読切小説
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葬儀屋
ある村のリストに{ロウ}と名前が記された時
ある遺跡にて
「ここにもか・・・・・」
かつて目があったであろう位置に矢が刺さったままの白骨死体を
見つけて俺は一人呟いていた。

俺は葬儀屋のロウ。
この葬儀屋っていう職は俺の村にしか無いものらしく、
今では説明するのにも慣れた。
{俺の村では男の子が生まれたら、その子の15歳の誕生日までに
 その子にサバイバル・戦闘技術・死者の扱い方を徹底的に叩き込む。
 そして誕生日を迎えたら、試験を行い、
 受からなかったら者は村に残り、葬儀屋となる子供を作るべく
 その村の女の子と励み
 受かった者は晴れて葬儀屋となり村を出る。
 そして、世界各国を回り、時代に取り残され死体を
 埋葬し自然に帰す。
 そして自らの死を悟った後、祖村に帰りそこで一生を終える。
 この仕事の性質上帰れない者も少なくは無い・・・・}

「入り口だけで4人か・・・一旦外に出て埋葬を済ませよう」
遺跡の中ではトラップによる犠牲者が多い。
しかし入り口の時点で4人は多い、となると、
余程の財宝があるのか、それとも戦なのか
できれば後者であって欲しくは無かった、
遺跡にある死体のほとんどは盗人なので、仕事の時は機械的でいられるが
今回のようにここまで多いと戦から逃げてきた者かもしれず、この手の場合は子供のもあるため、精神的にきつい
そんなことを考えている間に埋葬の作業が終わりに近くなり。
埋葬した場所の上に、村に伝わる自然との契約の証を記し作業は終わった。

奥に進むにつれ、トラップによる死体しかないことから
自分の危惧が外れていることに安堵したのだが、
数が多いこれでもう23人目だ。
往復作業による疲れで気が抜けたその時、俺は足を踏み外した、いや足場が踏み外しさせたのだ。
いわゆる落とし穴だ。
古典的な罠にかかって動揺したが、長い葬儀屋の経験上落とし穴の欠点は
知っていたため、自前の鍵爪付きロープを壁に引っ掛け難なく回避。
自慢ではないが、今では並みの盗賊よりトラップに関する知識はあると思う
「この奥への探索は無理だろうな、別のルートを探すか」
這い上がった俺は、開きっぱなしの落とし穴を見てため息をつき、
来た道を戻ろうと振り返ったら、
鈍い光沢を放つ棒が眼前に迫っていた!
ギリギリでかわし(実際はおでこにかすって痛い)
自分のナイフを抜き取り、持ってきたランプを落とし穴に蹴り落した。
辺りを闇が包んだ。以前教えてもらった戦法だ。
こちらは準備して迎えた闇だが、相手は予期せぬ闇だ、
当然こちらの方が先に動ける。
(まぁ自分も見えないから、攻撃する時は運任せなんだけどな)
そのまま棒が来た位置にいるだろう相手に、
突進、運良く手ごたえがあり、そのまま相手を組敷くような体勢になり
「誰だ?盗賊なら運が悪かったな」
低い声を出し、相手に問い詰めたが相手側はなにやら
訳の解からないことを言い出した。
声で女とは解かったのだが、言葉が伝わっていないのかと考えている途中で
まさか魔法か!?
知った時には遅かった、驚愕している俺の下から相手は
するりと抜け出し言葉を紡ぎ終えた。
魔法の対処法を知らない俺は何かに身構えた。
だが!!

相手は勝ち誇ったような声で
「どうだ?人間には・・・うわ!!」
と言い出したが、相手の言葉が終わる前に再度押し倒し
「あのなぁ、嬢ちゃん、魔法が使えないのに
 使えるように振舞ってちゃ、情けないぞ」
俺の説教に相手は
「あれ?何でお前。どうしてだ!?」
パニックに陥っていた・・・・・
自分は魔法が使えると信じきっているのが
少し気の毒になり、相手を解放し
新しいランプに火をつけて、俺は驚いた
相手が魔物だったからでも超美女だからでもない、相手があのアヌビスだったのだ。
(葬儀屋の発端は俺の村の祖先がアヌビスと結ばれた際
 アヌビスが王の墓を守るのであれば、
 私達は兵の墓を守りますっと約束したのが始まりで
 その際アヌビスの偉い方が村に豊穣をもたらした。
 その約束が時代と共に変化し、今では時代に取り残された死体を
 埋葬するという風に変化したのだ。
 なので当然アヌビス事態が村の中では魔物ではなく神とされ、
 とても崇められているわけなのだが・・・)

やべぇ!!神様(+超美女)に二度もタックルしちまった!!
ってか冷静に考えて遺跡に女性が何で一人で来てるんだよ!!
今度は俺がパニックになった。
そんな俺を落ち着きを取り戻したアヌビスが
「お前の名前は何だ?」
先程の警戒心は既に無く、興味津々の声で聞いてきたので
「ロウです。」
何と詫びればいいのか解からず、消え入りそうな声でそう答えると
「組敷いていた時はもっと凛々しかったぞ、
 それとも女の上にいないと気が小さくなるのか?」
神様からの意外な言葉に驚きながら振り向くと
まぁなんとも真面目な顔でお尋ねなさっていたので
「いえ、そういうわけじゃなくですね・・・」
しどろもどろになる俺を見て、
「先程からどうした、もっと堂々としていろ。
 これから私の夫として、
 呪文の効かぬ特殊な者として、皆に紹介するというのに・・・」
不満そうなアヌビスの話にさらりとは聞き流せない単語があることに気付き、
「夫・・・とは?」
「無論お前のことだぞ、ロウ。ああそういうことか
 私が名乗っていない為、信用できなかったのか。
 すまなかった、私の名前はジヴァだ、見ての通りアヌビスだ。」

その後は半ば強引にジヴァの家?
(その遺跡の地下なのだが、本来あの落とし穴に落ちても死ぬことは無く
 あの落とし穴に落ちたものがジヴァ達の夫候補として
 その男を皆で取り合うというしかけらしく、
 俺のように落とし穴が作動しても避けれるものは
 稀で、その時は彼女達自らが出向いて連れてくるらしい
 この場合は出向いた本人がその男を夫にしてしまう為
 出向きたがる者がたくさんいるらしい。
 女の場合がっかりしたアヌビス達にマミーにされてしまうとか
 しかも俺が埋葬した死体は本物では無く
 あれら見ても臆せず遺跡に入る勇気があるかを試すためのもので
 後で掘り返してもらうぞとジヴァに怖い顔をされた)
ジヴァの仲間からは呪文(魔法とは別物)攻めにあい
(効果は無いのだが、ただ座っているだけの俺にたくさんのアヌビス達の
 興味の視線が突き刺さり、こっちのほうが呪文と呼べるのでは、とすら思ってしまった)
ファラオ様(ジヴァの主)からは
「あなたに呪文が聞かない理由は
 あなたが何かの加護、守りを受けているのかもしれないのと
 呪い慣れしている所為かもしれないわ。
 あなたの場合どちらも当てはまるから良く解からないけど
 それよりも、ジヴァを押し倒すなんて凄いじゃない!
 しかも二度なんて、これから続きをするんでしょ?
 それとも私としてみたい?」
とのことだったが
「ファラオ様」
っといジヴァの静かな声に
「冗談よ、おめでとうジヴァ」
その喜びの中にある寂しさを聞き取ったのか
今にも泣き出しそうな顔で
「はい」
小さく、しかし思いの込められた声でジヴァは答えた。


ジヴァの部屋にて、先程の泣きそうな気配は無くなっていた。
色々唐突ではあったが(村の神様と結婚など)ジヴァが自分を
認め、夫として迎えてくれるのならば、自分もそれに答えようと思い
「これからよろしくな、ジヴァ」
俺は心を込めてそう伝えたのだが、ジヴァは熱っぽい顔をしてこちらを見ているだけだった。
息も荒いし、辛そうに見えなくも無いその様子に流石に俺は不安になり
「どうかし・・・」
ジヴァに触れようとしたら、ジヴァが俺を舐めた
あまりにも唐突で甘美な感覚に俺が固まってしまうと
そのまま押し倒され(実際は組敷かれ)困惑していると、さっきファラオ様の
・これから続きをするんでしょ?・の部分が脳内再生され、
魔物は一度興奮すると相手の人間が気絶するまで犯し続けるらしいぞ、という
旅人達の常識を思い出した。
夫としてはOKだけどいきなり過ぎだろ!
ちょっと前までは殴りかかってきてたよね!?
「ちょいお前!いいのか?会ったばっかりだぞ、少しは常識を・・・・」
ジヴァは何も言わなかったが、組敷く力が弱まり、目がイヤなのか?と不安に揺れていた。
そんな目をされて断れるか!!と心で叫び
「まずはキスからじゃないのか・・・・」
俺がそう呟くとジヴァはキョトンとした後
組み敷いていた手を俺の顔に添え
唇をその次は体を最後は魂すらも激しく求め合った。



とある村で{ロウ}と記された墓石が壊れ始めた時
ある遺跡にて
「ロウさんいますかーーー?」
静かな遺跡に若い女の声が響いた。
「別にそんなに声出さなくても聞こえるから」
ロウと呼ばれた若い男は苦笑して答えた。
「ここが静かすぎるだけです」
他の魔物達と比べ空を飛びやすいだろう羽をばたつかせ女は言った。
「今日はどうしたの、キャス?」
男が尋ねるとキャスと呼ばれたハーピィ種の女は
「セクメーラ遺跡からのお仕事ですよ♪
 なんかあそこで戦があったらしくて、死体やらゾンビやらスケルトンやらが多すぎて
 男が寄ってこないからそれらの駆除及び埋葬をして欲しいそうです。
 最近戦のせいで男は盗賊よりも戦争、追い剥ぎを行う者が
 増えたから遺跡に入るものが減ってるのにその上
 さらに減ったら堪ったものじゃないそうですよ」
「セクメーラかぁ・・・・期限は?」
「今日からセクメーラ遺跡のアヌビス達の欲求が抑えられるまでだそうです」
「抑えきれなくなったら?」
「あなたが休む間も無く彼女達の相手をするに決まってるじゃないですか♪」
以前にも仕事の遅れによりその手の経験のある男にとっては
出来るだけ早く終わらせたい仕事だった。
「何なら私が今から送りましょうか?
 砂嵐はひどくないし、この後は仕事もオフですよ」
男は女の提案に飛びつきたかったが、
「ジヴァと話してから決めるよ」
苦笑というより何かを悟った顔で呟いた。
「え〜〜〜何でですか?エストさんから聞きましたけど
 ロウさんはアヌビスさん達の呪文が聞かないんですよね?
 だったら問題ないじゃないですか。」
女の駄々っ子のような態度に男は
「以前にジヴァの予定帳を無視したら、ジヴァがロッドを
 持って襲い掛かってきてさ、
 まぁ全部避けたから問題なかったんだけど、その後ジヴァが泣き出しちゃって
 私はあなたと会える時間を楽しみにしてるの、
 だからその時は傍にいてよ、って言われたんだよ。
 流石にあれには驚いたよ。あの時まで無視したことが無かったからな。
 でその後、他のアヌビス達に教えてもらったんだが
 ジヴァは俺が何時か自分を捨てるんじゃないかと心配だったんだって
 相談するにもプライドが高いあいつのことだ、
 その内容自体が自分に至らない所があると認めるようなもの
 だから溜め込んだんだろよ。
 で俺が無視したからその不安が出てきたわけだ。
 しかも無視した時の時間があいつとのええとなんだ〜〜・・・」
「愛し合うときだったんですね」
「まぁそうだ。それ以来絶対あいつとの約束、予定は破らないって決めたんだよ」
男の長い思い出を時折フォローしながら聞いた女は、
「深いですねぇ。まさに愛ですよね!!ロウさん
 私もそんな愛を交わしたいです。
 どうですか、ロウさん、目の前でかわいいハーピィが
 愛を知りたがってますよ」
女のいきすぎた冗談に男は苦笑しながら受け流した。
「何時でも愛を欲しがってますよ♪」
っと聞き方によっては、かなりまずい台詞を残しながら
ハーピィは去っていった。
誰にも聞こえていないよな辺りを確認していると
「愛を与えるんだ、キャスに。ふ〜〜〜ん」
ドキリとした後、聞き慣れた声に振り向き
「聞き違いじゃないのか、エスト?」
エストと呼ばれた女は、黒耳や尻尾を愉快そうに振りながら
「別に誤魔化さなくたっていいわよ。話は聞いてたから」
「盗み聞きか?」
「別にキャスと話しているのを見かけたから
 からかおうと思っていたのに、からかえる雰囲気じゃないんだもの」
エストと呼ばれた女わざとらしくため息をついた。
「でも懐かしいわね、あれには私も驚いたもの」
「俺が初めて予定帳を無視したことか?」
「ええ、その後あなたは一夜で済んだでしょうけど、
 私はあの子(ジヴァ)の悩みを一気に聞かされて大変だったのよ。
 特に愛の確かめ合いについては、女同士の話だけじゃ心許無いからって
 私まであなた達の愛の確かめ合いに付き合わされて。」
「だからあの時、3人ですることになったのか・・・・
 でも、お前だってかなり楽しんでたよな。」
「そうだったかな♪よく覚えてないわね」
「嘘付け!なんかジヴァいじめたり、薬で色々したよな」
「まあ、そんなこともあったかな」
「もういいよお前・・・・・(涙)}
「でも何時かロウと私だけでしてみたいわね」
女はいきなり男の首の後ろに手を回し、驚く男の顔に自分の
顔を徐々に近づけ、唇が触れようとした時、
「やば、そろそろ時間だよ。」
男はわざとらしく声を出し、女の顔をよけて
一歩半距離をとった。
「その手の冗談は・・・」
勘弁なと続けようとしたのだが、男は息を呑んだ
目の前で女が泣き出したのもそうだが、今まで彼女の泣く姿
を見たことが無かったからの方が大きい。
「私だって・・・・あなたを、、、、どうしてあの子ばっかり
 何であの子しか見ないの?」
(えええええええええ!!!!!!!!!)
男は今までで一番パニック陥った!!
少なくともタックルの相手が神様だったことよりは驚いていた。
(どうする、慰めようにも相手はエストだぞ。
 しかも理由は俺自身、何を言っても無駄な気がする!!)
パニックの末、男の口から出た言葉はあまりにも間抜けだった
「これから、そのぉああ、ジヴァと愛し合うんだが〜お前もどうだ?」 
 時が止まった。
 泣いていた女は泣き止むどころか、笑い出し
「ああああんたねぇ、それは無いわよ。
 あはははははははhhh。あんたが不器用な奴とは知ってたけど
 ここまでとはね、ははははh」
少しだけいつものエストと思った男はチャンスとばかりに
「で、どうするんだ?するのか、しないのか?」
畳み掛けると。
「するする、よろしくね♪」

とある村の跡地で最後の墓石が無くなった時
ある遺跡にて
「「ロウ〜〜?」」
二人の女の若い声が静かな遺跡に響いた。
「聞こえてるよ」
男は答えた。
「どうしたんだ二人で。あぁ、今日はあの日か」
男の自問自答形式の言葉に
「そうだよ、今日は三人の日だよ」
しっかりしているが何処か守りたくなるような声で美女が答え
「たまには私達の方がヘトヘトになるくらい頑張ってみたら」
意地悪そうでしかし姉のような声で美女が加えた
「まぁ、いつも全力でしてるからな、今日も全力でするさ」
「「それじゃ頑張ってね♪」」
男の腕を両脇から絡め取って二人の女は微笑んだ。

♪Fin♪
09/12/25 12:22更新 / GEKO

■作者メッセージ
初の投稿です、
かなり下手で、誤字脱字もありますが、
よろしくお願いします。

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