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異世界で銀髪巨乳美少女リッチとイチャイチャする話
「あー……、つまりこう言いたい訳かなお嬢さん? 『予期せぬアクシデントにより召喚してしまったので、元の世界に戻す方法は分からない』と」
 俺は眉間を抓みながら生気の薄い美少女に質問する。
「その通り……」
 肯定を返して来た彼女を横目に、俺は頭を抱えた。


――――――――


 俺の名前は志戸礼、しがない男子高校生である。どうやら異世界に召喚されてしまったらしい。
 正直まだ夢見てんのかな? と疑う気持ちは有るんだが、多分現実だろう。俺の記憶の中にはこんな地下埋葬所(カタコンベ)を改装したいかにもな研究室や、若干露出魔気味の西洋系銀髪セミロング美少女を見た覚えは無い。

 露出魔気味なのは体温が低いせいで暑く感じるかららしく(実際触るとひやりと冷たかった)、そう言う性的嗜好が有る訳ではないとは本人の弁。あー、矛盾脱衣的な? と一度は納得したが、人並みの体温にも出来るらしいので単なる横着だろう。
 死人だと言われた時には驚いたけど、やや不健康な引き篭もりにしか見えない。

「うーむ、それにしてもどうした物か……。帰る事も出来ないし、大抵の人とは言葉も通じない。はぁ……不安で胸が一杯だな」
 俺が一人溜息を吐いていると家主が半眼で睨み付けて来た。

「私の一日分の食事を一食で平らげておいて良く言う……。しかも勝手にシーツを持って来て寝床を作っている……。遠慮の欠片も無い……」
 家主である彼女、ロザミアは愚痴っぽく言っているがこれは既に約束を交わした事なので仕方がないだろう。召喚してしまった責任の一端が有るので住み込みの助手として雇ってくれると言った以上、衣食住を用意してくれるべきだ。と言うかそうして貰わないと俺は死ぬ。

「ロザミアの食べる量が少な過ぎるだけだろ。寝る場所についてはベッドが一つしかないんだし、一緒に寝かせてくれるって言うのか?」
「ちちち、違う。分かった……、明日には用意する……」
 にわかに血色の良くなったロザミアは慌てて手を振り、フードを上げて顔を隠した。

 正直凄く可愛いと思うのだが、見も知らぬ他人の俺を住まわせてくれるって言うんだから邪な心を持っちゃいけないよな!
 人付き合い無さ過ぎてそこの寂しさに付け込んだらあっと言う間なオーラ出てる、とか思っても俺なんかが手を出して良い美少女じゃないよな!

「まぁ実際問題、うっかり関係ブレイクしたらマジで明日も知れぬ命となるから滅多な事は出来ないんですけどね」
「……? 何か言った……?」
「何でもない、それじゃお休み」
 俺はソファーの上でロザミアに返事をして、首を傾げながら灯りを消す彼女を瞼の裏に焼き付けて目を閉じた。

 一日目終了。俺はこの時、まだこの世界と魔物娘について良く知らなかった。そして、リッチである彼女――ロザミア・ルー・バルドゥ――についても。


――――――――


 俺達は朝食を食べ終わると、ハーブティーを飲みながらこれからの予定を話し合う事にした。
「まず情報確認……。シド・レイ、あなたはこれから私の研究助手として働く……。期限は取り敢えず一ヶ月……、衣食住保障……、報酬についてはまた後で……」
 相変わらずロザミアはゆっくりと喋る。何か妙に艶かしいんだが、素でやってるのだろうから仕方無い。
 それにしてもカタカナで呼ばれると俺の名前がファンタジーファンタジーした感じになるな。

「ああ、それで良い。しかし一ヶ月でこっちの言葉を覚える事が出来るのだろうか」
「翻訳魔術を覚えるには十分……。それに、魔力の濃い所なら言葉を覚えなくても伝わる……、あなたがこの世界の魔力に馴染んでも言葉を覚えられる……」
 俺の疑問にロザミアはじっくりと説明してくれた。

「……えーと、濃い魔力は俺の思考を伝播するので言語を介す必要が無い? しかも伝えたい事だけ伝わる? また、俺自体に魔力が馴染んでも同時翻訳的に言葉が分かるようになるから自然と言語を習得出来る?」
「その通り……」
 専門的且つ複雑な説明を自分なりに噛み砕いて理解する。
 ロザミアさん! ちょっと分かり辛いよ! にしても便利だな。

「うわー、ズリィ! 勉強しなくても分かる様になるのかよ!」
「私の場合は勉強した……。生きている人間相手でなければ通用せず……、翻訳魔術も万能ではないから……」
 そう言ってロザミアは様々な物を宙に浮かせて見せた。
 それらは俺の知っている漫画であったりゲームであったり……、つまりは地球で作られた物だ。

 ロザミアは召喚魔術を研究している魔術師であり、異世界の文化に知的好奇心を持ったらしい。その頭脳をフルに活用して此方の言葉を学び、そしてクールジャパンに染まった様だ。
 彼女の召喚術は所謂勇者≠召喚する為の物とは違い、本来は非生物にしか作用しない物だとの事。生物を引っ張って来るのは相応に魔力が必要であり、術式も一人では足りないとか何とか。つまり俺が召喚されたのは予期されぬ事態な訳だ。

「まぁ良いや、話を戻そう。俺は助手をするとの事だけど、具体的には一体何をすれば良いんだ、博士?」
「魔術の触媒を買って来たり……、研究資料の整理を頼みたい……」
「分かった」
 俺が頷くのを見てロザミアは言葉を続ける。先程宙に浮かせた物の中から漫画を手に取って。

「あと家事全般……」
「おい」
「下の階に氷室が有るから食材はそこから見繕って……」
「ソファに寝っ転がって漫画を読み始めるな駄目リッチ」
 俺が駄目リッチと呼んだのが気に入らなかったのか、漫画から顔を上げてロザミアは俺を見る。

「異世界の文化を知る事も私の研究の内……」
「なら今読んでる漫画の内容を教えてやろうか」
「ネタバレ厳禁」
 珍しく強い語調でロザミアが俺に指先を向けた。
 何か魔術でも使おうってのか? しかし俺の舌の方が早いな!

「と言うか、どうやって収入を得てるんだ? パトロンでも居るのか?」
「……それは、その……」
 目を泳がせるロザミア。ほほう? 何か隠し事が有るらしい。

「そうか……。いや、不躾な質問だったな。博士の様に見目麗しい女性なら秘密の一つや二つは有ると言う物、詮索はすまい」
「まま待った。違う、隠そうとしたのは悪かった……。その……、召喚した物を売っている……」
 ロザミアは恥ずかしそうにしながら教えてくれた。

 ロザミアの召喚術はある程度の対象指定がされており、それは一定の感情が篭められていて且つ既に感情を篭めた人間が全員忘れるか亡くなっていると言う物だそうだ。
 これは有価値判断をすると共に消えても問題無いかをチェックする為の審査機構であり、引っ掛かった物の中で必要の無い物は売ってお金に換えているのだと言う。

「それの何が恥ずかしいんだ?」
「研究資料なら兎も角……、使わずにお金へと換えるのは盗品を売り払うのに近い……」
「……言われてみれば確かに。とは言え全員忘れるか死ぬかしてるなら困る人も居ないし、規制する法律も無い。つまり全くの合法だな、気にする必要は無いだろ」
「そう言って貰えると助かる……」

 そう言ってロザミアは読書に戻るのであった。いや、これだけ見るとオタ生活してるニートにしか見えんので良くないな。
 それにこれだと元手ゼロの宝くじを引いてる女の子に寄生してるヒモ男同然だし。あ、自分で言っててちょっと辛くなって来た。うーん、どうした物か。

「……首を凄く傾けているけど、どうかした……?」
 ソファに寝転がったロザミアが怪訝な顔付きで俺を見詰める。
「いや、もうちょいでショーツが見えそうなんだ」
「〜〜っ!!??」
 慌てたロザミアが漫画を俺の額にシューッ! (暴れた拍子に黒いレースが見えて)超! エキサイティン!!

 二日目終了。結局この日は謝り倒して終わった。


――――――――


「商売をしたい」
 唐突な俺の宣言にロザミアは何とも言えない相槌を打つ。
「はあ……」
 口を半開きにして、眠気からか眼も半分しか開けていないが、それでも彼女は美しい。青み掛かった銀髪も、神秘的な紫水晶の瞳も、血管が透けそうな白い肌も、ロザミアを構成するパーツ一つ一つを引き立てている。

「召喚した物を売って生計を立てていると言う事は流通経路を持っていると言う事だろう? その伝手を使えば、魔術的なサムシングを作って売れるんじゃないのか?」
「残念ながら……、私の専門は召喚魔術系……。リッチと化した事で死霊魔術も使えるけど……、売り物に出来る物は殆ど無い……」
 ロザミアはサラダにフォークを突き刺して口へと運んだ。血色の薄い唇が開いた一瞬にちらりと見えた口内は人間と同じ様に赤く、彼女の蒼白い肌とのコントラストはまるで死人の腸に触れた様な生々しい背徳感が有った。

「……他人の食事を凝視するのはマナー違反……」
「おっと、失礼。にしても召喚ねぇ……、せめて特定の場所から物を持って来れる位に精度が高かったら良かったんだが」
 俺はクリームソースのパスタをフォークに絡めながら呟く。
 異世界から雑な指定で物を寄り寄せる魔術じゃこれまでと同じ様に売り払う位しか思い付かないな。どうやら指定が細か過ぎると引っ掛からない、と言うより上手く作動しないらしい。改善する努力はしているらしいが一朝一夕にとは行かないだろう。

「……何か勘違いしている様だけど……、別に異世界から召喚するのでなければそれ位可能……。と言うより空間転移から派生しているので……送る事も当然出来る……」
「え、マジで? 歩いて一週間掛かる場所と物のやり取りとか出来るの?」
「可能……。私ならデーモンクラスでも呪文抵抗を突破して飛ばせられる……」
 こくりと頷くロザミアの前で俺は歓喜に打ち震えていた。出来る、これは商売に出来る!

「博士、これはでかいシノギの匂いがしやすぜ……!」
「何故に三下口調……?」
 困惑するロザミアに俺は考えた事を説明した。

 三日目終了。俺はどうにか生きていく算段が付いて一安心。期待に胸を膨らませて安眠したので夜中に誰かが動く気配には全く気が付かなかった。


――――――――


「ハハハ! ナイスな着眼点だボーイ、いやミスター・シド。空間転移による輸送は商人なら誰しも一度は考える方法だが、商人でなければ中々思い付かない。キミは中々商才が有るな」
「いやいや、先に手段が有ってそれの利用方法を考えただけさ。大した事じゃない」
 俺は目の前の女性が差し出してきた杯にグラスを合わせて水を呷る。流石に商談しながらノリで酒を飲める程俺の肝は大きくない。

「謙遜は良い。その発想が有るにも関わらず、自分達だけで儲け様とはせずにプロを頼ろうとする判断力もわたしは評価しているんだ。素人が手を出せば火傷じゃ済まない、それを察知出来ない者も多いからね」
「運輸業は商売として確立している……、そこに看板持って土足で入り込んだらどうなるか。だからこそ既に商人である貴女に頼もうと思ったんだ、ミセス・オサカベ」
 狸の耳が頭の上に付いた美女はにやりと笑った。

「ロザミアにも良いパートナーが出来たみたいだね。気に入ったからうちの娘をファックさせて責任取らせようかと思ったけど、これは余計なお世話になるか」
 むすっとした表情で蜂蜜酒を飲んでいるロザミアにオサカベは視線を向ける。この人スゲーな、俺勢いに呑まれそうだよ。翻訳魔術とやらで話しているけど初対面でこんなノリの人初めて。

「……子持ちだったんですか。見えねー……」
「魔物娘だからだよ。我々は見かけによらんぞ、そこのロザミアだって今年で……」
「それ以上言う必要は無い。第一私はリッチ……、十六歳の時に死んだのだから永遠の十六歳……」
 オサカベの言葉を遮ってロザミアが断言した。俺はオサカベと顔を見合わせる。

「「ないない、それはない」」
「死にたかったのならそう言えば良い……!」
 俺達は溢れ出る魔力でローブをはためかせるロザミアに必死で頭を下げた。


 四日目終了。話し合いの結果、輸送業務については翌日から試験的に行う事となった。
 それにしてもムラムラして眠れん。健全な男子が美少女と一つ屋根の下で暮らしているんだから仕方無いが、どこかで一発リラックスしておかないとヤバいぞ。それと風呂入りてぇ、日本とは環境が違うからそんな汗掻かないけど現代日本人としては行水だけは辛い。
 漸くうとうとしていると、ロザミアの寝室から足音が聞こえた気がした。トイレだったのだろうか……。


――――――――


「次の荷物で終了だね。お、来た来た。ひのふのみーよー……、オーケー問題無し」
 オサカベのチェックが終わり、輸送試験は無事に終了した。
「おーし、お疲れ様でしたー。博士もお疲れさん」
「ん……、久々に沢山魔力を使った……」
 ロザミアも心なしか疲れた表情をしている。それを見て俺は少し申し訳無い気持ちになった。

 彼女にまともな働き方をして欲しいと願ったのは俺のエゴだ。召喚した物を売るなんてのは到底安定した稼ぎ方ではないし、俺が養って貰う為にはこれまで通りの収入では困る! ヒモと呼びたければ呼べ! 俺は生き残る為にも宿主に得をさせる寄生虫でいる!
 ……これまでも何気に家の中を片付けたりしていたので別に全く働いていない訳ではないけどな。今日も送られてきた食料品やら何やらを冷蔵室や倉庫に運んだりしたし。

「ふふ、疲労回復に爽やかな果実水は如何かな? これはサービスにしておくよ」
 そう言ってオサカベは薄桃色の水を此方へと差し出して来た。薄く乳白色をしているその果実水が入ったグラスは良く冷えており、思わず唾を飲み込んだ。

「商人のタダより高い物は無いからなぁ。まぁ貰うけど」
 ちょっと疑いつつも受け取った俺の横でロザミアがオサカベに小声で話し掛ける。
「オサカベ……、その果実って……」
「大丈夫、薄いから。影響が出る程じゃないよ」
 何かメッチャ不安になる言葉が聞こえた気がするんだけど!?

「って美味い! 甘いのにくどくなく、鼻に抜ける香りも良く、喉の内側を撫でられる様なとろりとした飲み心地! こんな美味い水初めてだ!!」
 麻薬か何かか? と思ったがある意味それ以上の衝撃だ。水も、それに混ぜられてる果実も美味と言う他無いだろう。思わず感想が口から飛び出たぞ。

「口に合った様で何より。それは魔界の水に虜の果実を混ぜた物だよ。ああ、虜と言っても別に中毒性が有るとかじゃないから安心してくれ、美味しさに病み付きになる人は居るけどね」
「へえ……、何だか疲れも抜けた気がするな。これはちょっとリピーターになりそうだ」
 疲労がポンッと言うのは冗談だが、常識的な範囲でこれは美味い。機会が有ればまた飲みたいな。

 その後、俺達は今後の相談をした。ロザミアの召喚術は速度、確実性においてどんな輸送方法にも勝っているが、彼女にしか行えない以上は物量に上限が有る。利益を生み出すには何でも運ぶと言うのでは効率が悪い。
 オサカベに話を持ち掛けたのは背後に商会が居り身元がはっきりしている事、仕入れから販売までをある程度自由に行える事、それと彼女がロザミアと同じく魔物娘である事が理由として挙げられる。
 良く分からんが、刑部狸と言う種族は魔物として商売をする時には嘘偽りの無い真っ当な商売をするらしい。利益効率を考えるとは言っても白いおクスリの運び屋にさせられちゃ堪らんからな。


――――――――


「さて、と……」
 俺は声を潜めつつベッドから起き上がった。灯りが無くともこの真っ暗闇にももう眼が慣れた。
 ロザミアは昼の疲れからぐっすり寝ている事だろう。大量の魔力を使うのは精神的に疲労するらしく、オサカベもロザミアにたっぷり寝て体力を回復する様言われていたしな。

 俺がまだ起きていたのは……えーっと、トイレに用事が有るからだ。うん、寝ている間に漏らしたりしたら洒落にならないもんな。……いや、マジで洒落にならん。うっかり暴発なんてしたら着る物も無くなるし、死にたくなる事間違い無しだ。
 そうならない為にも、セルフメンテナンスをしておくのは事前の備え! 必須!

「往くか……」
 全身の間接を伸ばしながらの自己弁護を終えて、準備が完了する。
 トイレが有るのは俺が寝ている居間から奥へと抜け、ロザミアの寝室の前を通って右に曲がった突き当たり。何とこのトイレ、鍵が付いていないのだ。元々一人で暮らしていて必要無かったのかもしれないが、俺としては冷や冷やもんである。

(慎重に……慎重に……)
 俺は足音を立てない様に石の床をゆっくりと歩いた。寝室のドアの前まで辿り着き、物音が聞こえないか耳を澄ませる。
(……問題無し)
 俄かに邪心が頭をもたげた。寝ているのならば……何をしても気付かれないのでは……? この扉を開けて、寝ている彼女に……。

(馬鹿馬鹿しい、そんな恩を仇で返す様な事して堪るか。それに、俺は博士に嫌われたくない。打算抜きにしても嫌われたら生きて行けなさそうだ)
 ドアノブに伸ばし掛けた手を引っ込めて、俺はトイレへと向かった。そしてトイレの中へ入ると、音を立てない様に注意を払って閉める。

 ハレルヤ! 後はブツを取り出してメンテナンスするだけだぜ! 解放の時を待ち侘びてもう元気一杯!
 俺はベルトを緩めてジッパーを下ろした。開けジッパァァーー!!

「……」
 暫く振りのメンテナンスで何だかドキドキするな。いや、さっさと一仕事終えて寝よ、う……。
「私の事は気にせず続けて……」
 右を見る。左を見る。此処はトイレじゃない。此処は何処だ? ロザミアの寝室だ。

(!?!?!!??)
 待て待て待て! 慌てるんじゃあない! 素数を数えて落ち着くんだ! 2、4、6……ってこれただの偶数!
「……ん……ふ……」
 ベッドに腰掛けたロザミアが俺の股間を凝視している。すいません、さっきから吐息が当たってるんですけど。

(そうか、分かったぞ。これは夢だ。トイレのドアを開けたらそれは寝室のドアでした、なんてのは空間が捻じ曲がっていたか夢でしか有り得ない。あれー? でも博士は空間転移が使えるんだしそれ位出来るんじゃ?)
「ふぅー……」
 ロザミアの吐息に撫でられた愚息がびくんと跳ねた。それわざとやってますよね?

「落ち着け、志戸礼。スマートに考えるんだ。まず夢なら博士に手を出して問題無い。次に博士が空間を捻じ曲げたんだとしたらそれは多分合意だから手を出しても問題無い」
「思考が声に出ている……。それにどちらにしても問題無いと言う事では……?」
 ロザミアが首を傾げて俺を見上げる。その手は俺の第三の足に伸ばされており、白く滑らかな手が触れた瞬間に危うく暴発し掛けた。

「ッく! 待ってくれ博士、俺はまだ状況が把握出来てない。どうか、どうか説明して欲しい。何故、俺のペニスを博士が掴んでいるんだ……?」
「……その質問の答えはとてもシンプル、『私が触れたいから』……。あなたは、嫌……?」
 可愛らしく俺に問い掛けながら、ロザミアはゆっくりと手を動かす。

「嫌じゃない、だが待ってくッ、ヤバい、出ちまう……!」
 禁欲していた上にこんな美少女が俺のを扱いているんだ。我慢の限界はすぐ近くに有った。
「出る? 分からない……言葉で説明して……」
 手の上下運動をペースアップしながらロザミアが言う。
 嘘を吐け! 興奮で上気した顔で何を言うのかと問いたい! 澄まし顔の癖に何てエロい表情してんだ!

「出るッ! 精液が出る!」
 熱の塊が肉幹の中を駆け登り、弾けた。
「……!」
 瞬間、ロザミアが最小限の動きで唇を開いてペニスの先端を銜え込む。ぬるりとした冷たい圧迫感に包まれ、背筋に電撃の様な快感が走った。

 びゅるびゅると音が聞こえてきそうな程に勢い良く射精し、その全てがロザミアの口腔に収められる。主導権は俺ではなく彼女に有り、正しく搾り取られると言う表現の通りに精液が吸い出された。

「……博士」
 ロザミアはごくごくと喉を鳴らして口の中の物を飲み干す。幼さの残る少女の貌は女の色に染まっていた。
「……あなたは私の部屋の前で一度立ち止まった。……何故そのまま扉を開けて私を襲わなかった……?」
 いまだ硬さの残る我が分身を握りながらロザミアが不満そうな表情で質問して来る。

「気付いていたのか!? ……と言うかなんでちょっと怒ってるんだ?」
「生身の男性の気配位察知可能……。良いから答えて……」
 ロザミアがぎゅっと握る力を強め、眼光を鋭くした。
「うぐっ、い、いや、普通襲うと言う選択肢は取らないだろ! むしろ襲わない様に性欲を解消しようとしていたんだが!?」
 ひやりとした掌に包まれていると萎えるどころかむしろ元気が再装填されている気がする。

「……そう、つまり私の事を襲いたいと言う気持ちは有ったと……」
「待った、弁解をさせてくれ。健全な男子なら博士の様に可愛らしい女の子と一緒に居たらそう思ってしまうのは当然で、俺が異常な訳ではなくて……」
 俺が慌てて言い繕おうとしている前でロザミアはベッドから立ち上がった。

「非難している訳ではない……。あなたが私に魅力を感じた事を私は嬉しく思う……」
 ロザミアはそう言いながらゆっくりと黒いローブを脱ぎ始める。止めるべきなのかどうするべきなのかも分からず、俺は硬直した。
「えっ、嬉しい? ちょ、それはどう言う……」
 闇夜の中に白く浮かび上がる肢体が俺の思考を掻き乱して状況把握が追い付かない。違う! 聞くべきなのはそんな事じゃない!

 ぱさり、と布が地面に落ちて音を立てた。ロザミアの身体を隠しているのは黒いショーツ一枚、身体のラインを隠すローブの上からでは分からなかった豊かな双丘の可愛らしい頂点も曝け出されている。
 自分の喉がゴクリと唾を飲む音が聞こえた。

「あなたに私の事……魔物娘の事をきちんと説明していないのが悪かった……。私達は人間の男性と番う……、そう言う在り方……。もしあなたが私を求むのなら……私はそれに応える……」
 喋り疲れたのかロザミアはベッド横のテーブルから水差しを取り、カップを使わずにそのまま水を飲む。唇から零れた水が陶磁器の様に白い肌を伝い、首、鎖骨、胸の谷間へと流れた。

 俺の視線に気付いて闇の中で紫の炎が輝く。俺はロザミアの眼に貫かれ、まるでその場に縫い止められたかの如く動けなくなった。
 ああ、そうだ、彼女は化生の存在だったんだ。余りにも普通の人間と同じ様に会話出来るから忘れていたが、人間ではなかったんだった。

「……博士は、俺の事をどう思っているんだ? 人間の男だから、俺を受け入れるのか?」
 俺の口から疑問が零れる。そうだ、俺が二の足を踏んでいるのはそれだけの事でしかない。だがきっとそれは重要な事だ。俺に取っても彼女に取っても。

「私、は……。私はあなたが、レイの事が好きだと……思う……。御免なさい……、迷惑かもしれないけれど……、私はあなたが欲しい……。誰にも渡したくない……」
 ロザミアは俯き、胸を押さえながらそう答えた。

 俺の中で蝋燭に火が灯る。もう戻れない。こうまで言われて引く事は出来ない。
「博士……俺は」
「ロザミア、そう呼んで……」
 俺とロザミアの距離が狭まった。もう足は竦んでいない。前に歩き出せる。

「……俺もロザミアの事が好きだ。魅力的に思っている。ただ実感が湧かないんだ……、ロザミアが俺なんかを好きと言ってくれる理由が分からないから」
「理由……、私に取っては大きな事だけれどきっとあなたは気付いていない……。だから、私があなたを好きと言う事を感じさせたい……」
 俺はロザミアの両肩を掴んだ。彼女の身体が一瞬震えたが、抗わず静かに眼を閉じる。

「ロザミア……」
「ん……」
 内心、心臓バクバクになりながら俺は首を曲げてロザミアにキスを落とした。
 柔らかな唇に触れて、その温かさに気付く。何時の間にか彼女の身体は火照り、生きた人間と同じ体温になっていた。

 俺達はベッドの上へと移動し、俺も服を脱ぐ。
 地下にあるこの部屋の空気は秋冬物の学生服を着ていて丁度良い位だが、今だけは脱いでも涼しい程度にしか感じない。

「……脱がせるぞ」
「……ん」
 ロザミアの承諾を得て、俺は彼女の黒いショーツを脱がせた。ふっくらとした太腿をするりと布が通り、下草も生えていない綺麗な一本筋が露になる。

「ロザミア、舌を出して」
「こう……?」
 仰向けで寝ているロザミアに覆い被さり、俺は再び唇を重ねた。そして俺も舌を伸ばし、彼女の舌と絡め合う。俺達は夢中になってぐにゃぐにゃと形を変える感覚器を擦り合わせた。

「ふ……」
「んん……、あ……」
 深く接吻しながら俺は彼女の身体をなぞる。脇腹、臍、上へと上って良く発達した乳房。視線がそちらに向かない様気を付けなければならない程に魅惑的なそこをゆっくりと撫でた。
 小さく可愛らしい出っ張りには触れず、その周囲をくるくるとくすぐり、頃合を見て摘む。

「うあ……!?」
 ロザミアの舌がぴんと伸びた。
 俺はその様が面白くて暫く繰り返した後、唐突に胸から下へと手を動かす。指先が土手を掠めた瞬間、ぬるりとした感触が有った。

「何だ、もう感じてるのか?」
「あ……」
 俺の指摘にロザミアの首筋が赤く染まる。
「いやらしいな、もうこんなになっている」
 二本の指で割れ目を縦に擦った。それだけで淫液がくちくちと音を立てる。

「違……ん♥」
「違わないだろ。問答無用で手コキして来て、しかも精液を一滴残らずに飲み干す位にいやらしい。驚いたぞ、そんなスケベな女だったのかってな」
 俺の言葉にロザミアは赤い顔で首をふるふると動かして否定するが、水音はより湿り気を帯び、指の腹では豆の様な突起が大きくなるのを感じた。
 恥ずかしそうにする彼女を見て嗜虐心が刺激される。これは苛めない方が失礼と言う物だ。

「本当は俺にレイプされたかったんじゃないか? こんな風に組み敷かれて、強引に犯されたいマゾなんだろ、ロザミアは」
 空いていた左手でロザミアの右手を抑え、両足を乗せて下半身の自由も奪った。
「は……ん……♥ 違う……、私は……♥ マゾなんかじゃ……♥」
 甘い声を漏らしながらロザミアは時折びくびくと腰を振るわせる。

「恥ずかしくて興奮してるのに何を言っているんだか。こっちは正直だぞ、気持ち良いですってな」
 俺は首筋や鎖骨にキスをしながら殊更に激しく指を動かして音を聞かせた。
「私……ん♥ は、そんな……♥ あ、ああ……♥♥」
 ロザミアの声の甘さが増すのを見計らい、俺は彼女の恥肉から指を離す。たらりと粘り気の有る液体が糸を引くのを見ながら、ロザミアの上から退いた。

「え……?」
 もう少しで法悦に達する事が出来たのにお預けされたロザミアは残念そうな声を上げる。
「マゾじゃないって言うなら、ロザミアが俺を犯してくれよ。今度は俺が横になるからその上に跨ってくれ」
 ロザミアが混乱している内に、俺は自分と彼女の位置を交換した。

「これは……」
 俺の太股の上にロザミアがぺたんと座り込み、自分のお腹に触れる物を見下ろして唾を飲む。復活してむしろ先程よりも硬さを増した俺の一物はロザミアの臍の下で脈打っていた。
「全部入れたらここまで届く訳だ。さぁ、頼む」
 俺はロザミアの巨乳が揺れる絶景を楽しみながら彼女にお願いする。余りに贅沢な筆下ろしだとは思う。と言うか(恐らく)処女にする仕打ちではない気もするが、この空気では仕方が無いだろう。ロザミアがエロいのが悪い。

「ふ……、ふ……♥」
 大きく開脚した膝立ちでロザミアは照準を合わせていた。亀頭と膣口がくちゅくちゅとキスをして、ペニスを伝って愛液が垂れて来る。

「ん……♥」
 ロザミアがゆっくりと腰を下ろし始めた。俺の先端が生温い肉の中に飲み込まれ、僅かに進んだ所で止まる。
 ロザミアは力を入れて更に奥へと迎え入れようとするが、上手く踏ん張る事が出来ず失敗していた。じれったくなった俺は彼女の太股の上に手を乗せる。

「こうだな」
 ぐいっとロザミアの身体を下に引っ張ると、何かが千切れる感触がした。そのままズルリと彼女の深くまで突っ込み、胎の奥を叩いてロザミアを仰け反らせる。
「っ〜〜♥♥♥!?」
 その瞬間に膣内がうねる様に幾度も収縮した。既に一発撃った後だったから耐えられたが、そうでなければ間違い無く射精してしまっていただろう。

「イッたか、ロザミア」
「……ん♥ 私は……、絶頂、した……♥」
 破瓜の血を股から流しながらロザミアは頷いた。うっすらと汗を掻いた彼女の身体からは甘く扇情的な香りが漂って来ている。荒い息で胸が上下する様は大変良い、だが俺は満足していないぞ。

「休んでないで動いてくれロザミア。俺を犯してくれるんだろう?」
 仕方無いので下から突き上げながら俺はロザミアに続きを促した。
「まっ、待って♥ まだ絶頂したばかりっ♥」
 慌てた様子の彼女の抑止は無視して腰を動かす。一度持ち上げてやれば後は自重で勝手に戻って来るので楽な物だ。ロザミアは軽いし、力が抜けているので無駄な動きが要らない。

「くっ、それにしても狭いな。ぎゅうぎゅう締め付けて来る」
「あっ♥ んっ♥ ふぅ……♥」
 俺の胸の上に倒れ込んだロザミアを抱えながら、俺は抽送運動を続けた。
 少女と呼んでおかしくない彼女の身体はまだ青く、深さも広さも足りていない。大変刺激的ではあるのだが、それが逆に射精の枷となっていた。

「だがそろそろ……。ん?」
 甘やかな声で俺の耳を蕩かしていたロザミアが顔を上げて、欲情に潤んだ瞳で俺を見詰める。
「キスして、欲しい……♥」
 堪らなく淫靡なおねだりに俺は一層欲望の炎を燃え上がらせた。

「可愛いな、ロザミアは可愛い」
 ロザミアの唇を断続的に奪いながら、彼女の耳元で囁く。それに反応してきゅっと締め付けて来る膣が一回毎に段々とほぐれて来た。
「や……♥ これ、駄目……♥ 駄目になる……♥♥」
 俺の首に腕を巻き付けて彼女は喜悦の声を上げる。腰の奥で白いマグマが動くのを感じた。

「ロザミア……!」
「ん……♥♥」
 俺は再びロザミアの口腔へと舌を入れる。まるで男根に吸い付く様に彼女はじゅるじゅると俺の舌を舐めしゃぶり、唾液を絡めて奉仕した。
 俺のストロークは最初よりも随分と深くなっており、ロザミアの膣内は俺のペニスの形に合わせたとしか思えない程に変化している。

 刺激が一周回って射精出来ていなかった分が利子を付けて俺の理性を追い立てていた。放っておいても爆発すると確信出来る程の快楽をロザミアと共に登り詰めて行く。
 湿った摩擦音と艶めいた嬌声を聞き、雌の甘い匂いを嗅ぎ、汗に濡れた白い裸体を闇の中に見て、ぬるぬると舌を交接器官の様に絡めてその味を貪る。そして当然全身で彼女の事を感じ、正に五感全てロザミアの事を抱いていた。

「く……イキそうだ……!」
「私も、そう……♥ もっと、もっと私を感じて……♥♥」
 俺はロザミアの腰を掴み、ラストスパートを掛ける。
 みっちりと詰まった淫肉は荒々しく叩き付けられる俺の分身に呼応し、俺の方が犯されているのだと錯覚する程に凶悪な蠢き方で快感を与えて来た。

 ずちゅずちゅと淫らな涎を垂らして腰をグラインドさせるロザミアの下で俺はぞくぞくする様な疼きを覚える。
「ロザミア……! 膣内に……出すぞ!」
 俺は一瞬だけ躊躇したが、精通時以来の射精欲求に急き立てられ我慢する事を止めた。
「うん……♥ 射精して……♥♥」
 抱き締められながら甘い許しを得て、頭の中が真っ白になる。

「ぐっ!!」
 その瞬間、俺はドロドロの欲望を吐き出した。
「あ♥ あ♥♥ あああああ♥♥♥♥♥!!」
 煮詰められてゼリー状になった精液がぶびゅるぶびゅるとロザミアの膣内に流れ込み、それに合わせて膣がペニスに纏わり付いて震える。視界がスパークして何も見えない程の悦楽が数秒か、それとも数分かとも思える位に続いた。

 尿道に少しだけ残っていた分を搾り出し、それを感じたロザミアが軽く絶頂して長い射精が終わる。
「はぁ……、はぁ……」
「ふぅ……♥ ぅん……♥」
 俺達は汗みずくになって抱き合っていた。全力疾走した後の様な気怠さが全身を覆っているが、そんな事は何の問題も無い程に幸福感が満ちている。

「ロザミア、好きだ。俺の恋人になってくれ」
「……♥ 嬉しい……、私は……あなたの物……。あなたは……私の物……♥」
 ロザミアが妖艶に微笑み、俺は背筋がぞくりとした。彼女は身体を起こして水差しを取りその中身を口に含むと、俺に圧し掛かる様にして口移しして来る。
 ロザミアの舌を伝って昼に飲んだ物よりもとろりとした甘露が俺の喉を潤した。そのまま互いの口腔の形を確かめ合っている内に再び戦意が戻って来る。
 俺達はその後、体力が尽きるまで交わり続け、結局合計で五回戦した。

 五日目終了。泥の様に眠る。


――――――――


「やあ、二人ともおめでとう。昨晩はお楽しみだった様だね」
 商談に来た筈のオサカベがにやにやと笑いながら開口一番にそう言った。
「やかましいわ。と言うかそっちこそ思い切り首に跡付いてんじゃねえか」
 俺の指摘に既婚の刑部狸はむしろ得意そうな表情をする。

「魔物娘に取って夫からのキスマークは勲章さ。ふふ、ロザミアもきっと嬉しく思っているよ」
「確かに……、それはそう……。消えてしまうのが……勿体無い……」
「だから毎晩付けて? となる訳だ。頑張り給えよミスター・シド」
「あーもう、分かったから勘弁してくれ。小っ恥ずかしい」
 俺が降参のポーズを取るとオサカベはやれやれと溜息を吐いた。腹立つなー。

「もうロザミアから聞いただろうけど、我々魔物娘に取って夫は……つまり番となる男性は大事な存在だ。ロザミアにその相手が見付かった事をわたしは友人として心から喜んでいる。だから言っておくが……、彼女を悲しませるなよ?」
 オサカベは真面目な顔で俺を見詰める。
「当たり前だ。まだ出会って日は浅いが一時の気分じゃない、大切にするさ」
 俺の返事を聞いて隣に居たロザミアは顔の筋肉を動かさずに喜んだ。

「そうかい、それなら良い。……さて、それじゃあ本題に入ろうか。まずわたしの方で上に話を通しておいたので其方の説明からするけど……」
 安心した様子のオサカベが話を始める。これで本格的にロザミアの魔術が仕事になるだろう。俺はその補助しか出来ないが、全力を尽くそう。

 俺はちらりとロザミアの事を見た。
「……♥」
 彼女は俺の視線に気付くと、ただ黙って微笑む。
 この世界に来てまだまだ不安は多いが、俺は彼女の為なら頑張れる。そんな確信が有った。

 〜fin〜
16/03/23 13:10更新 / 苑太一

■作者メッセージ
経箱の設定を活用出来なくて申し訳無い。
クーデレいいよね……。

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