こっくりの10円玉

…ん?なんじゃ?
ふと降霊術…こっくりさんの気配を察し暇じゃからと来てみたんじゃが…
なぜ1人でやっているんじゃこのバカ者は

儀式としては御神酒や蝋燭、供え物…おぉ!油揚げもあるがカルパスもあるぞ!
なかなか狐の事分かっておるではないか、よいぞよいぞこれはなかなかポイント高い、
ワシの好感度ポイントアップじゃ

しかしこの男、1人でこっくりさんはご法度じゃろうに
野良の畜生に取り憑かれて凶事に出会っても文句は…はっはーん読めたぞ、この男。

1人という禁じ手に触れておきながら、この用意周到さ具合

おおかた禁じ手にあえて触れることで分かりやすい変化を望んでおるのだろう…
が、それだと本当にあったら心配だからと保険を十分にかけたか…
おぉなんと肝っ玉が小さい事か、それとも自己保身の強いマゾか
まぁよい、呼ばれた手前、弄びつつこの捻くれ者をれくちゃぁしてやるか

どれ…まずは呼び出された事を教えてやろう
「こっくりさんこっくりさん、来られましたら『はい』にオススメください」
には、『はい』じゃな

ふふっ…怖がっておる…怖がっておる…10円玉が勝手に動いただけで臆したか?
傍目から見ても震えておるのが分かるぞ

「…こっくりさんですか?」
なんじゃじれったいやつじゃな『はい』

「聞きたい事があるのですがいいですか?」『はい』

「こっくりさんの妖怪の仲間って居ますか?」

…ん?ワシの交友関係を探っているのじゃろうか?
なるほど、そういう事かまたしても読めたぞこの男の意図

『ちょっとまってろ』

おぉ…またもやビクッとしとる
おおかた仲間でも呼んで来ると邪推したのじゃろう愛い奴め

さてと…この男…興味本位で始めたとあらば…
1人暮らしじゃろうから…この辺に…
おっとラップ音で驚かせてしまったか、汗が噴き出ておるな

お、あったあった
春本…いや、最近ではビニ本と呼ぶそうじゃな。
おぉ…おぉ…化生に誑かされ…犯されとる…
ふむふむ…こちらは…なんと、少年を襲うスライム…
さらには蛇畜生に胎内回帰させられる男…
身の丈3倍はありそうな鬼にしゃぶられる話…

いやぁわかったわかった十分わかった
なるほど…こやつの性癖がだんだん分かって来たぞ。とすれば…

『つれてきた』

おぉ!一際大きくビクッとしたな
ククッ面白い反応する奴じゃのコイツは

とはいえこれでは終わらぬぞ

「ふーっ」

これが好きなんじゃろう?
ふふっ恐怖に引き攣った顔から少しの歪んだ微笑みを感じるぞ
それと…始まったようじゃな縮小が

ひと吹きで、まぁこのくらいか。
ほれほれ頭一つ、二つほど目線が下がってしまったぞ
どんな気分じゃ?机も椅子も大きくなったろう
足もプラプラしかけとるぞ

…くくっキョロキョロして好奇の目で見とる
やはりこやつはマゾの気質があるようじゃな

だが…これで終わらぬぞ
こっくりさんは10円玉を離してしまったら憑りつかれてしまうからのぅ
小さくなって行く体でどこまで離さずに行けるのか…

「こっくりさん、こっくりさん。
これは…後で元に戻してもらえますか?」

…ん?なんじゃ?何か引っかかるもの言いじゃな
なるほど…"後で"か。やっぱりこやつ巨女趣味もあったか

よいよい、ワシは寛容じゃぞ
"後で"は元に戻してやる

『はい』

『ただ』

『それをはなすな』

ふーっと2吹きめじゃ

おー…おー…更に小さくなって…
このままじゃ机に手も着く事も叶わなくなるから
椅子から…机に上がって…くくっ可愛いぞ
ついに机の上に丸々載ってしまったではないか

いや…こっくりさんに使った紙が今やカーペット並みか
ここまで小さくなるとはな
おーおーペットにしたくなってくるわ

この大きさなら、ワシの10円玉を追うのも苦になるじゃろうか?
…ちょっと揺さぶってみるか

今は『な』か、これを鳥居まで動かしてみようかの
おおっと、鳥居まで這わせるだけで腰を下げて小走りせねばならぬか

「くくっ…きひひ…」

おおっと笑い声が聞こえてしまった…
くくっこの嘲笑い声もご褒美か、下卑た笑みが見えるぞ
ただ焦りも見えるようになってきたな

よし、少々苦になるじゃろうが移動させるか、我慢せいよお主

よしまずは
『ち』『い』

ここまでは楽勝か、どれどれ次は

『さ』『く』
まだまだ余裕のようじゃな、じゃが次は

『な』『り』
くくっ…これは結構距離あるからのぅ…
ちょっと息が上がって来たか、離したら憑りついてしまうぞ
じゃが次で終わりじゃから堪忍せい

『た』『い』『か』
ふふっ肩で息をしておる、結構堪えたようじゃの

だがこれを見てみぃ今回の質問は
『ちいさくなりたいか』じゃ

お主が好きなやつじゃ
うんうん、肩で息をしててもうなずく
その性根たくましいながらも腐ったその性根、よいぞ
だんだんお主を気に入って来た

それじゃあ
その火照った体を涼めてやろう

「ふーっ」

どんどん小さくなって行く身体…
どんどん…どんどん…小さくなって行くがよい…

くくっ…クカカカ…ついに!ついに!ここまで小さくなってしまったなお主!
どうした、そんなに小さな体では10円玉を押さえるどころか乗ってしまうぞ!

可愛いのう、可愛いのう
ますますお主が欲しくなってきた

おや?それでも10円玉を押さえようとするか
よしよしワシは慈悲深い、10円玉も低速で動かしてやろうとするかの

だが…見てみぃその場所から次の文字、また次の文字に行ったら
どこまで走ることになるかの?

くくっ…そうじゃ、お主は10円玉に乗るしかないのじゃ
よし、乗ったか。だがそれで本当によかったのかの?

今までは低速じゃった…
じゃが…誰が高速で動かないと言った?

ぐいん!ぐいん!ぐいーん!と!
10円玉の乗り心地はどうじゃ?

ひだり!みぎ!うえ!した!
そぅれクルクル回転もしてやろう!

ほーら!ほぅら!10円玉が暴れ馬のようじゃろ!
いつまで10円玉から指を離さずにおられるか…の!フフ…フハハハハ!

あっ!

おっ…おととっ!
ふぅ…間一髪の所じゃったな、まさか机から落ちそうになるとは
…と、実体化してしまったか

ふふっ…不思議な顔をしておるな、あまりの美貌で言葉を失ったか
浮世の人間には見せないように生きてたんじゃがの、見られてしまったか


じゃが…お主、10円玉から手を離したじゃろ?
じゃから…お主はこっくりさんに憑りつかれてしまうのじゃ
そうしたら、お主は浮世の人間ではなくなる


くくっ…臆するな、優しくはしてやる
お主の、その、被虐趣味が許す限りな

おー…おー…そんな嬉しそうに絶望の顔しおって
よしよし懐に入れてやろう、あまり胸はないがの
それじゃあ帰ったら一緒に御神酒飲みながらカルパスでも喰おうか

おそまつさまじゃった

ロリババアこっくりさんとこっくりさんしたい

ロリババアこっくりさんが居たとしたら
サバトに参加しそう

15/08/16 23:03 赤キギリ

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