読切小説
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雪降る山にて/ウェンディゴちゃんとセックスする話
 何人もの不審な行方不明者が出ているという雪山を、その原因が果たして魔物の仕業であるか調査していたアルは突然の吹雪に見舞われ途方に暮れていた。
 元より単なる遭難だと思いつつも、教団に命じられ渋々向かったのだ。それがミイラ取りがミイラになったとなれば、笑い話にもならないだろう。

 そもそも、魔物が悪であるという教団の教えアルは疑問を抱いていた。一度だけ見たことがある魔物は、自分たちと同じ言葉を話していた。言葉が通じるのなら分かり合える、まだ若いアルはそう思わずにはいられなかった。
 しかし、生まれたころから教団で孤児として育てられたアルは、教団で生きる以外の他の生き方を知らず、相談できる相手もいないために疑問を募らせることしかできなかった。

 道なき雪の大地を踏みしめ進む。太陽は厚い雲で覆い隠され、既に前後の感覚は無くなり果たして自分の進んでいる方向が正しいのかどうかさえも分からない。数時間前までいた、吹雪をしのいでいた洞窟には、今から引き返せばもしかしたら戻れるかもしれない。そう、弱い心が囁く。
 けれども、新たに覆い被さる雪で足跡は消えているために帰れるか否かは賭けであり、そもそも終わりどころかますます力強さを見せる吹雪に、このまま何もしなければ死ぬだけだと判断したのだ。ひたすら無心に努めるようにして、アルは歩いた。




 声が聞こえた気がした。最初は過度な空腹や疲労による幻聴かとアルは思っていたが、耳を澄ましてみれば、確かに童女のような声が背後からしていた。

 背筋にぞくりと悪寒が走る。持ってきていた武器は邪魔になると先の洞窟に置いてしまい、雪山を探索するために防具などは防寒具の下に着こんだ皮の服程度だ。もし背後にいるのが魔物だとして、話し合えばどうにかなると信じていても、何も言葉を交わさずに後ろから襲われてしまえばどうすることもできない。

 警戒し、身構えるアル。だが、一向に襲ってくる気配はなかった。それどころか、吹雪にかき消されてしまうような声は、集中して聞くと意味を持つ言葉だった。声量自体が小さいために断片的にしか聞き取れなかったが、確かに「右」や「左」などのために、自分を何処かに案内しようとしているのだと把握できた。

 多少不審に思う気持ちもあったが、声の者の善性を信じて言葉の通りの方向に歩く。足を止めてしまうとそのまま動けなくなってしまいそうで、振り返ることはできなかった。

「――――あ」

 時間の感覚は消えていた。命じられるがままにただ歩くことを繰り返していると、一軒の山小屋が目に入った。
 内に自然と沸く歓喜と共にアルは足を踏みしめる。そして、その一歩を最後にその場で雪の中に伏すこととなった。
 慣れぬ雪の道を十時間以上何も食べず、休むこともできずに歩き続けた彼の肉体は、既に僅かな気の緩みで倒れてしまうほどに限界だったのだ。
 ここまで送ってくれた相手の顔を、一目でもいいから見たかった。アルは最後にそう思いながら、意識を失った。




 アルはかけられた毛布と、焚かれた暖炉の火の温かさで自分がまだ生きていることを把握した。ゆっくりと起き上がろうとするも、肉体は意に反して上半身を持ち上げる以上は動こうとしない。
 辿りつく前に倒れた筈の自分が山小屋にいるということは、十中八九、自分の後ろにいた者が運んだのだろう。その存在が今も同じ山小屋の中にいる「おーい」と擦れながらも声を出してみる。
 がたたっ、と別の部屋から聞こえ、しばらく待つと木の床を踏み鳴らす音が近づいてきた。

 現れたのは、自分がしていた装備がまるで大仰であるのかと思うような薄い外套を全身を覆い隠すようにして纏う、フードから突き出る角が特徴的な小柄な姿であった。
 外套越しでも把握できるその肉体は非常に華奢なものであったため、何かあっても容易に組み伏せられるだろうと思い、次いで自分を運んだのであろうことを思い出して打ち消す。
 というより、仮に相手が魔物であったとして、元から魔物排除には積極的ではないアルには命を救われた恩もあって何も危害を加えようという気はない。したとして、せいぜい教団に「何も異常はなかった」と報告することくらいか。

 なんと話しかければいいものか悩み、とりあえず礼を述べようと口を開けば、そこにずい、と白く小さな手を出される。見ればその手には何か入った匙が握られており、多少驚いたもののそれを口に入れ、飲み込む。温かかったそれは、体の芯から欲していたものが入り、染み、全身に行き渡るような感覚があった。
 相手の匙を持っていない手には、粥の入った器があることに気づく。それが空になるまで、アルは黙々と食べさせられた。

「君が俺をここまで案内してくれて、助けてくれたんだよな?……それと、君は魔物なのか?」

 食べ終わり、多少元気の戻ったアルが尋ねれば、こくりと二度頷き返される。
 身体を多少こわばらせる素振りを見せたので、どうするという意氏はないというと安心したように息をついた。
 フードで顔全体を隠すほどには恥ずかしがりなのか、あるいは他に事情があるのか表情は読み取ることはできない。けれども、目の前の相手が悪い存在ではないことをアルは確信していた。

「君の名前は何というんだ?」

「……ヴィー、です。ウェンディゴの、ヴィー」

 ウェンディゴというのは聞いたことがなかったが、恐らく種族を示しているのだろうと判断した。かすれて今にも消えそうな声は、吹雪の中を歩いているときに聞こえた声と確かに同じであり、幼少期、一粒だけ食べさせてもらえた金平糖を思わせる、溶けるように甘い声だった。
 よく見れば、目の前の相手の肉体は華奢なだけではなく丸みがあり、今更ながらに女性なのであると気づく。魔物には女性しかいないのだが、それすらもアルの頭には消えていた。

「ありがとう、ヴィー。それと……叶うのならどうか一目、恩人の顔を見たいのだが、駄目だろうか?」

「だ……だめ……」

 顔を左右に振り、両手を前に突き出して拒否するヴィー。しかしアルは何かに魅了されたように――事実魅了されているのだろう――腕を掴む。
 先程まで衰弱していた身体のどこから力が出るのか、アルはその所在に疑問を持つこともなく、そのままヴィーに詰め寄る。

 抵抗するそぶりをヴィーは僅かに見せるが、それ以上の予想していた力は微塵も感じさせず、なすがままにされている。それを肯定と受け取ったアルはフードを外し……黒い角の生えた銀の髪、そして妖しく光る目を見て、何かが頭の中で切れたような感覚があった。




 突然突き飛ばされたヴィーは顔を上げると、先程までに自分がやっていたように、ずい、と一本の棒を口元に出された。膨張し今にもはちきれんばかりの肉の塊に、ヴィーは怖気ずくことなく待ち望んだご馳走のように、そっと口付け、カリ裏からゆっくりと舐め、くわえ込んでいく。丁寧で献身的な奉仕は、その少女のような見目なこともあり背徳的な光景であった。

 だが、その程度の速さでは待ちきれぬとばかりにアルはヴィーの頭に生えた角を掴み、乱暴に自らの肉棒を彼女の喉奥まで突きこむ。危害を加えることなく魔物と和解したいと思っていた時の理知さは彼には既になく、ただ目の前にいる魔物を犯すことしか頭に存在しなかった。
 呼吸が出来ずに涙目になり苦しそうなヴィーのことなど知った事かと言わんばかりに、繰り返し喉奥まで挿入を繰り返す。そして暫くすれば限界が来たのか、喉に押し付けたまま躊躇することなく高められたそれを放つ。
 射精されたそれを、ヴィーは窒息寸前で白目を剥きながらも受け止める。吐き出されるそれが止まり、ずるりと口内から肉棒が出されたときには身体を痙攣させ、目の焦点が合っていなかった。

 それでも、本能に従い、ふらつきながら肉竿に近づいて、飲み切れずに残っていた白濁液を舐めとる。与えられた刺激により、多少おさまりをつけていた一物は再び硬さを取り戻し……いや、一度射精する前よりも、更にその大きさを、硬度をあまりにも不自然なほどに高めていた。ヴィーはそのことに気づくと、まるで親に褒められた子供のように嬉しそうだった。

 すると、ヴィーを軽い浮遊感が襲う。アルがヴィーの腋を潜り抜けるようにして手をやり、まるで「高い高い」とするように持ち上げていたためだ。
 意図を察した彼女は持ち上げられたまま膝を曲げ、両手で秘部を開き、蕩けた顔で淫靡に迎え入れる準備をした。ひくひくと、待ち焦がれ涎を垂らすそこにアルは人外のものとも思われる巨大なソレをあてがうと、一息に貫く。

 体格の差から到底入らないと思われたソレを飲み込み、挿入しただけでィーは目を見開いて「あ゛っ……あ゛っ……」と言葉にならない声を出すことしかできないほどの快楽が駆け巡っていた。
 だが、その行為は当然入れるだけで終わりではない。なにより、まだ五分の三程度しか入っていないのだ。
 けれども、アルは奥へ突こうとはしなかった。一度射精したことでほんの僅かに理性が戻っているのか、僅かに逡巡する素振りをしていた。そんな彼に対して、ヴィーは貫かれたまま彼の胴へと両の手を回して密着し、上目づかいになって、囁く。

「たくさん……もっとたくさん……ちょうだい……♥」

 その一言によって、アルの理性はいとも簡単に吹き飛ばされていった。最初に喉奥に突き込んだ時と同様、相手の事を微塵も考えていない、獣でさえ生易しいと思えるほどに欲望のまま奥へと叩きつけた。当然貫くだけでは終わらない、並の人間相手なら壊れてしまうほどの激しい挿入を繰り返す。膣内から溢れる潤滑液や、鬼頭から出た先走り汁が小屋の床を汚すことも気にせずまぐわう。
 貫かれる度に、際限なく絶頂してしまうヴィー。それでも気を失ってしまわないのは、独りよがりではなく、相手が絶頂するまでは奉仕しつづけなければという一心から来るものだった。

 出し入れされる度にアルの一物へ適合していき、より搾り取ろうと責めたててくる膣内に遂に限界を迎え、猛り声を上げながら大きく最奥へと突き込み、アルは精を解き放つ。ヴィーは結合部から漏れ出てしまうほどのその濁流の如き欲望の奔流を受け止め、膣内を蹂躙されていく快感によって彼女もまた激しく絶頂した。
 荒く息を吐きながらも寄り添い、共に抱きしめ合う彼らは夫婦のようだった。




 行為を終えたアルは、意識を失っているヴィーを抱え、未だ吹雪いている雪山の奥へ向かった。

 彼らのその後を知る人間は、幸か不幸か、誰一人としていない。けれども、吹雪の雪山で野太い雄たけびと少女の嬌声を聞いたという者は、定期的に現れたという。
15/07/01 08:32更新 / 鍛田ウーン

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