私は森の中を歩いていた。森は薄暗く、しかし木漏れ日が幻想的な空間として目に映らせていた。
　ちなみに一人称は私であるが、人間の立派な男である。仕事は、俗に言う旅人である。

　しばらく歩くと森を抜けた、と思ったときだ。後ろで物音がしたので振り向けば一人（一匹？）のワーキャットが襲いかかってきていた。私はそれを慌てて避けた。

　着地した彼女は茶色い毛で、髪の毛は艶のあるショートだ。

　どうやら発情期の彼女に森を歩いているときに目を付けられたようだ。

「おやおや…見逃してくれたりしないかな？」

「…嫌」

　彼女の声はかすれたような薄い声で、声の印象からは感情の起伏があまりなさそうなイメージだ。

　彼女の黄色い目は完全に獲物（私だが）を狙う目だ。
　
　獣が狩りをする前のような四つんばいの臨戦態勢。そこから彼女は「ニャァー」と声を発し私目掛けて飛びかかってきた。

　大概の人間の男は逃げるところだろう。しかし私は例外だ。武器は短剣２本だけだが、私はそれすら使わない。

　私は彼女の攻撃（押し倒したり、掴んだり、要するに行為に持っていこうという行動）をさらりとかわし、彼女の背面に回り込んだ。

　だがさすがはワーキャット、柔軟な身体を捻り、後ろの私に攻撃をしてきた。
　私は後ろに頭を振り、彼女を踏み台代わりにして後方宙返りをして距離を取った。

　彼女は蹴られて怒ったのか本気になったらしく、爪を立てて襲ってきた。
　『ボロボロでも死んでなければ構わない』
　とでもいうのだろう。

　彼女は驚異的なスピードで跳躍、私は避けたが背後にあった木となびいたコートの裾には爪痕がくっきりと刻まれている。

　それから激しい攻防戦に突入した。

　彼女はやはり魔物だ。身体能力は比べ物にならない。私は彼女の素早い攻撃の目前にさらされている。

　が、私は殆ど傷を負っていない。彼女の爪は何度も私の腕を捉えたが、コートの袖を刻むだけで、表皮に達することはなかった。

（さすがはサイクロプスの作った籠手、防御には申し分ないな）

　そう、鍛冶師として名高いサイクロプスの作った籠手を装備しているのだ。ワーキャットの爪を防ぐには充分。彼女の攻撃パターンも読めてきた。
　後は彼女の力に負けなければ平気だ。

　ちなみに私は訓練というものを真面目にしたことはない。昔から身体能力が高く、魔力も多量にあった。理由は知らない。学者も首を傾げっぱなしだ。

　隙を見ては軽い拳撃で牽制し、そしてまたその爪を籠手で防ぐ。
　
　ガシッ
「…っ！」

　防御した瞬間、彼女に右腕を掴まれた。私は彼女の『目的』忘れかけていた。彼女は私をそのまま押し倒した。

「しまっ―」
　
　このままではこの欲情したワーキャットに何をされるか分からない。私はとっさに馬乗りになろうとする彼女に足をかけ、巴投げの様に投げ飛ばした。

「ニャッ―」

　彼女は背中から落ち、私は彼女を俯せにすると彼女の腕を後ろで押さえた。

「抵抗するなよ？」

　私は無駄だと思いながらも警告した。どうせ、また攻撃してくるだろう。

　しかし、彼女の行動はそれに全く反していた。身体をクネクネと捻ろうとはするものの、それは力無く頬は赤らみ、息も荒かった。

　そういえば私は彼女のどこに足をかけたのか、それは彼女の股間だった。
　
　意図せずに彼女の敏感なところに強い刺激を与えてしまった。その時の刺激で更に発情してしまったのだろう、そして戦意は喪失し、彼女は今完全に性行為を望み、待ったをかけられている状態だ。証拠に彼女は内股でモジモジと足を擦り合わせている。

「くそっ、離せ…」

　発情期に入って結構なときが経っているのか、それとも敏感な個体だったのか。私の中にある感情が沸いた。

「…この手を離しても大人しくしているか？」

「…ふぇ？」

「大人しくしているならお前の欲求を満たしてやると言っているんだ」

「バ、バカにしないで…人間の情けなんて…」

「そうか、なら私はこのまま去る」

　強気に逆らった彼女だが、私がそう言うと焦ったような、悲しそうな顔をした。私は構わず立ち上がろうとした。

「あ、待って…」

「なんだ？」

「大人しく…する」

「そうか」

　私は彼女を抱きかかえると、近くに見えた小屋まで彼女を連れて入った。この小屋は旅人が宿としたり、休憩を取るために設置されているものだ。

「発情期に入ってどのくらい経つんだ？」

「い、一週間…」

「長いな、その間に誰も来なかったのか？」

「少なくとも私の前には来てない…」

　何とも可哀想だ。確かに彼女は魔物だが、哀れになってくる。

　私が衣服を脱ぐと、彼女は我慢できなくなったのか息も絶え絶えに私を押し倒した。

「もう…我慢できない…」

「まだダメだ」

　私のモノの上に腰を下ろそうとした彼女を押し倒し返した。彼女は
「ニャ…」
と切なそうに声を上げた。

　私は彼女の履いていた青いホットパンツを脱がせると、茶色く短い体毛の奥に湿り気を帯びた性器を見つけ、舌を這わせた。

「にゃはぅ！」

　快感に彼女が声を上げた。舌が這うたびに、彼女の色気のある喘ぎ声が上がる。

「あんっ…にゃっ…んあっ…はんっ」

「どうだ？」

「気持ちよくなんか…んんっ」

「そうか」

　彼女は身体を丸め私の頭を抱きしめている。息づかいが一段と荒くなり、力が少し強くなった。

　私は陰核を舌の先端で刺激した。彼女の身体がビクンッと跳ねる。

「…そこっ…ダメッ！…んあっ…んんっ――！」

　彼女が絶頂を迎えようとしているのは分かった。だが私はあえて愛撫を止めた。

「ふぇ…？」

　突然愛撫をやめられて、彼女は切ない声を上げた。

「どうした？」

　私は意地悪く聞いた。彼女がどう答えるのかも何となく分かっていた。

「何で止めたのよ？」

「難だ？ダメと言ったから止めたんだ。もっとやってほしいのか？」

「そ、そういう訳じゃ…」

「なら良いだろ」

　彼女は目に涙を浮かべて、何も言えなくなっている。

「ちゃんとお願いすればやってやるが？」

「…続き…やって…」

　私もつくづく意地が悪い。私は舌を潜入した。

「んあっ…」

　そして舌を出すと陰核を吸い上げ、軽く噛みもした。彼女の声が大きくなり、身体が痙攣した。力が一気に抜けた様で、彼女は仰向けに倒れ右腕を額に乗せている。目はぼんやりとしていた。

　胸が激しく上下している。だが彼女は尾を私の腕にまだ絡めたまま離さない。それどころかクイクイと引っ張る。何を望んでいるのかは分かっている。

「それじゃ、本番行くか？」

「い…いいわよ…」

　まだ強きで少し反抗的な口調だが、身体は全く逆でとても正直だ。

　私は彼女に覆い被さると、ゆっくりと挿入した。抵抗なくすんなりと入り、
深く入るほどに私の背中で交差した腕が、より一層強く抱きしめる。
　決して大きくはないが、柔らかい弾力のある感触が心地よかった。

　私は腰をゆっくりを動かした。

「あっ…あんっ…にゃはっ」

　私が彼女を抱き起こし、彼女が私の上に座るような体位になった。私が一切腰を動かさなくても、彼女が自ら腰を振った。

　彼女の吐息が私の鼻や口元にかかる。微かに甘い香りのような気がした。

「気持ちいいのか？そんなに自分で動いて…」

「そんなこと…ない…んあっ」

　何が、そんなことない、だ。嘘つきめ。

　ふと、彼女の耳が目に入った。彼女を抱きしめている自分の手をゆっくりと頭部へ移動させ、彼女の耳を後ろからつまんだ。

「―っ！…み、耳…は…んにゃっ！」

　どうやら耳が感じるらしい。
　私は彼女の耳を優しくつまんだり、つまんだ指を擦るように動かしたりすると、彼女は強く締め付けた。

　尾もピンッと硬直している、そんなに良いのか。

　私は彼女の耳を優しく噛んだ。また抱きしめる力が強くなった。彼女の口からヨダレがタラリと私の身体に落ちる。微かに暖かい。

「ああっ…いっ…い…ああんっ―」

　彼女の声が一層大きくなり、私もそろそろ達しそうだ。そしてほんの数十秒で彼女の喘ぎ声が止まり、体が大きく痙攣した。

「…中に出すぞ？」

「…勝手に…しなさいよ…んっ」

　彼女はまだ腰を動かし続けていた。私は彼女の中でイった。彼女はその瞬間、私の身体を強く抱きしめた。




　事の終わった後、私は服に着替え、少しゆっくりしている。彼女も正気に戻り、ただ座り込んでいる。
　だが終わったすぐ後は、しばらく離してもらえなかった。

「おまえ…人間のくせに…」

　おそらく焦らされたことを怒っているつもりなのだろうが、尾が立っているので機嫌は悪くないことは分かった。頭を撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らした。
　全く、さっきまでの反抗的な態度は何だったのか。

　入れていたモノを抜き、私は服を着た。そして今に至る。

「そういえば、名前は？」

「レミィ…あなたは？」

「レイス、レイス＝レイヴン」

「…あなた、強いのね。魔物の私の力と互角以上なんて、そんな風には見えないわ」

　私の身体は一般の人間と比べても大差ない。故に彼女は不思議なのだろう。

「特別どんなことをしたって事はない。少し訓練をして、後は旅の間に盗賊や魔物相手に戦っていただけだ。戦闘技術はそうやって取った。ただ昔から力と魔力は他の者より上だった。理由は自分でも分からない」

「そう」
　
　彼女はそういうとまたしばらく黙った。口を開いたのはその数分後だった。

「これからどうするの？」

「次の町か村に行ってからだな、決めるのは」

　今までもこれからどうするか何て考えたことはなかった。これからもそうだ。

「一緒に来るか？」

　ワーキャットがどういう魔物かは知っている。が、試しに訊いてみた。

「え？いい……わよ、私は。何であんたなんかに…」

　急にまた反抗的になった。

　ワーキャットはなぜそんな嘘を言うのか…。

　そっぽ向いてても尻尾は嬉しそうだぞ、そんなにピンと立てて。

　私はそっと彼女…いや、レミィの頭を撫でた。



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「次の町か村へ行ってからだな、決めるのは。一緒に来るか？」

「え？いい……わよ、私は。何であんたなんかに…」

　嘘。そんなの嘘。私、ホントはあなたに付いていきたい。

　私たちワーキャットって、何でこんな嘘言っちゃうんだろう。

　彼が近づいてきた。そして私の頭を優しく撫でた。

　（あ…嬉しい…）

「どうしてもって言うなら一緒に行ってあげなくもない…わよ」

　違う、私の方が一緒にいたいって言いたいのに…

「そうか」

　彼は出口に向かっていった。置いて行かれるんだ。

「何してる？　行くぞ」

　いいの？一緒に行っても。そう言いたかったけど。

「わ、分かったわよ」

　私、レイスが　　…好きになっちゃったかも。