さんは話をはぐらかされるのが好きではないようです。
「……交流の件は是非とも検討させて頂きましょう。
そして……ダメです。僕の様な人間なんかに貴女の伴侶は務まりません。申し訳ないのですがお断り致します。」


小さく息を吐くと、王様はこう続けます。
「少々言葉が悪いようですが、どうせ喋れるのなら嘘を吐かない保証がどこにあるんです?どうせ物を考えられるのなら騙さない保証がどこにあるんです?
疑っても疑い切れないんですよ、人間に限らずイキモノって言うのは。あ、ひねくれて性格悪い奴だなと思ってくれて結構です事実なので、すみませんね。ほら、これ以上ここにいるとベラベラ口が止まりませんよ。早い内にお帰りになられた方が


「嘘です。」


……あ?」

「これでも人は良く『視る』タイプですので。動揺しすぎです。口調があまりにも変わっていますわ。加えて視線が先程より散るようになっていましたね。」
「何を……言っているのやら。」
「その歳で一国を背負うことの辛さ、重み、疑心暗鬼に陥るのも必然……心中お察し致しますわ。」

「……れ。」
「黙れ……。」
「黙れぇっ!!」
「分……かったような口を!!利かないで下さい!!」
久しぶりに怒鳴ったことを自分でも驚きながら王様は続けます。
「しましょう、ええしますよ!より一層の魔物娘との交流の為法整備だ何だをやりましょう!だからもうその……なんですか……帰って頂きたい。何なんですか貴女は、こんな汚れた者に、近づかないで下さい……。」
どうしたことでしょう、王様の顔はいつの間にか涙でくしゃくしゃになっていました。
と、突然ーー

ぎゅ……っ♡

「ッな……何を!?」
「とても優しいのですね、あなたは。……以前から少々お耳にしていましたの、子供らしさを悉く無くした子供の王がいる、と。『世の中の、ヒトの闇や醜さを知っている自分は普通の子供とは違う、汚れてしまった。』こんなところでしょうか?」
デーモンのお姉さんは、自分の服が汚れるのも構わず王様の頭を抱きかかえて言いました。
「あなたがそこまで自分のことを汚いものだと言い張るのならいいでしょう。私にも考えがございますので。」
暖かくも決意のこもったこえでこう囁きます。

「知っていますか?無菌室という汚れが何もない空間では何者も生きられません。自分は汚れていると感じるのが他の人より早かっただけです。
……あぁ、思い返せば無菌室で育てられたような人生を過ごしていたような。これでは明日にでも倒れてしまいそうですね……。どこかに汚れた殿方はいらっしゃらないものでしょうか。そしてその方が隣にいて下さったらどんなに良いことかー。」

「……もう……本当に……かないませんね。」
嬉しいのやら、何なのやら、王様はもっと涙をこぼしてしまいました。
今まで溜めた涙が全て流れるように、一晩中泣きました。



昔々あるところにもう独りぼっちじゃない王様がいましたとさ。
23/11/03 21:04更新 / だだいち

■作者メッセージ
……やっぱりこんなの絵本じゃねえ。
学校の授業で絵本を作れという時があって、それを安易に魔物娘版にした結果がこれだよ!(半ギレ)
生暖かい感想やらコメントやらお願いします。このような駄文に目を通して下さりありがとうございました。

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