メリーさんは●●を探しています

こんばんは。
わたし、メリーっていうの。
よろしくね?
今日も私は王子様を探しているの。
ふふ。
本当は私ってガラじゃないんだけどね。
いいじゃない。
私だって女の子なんだから。
かっこいい王子様に抱き上げられてお花畑を散歩してみたい。
そんなの有り得ないって?
乙女の夢見るパワーに限界はないの。
いい?

そうは言っても、肝心かなめの王子様はどこにいるのやら。
あ、木を切る音が聞こえる。
私、知ってるのよ。
剣の修行の中には、木を切る修行ってあるじゃない。
きっとそれよ。
そうに違いない!
つまり、私の王子様が人知れず森の中で修行しているのね!

そうとわかれば一直線。
夢見る乙女を止められるものなんてないのよ!
まぁ、私は幽霊だからなんでもすり抜けちゃうんだけどね?




王子様、王子様。
待っててね。
すぐ、そこに行くから。
私は今、森の中にいるわ。




王子様、王子様。
待っててね。
すぐ、そこに行くから。
私は今、炭焼き小屋にいるわ。




王子様、王子様。
待っててね。
すぐ、そこに行くから。
私は今、森を抜けた小屋の前にいるわ。




王子様、王子様。
待っててね。
すぐ、そこに行くから。
私は今、小屋の中にいるわ。




あら、王子様ったら。
私が来ることを知って喜んでるみたい。
大はしゃぎしちゃって。
子供っぽいところもあるのね。
そんなところもチャーミングだわ?




王子様、王子様。
待っててね。
すぐ、そばに居るから。
私は今。




貴方の後ろよ?




大はしゃぎしちゃってた王子様を、後ろから抱きしめる。
うふふ。
だーれだ?
女の子なら一度はやってみたいでしょ、これ。
ふふふ、私もよ。
ほら、こうやって後ろから抱きしめて。
耳元で愛を囁くの。

くすぐったいって?
でも、それだけじゃないでしょ?
どきどき、するでしょ?
気にしなくていいんだから。
私だって幽霊なのに、胸がドキドキしっぱなしで大変だもの。
心臓が破裂して死んじゃいそうね?
もう死んじゃってるけど。

ねぇ、王子様。
私たち、初めて出会ったけど。
お互い目と目が合ったら恋に落ちる。
そんな『物語』みたいな出会いもいいでしょう?
ふふ。
不思議そうな顔をしちゃって。
大好きだよ。
『私の』王子様♪





----




甘いキスと、互いの距離を縮める熱い抱擁。
その後は?
ふふ。
野暮なことはいいっこなしだよ。
ボクと君の、熱い熱い、大人の夜の時間だよ。
君と出会った時は、本当に驚いたよ。
ボクは男の子になんて興味なかったからね。
男の子に言い寄られるのが嫌で、わざわざ男物の服を着ていたって言うのに。
君を一目見た時、感じたんだ。
ボクの中の女の子の部分が花開いた瞬間を、ね?

甘い雫は誰のため?
ふふ。
この熱い熱い夜を潤すため。
君をいけない気持ちにさせて、より燃え上がるためだよ。
あは♪
ボクだって女の子だよ。
シャツのボタンを外せば、ほら。
男の子には無い、おっきな胸があるんだよ。
君も好きでしょ?
前に一度だけ胸を抑える布を解いた時、君の目はボクの胸に釘づけだったじゃないか。
ほら。
好きにしていいんだよ♪

社交ダンスみたいに体を寄せて。
押して、引いて。
そうそう♪
緩急をつけるのがいいんだよ♪
あはは、君って『こっち』のセンスもいいね♪
声が、んっ♪
抑えきれないよ♪



----




ねぇ。
私は。
あのとき、本当は。
塔から飛び降りるつもりだったの。
驚いたの。
本当に。
誰かが来るなんて、思わなかった。
幸せになれるなんて、思っても見なかった。

これは夢?
本当に現実?
わからないの。
怖い。
目を閉じて。
また開けば。
いつもと同じ。
あの暗い部屋にまた一人キリ。
そんな気がしてならないの。

もっと。
もっと。
抱きしめて。
貫いて。
私をかき乱して。
怖いの。
幸せな夢が、夢で終わってしまいそうなの。
怖いの。
もっと。
激しく。
嵐のように。
私を乱して。

どうして。
貴方が泣いてるの?
私が泣いてるから?
変なの。
私の涙は。
もうずっと。
ずっとずっと。
ずっと昔に、枯れたもの。

え?
これ、私の。
私の涙?
本当に?
本当に、これが。
私の涙。
不思議。
泣いているのに。
嬉しいのか。
悲しいのか。
よく。
わからないの。

この。
湧き上がる気持ち。
あなたと一緒なら。
ずっと。
ずっとずっと。
続くの、かな?



----



今日も新しい朝が来た。
私は今日も夜を超えた。
乗り越えた。
愛おしい伴侶と共に。
幾千幾万の矢が降り注ごうと。
私は君と共にあろう。

例え刃が振り下ろされようと。
君と共にあろう。
そのために、私はここにやってきたのだ。
君の元に、戻ってきたんだ。

ただいま。
愛おしい、私の幼馴染。






「本当の私になんて、私は興味がないの。ただ、幸せな夢を見ていたかっただけ。いけない?」
「本当の私は、もういなくったっていいの。だって」
「最愛の人が隣にいるから」
「私は今、幸せなんだから」
「夢から覚める必要なんて、もうないんだから」



夢見る乙女の目を覚ますキスってさ。
キスした王子様を夢に引き込んだって可能性。
あると思わない?(_’

16/10/25 22:00 るーじ

top / 感想 / 投票 / RSS / DL

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33