読切小説
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原型少女

「魔物が存在したなどという事実はない。ましてや人類とともに国を立ち上げ、一大文明を築き上げたなど天におわす主神様を冒涜するかのような妄言だ」
―――世界主神教団レスカット支部担当責任者 ジム・ローウェン大司教



 20XX年。
 メリケン合衆国レスカット州レスカット市ノースクリム。
 百階建て高層ビルの屋上にて、一人の少女が佇んでいる。
 彼女の眼前に映る景色は、レスカットの市街地……の、あちこちで行われている男女の痴態。

「うわあっ、ジェシーなんだその恰好は!? まるで悪魔みたいな……ハロウィンはまだ先だろ?!」
「うふふ、マイクったら……悪魔(デビル)じゃなくて淫魔(サキュバス)よ」
「サキュ、バス?」
「私は生まれ変わったの、貴方をもっともっと沢山愛するために。ほら見て、胸もお尻もこんなに大きくなったのよ……こういうの、好きでしょ?」
「ああ、ジェシー……内気な君が、裸をさらけ出すなんて、うっ……」
「フフッ、私とヤるの想像してイっちゃった? ズボンの上からでも分かるくらいに大きくしちゃって……」
「なんなんだ、君を見ているだけで……ああ」
「我慢しちゃだめ。一緒に愛し合いましょう♡」

「あんっ、すごいよぉ♡ まるで赤ちゃんみたいに吸っちゃ、てぇぇっ♡」
「たまらん、飲んでも飲んでも牛みたいにあふれ出てくるっ。見た目も牛っぽくなってるし……どうしちゃったんだよモニカ?!」
「ああっんっ、そういうジャックだってぇ♡ 私の膣内に、あふっ♡ 何回も出してもぜんぜん太くって、固いぃぃぃぃっっ♡」
「君のミルクを飲み始めてから全然萎える気がしないんだよっ、ああ、また出るぞぉっっ!」
「だしてっ、私のしきゅーにっ、あったかいミルクだしてぇぇぇぇっっ♡」

「アリスっ、君はいけない娘だっ! 今日も宿題を忘れておまけに遅刻するなんてっ、ううっ……おまけにそんな羽と角まで生やして、フリフリした青いドレスなんぞ着おって! 服装の規定まで破ってまったくけしからん生徒だ!」
「あうっ♡ 先生ごめんなさいっ、もうっしないからぁ、ひうっ♡ おちんちんでおまたぐちゅぐちゅするのっ、とめてぇぇっ♡」
「ダメだ! 指導者として、君を見過ごすわけにはいかん! ぐっ出るぞアリスぅぅっ」
「あうっはぁぁぁぁぁっっ♡♡ せんせえ♡ おなかのなか、あついよ……♡」
「アリス、先生は今君の中に精液を出したんだ。精液は精子というものの塊で、これが君の子宮の中、卵巣から排出された卵子と結びついて子供が生まれるんだよ」
「せーえき……せーし、らんそう? こどもがうまれるって……せんせいの?」
「そう、私との子供だ。いっぱい身体を動かして疲れただろう、授業はまた今度にするからゆっくりお休み」
「ふあぁ……うん、先生おやすみ……」
「ああ、おやすみ。遅刻したらまた指導するからな……覚えていないだろうけど。この娘は私がつきっきりで指導してやらんとな……」


 道路で、路地で、車内で、店内で、オフィスで、学校で、病院で。
 ありとあらゆる場所で、異形と化した女性と男性が交わりあう。
 老若男女区別なく――年寄りや見た目がよろしくない者は、皆若返ったりエロティックで美しく変化していった――子供から大人まで皆等しく快楽と愛を享受していた。
 少女の耳には絶え間なく喘ぎ声と叫び声が聞こえてくる。
 目深に被ったフードの下からのぞく、彼女の口元は僅かに微笑んでいるようだった。
「これが君のやりたかったことか……アレクシア」
 少女の背後から低い、女性の声がかけられる。
 アレクシアと呼ばれた少女は、ゆっくりと声をかけた人物のほうへと振り返る。
 彼女の眼は紅く、瞳孔は底が見えないほど暗い。
 肌は色白く、両側から垂れているもみあげも雪を思わせる白銀である。
 アレクシアは口を開く。
「……私がやらずとも、いつかはこうなっていた」
「どういう意味だ?」
「かつてこの世界に蔓延っていた魔物は確かにこの世から姿を消した。だけど完全に消え去ったわけじゃない」
「魔物……世界政府、教団がみだりに口にすることを禁じている空想の生物、だったかな」
「空想じゃない、現にこうしてレスカット中にいる」
「なぜ今になって現れたんだ?」
「ここにはかつて、巨大な魔物の国家があった。元々は今の教団どもにとって重要な役目をもった人物を輩出する宗教大国だったみたいだけど……ある日魔王の娘が単身やってきて、1日で占領した」
「大国を一日で?」
「それだけ魔物の力は絶大だった。それからここは魔物にとって重要な拠点となったけど……ある日魔物は忽然と消え去った」
「どうして?」
「わからない、けど今の世界政府……主神教団が何らかの形で魔物という概念ごと封印した」
「封印……つまり今の惨状は封印を君が解いたからだと?」
「私がやった訳じゃない……時間が人を愚かにさせた、それだけ」
 遠くバタバタと空を切る音が聞こえてくる。
 アレクシアは再び市街地のほうへと振り返る。
 彼女の眼には、はるか前方2キロに戦闘ヘリと戦車に付随して歩く兵士が見えていた。



 今から3か月ほど前。
 アレクシアは病院にあるような手術台の上で目覚めた。
 彼女が目にしたものは今から自分を解剖しそうな、防護服で身を包んだ二人組の男だった。
 男たちはひどく狼狽して、部屋から逃げ出そうとしていた。
 アレクシアはベッドから降り立ち、ふらついた。
(ここは……どこ? 私は一体……誰?)
 彼女は記憶を失っていた。
 自分の名前さえも把握できていないことに、しばし動揺した。
 その様子を見ていた二人の男が腰に下げていた拳銃を取り出した。
(まずい、あれに撃たれたら……)
 アレクシアはよろよろと二人の射線から逃れようとする。

『飛び込みなさい』
(えっ?)

 突然、脳内に透き通るような女性の声が聞こえてくる。
『飛び込んで、二人に手をあてて』
(でも、そうしたら撃たれて……)
『撃たれても死なない。貴女は人ではなくなったから。二人に近づいたら身体に触れて電気を流し込むようイメージしなさい。ほら、早く実行しないと撃ってくるわよ』
 二人の男はすでに安全装置を外し、薬室に弾薬を装填していた。
 二つの銃口がアレクシアへと向けられる。
 アレクシアは声に促されるがまま、二人に向かって跳躍した。

「なっ」「消えっ」
 この施設……教団の所有する『研究所』に所属する二人の研究員は我が目を疑った。
 突然、死んだはずの少女が生き返っただけでも十分に驚愕すべきことだが。
 発射された音速の弾丸が命中するよりも早く。
 この少女は視界から消え、二人の脇に降り立ち。

 ヴァチバチバツッ!!

「ぐおっあああああああああああ!?」
「ぬうおおおおおおおおおあああ!?」

 少女の触れた手から青白い電撃が走り、二人を感電……するだけではなく。

「「うっ!?」」

 水色の防護服の股が、瞬く間に青黒く変色していく。
 二人はあろうことか電撃を浴びて射精したのだ。
 二人は痺れるほどの快楽に打ち震えながら、その場に倒れ伏した。
「……一体、何がどうなってるの?」
 アレクシアは倒れた研究員の間で一人呆然と立ち尽くす。
『おめでとう、貴女は晴れて魔物になったのよ』
 先ほどの女性の声が、嬉しげに語りかけてきた。
「魔物……?」
『そう、魔物。貴女は晴れて人間を超えたの。……超えるべくして、ね』
「貴女は誰? ここは一体どこなの?」
『私はそうね……訳あって本名は名乗れないからひとまずデルデルとでも呼んでちょうだい。ここが覚えてないの? ……ああ、死にかけたショックで記憶が吹っ飛んでるわね。言葉や学術的な基礎知識は残ってるみたいだけど、自分に関することはすっぽり……エフめ、余計なことしてくれたわね』
「訳が分からない、私は一体どうなったの? 魔物って何!?」
『落ち着いて。その疑問を解く方法を教えてあげるわ』
 アレクシアは知らない言葉を脳内で羅列され軽くパニックになる。
 デルデルの声は興奮するアレクシアをなだめる。
「一体どうすれば……」
『まう、貴女の足元に男が転がってるでしょ』
「ええ」
『その二人を犯しなさい』
「……は? おか、え?」
『犯すのよ。そのイカ臭くて美味しそうなギンッギンに勃起した変態ペニスをさらけ出して、貴女のおまんまんでもってしごきあげて』
「待って待って! 貴方は突然何を言い出すの!?」
『ちなみにちゃんと膣内で出してもらうのよ』
「そんなことは聞いてない! 私はここが一体どこで、貴女は誰なのか聞いただけ!」
 アレクシアは顔を真っ赤にして、女性に抗議する。
 女性はくすくすと笑いながら答える。
『さっきも言ったでしょ、それが貴女の答えになるって』
「どこがっ……」
『話は最後まで聞きなさい。いい? 貴女は魔物の身体になった、それも極めて特殊な……魔物たちの原点と言ってもいいような存在に』
「魔物の原点?」
『そ、言うなれば魔物たちを統べる王……といっても貴女はなりたてだし、魔王なんて名乗るにしても未熟もいいとこね』
「それがわたしの疑問にどうつながるの……」
『貴女の体には特殊な力が宿ってる。さっきの電撃もそうだけど、もっとすごいのは相手を犯すことで、その相手の持ってる記憶を自分のものにすることができるのよ』
「記憶を自分のものに?」
『そう。それこそ相手がどこの誰で何を愛して誰とセックスしたいのか、好きな体位やプレイは何なのか手に取るようにわかるわ』
「……そう」
『勿論相手の持ってる技能も自分のものにすることが出来るわよ。例えば訓練に何か月もかかる戦車やヘリコプターの操縦だって、あっという間に出来ちゃうのよ。他にも犯した相手が政府の上役なら一部の人にしかわからないはずの国家機密だって思うがままよ』
「嫌に高性能になったのね、私の身体」
『高性能なんてもんじゃないわ。ほとんどずるっこよ、チートよ。はあ、貴女が生まれてくる時代があと500年早ければ……』
「でも……どうしても犯さなきゃ、ダメ?」
『そしたら貴女の疑問はずっとそのままよ。それに……下手すりゃ死ぬわよ』
 死という言葉がやけにクリアに聞こえてくる。
『魔物にとって、男性の精は食料と同義なのよ。勿論人間が普通に食べてるものでも生きていけるけど……それもただの時間稼ぎに過ぎない。ましてや魔物はおろか魔力がないこの環境下じゃ弱っていく一方だわ』
「………」
 知らない男とまぐわなければ死ぬ。
 突きつけられた現実に、アレクシアは俯いてしまう。
『ま、それも杞憂だけどね。何せ魔物は……』
 女性はそこで言葉を切る。
 アレクシアの視線はいつの間にか二人の男……の、未だにそそり立って防護服にテントを張っている股間へと向けられていた。
 吐く息が荒くなり、全身がじりじりと火照っていく感覚……アレクシアは発情していた。
『みんな男と交わるのが大好きだからね』
 女性の声ではっと我に返るアレクシア。
 しかし、視線はすぐに男たちの股へとうつる。
『本当は手取り足取り、調教してあげたいとこ、だけ、ど……』
 女性の声にノイズが混じり始める。
『そろそろ、げんかい、ね……ほんとうは、愛する人と……したかった、でしょう……けど』
 アレクシアは夢遊病の如くふらふらと男に近づき、ズボンに手をかける。
『いき、のびて………アレクシア…………貴女は、わた、したちの……………』
 アレクシアから女性のこえが途絶えるのと、ズボンを下ろしてペニスが曝け出されるのは同時だった。
 アレクシアの中では耐え難い衝動が渦巻いていた。
 すなわち、魔物としての本能であり宿命。
「あはっ……♡」
 アレクシアは恍惚とした表情で、そそり立つペニスを右手で根元を掴む。
 ぴくりと脈打つ赤黒い肉棒。
 彼女の中にあった抵抗感はすっかり消え失せ。
 いかに目の前の愛おしき二人を愛するか、それだけが渦巻いていた。
「ぴくぴくして……今にも射精しそう」
 アレクシアは亀頭にそっと口を近づける。
 唇と鈴口が触れ合うかの距離、そこで不意に息を吹きかけた瞬間。
「あうっ!?」
 びゅちっ、と彼女の口や頬に白濁とした液体がまき散らされる。
 手にしたペニスは一際脈打ち、ドロドロと白濁液を垂れ流す。
 アレクシアは、これまで感じたこともないゾクゾクとした電気のようなものが身体中に奔りわたる。
「あはぁ♡」
 ぴくりと身体を震わせるアレクシアは顔にかかった精液を指で掬い取り、口に含んだ。
「んっちゅぷ、ちゅっぷっ、ふうっ」
 アレクシアは夢中になって舐めとった。
 人間なら大方嫌悪していたであろう青臭い液体が、今やこの世に二つともないような極上の甘露のようだった。
 アレクシアの左手は、ホットパンツの中の黒いショーツ……そのさらに下の秘所に添えられていた。
 くちゅくちゅと、口の中で味わう初めての精。
 心なしか身体に力が湧いてきたような気がした。
 同時に、抑えようのない衝動も。
(もっと、欲しい……♡)
 顔についていたものを舐めとった彼女は、期待に胸を膨らませて萎える気配のないペニスに手を伸ばす。
 両手で根元をしっかり押さえ、彼女は口を開ける。
 ちろりと舌を伸ばして、まだ精のこびりついた亀頭に沿わせた。
「れろっ、はあっ」
 舌を回転させるように亀頭を一周、二周と舐め上げる。
「んむうっ、じゅるるるっ」
 そして、一気に根元まで咥え込んだ。
 一心不乱に、じゅぽじゅぽと音をたててペニスを舐めしごく。
「ずっじゅ、んっふ、おい、ひいっ♡」
 舐め上げるたび、垂れた精液が口内にじわりと広がっていく。
 舌を裏筋に沿わせながら、精を絞らんとちゅうちゅうと吸い上げる。
 ほどなくペニスから三度目となる精が放出された。
「んんぅっふぁぁぁぁぁぁ♡」
 彼女の身体はびくびくと震え、ショーツの左手には水気が増していく。


≪主任、彼女は一体誰なんです?≫
≪彼女はアレクシア・マーサー……ウチの研究チームの一員だ。元々は……≫


「ふぇ……?」
 不意に、彼女の脳裏に見たこともないビジョンが浮かび上がる。
 いかにも生真面目そうな、白衣に身を包んだ初老の男性。
 主任と呼ばれていたが……おそらくこの男たちの上司だろう。
(やっぱりこの二人、私のことを知ってる……)
 本来の目的を思い出し、少しだけ冷静になるアレクシア。
「もっと調べなきゃ……今度はじっくりフフッ♡」
 ごくりと、精液と生唾を飲み込み笑みを浮かべる。
 そして愛液に塗れたホットパンツとショーツを脱ぎ下すと、うっすらと白銀のアンダーヘアの生えた下半身が露わになる。
 ぴっちりと閉じた割れ目からは、とろとろと透明な液体が太ももをつたって垂れていく。
 アレクシアは右手の人差し指と中指で陰唇を押し広げると、ピンク色のラヴィアが現れた。
 彼女はそのまま左手で持ったペニスを、ひくつく膣穴へと下ろしていく。
「んにゃあぁぁっっああぁぁぁ♡♡」
 ずにゅるっ、と膣壁をかき分けペニスが侵入していく。
 アレクシアはそのまま子宮口まで到達するのを感じて、何度目かの絶頂を迎える。
「はあっはっ、どちらか一方がイクだけじゃ記憶はとれない、んうっ♡ のね……なら」
 アレクシアはゆっくりと腰を引き上げる。
 ぐにゅりゅりゅ、とカリが膣壁をこすり上げていく感覚でまたイキかけるがぐっとこらえる。
 そして、一気に腰を下ろした。
「くっひ、あはぁぁぁぁぁぁっ♡ これっ、いいっ♡」
 ごりっと、ペニスの先が子宮口にディープキスするような感覚に酔いしれた。
 ただひたすら腰を振り下ろす。
 膣肉は精を出来るだけ多く搾取しようとうねり、ペニスに絡みつく。
 やがて、腰を上下する間隔が短くなっていく。
「あっうっあっいいよ、膣内にぃっ出して♡ 貴方の知ってること子種ごと欲しいのおっ♡」
 子宮口が下り、亀頭にすちゅうっと吸い付いたの契機に。
 4度目とは思えない、大量の精が放たれた。
「あくうっ、はぁぁぁぁぁぁぁっっ♡♡」
 弓ぞりにのけぞるアレクシアの脳内に、パチパチと白いスパークとともに男の記憶が流れ込んできた。


≪主任、彼女は一体何者なんです? セクションが違うとはいえ上級のクリアランス保持者が射殺されるなんて……≫
≪彼女はアレクシア・マーサー、ウチの絶滅動物再生プロジェクトの一員だった者だよ。元々は人類生じている過去500年分のミッシングリンクを解明するのが本来の役割だったんだが……禁忌を犯したばっかりに逃亡したところを処理部隊に、優秀なスタッフだったのに残念だよ≫
≪禁忌……M関係ですか≫
≪これ以上詳しく言う気はないし、聞く権限は君にはない。とりあえず死体安置所に運んで、解剖作業をしておいてくれ。レポートを生臭坊主どもに送らなきゃならん。あと処理部隊から作業員は拳銃を所持しておけとのことだ、ああ理由は聞くな。自分が射撃の的にされたくないだろう?≫



「んん、ぐ、何だ……はっ!?」
 研究員の一人が目を覚ます。
 まだしびれは取れないが身体を起こすことは出来た。
「んんっああああぁぁ♡ また出てるよぉぉ♡」
「ぐああおぉぉ……やめ、もう、げんかいだぁぁぁ……」
 右隣で、死んだはずの元同僚が騎乗位で同僚を犯していた。
 床には愛液だか精液が混ざり合ったもので、ちょっとした水たまりが出来ていた。
「はあっぐ、普通ならテクノブレイクでとっくに死んでるぞ。どうなっちまったんだ俺の身体……ぐっ」
「はふうぅぅいっぱいきてるよぉぉ、記憶と精子ぃ♡」
「くっそ、全然おさまんねえけど、体力が、もう……」
「フフッ、じゃあそろそろ隣の人と交換しようかな……あはっ♡」
 ぬぽっ、とペニスを引き抜いたヴァギナからはとろりと白い精が橋を作っている。
 自分が次のターゲットにされていることを知った研究員は拳銃を探すが見当たらない。
「あはっ♡ お兄さんが探しているのはこれかな?」
 アレクシアの手には二丁の拳銃が握られていた。
 それを、粘土の如くぐしゃりと握りつぶす。
 中の弾薬は暴発する暇もなく圧縮され、握りしめた拳を開くとXのような形でひとまとめになった鉄の塊が床に転がった。
 男は震えあがった。
 最早外部に助けを求めるしかないと、立ち上がろうとするが思うように力が入らない。
「怖がらなくていいんだよ? 私はただ、教えてもらいたいだけなの」
「身体がうごかん、クソッ何が望みだ?」
「あ・な・た・の・あ・た・ま」
 紅い眼が怪しく光を帯びて、研究員を見つめる。
 研究員はおさまってきたはずの一物がまた隆起しているのにも目にくれず、ずるずると背後のドアへと後退する。
「冗談じゃねぇっ、死人に頭を食われてたまるか!」
「うーん、言い方が悪かったかな……」
 ドアまでもう少しというところで何かが背中にぶつかる。
 振り返って見上げると、股間を勃起させた同僚が笑顔で見下ろしていた。
「そんな怖がるなよジョッシュ、あの娘中々可愛いもんだぞ」
「ピーターお前、狂ったかっ!? ドアを開けてくれ!」
「いや、あの娘がイってるときたまーに色んなもんが見えるんだけどよ、この娘の記憶らしくてな……妹さんの生活費稼ぐために日夜研究漬けで休む暇すらねえみてえでよ。俺も妹がいるからわかるんだよな……」
「ピーターさんもとってもいい人だよ。途中から優しくシてくれたし……ごめんね、こんな無理矢理襲っちゃうようなことして……」
「いいんだよ、アレクシア。お前のためなら俺はなんだってするぜ」
「ピーターさん……」
「ふっざけんな!! このレイプ魔のクソビッチが! 今すぐ処理部隊を呼んでお前を」
「そこまでだジョッシュ、これ以上何か言ったら俺はお前のキンタマをぶっ潰しちまうかもな」
「だめ、ピーターさん。私は魔物の件に関わってる人全員を愛することに決めたの。こんなに楽しくて素晴らしいことがあるなんて、思わなかったもの……♡」
 ジョッシュはピーターに押さえつけられてしまう。
 張り詰めたズボンにアレクシアの手がかかる。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ……」
 それがジョッシュの『純粋な人間』としての最後の言葉だった。



≪政府の連中は何を考えてやがるんだ? こんな訳のわからない細胞を復元しろだなんて。どう見ても人間とも既存の生物種とマッチしない……おまけに再生スピードが異常だ≫
≪神のおぼしめしだってよ、教団の上層部がまた何かやるつもりらしい。そいつは10パーセント活性化が確認されたら冷凍保存して教団に送ってもらいたいんだとよ≫
≪10パーセントどころか三日もあれば完全に復元するぞこいつ。最早化け物だ……ああ、嫌な予感がする。タチの悪いウイルスだったらどうするんだ≫



「目が覚めた気分だよ……あれだけヤったってのに清々しい」
「もう……ジョッシュったら荒々しいけど凄くテクニシャンだったのね、色々覚えられた」
「ったく、俺より出してたんじゃねえかコイツ」
 三人は元の服装に着替えて安置所から出ていた。
「二人はどうするの? ……一緒に来る?」
「俺たちはここに残るよ」
「防犯カメラにがっつり撮られたからな、ヤってた映像ごまかして時間稼ぎしなくちゃならん」
 二人が笑いながら言うと、アレクシアは表情を曇らせる。
 彼女は何とか説得しようと試みる。
「でも、もし二人に何かあったら私……嫌だよ」
「心配してくれんのかい、嬉しいね」
「ハハッ、こりゃ何としても生き残らないとな」
 三人はいつの間にか裏口の扉の前にたどり着いていた。
 ジョッシュは扉の横に備え付けてあるカードリーダーにカードを差し込むと、ガチャリとドアが開いた。
「安心しな、処理部隊への言い訳ぐらい大学の卒論よりは簡単さ」
「それに俺たちも予備役とはいえ兵士だかんな。徴兵制なんざ糞くらえと思ってたが、女守るためならもう少し真面目にやっときゃ良かったかな」
 三人は笑いあう。
「出口はこの搬入口の隣にある職員ゲートから出られる。今の時間なら警備員はいつも通り居眠りしてるだろうから」
「職員ゲートは俺のカードキーを使って開けな。俺にはもう必要ないモンだ」
「……ありがとう。家で待ってるから、だから」
「湿っぽいのはなし、ほら行った」
「妹さんが待ってるぞ、早く帰ってやんな」
「……絶対待ってるから」
 ドアを開けると、外は暗闇に包まれていた。
 夜風を感じながらアレクシアは駆けていった。
「さて、どうしたもんかな」
「武器はねえけど足止めぐらいにはなるんじゃねえんか?」
 二人の額にはそれぞれ3つ、頭部・頸部、胸部にレーザーポインタが照らされていた。



 三か月後。
『結局、二人はそのまま戻ってこなかったと。ひどい男ね、こんないい娘をほったらかすなんて』
 デルデルの声は最初あったときよりも鮮明に聞こえるようになっていた。
 曰く、レスカットの魔界化が進行しているおかげらしい。
「彼らは義務を果たした、悲しんでる暇はない」
『強がっちゃって、貴女がそうやって格好つけてるのって無理してる時の癖なのよね。最近わかるようになっちゃったわ』
「……余計なお世話。さて、粗方片付いたか」
 彼女の周りには、戦車やヘリの残骸が炎上し転がっている。
 ただし兵士たちは全員無傷で目の前に気絶させられ横一列に並ばされていた。
『そろそろ寝込みを襲うプレイから、意識あって最初拒否るけど後からまんざらでもなくラブラブちゅっちゅになるプレイに発展させるときだと思うのだけど』
「それにはまだスキルが足りない。それに……」
 彼女は赤面を隠すように、フードを被りなおす。
「恥ずかしいから、無理……」
『ホント、素直じゃないことね……誰に似たんだか』
 なぜ魔物は消えたのか。
 自分は何を見つけて、魔物となったのか。
 
 納得する答えはまだ出ていないが、それでも彼女は。
 かつて人と魔物が交わした歴史を紡ごうと、愛と記憶を食らう。
15/12/10 04:17更新 / 小林プラスチック

■作者メッセージ
 書いてる途中で読み切りであったことをすっかり失念してました。
 ようつべのPVみたいにエロ描写なしのガチシリアスのつもりだったのにどうしてこうなった。
 全部エロい魔物っ娘が悪いんじゃい。

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