ひふみアンフェア
学生時代でないと体験出来ないことっていっぱい有りますよね。![]() | |
こ、このプロットで白澤は卑怯だ……アンフェア…… それにもまして#3の最後の彼の台詞が天才的だと思いました。 手紙を通じて事前知識もあり、準備やこころ構えもしてきていた彼女とは違って、彼女ほどには強く目の前のひとがが文通相手だったと確信できていない彼のほうから、実は別人かもしれないという恐れやためらいを振り払って、いままで積み上げてきた置き手紙の文通相手同士という前提、人間関係的安全距離へ後退するようなこともしないで、自ら新しい関係へと飛び込んだあの台詞。きっと彼の口からは到底出てこないだろうと彼女も思って、諦めていたであろう台詞。それまでの手紙の中には見つけることのできなかった彼の勇気。 この土壇場で、彼のことは全部知っていたつもりだったのに、まだまだ知らなかったものがあるんだと見せつけられて、そりゃあこんなのいくら白澤だって何も言えなくなるにきまってる。とにもかくにもこんなプロットわたしには絶対に書けっこない。甘酸っぱい。まぶしい。暑い。はずかしい。爆発しろ。許してください。 でもそれだけに、末尾の#4や、もう一度読み返した#1冒頭に漂う、現在の彼の一気に老成したような不思議なほろ苦さが、そこはかとない不安な読後感を呼び起こすようで。 おそらく彼女が持ってきていたであろう最後の手紙の内容、彼の渾身の問いに対する彼女の答え、彼らのその後の関係は、作中では明かされない。 けれど、最後、彼は「少しだけ前を向こう」と思った。彼は、強いてそうする必要があった、つまり、その時点まで、彼は少しも前を向けていなかったのだ、とわたしは読みました。 彼と彼女は、どうなったのでしょう。 またあるいは、それを問う権利は、本来読者にはないものなのかもしれませんが……。 他に、ほんとうに重箱の隅突きなのですが、いくつか気になった点を。 ・(〜)それを忘却したいがあまりこの僕が真面目に勉強に取り組もうと家の勉強机に向かうまでのもので(まあ案の定三十分程度で寝落ちした)、類を見ないほどだ。 ここの文末、『類を見ないほどだった』などと過去形にしたほうがおさまりがいいように思われます。 ・指先を少し鉛で汚しただけ 鉛筆の芯なら黒鉛とすべきではという……それだけの…… 長々と失礼いたしました。 ![]() | |
せつなっ!?いや心が痛い…
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密やかでほろ苦い彼の青春の一コマ、それが鮮やかに彩られていて 心にすっと入ってきました。 相変わらず氏の文章力には脱帽させられるばかりです... ![]() |