■タイトル:レスカティエ第37駐屯 ■作者:焚火 -------------------------------------本文-------------------------------------  雨の夜、夜陰に紛れて蠢く者たち。足音は雨に紛れ、夜を照らす月や星は分厚い雨雲の上ばかりを照らしている。雨雲が閉ざす帳の中を蠢き進む者たち。
 雷でも落ちれば彼らの姿を照らしたかもしれないが、その夜は彼らの味方だった。

 彼らの向かう先にあるのは小さい町。
 規模は小さくても年季を感じる街並みで、年月をかけて作られた石造りの壁は上質とは言いがたいが、不埒者を簡単に通すようなものではない。
 ただ、雨に濡れた壁はどこか物悲しく、俯いているかのように、見る者に感じさせた。

 雨と陰鬱な気配は夜の見張りをする町の守衛たちの間にも広がっていた。彼らは見張るべき外に背を向け、門の横に作られた、小さな見張り塔の中で憂鬱そうに竈の火にあたっている。

 そんな守衛たちの様子を見定めると、先行して町の近くまで忍び寄った者はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべ、後方に向けて鳥の鳴きまねを3度おこなった。
「ホー、ホー、ホー」

「ん?なんだ?・・・・・・ふくろうか?」
 守衛の1人である青年はその声を聴くことができたが、外の真っ暗闇を少し見ただけ。 ふくろうは雨の日でも鳴くんだなと、深く考えることもなく暖かな竈の火へと視線を戻すのだった。

 それが生き延びる最後のチャンスだったとも知らずに。


ヒューーーーー・・・・・・
ゴッ!ゴオォォォォオン!!!!


 青年たちを襲ったのは、空から降って来た楕円形の大岩。
 どこからともなく飛んできた大岩の一撃は門と見張り塔を粉砕し、なんども転がりながら近くの建物を押しつぶしていく。

 轟音に家から飛びだしたある町の男は、隣の家を押しつぶして止まっている大岩に驚き呆然としていたため、門の残骸に蠢く影に気づいた時には遅かった。


ヒュッ!


 放たれた矢は雨粒と風を切って飛び、男の右腹に深々と突き刺さっていた。男は腹の痛みにもんどり打って悲鳴を上げる。
 その悲鳴に誘われるように、門からおびただしい数の男たちが入ってきた。

「敵襲!敵襲!」
「くそう!盗賊だー!」
「この野郎ども!進ませるかー!」

 駆け付けた幾人かの町の守衛達が大声お上げて警戒を知らせ、盗賊たちには威嚇の声を上げるが、焼け石に水であった。
 門からは続々と盗賊たちが侵入しており、たとえこの町の守衛全員がこの場にいたとしても手に負える数ではないのは明らかだった。

 とある守衛は、闇夜に隠された門の先に蠢く者たちを、人ではないのではないか、人を取って食うと話に聞く凶悪な魔物なのではあるまいか。そんなことを思いながら、腹を切られてこと切れるのだった。

 その晩、とある反魔物国家の小さな町が大規模な野盗団の襲撃によって炎上した。 火の手は雨にも負けじと燃え盛り、その光は近隣の村々からも見えるほどだったという。

 そして数日後、重い腰を上げて訪れた討伐軍が目にしたのは、完全に焼け落ちた町と炭となった数多の死体だけであった。





「よーし、みんな集まったな。今から作戦会議を始める!」

 そこはウトと呼ばれる小さな町にある会議室。
 長テーブルには8名の人と魔物が集まっていた。

 会議の開始を告げるのは議長席に座る男、ロイ・ノイマン。
 歳は40ほどで、半袖のシャツに動きやすいレザーアーマーを着こみ、むき出しの腕は逞しく鍛え抜かれている。

「今回は遠征ご苦労。ぎりぎりまで楽しんでいて、全く事情を知らない者もいるだろうから、順を追って説明するぞ」
 ロイはそういって説明を始める。

「まず3日前の早朝、我らがレスカティエ第37駐屯にウトの町長から救援要請が届いた。救援の内容は最近この辺りを荒らしまわっている盗賊団を撃退し町を防衛することだ」

 
 ロイが説明を始めても夫を持つ自堕落な魔物たちは聞いてない。
 ロイの右前方に座る白鷺の羽根つき帽を被ったぬれおなごのスズはロイのことをうっとりした表情で見つめ、その足にこっそりと触手を伸ばしている。
 話の流れから、たまに他の出席者に目を向けることもあるが、正面の席だけは向こうとはしない。

 ロイから見て左の末席に座るウンディーネの魔精霊であるミアハさんは隣に座る夫にもたれ掛かって熱い息を首筋に吹きかけている。
 出席者の中でも特に当事者と呼べる立場なのだが、我関せずといった体だ。間違いなく上座の方を向きたくないだけだろう。

 
 では一人身の魔物娘が話を聞いてるかというとそうでもない。
 ぬれおなごのスズの斜向かいには、気弱そうなワーラビットのポアラが座っている。だが、その気弱そうな表情には似つかわしくない巨大なまさかりが椅子の背に立てかけてあり。大胆に背中を開けた服からはしっかりと付いた筋肉がのぞいている。
 ただ、今はロイの話よりも右隣が気になるらしく、怯えたようにチラチラと目を向けている。

 話を聞かぬものたちに内心ため息をつきながら、ロイは嫁の冷たく心地よい触手の誘惑を我慢して説明を続ける。


「この盗賊団はしばらく前にこの国の南側で起きた戦争の敗残兵が中心となってるようだ。優秀な奴がいたようで小さな村を襲いながら道中のならず者や盗賊たちをまとめあげ、1週間ほど前には小さい町だが丸ごと滅ぼしちまいやがった。かなりの死傷者も出たらしい。たくっ!」
 説明の最後は、胸糞悪いとばかりに悪態をつく。その時、出席者から手が上がるのに気づいた。
 ロイの右手前方、ぬれおなごの右隣りに座るクーシーのものである。

 ロイが許可を出すと、机に乗せた巨大な本に手を置きながらクーシーのプーリはロイに質問する。
「町を1つ滅ぼすような危険な盗賊団ならこの国の軍が動くんじゃないワン?それにこのウトの町は反魔物国家に属する町だワン。私たちが助けに来て大丈夫かワン?」

「ふむ、プーリ君は先月学院を出て赴任して来たばかりだったな。」
 男はそう言って新人で見習いの魔界軍師に解説を行う。


 まず、この国の軍は南の国との睨み合いが続いておりそんなに大部隊は送れない。僅かに派遣された部隊も今はこの町よりも東にある大きな町に集結しているため、この町は盗賊にとって守りの薄い格好の標的となりえるということ。

 そして

「この町を助ける理由は単純だな、この町の堕落はすでに完了しているからだ」
 表向きは現在も反魔物国家に属するこの町だが裏では親魔物側の町へと寝返っていると言うのだ。

 
 この町はレスカティエ領との国境に近く、直線距離なら20キロほどしか離れていない。本来なら国境防衛とレスカティエ奪還の2重の最前線足りえる町なのだが、そうはならなかった。

 理由は国境の目印にもなっている未開の山脈があるためだ。深く険しい森と山々によって遮られた国境は人々を阻み、大軍はおろか少数の兵士たちでも踏破するのは困難だったのだ。そのためレスカティエ奪還には使えなかったのである。

 一応、山の魔物や山を越えてきたレスカティエの魔物たちへの備えとして、昔からあった山村に手を加えて砦として作られたのがウトの町であった。


 いっぽう、身体能力に優れた魔物たちは、深い山々を踏破することも可能ではあった。 ただ、わざわざ頑張って山越えし、幾ばくかの防衛軍から伴侶を探し、また男を連れて山越えするというのは大変面倒だったのだ。 

 反魔物国家が敷くレスカティエ奪還の最前線に行く方が伴侶となりえる男は沢山おり、いい相手を見つけやすく、連れ帰りやすい。

 レスカティエとしてもこの地域の戦略性は乏しく、一応の監視所として作られたのがレスカティエ第37駐屯、この会議に集まった者たちが所属する駐屯地なのだった。

「まっ、そういう一応と一応の体裁同士、睨み合うフリとしてこの町も俺らの駐屯地も作られたわけだが、赴任してきたのがあの指令官だったのが・・・・・・、運の尽きってな。がっはっはっは!」

「ウー、なんとなく想像できたワン。あの司令官なら周りが気づかないよう上手くやりそうだワン」

「ん。そういうことだ」

 プーリの斜め後方では、その上手くやられたこの町の町長がウンディーネに纏わりつかれながら苦笑いしているが。 言った本人はロイに体を向けているので気づいていない。

 入団したばかり、かつ初めて来る町で勝手が分からないのは仕方ないが、会議に呼ばれる重要人物の顔も分からないとは軍師として考えものである。

 注意してもいいが・・・・・・。指導役としてプーリの隣に座るマインドフレアの笑顔が冷たいものになっている気がする・・・・・・。気づかなかったふりをしてロイは話を元に戻す。


「さて、この町を守る理由ははっきりしたところで、防衛作戦を伝える! 作戦名は『ドッキリ!雨夜の大泥合戦!』だ!」

「「ぶー!」」

 プーリとポアラが思いっきり噴き出した。
 初作戦のプーリはともかく、ポアラ・・・・・・お前は慣れてるだろうと思いながらロイは説明を続ける。

「まず敵盗賊団の誘導だが、これはすでに策をとった。東の町への戦力集中のためウトの守備隊の3分の2が昨日出発。北の町から食料・医療品をウトに搬入し山の狩人たちにも大々的に食料を集めさせている。」

 食料は豊富で薬や包帯もあり、しかも守りは手薄ということを子供でも知っているという・・・・・・。襲ってくれて言わんばかりの状態だが、襲ってほしいので問題ない。

「敵の攻め方を調べると必ず夜、それに雨の日が多いのが特徴だ。視界も音も効かない中をこっそり接近、巨岩系の大規模魔法で一撃食らわせて相手が混乱したところを一気に攻めるって戦法だな」

 確かに上手な戦法だが・・・・・・、視界の悪い夜の移動は神経を使う。しかも雨は体を冷やし、足元はぬかるみ上手く歩けない。その分、体力も余分に使う。

 加えて幾ら雨が音を消してくれるとはいえハイキング気分ではいられない。喋らず騒がず、できるだけ音をたてないようにとなるとこれもかなり神経を使う。

 正規の軍隊ならまだしも、ほとんどが盗賊やゴロツキの集団をまとめ上げて統率してるとなると、中心となった敗残兵は士官クラスなのではないかとさえ思える。

「ウー、南の国の工作員ってことですか?」

「わからんが、その可能性もあるってことだな。まあ、我々としてはどうでもよいが」

 南の国は消極的中立国家であり、魔物たちのことを率先して攻めることはないが、入国や移動は制限され、定住することは認めていない。

 敵対的ではないが友好的でもない、なのでそこまで気を遣う相手ではない。


「さて、以上を踏まえ今回の作戦決行は今夜。ミアハ嬢に雨を降らせてもらう。重装騎士達はウト正面の防壁の両端から、平野を挟むかたちで2列縦隊で待機。鎧は黒いし、正門から離れたところで屈んでれば気づかれることはないだろう。魔界戦士団は左右の重装騎士達の後ろに隠れて待機。魔界銃士率いるレンジャー部隊は盗賊団の進行ルートが正門に向かうよう陰ながら誘導。盗賊団がウト正面の平野部に入ったのを確認したら銃士の合図で重装騎士団のドロームたちが平野を泥沼化して機動力を削ぐ。他の重装騎士達はその間に盗賊たちの後ろまで展開して完全包囲。包囲完了と同時に魔界戦士たちが突っ込んで制圧。長くなったが以上が今回の流れになる。」


「ウー、なるほど。雨が降る夜中の移動で、ただでさえ体力を使ってきた相手に対してより体力を削る泥合戦とは・・・・・・あくどいワン!」

「がっはっは!まあな!ボソ(考えたの指令だけどな)」

「はいはいポーちゃん、感心してないでこの穴だらけの説明に突っ込んであげなさいな♡」

作戦に関心していた見習い軍師に指導役から声がかかる。

「ワウッ!ウー(誘導ってちゃんとできるのかな?側面に回られたりしないワン?重装騎士は遮蔽物のない平野に展開するワン。魔術的偽装も必要じゃないかワン?幾ら正面ではないといっても・・・)・・・ワン!ロイ殿!正門の守りはどうするのだワン? 大規模魔法の使い手もいるのだワン!包囲しても正門を破壊されて町に入られたら意味無いワン!」

 指導役の声に焦りつつも、プーリは一番大きいと思える問題を問いかける。

 ロイはその問いかけに、自分があえて触れなかったところを見逃さなかった若い魔物を評価しつつ答える。

「おう!正門に守りがいないのは兵を隠すのが困難だからだ。防壁の端なら正門から250m程度は離れてるから、暗闇で伏せてたら見つかる心配は少ないだろうが・・・、かがり火を絶やさない正門に部隊を配置したらまず見つかる。襲撃が察知されてると気づいたら敵さんも逃げちまうかもしれんからな。」

「ウー、門の内側に隠れていればいいんじゃないワン?それにドロームさんやスライム族の皆さんならば地面の下に隠れられるんじゃないかワン?」

「うむ、ドロームやスライムか。それでも作戦は可能だろうな。物理防御にも優れてるから、巨岩系の魔法でも問題なく止められるだろう。強いて言えば、ドローム達は敵の起動力を削ぐのが第一の使命になる。我々を見る以上、一人も逃がすわけにはいかんからな。そうなると敵の最前列の遥か手前から技を放って敵の最後尾までカバーするよりも、敵の横から技を仕掛けた方が取りこぼす危険が少ないってのはあるな。」

「ウー・・・・・・(はぐらかされてる?ってことは)、守備隊を配置しなくても守れるってことかワン?でもどうやって守るワンよ?」

「それはな・・・・・・」
ロイはそう言いながら左隣にチラリと顔を向ける。ポーリもそれに合わせてその魔物を見る。


 鎮座するは漆黒の重鎧 頭の先からつま先まで全てを包み込んだ鎧は武骨で鋭く荒々しい。二人分はある特注の椅子を占領する横幅と180cmの背丈が合わさり、まさに大岩のごとき存在感である。


レスカティエ第37駐屯

重装騎士団 団長

トトリ・ノスカランである。


         ❖


 夜になった。

 夕方ごろから降り出した雨がザーザーと音を立てている。風もないので雨の音だけが辺りを包んでいた。地面にはそこかしこに水たまりができている。

 トトリはウトの町の正門、そのすぐ内側に立ってぼんやりと門の意匠を見上げていた。
 この門の向こうでは自分の部下とポアラの戦士団が配置に着き、スズさんの指揮する銃士とレンジャーたちが盗賊たちの誘導を行っている。

 盗賊たちが動き出したとの知らせが入ってからすでに2時間が経過している。

 正門横の櫓にはロイとポーリちゃん、マインドフレアのエニアさんが詰め、偵察の魔物たちから情報を受け取り指示を出している。

 ぼんやりしていると、ポーリちゃんが敵の斥候が正門を目視できるところまで近づいたと、私のところまで恐々伝えに来てすぐに戻っていった。

 普段なら優しく声をかけて和ませてあげるところだが、今は難しい。
 なにしろ、愛する夫の精を3日も貰えていないので理性が爆発寸前なのだ。

(ああ、早くあの人とキスしたい。精をたっぷり含んだネバネバの唾液を飲ませてもらいたい)

 私の夫は、レスカティエ第37駐屯地の司令官を務めている。3日前の明け方にウトの町からの救援要請が来た時から偵察部隊の派遣、ウトの町との緊急連絡体制の構築、防衛作戦の立案、現場指揮官の選出、出動する魔物と従騎士の選定・派遣などほとんど休みなくバタバタと働いていた。

そうなると当然、妻である私の食事はお預けとなってしまい・・・・・・。その間ずーっと我慢しているのだ。


「コソ)盗賊団、ゆっくりとした速度で平野に侵入してきたワン〜」


 すでに不満は満杯、欲求不満で高まった魔物のドロドロとした魔力が黒い蜜となって体から染み出し、密閉された鎧の中をプールのように満たしている。

 足元から徐々に溜まった蜜はすでに額にまで届くほどで、胃や肺にまで満ち溢れている。黒い蜜は魔力の固まりであり酸素の代わりも果たすので苦しくはないが、気晴らしに会話することもできず、鎧を開けて自らを慰めることもできない。


「コソ)ワウー・・・・・・、もうすぐすべての盗賊たちが平野に入りますワン」


(ん・・・)
 それでも、トトリは夫のことを考えていると・・・・・・無性にアソコが寂しくなってくる。だが鎧はぴっちりと閉ざされアソコを触ることはできない。


「スズさんの合図だワン!」
「閃光弾『緑』!ドローム達に合図を!」


 アソコが少しでも鎧に擦れればと思い、軽く腰を動かしてみるが・・・・・・擦れない。ただ黒い蜜がかき回されるだけである。


「泥沼化成功ワン!盗賊達全員泥にはまってるワン!」
「重装騎士団展開急げ!一人も逃すな!!」


 本来ならこの黒い蜜に触れるだけでも強い快感を得られるはずなのだが、長く漬かり過ぎて慣れてしまったのか大した刺激にはなっていない。


「ウー!敵最後尾泥沼から逃げ出しそうだワン!重装騎士間に合わないワン!」
「大丈夫よ〜♡。彼らのお尻には私の子たちをつけてるから〜♡」


(あぁん・・・・・・、もう!)

 それでも腰を振る。
 少しでもいい、鎧のどこかが敏感なお豆を弾いてくれなかと、ビンビンに勃起した乳首がどこかに擦れはしないかと。


「スズさん流石ワン!あ、敵最後尾が弓矢の雨を食らって止まった!これならいけるワン・・・って、スズさんいつの間にここに!!」

「よし、重装騎士たちも間に合ったな!では、お待たせした!魔界戦士の諸君!!思うがままに狩り取れー!!!」


 でもだめだ、どこにも擦れない、当たらない。

 鎧が、主人が爆発しないようにと気遣ってのことだとわかるけど・・・・・・辛い。
 どれだけ動いても腰を撫でるのは柔らかく程よい蜜の粘り気。陰毛がなびく感じは小鳥にツンツンと啄まれてるようでくすぐったいが・・・・・・気持ちよさは全然足りない。


「ウー!すごいワン!大混戦だワン!」

「ハッハッハ、ポーリ君、今は驚くだけでいいがいずれは君が指揮を執ることになる。この混戦の中でも敵と味方一人一人に目を配り、すべての味方が十分に活躍できるよう的確な指示をだす。一人前の軍師とはそういうものだ」

「ウー・・・。分かりましたワン。立派な軍師になれるよう頑張りますワン!!」

「あぁ、期待しているぞ。・・・お!先頭近くに盗賊たちが集まってるな。おそらく中心は魔術師だな、大規模魔法が来るぞ。ポーリ君、トトリ団長を呼んできてくれ」

「分かったワン♪」


 私を啄んでほしいのは小鳥じゃないの。夫の唇なの♡
 啄んだ後は、自分でも自信のある背中の曲線に舌を這わせて溜まった蜜を舐めとってもらいたいし♡
 蜜で真っ黒にコーティングされたお尻をしゃぶってもらうのもいいな♡
 リンゴ飴をしゃぶるみたいに夫の顔が余りの美味しさに解けてしまい、喜び勇んでしゃぶり続ける姿は可愛いだろうな♡


「トトリ団長!大規模魔法が来ます。防御の方お願いします!」

「ん・・・ぁ」

「ウー、団長!聞いてますか!すぐに動いてくださいワン!」

「ふ・・・ん」

「ダンチョー!!!」


 ・・・・・・ん?ちょっと待って、喜ばせたいの?あの夫を?
 妻である私をいつもいつもここまで我慢させるあの夫を?
 夫婦の愛より仕事を取る魔物の敵のようなあの夫を!?

 いいや!喜ぶのは私の方よね!?楽しむのは私の方だよね!あの仕事大好き冷血夫を押し倒して、参ったと言わせるまで犯し犯して、ミイラになるまで搾り取ってやるんだから!


「あらあら・・・・・・、ポーリちゃんお姉さんにちょっと変わって。」

「う〜、スズさん」

「耳元で)トトリ、今あなたの大事な時間を奪ってるやつらが門のすぐ向こうにいるの・・・・・・。そいつらを黙らせれば、すぐに帰れるし、指令も褒めてくれるわよ?」


          ❖ 


 ビクンッ

 目に見えるほど鎧が震えた。
 そして、漆黒の鎧はのっしのっしと歩き出す。

「敵上空に魔法陣の展開確認!」
「なりふり構わず全力で魔力込めてやがるな!トトリ!早く上がってこい間に合わんぞ!!!」

 櫓からはロイの激しい声が飛ぶが、鋼の足はまっすぐ歩き続ける。

「敵集団が突撃してきます!」
 マインドフレアの堅い声が響く。

「大規模魔法に合わせて突っ込むつもりか!スズ!こっち来てくれ、足を止められるか!?」
 呼ばれたぬれおなごは、夫に笑顔で手を振って応えるが動こうとはしない。その必要がないからだ。

 その時、上空の魔法陣がカッと光を放つ。光の中から巨大な岩が現れ、ウトの正門めがけて勢いよく発射された。


          ❖


 盗賊団の頭は困惑していた。
 流れてくるウトの情報からは露骨に誘導する意思が感じられたが、この国の騎士たちが隠れているのだと思っていた。
 だが・・・

「ひぃー、来るなー!」
「あ〜ら、ツレナイネー。猟犬の足から逃げられると思ってるのかなー♪」

「ずびばせんー!ダズけてくださいー!」
「ン……。ナクコトナイ。ダキシメテアゲル。」

「ンひぃー!!うあ・・・ぁ・・・ぁ・・・ぁ」
「あらあら♡入れただけでイッちゃうんなんて♡サキュバスの膣の味はそんなに美味しかった?うふふ♡」

「がははは!さっきの偉そうな口調はなんだ!俺の物をはめてやったら、とたんに大人しくなりやがったな」
「あぁ〜ん♡ ダメ、コレとっても気持ちいいの〜♡」
「はっはっは!そんなにいいか!じゃあもっともっと犯してやるよ!」
「ハァ〜ン♡キテー♡犯してー♡いつまでも犯して〜♡♡」
「ああ!犯してやるよ!いつまでもなー!」

 そこら中から聞こえる悲鳴と嬌声。
 町を襲撃しようとした盗賊頭たちを待ち構えていたのは、全く予想もしていなかった魔物達の軍勢だった。
 驚きと焦りを表す冷や汗は噴き出すそばから雨によってながされていく。

「近くにいるのは何人だ!」
「もう30人くらいです!ほかの奴らは逃げまどってるか、奴らの体にご執心ですよ、まったく!」
 盗賊頭の言葉に槍を構えた男が答える。彼は軍時代からの頼れる部下の1人である。

 盗賊頭は軍時代からの部下たちと腕を見込んで近くに集めていた20数名になんとか円陣を組ませることで魔物の攻勢をしのいでいた。

 ただ、他の多くの盗賊たちは所詮ゴロツキやはぐれ者である。軍でも優秀な士官であった盗賊頭が統率するおかげで、いくつもの襲撃を成功させることで幾らか自信をつけてはいた。そして盗賊頭のことを信頼しより忠実に指示に従ってきていたのだ。

 だからこそ、雨の降る夜間の襲撃なんてことも行ったのだが・・・・・・。
 今回は自分たちが待ち伏せされ、攻められる側に回ったことでその幾ばくかの自信は簡単に砕け散った。雨と魔物たちの上げる鬨の声によって盗賊頭の指示は届かず、混乱した盗賊たちは闇雲に魔物に攻めかかったり逃げ出そうと右往左往するばかりだった。

 そのため、正門前に接近した盗賊団の中でも先頭寄りにいた頭たちは敵と混乱する味方によって退路を完全に断たれていたのだ。

「おい!大規模魔法の準備は!」
「展開率80%いってます!もう少しです!」

 頭の問いかけに円陣の中から若いがしっかりした声が返ってくる。
 工作員として命を受けたときに魔術師団から引っ張ってきた若い魔術しは今までも十分な活躍を見せてきた。
 この苦戦をひっくり返せるとしたらこいつだけだ。何としても守らねばならないと円陣を組むすべての盗賊が理解している。

 幸いにも、逃げまどっている盗賊の人数が多く、魔物たちの注意を引き付けてくれている、そのため中心にいる自分たちのところには散発的にしか攻められていない。

「展開完了!でかいの行きますよー!」

 この混乱の中でも変わらぬ素早さに、思わずニヤリとしてしまう。
 
「よし、大岩が門を破るタイミングに合わせて突入する!『スキル:戦虎咆心』!・・・・・・行くぞ!!続けー!!!」

 盗賊頭はパーティー全員の身体能力・反応速度・集中力を高めるスキルを発動するとともに先陣を切って正門に向けて駆けだした。

 正門の前に守りはいない。罠かもしれないとは思った。 
 だが、この国は反魔物国家であり、目の前の町は反魔物国家の町である、自分たちと魔物の襲撃がたまたま一緒になっただけかもしれない。

 もしそうなら、門を破って魔物の相手を町の奴らに押し付けてしまえばいい。俺たちは町にはいったら全力で走って反対側の門から逃げる!

 ・・・・・・一縷の望みだが、盗賊頭はそれに賭けたのだった。


 走り始めるとすぐに頭上の魔法陣が一段と強い光を放った。大規模魔法によって数十トンもする巨岩が上空に召喚されたのだ。

 盗賊頭はそれを確認することなくまっすぐ門を目掛けて走る。門までは十数mほどしかない。
 走る頭のすぐ頭上を巨岩が通り過ぎた。、尖った先端を門に向けて、吸い込まれるように飛んでいく。

(いける!)

 盗賊頭は胸の中で叫んだ。


 だがそのとき・・・・・・ソレは起こった。


ドンッ!バーン!!!!!


 堅牢な門が突如開いた!・・・・・・内から外に向けて。
 盗賊頭は城壁に門がぶつかる轟音に驚きながらも、門の先を見る。そこにはかがり火を背にした大きな影が仁王立ちしていた。


 ゾワリ・・・・・・。頭の背が粟立った。


 だが、影を見れたのは一瞬のこと、すぐに巨岩が開かれた門の代わりと言わんばかりにその影に突っ込んだ。


 そして・・・・・・


ドッ!バアァァァン!!!


 頭がかつて経験したこともない程の轟音が戦場にとどろいた。
 その瞬間に何が起きたのかを、スキルにより集中力を高められた盗賊頭の目はスローモーションで見るかのようにとらえていた。

 巨岩が大きな影を叩き潰さんとした瞬間、十数トンの巨体を震わせてピタリと止まった。
 巨岩の周りの雨粒が急制動の衝撃で弾き飛ばされ白い輪を生んでいる。
 そこから巨岩は霞むようにブレ、頭たちの後方の空にすさまじい勢いで飛んでいったのだ。
 そして・・・・・・、動く時間もない盗賊頭たちは弾き飛ばされる巨岩の生み出す衝撃波の白い瀑布に呑み込まれて意識を失ったのだった。


 気づけば泥の中に仰向けに倒れていた。
 意識を失っていたのは数時間なのか、数秒なのか・・・・・・。

 体はハンマーで殴られたように痛みを訴えており上手く動けない。
 目を開けようとするが雨粒が入って上手く見えない。
 顔を腕で何度もぬぐって、なんとか視界を確保しようとする。

 その時、ぼやけた視界のなかを、こちらに向かってくる大きな影に気づいた。
 急いで立ち上がろうともがくが、全くうまくいかない。
 とりあえず顔だけを上げて目をぬぐい、なんとか視界を確保する。

 何とか見えるようになった視界の先には3mを超える漆黒の巨人が立っていた。 左手には巨大なタワーシールドを、右手にはハルバードを携えた鎧は頭の先から足の先まで全て漆黒。その装甲には隙間一つ見当たらない。

 ただ、すりガラスのようなものが入った両の目は赤々と光を放ち・・・・・・その視線がまっすぐ頭へと向けられていることが分かった。

(・・・・・・ダメだ。抵抗したらダメだ。)

 数々の戦場を経験し、兵士でもない一般人を殺せという非情な命令さえ淡々とこなして見せた盗賊頭だったが、その鎧の前では震えを止めることができなかった。
 幾ら自分の心を叱咤しようとしても無駄だった。そんな自分は、いつか母国の町で見た、雨に濡れてただ震えるだけだった子犬のことを思い起こさせる。

 子犬のイメージは今の自分自身にぴったりと当てはまった。それは自分の無力さを確信させるものだった。盗賊頭の心はこの瞬間ぽっきりと折れてしまった。

 鎧はそのことを察しでもしたのか、興味をなくしたように踵を返し、その巨体を縮めながら門へと戻っていくのだった。


          ❖


 トトリは一人帰り道を進んでいた。
 そろそろ日付が変わるころだろうか、雨はやみ木々の間から月が覗いてる。今日は綺麗な満月だ。

 盗賊たちの捕縛はあっという間に完了した。
 トトリが巨岩を殴り飛ばした時の轟音に驚いた盗賊たちが放心し、動きを止めたためである。

 盗賊たちが全員捕まると、スズさん達が気を利かせて先に帰っていいよと言ってくれた。
 ただ、旦那さんに沢山褒めてもらってねは余計だと思う。褒められてる姿を想像するとちょっと恥ずかしい。

 そんなわけで、一人で先に帰っているところなのである。
 若干一名、私が正門を壊したことを怒ってたけど、あれは仕方のないことだったのだ、正しく引っ張り開けてたら大規模魔法への対応が間に合わなかったんだし。

 え?私がオナニーしてなければ間に合ったんだって?
 ふふん。魔物娘にオナニーを禁じるなんてこと、そんなこと旦那様ぐらいにしかできないことね!
 なので私にはなんの問題もなし!

 あ〜、こんなことを考えられるってことは頭の方は大分落ち着いてるわね。
 やっぱりあの大岩ぶん殴ったのが良かったんだ、溜まったストレスを思いっきりぶつけることができた。

 ただ、それもいつまでもつか分からない。
 鎧にたまった黒い蜜は心地よい快感を与えてくるし、子宮の疼きも小休止してるだけでまたすぐに旦那様のおちんぽが欲しいと騒ぎだすだろう。

 全力で走っていけばあっという間につくのだが・・・・・・。
 私の魔力でパンパンに膨張した鎧を着て全力を出すと地震が起きてしまう。
 脱いでけばいいんだけど、脱いでくと泣かれるし・・・・・・。

 しかたないので、私の忍耐が続く間は歩いて帰っている。
 暇なので夫へのお土産代わりに、溜まった黒い蜜の中でも特に濃ゆいところを魔力で包んでグミのような形にする。それを左右の乳首の上にチョンと乗せておく。さて、夫はどんな顔をするのかな?

 そんな事をしてるうちに道は山裾の森を抜けて急激な昇りになり、道幅も狭くなる。道の左右は灌木や背の低い草とゴロゴロとした石や岩が満月に照らし出されている。

「んっ♡」

 進んでいると空気が変わったのを感じた。
 周りの風景には特に変化はないが、37駐屯地周辺の明緑魔界の領域に入ったのであろう。

 いつの間に山脈を超えてこちらまで領域を広げたのだろう?
 そんなことを思いつつ、灌木の間に何げなく混じっていた虜の果実を自然と捥いで兜の口の部分に擦り付ける。

(あ、しまった)

 思ったときにはもう遅い、虜の果実の果汁が兜に吸収されて黒い蜜にまで浸み込んできた。蜜を通して果汁の甘さが口いっぱいに広がると小休止していた子宮が騒ぎ出す。

「(あー、いつもの調子で、つい・・・・・・やっちゃった♡)」
 心の中で一人ごちると。なんとか帰ろうと進み始める。

「・・・・・・んっ、・・・・・・・・・んんっ♡」
 歩くたびに太ももに触れる蜜が愛撫のような刺激を与えてくる。
 虜の果実を食べる前は無視できた小さな刺激だが、食べた後だとどうしても意識してしまう。

「はやく・・・・・・帰らないと・・・・・・」
 今のまま問題を起こさず帰りたい。
 でも、口の中と兜の中の蜜が行き来する感触がたまらない。

 意識しないうちに自分の舌が唇をなめまわしてしまう。
 黒い蜜も美味しいが、これが旦那様の精液だったらと考えてしまうともうたまらない。

 旦那様の、逞しいおちんぽのお口に「ちゅ」っと口づけし。先走り汁をちゅっ、ちゅっと吸わせてもらいたい。

 それから私の口いっぱいにおちんぽをご招待して、根元から先っぽまでたっぷりとご奉仕させていただきたい。

 あ〜♡ 
 早く会いたい♡
 このまま駆けだしてしまお・・・いけないけない!

 ぶんぶんと頭を振って、溢れ出す妄想を振り払う。
 急ぐと周囲に迷惑がかかる。

 それに今回は我慢させられた恨みを晴らすんだから、私が奉仕する側じゃなくて犯してやる側なんだからね。

 私は気合を入れて、さっさと山を越えることにした。


・・・・・・でも、褒めては貰いたいな。


 帰り前に駆けられた言葉をふと思い出す。私の頭をなでる旦那様の手は大きく暖かく、安らぎを与えてくれる大好きな手だ。


 撫でてくれるかな・・・・・・。

 早く会いたいな・・・・・・。



 そんな私の心の声に応えるかのように。バサリと頭上から影が差した。
 私が頭上を振り仰ぐとそこには・・・・・・。

 月光を浴びて艶やかに輝く黒い毛並み。私の重鎧ですら悠々と跨がれる逞しい馬体。そして、月に向かってピンと伸ばされた漆黒の翼。
 一頭にして一軍に匹敵すると言われる最強の魔界馬、『魔界天馬/レスカティエ・ダークウィンド』が舞い降りた。


          ❖


 レスカティエ第37駐屯地は寝静まっていた。

 多くの兵や職員が遠征に出かけて不在で、残った職員たちも勝利の知らせを受けて笑いながらそれぞれの家や寮に戻っていった。(夫婦そろっている家はお楽しみ中だろうが、外までは聞こえて来ない)

 そんな中、一カ所だけ明りの灯る場所があった。
 駐屯地司令官の庁舎兼屋敷の2階にある司令官室である。

 オリオ・ノスカランは執務机にピシリと座り、1人で今回の遠征の事後処理を行っていた。
 若い見た目から30前後に見られることも多いが、遠征に出ているロイ指揮官よりも年上で、比較的新しい第37駐屯地の中にあっては上の年齢である。

 そんな司令官には妻が帰る前に終わらせておくべき仕事は色々ある。
 たとえば遠征に参加した兵たちの特別賞与の見積もり、特に戦功のあった者への受勲の準備。

 死者・重傷者はいないとの報告は受けているが、中・小の怪我をしたものはいるので、彼らへの治療と医療費の手配。

 破損や大きく汚れて使い物にならなくなった各種武器防具、衣類(捕虜の分も含む)の予想量と駐屯地にある各種予備の備蓄量の照合から、本国に発注するおおよその量の算出などなど。

 そして、一番大きな(面倒な)捕虜たちを本国・・・・・・レスカティエに護送する兵員の選出とレスカティエ側が受け入れ態勢を整えるための報告書の作成。

 前もって少しずつ準備はしていたとはいえ、ここまで仕上げて部下たちへの指示書を添えた時には体が強張ってしまっていた。つい大きく伸びをしてしまう。

 凝った体を軽くほぐすと、ゆっくり席を立ち、席の後ろの扉から出られるテラスへと足を向ける。


 望月が煌々と辺りを照らし、夜にも関わらず綿雲が綺麗に白く見えている。

 ウトの町への派兵は色々と神経を使った。
 表向きウトが所属する反魔物国家に対しては、レスカティエ第37駐屯とウトの繋がりを気づかれないように細心の注意を払った。

 そこに全力を注ぐために、正式には伝えていなかったウトの懐柔を本国に伝えることになってしまった。

 当分は黙っているつもりだったのだが、捕虜とした盗賊たちの受け入れ先としてどうしてもお願いする必要があったのだ、でなければ捕虜たちには穴に入ってもらうことになった。

 それは魔物娘の未来の夫を奪うことであり、親魔物派としては受け入れがたいことである。なので本国にウトのことをばらす位は仕方ない。

「ああ、いい風だ」
 明緑魔界の風はほの甘く、さわやかだ。

 私には暗黒魔界の風は少々甘ったるく感じてしまう。慣れるとさわやかで気持ちいいとのことなのだが・・・・・・。今はこちらの風の方が好みである。

 妻も普段から明緑魔界の風の方がいいとよく言っている。故郷である魔力に満ちた森の風を思い起させるのだそうだ。

 ただ、今日は・・・・・・
「大分、我慢させてしまったからな〜」
 さわやかな風より甘ったるい風の方がお気に召すかもしれないな。

 瞼を閉じると普段のさわやかな振る舞いを微塵も感じさせない、甘ったるく甘えてくる妻の姿が思いうかんだ。
 そんなたわいもないことを考えて、思わず苦笑していると・・・・・・。

パサリ

 微かな振動が頭の上に何かが乗ったことを伝えてきた。思わず手に取って見てみると、黒い鳥の羽である。もしやと思い、目に魔力を集めて頭上を見上げると・・・・・・。

 望月の中に一つの黒いシミがあった。

 そのシミは遠すぎて動いているようには見えないが、こちらを目指していることは分かる。誰が飛んでいるのかも。

 妻に懐いている魔界天馬、レスカティエ・ダークウインドだ。
 しかし、私のことはお気に召さないらしく。いまだに触らせてくれたことはない。

 ただ、私のことは気に入らなくても、私たち夫婦の魔力はお気に入りの様で、2人で愛し合っていると近くに寄ってくるし、時々手を貸してくれることもある。
 今のように。


 ダークウインドはほぼ私の頭上近くまで来た、ただ高さは数千mの遥か天空である。 ということは今落ちてきた羽は先ぶれだろう、私に妻の帰還を伝えるための先ぶれであり・・・・・・。

 私が先ぶれの意味に気づいた丁度そのとき、ダークウインドから何かが落ちた。  いや、飛び降りたのか、遥か数千mの高さから私に向かって。

「まったくあの子は・・・・・・。私が気付かず部屋に戻ったらどうするつもりだったんだ」

 まあ、そのための先ぶれでもあるのだが、恐らく妻の指示ではなくダークウインドが気を利かせてのものだろう。

 そう思っているうちに漆黒の鎧はどんどん高度を下げてくる、もう千mを切った。


「・・・・・・ああ、綺麗だな」

 私を目指してまっしぐらに落ちてくる鎧を月の光がキラキラと照らしていた。


 見惚れている内に高度は500mを切ってきた。肉眼でもその姿がはっきりと見える。私は足元から魔力を根のごとく伸ばす、屋敷全体とその周辺の地面に浸透した魔力の根は衝撃を分散させて、私と妻の身を守ってくれるだろう。

 準備を整えると、妻を迎えようと両手を伸ばす。もう互いの様子がしっかり見える。

 そして、兜の赤いガラス越しに私と妻の目が合った。

(さあ、おいで)
 言葉はいらない、目で素直な自分の意志を送る。

 それを待っていたかのように鎧が変化した。
 兜の頂上から股間まで一直線に縦線が走り、そこから両の手足に向けて合わせて4つの線が走る。線にそって花が咲くかの様に鎧が開いた。

『完全開放』
 鎧がその鋼の内に収めていた者を解き放ったのである。


 まず出てくるのは漆黒の蜜。
 鎧の内側でパンパンに張り詰めていた蜜が盛大にはじけ飛び、漆黒の雨粒となってこちらに向かって降り注ぐ。
 だが、待ちきれないと言わんばかりに、すぐに蜜の雨を突き破って愛しき妻の裸体が飛び出してきた。

 月光に照らされたその姿は華奢な女性、若草色の瞳と髪、髪から覗く長く尖った耳はエルフの特徴をよく現している。
 種族の平均から見ると少し小柄な部類に入る身長。すらりとした手足は長いが、結婚してからは程よく肉付きもよくなっている。

 下からは見えないが、小ぶりで可愛らしいお尻も出産を重ねるごとに少しずつ成長して私を楽しませてくれている。
 そして・・・・・・、エルフとは思えぬほどにたわわに実った双丘。丘の頂上はツンっと上を向けて蜜を乗せ、しゃぶられるのを今か今かと待っているかのようだ。

 現れた妻の顔は喜びと期待で赤く上気し、その淫らさを見せつけてくる。


「オリオ!」

「トトリ」



 妻が満面の笑みで私の名を呼び。

 私も穏やかな幸福感を乗せて妻の名を呼んだ。



ドン!!!


 落ちてきた妻を受け止め、その勢いを地面や屋敷に逃がした。かなりの衝撃だったようで屋敷が少し揺れてしまった。
 だが今はいい、すぐには解放されないのだし。 愛しき妻を抱きしめながらその後ろを見る。

 そこには主を解き放った漆黒の鎧・・・・・・だったもの。

『魔装牢』
 鎧は変形し、巨大化し、ある種の遊牧民が使うテントのごとき姿に変わるとテラスごと私と妻を呑み込んだのだった。


ドオォーーーン!!!!


 夜の駐屯地に轟音が響き渡った。


          ❖


 やっと会えたーーーーーー!

 愛する夫の首に抱き着きその頬にズリズリと頬ずりする。
 あらぁ〜、私のいない間に少し髭が出てませんか?
 私がいないと身支度もできないとは。

 ふふふ♡
 やはり私が面倒を見てあげないといけませんね♡

 頬ずりしながら私の左足を夫の右足に絡めて体を安定させると、左手で夫のシャツのボタンをはずしていく。
 慣れてるので流れるようにお臍までのボタンをはずすと右側の胸をはだけさせる。

 おやおや〜
 シャツの下に肌着を着てないじゃないですか。
 これでは襲ってくれと言ってるようなものですよ♡

 それに・・・・・・ああ♡
 今日お風呂入ってないんでしょう、汗と精がまじりあって立ち上ってくるぅ〜♡

 さて、次は私の自慢のおっぱいを夫の胸にこすりつける。
 夫の胸は引き締まり、張りのある弾力で私のおっぱいを気持ちよく押し返してくれる。
 さらに、私が腕を回すのに丁度よい体格なので、思いっきり抱き着くと私の自慢のおっぱいがいい感じに潰れ、少し身じろぎするだけで小気味よくこね回せる。

 私の乳首と夫の乳首が擦れ合うのも気持ちいい〜♡

「・・・・・・ん?」

 あれ?夫の声にはが何か疑問を持ったようなニュアンスが・・・・・・。あ!いっけない、忘れてた!

 私の乳首に蜜のグミを乗せてたんだった!
 保護された蜜は触感もグミみたいだから夫に違和感を与えたんだわ。

 そう気が付いた私は両手で夫の肩をつかむとグッと体を引き上げた。丁度、夫の口元に私の乳首が差し出す位置にくる。夫も気を利かせて私のお尻の下に腕を回してが座れるようにしてくれる。

「さあ♡ 召し上がれ♡」
 私の体から染み出した黒い蜜。その中でも、特に濃縮しておいた2滴
 夫も気づいたようで大きく口を開けてまず右胸から呑み込もうとする。

「もう!せっかくだから、両方一遍に吸って♡」
 なにがせっかくなのかは自分でも分からないが。
 思わずそう言うと、自分の支えを夫の腕に任せて、両手で乳房を寄せて乳首と乳首をくっつけた。

「お待たせ♡召し上がれ♡」
「ふふ、頂きます」

パクッ!

「ふあぁぁぁぁん♡♡」

 気持ちよすぎて変な声出ちゃった♡
 そうか、せっかくってこういうことか。
 どっちのおっぱいも我慢の限界だったんだ、せっかくの夫のお口をお預けなんて嫌だもんね。

 夫の舌が二つの乳首をペロペロと舐めてくる。
 夫の精が唾液に乗って乳首のしわに刷り込まれて気持ちいい♡
 でも蜜のグミは舌で破るのはちょっと難しいかな?

「ペロペロもいいけど、せっかく準備した蜜だから味わってぇー」

 ついつい切ない声がでちゃった。犯すって言ってたのはどの口よ。あ、私から蜜の保護を解けばいいんだわ。

 そう思った時、ちょうど夫と目が合った、私の声に反応したのだろう。
 夫はニヤリと笑うと、両の犬歯で二つの蜜を一遍に割ってしまった。

 しかもそのまま、私の二つの乳首も犬歯で軽くかまれてしま ひぃん♡!

 鋭い刺激が乳首から襲ってくる。
 夫はさらに蜜を舐めながら何度も甘噛みを繰り返してくるので、私の頭がくらくらしてくる。

 噛まれる度にひぃん!ひぃん!と情けない声が出てしまい、何の抵抗もできないでいる、ちょっと悔しい。

 そうこうしていると、蜜を舐め終わったのか夫の舌が引っ込んだ。
 だが、乳首は噛まれたままで軽く引っ張られている。抵抗もできないでいると、夫の舌が戻ってきた。

 舌の上にはたっぷりと唾液を乗せていたのだろう、私の乳首を唾液のプールに浸けて転がしてくる。

「あっ!あっ!これすごい!精が濃ゆい!」

 最初に舐められた時の唾液とはまるで別物のように精を大量に含んだ唾液のプールに私の乳首が痛いくらい勃起しちゃってるのを感じる。

 多分、夫の体が私の用意した蜜を飲んだことで精を大量に出し始めたのだろう。

 夫の精は体中の汗からもより一層濃く立ち上り、私の口や鼻、手足の触れ合ったところからどんどん吸収されていく。
 そうなると・・・・・・。

「切ない・・・・・・♡。子宮が切ないよってキュンキュンしてる♡。もう我慢できない!」

 私はそう言うと無理やり夫の口からオッパイを引き抜いた。おっぱいからはまだまだ吸われたいよという悲鳴を感じた気がするが今は無視だ、もっと大事なことがある!

 私は足の指で夫のベルトを外す、さらにズボンと下着を両足の親指で挟むと椅子にしてた夫の腕からスルリと滑り降りた。夫のズボンと下着も一緒にに下げられ、パンパンに勃起した夫のおちんぽが露わになる。

 露わになったおちんぽに自分のおマンコを下からすくい上げるようにこすりつける。
 夫のお腹と私のおまんこに挟まれたおちんぽがより一層大きく熱くなってくる。

・・・・・・カワイイ♡

 今すぐ満足させて・・・・・・、おっと、搾り取ってあげるからね♡
 こすりつけているおマンコをおちんぽのてっぺんに押し付けて、ゆっくり咥えこんでいく。

「はっ・・・、はぁっ・・・、はぁあん♡!」

 うー、ゆっくり入れただけなのに声出ちゃう♡
 さあ、このまま押し倒して思いっきり搾り取ってやるわよ♡!

 ・・・・・・私が夫を押し倒そうとしたその時、私の頭が暖かな感触に包まれた。
 それはいつもの優しい夫の手。

 もう!私からおマンコに入れてあげたんだからそっちに集中してよという気持ちだけど、なにかあるのかなと夫に顔を向けると。

 夫の落ち着いた大きな瞳と目が合った。
 近い(ポッ。


「今回は随分我慢させてしまったね。すまない。おかげで多くの人たちが救われた。多くの魔物娘たちも大好きな夫に出会えることになった。君が我慢して私に時間をくれたおかげだ。遠征でも頑張ってくれたね、よくやってくれた。ありがとう。」

「・・・・・・(ポポポッ」

 うー、このタイミングでなんでこんな真直ぐな目で見てくるのよ?(モジ
 飢え飢えの魔物娘のおマンコにあなたのおちんちん食べられちゃってるんだよ?(モジモジ
 もうちょっと快楽に抗いながら必死な感じがあってもいいじゃない?(モジモジ、クネクネ

 あー、夫と目が合わせられない。私あなたの事めちゃくちゃに犯すことばかり考えていたんだよ。周りの事なんて何も考えちゃいないし、気にしてもいないんだよ?
 私は俯いて夫の乳首見ながら、なんて返そうか考えるけど恥ずかしくて何も言えない。私が何も言えないでいると。

 耳元から・・・・・・。

「今回頑張ってくれたトトリ君にはご褒美を上げないといけないよね。(ニヤ」

「え?」

 それは今までの領主としての声ではなく、どこか嗜虐的で情欲を感じさせる声で・・・・・・。私がその言葉に反応して顔を上げたそのとき。


カプ♡


 私の左の首元を夫が甘噛みしてきた。


「あ!ああぁぁぁん♡♡♡♡♡!!!」

 それは、一般的にはなんて事のない愛撫。
 でも私たち夫婦にとっては重要で重大な意味のある愛撫♡

 夫が、本気で子作りセックスするという合図♡


「あ!ああん!いいの?ホントにいいの?新しい赤ちゃん作ってもいいの?」
 最後の子を産んでからもう十数年・・・・・・二十年近くがたってる。
 その間、駐屯地の仕事が忙しいからと、なかなか子作りはしてくれなかったのだ。
 普段は弁えてたつもりだけど、長命で体の衰えないエルフにとっては寂しいものがあったのだ。

「いいの?いいんだよね!?あぁ・・・・・・締まる!期待しすぎておマンコ締まっちゃうよ〜♡♡」


 魔物娘は精を食料として吸収してしまう性質がある。そのため妊娠率は低い傾向にあるのだが・・・・・・。

 夫のオリオは自分の出した精子の周りを魔力で包み、包んでいる魔力を先に吸収させている間に精を奥の奥まで届かせるという荒技?を持っている。
 夫に言わせれば魔力操作に長ければ誰でも使えるというのだが。我が駐屯地では使えたという話は聞かない。

 まあつまり、夫が本気で妊娠させるつもりなら比較的容易に妊娠させられるということだ。 今まで生んだ5人も魔物化する前後を問わず夫が本気の時にできた子供だった。
 そして、夫が本気をだしたことを知らせる合図が先ほどの首元への甘噛みなのである。

「ああ、期待しててくれ!。すぐにお前のお腹を膨らませてあげるからな!」

 パン!パン!

「あん♡!あぁん♡!」

 そんなうれしい言葉と力強いおちんぽをもらっちゃったら、もうたまらないよ〜♡

 私から犯すなんて思ってたけど、もうぶっとんじゃった♡ 気持ちいい〜♡♡♡ ヨダレまき散らしちゃってる〜♡♡

「おし、慣らしに一発イッとくぞ!」
「もう!? もう来てくれるの♡? いっぱい頂だいアナタ〜♡♡♡」


ドビュッ! ビュビュー!


「あ! あ♡ あはぁぁぁあん♡♡♡♡♡」


 すごい濃ゆい♡ 精を保護している魔力も夫の精ではあるので、こちらもとっても美味しいぃ♡ 
 慣らしと言ってたからか夫の魔力の保護は弱いけど、精液日照りでカラカラの魔物娘の膣と子宮でもすぐには吸収しきれない。
 これは本気で保護されたら・・・・・・。

 子宮でも吸収しきれず卵管までドロドロにされちゃうんじゃないかな???♡


 久しぶりの精液にトロケていると、夫がゆっくりと私を横に寝かせてくれた。
 魔装牢の内面は堅くはないのだが、私からどんどん出る黒い蜜が足首くらいまで溜まっていた。

 夫はその蜜を魔力で集めるとゲル化して、ウォーターベットを作ってしまったのだ。

「ぽよぽよだ〜♡」
「即席だが意外とうまくいくものだな。ベットの寝心地もいいが、ここの心地はどうかな?」

 夫の指が横たわる私のおマンコを探るように触れてくる。
 そんな軽い刺激に私は我慢できずに、グッと股を開くとぷにっと熱く膨らんだおマンコを指でクパァとおし開いた。

「もう!焦らさないで! 最高の入れ心地にしてあるわよ♡ 来て♡」

 私の淫らな誘いに、夫は獣性丸出しの嫌らしい笑みを見せて、熱くたぎったおちんぽで答えてくれた。 


「あ!あぁぁぁん♡♡!」


          ❖


 牢の中、常夜の時間はまだ始まったばかり、二人が満足して出てくるのは何日も先の話になるだろう。

 司令官庁舎のテラスに鎮座する漆黒の牢は、淫らな淫行も溢れる魔力も全てその内に閉じ込め、何事もないかのように静かに月光を浴びている。

 そこへ影が差した。

タンッ

 牢と同じ漆黒色の翼を月光に照らされた天馬がゆっくりと牢の上に着地する。
 すると、牢の屋根の一部が微かに開き、中に溜まった上質な魔力が漏れ出してきた。
 まるで鎧そのものが、主と自分を運んでくれた魔界天馬にお礼をしているかのようだった。

 魔界天馬は漏れ出た魔力を一息吸うと、ブルンと満足そうに鼻を鳴らし、ゆっくりとその巨体を寝そべらせた。

 そして鼻先を屋根の隙間に軽く差し込むと満足そうに瞳を閉じるのだった。


終わり ------------------------------------------------------------------------------