■タイトル:パープルHアイズ ■作者:るーじ -------------------------------------本文-------------------------------------  むかしむかし、あるところに若い娘がおりました。
 娘は気立てもよく物静かなので、村の若者達からとても人気がありました。
 ところが、この娘には一つだけ苦手な事がありました。
 誰かに話しかけることが苦手なのです。
 娘は頭に頭巾を被りいつも俯いていて、若い男の人が近付くと早足に立ち去ってしまうのです。
 そう、娘は少々、恥ずかしがり屋なのです。


「うぅ。今日もお買い物なのですか」
「そうよ。頼めるわよね?」
 二人の若い娘が話をしている。
 一人はすらりと背が高く、伸ばした背筋と顔つきは少し生真面目でとっつきにくそうな印象を与えている。
 もう一人は顔立ちに愛嬌があり大人しそうな娘で、リスや兎といった小動物的な印象を与える。
 二人は姉妹。
 美人で性格がきついと評判な姉のリアと可愛らしくて大人しい妹のミリィ。
 二人は背丈も性格もまるで違っている。
 似ているのは母親譲りの燃える様に赤い髪の色くらいだと、村の若者達は口を揃える。
 そしてその度にリアに殴られる。
 リアは自分が正しいと思っていることは迷いなく実行する。
 ミリィはいつも姉の様になりたいと思いつつも、自分にはできっこないと半分諦めている。
「あんた、昨日は全然外に出ていないでしょう。もっと外に出なさい。いいわね」
 見下ろす様にしてミリィの額に人差し指を当てるリア。
 姉の厳しい視線に負けて、ミリィはすごすごと出かける準備をする。
「まったく。あの子ったら」
 顔が見えないように目深にフードを被り、俯きながら外へと出て行くミリィ。
 その背中を見送り、リアは深くため息をついた。

「お、今日はあの子が買い物かぁ!」
「おっし、今日はいいことあるぞぉ!」
 ミリィは興奮した若者達の声に耳を塞ぎたい思いでいっぱいになる。
 俯いたまま小走りでお店の前まで向かい、パンを買ってすぐさま帰る。
 その間もずっと村の若者達の注目を集めてしまっていた。
 なおのこと俯きながら走っていたミリィは、曲がり角から現れた誰かにぶつかってしまった。
「きゃ、ごめんなさ……?」
 ぶつかってしりもちをついてしまったミリィは、ぶつかった時の感触が不思議で謝罪の言葉が途切れてしまう。
「いいっていいって。あたしも不注意だったしね」
 ミリィは、差し出された手を見て戸惑いが驚きに変わる。
 透明な紫色の手。
「えっと、魔物の人、ですか」
「あれ、そんなに珍しい? この村って魔物が多いみたいだけど」
 彼女が言う通り、村にはたくさんの魔物が人と同じ様に過ごしている。
 ゴブリンが露天を開いていれば、並ぶ品を眺めるのはワーウルフと人間の夫婦であったり。
 ハーピーとブラックハーピーが郵便物や新聞の配達を競争していたり。
「はい。でも、貴女みたいなヒトは見たことがないです。見た所、スライムのようですけれど」
 恥ずかしがり屋は男性に対して見せる事が多いミリィ。
 しかしミリィは顔を赤らめて彼女から視線を反らしている。
 スライム系に多い事だが、紫の彼女は服を全く着ていないのだ。
 柔らかそうな体の起伏がぬるりとしたスライム独特の光沢と相まって、とてもえっちだ。
「スライムだよ、それであってる。あたしは、え〜っと、なんだったかにゃ」
 顎に手をあて思案しながら髪の部分で腕組みする。
 他の髪の房(の様な部分)は上手い具合に下半身を隠している。
「ブラック? 暗い……ああ、そうそう。ダークだ、ダークスライムだにゃ」
「ダークスライム、ですか」
「そうなんだ〜。魔界生まれのスライムはみんなあたしみたいなんだよ」
 魔界。
 あまりにも魔力が集まりすぎた土地は木も土も、吹く風さえ魔力がやどり魔物を生み出す。
「だからすっごくえっちなんだよ」
「〜〜〜!」
 辞書的な内容を思い浮かべていると、ずぃとダークスライムが顔を近づける。
 にぃと歪んだ笑みは嗜虐的で、そして同性から見てもぞくりとするほどえっちな表情。
 本能的な危険を感じて下がろうとするも、腰に柔らかい何かが巻きついてそれを許さない。
「や、な、なにを」
「んふふ〜、なにをって言われてもねぇ」
 髪の部分を伸ばしてミリィの腰を抱き寄せるダークスライム。
「ま、まちなかですよ、ここは」
「わかってるって。だから、ね?」
 うんうんと頷いたダークスライムはミリィの手を繋いで歩き出す。
「〜〜っ」
 にゅるりと気持ちのよい弾力に背が震える。
 逃げようにも逃げられない、そんな諦めからミリィは大人しくダークスライムに着いて行く。



 ダークスライム。
 魔界の濃密な魔力により高い能力と知性を持ったスライムの仲間なのです。
 スライム系は水に魔力が篭った様な魔物なので、取り込んだ魔力に性格が左右されるのですが。
 ダークスライムの場合は並の魔物よりも高い魔力を持っているため魔力に比例して他のスライム種に比べ淫乱で積極的です。
 そして何より、ダークスライムには他の魔物にない性質があるです。
 
 物語は転げる坂道の様に、少女の運命を加速的に変化させていきます。



「やぁあああ!」
 村の離れにある倉庫。
 飼い葉置き場なのだろう、干草が屋根に届くまで積んである。
 太陽と草の匂いが充満する中に、女の匂いが溢れている。
「んっふっふ〜。だんだんといい声になってきたにゃあ」
 にんまりと笑うダークスライムの前には、腕を触手髪で押さえつけられたミリィが悶えている。
 衣類は全て地面に脱ぎ捨てられてて、日焼けしてない白い肌をダークスライムに晒している。
 乱れる呼吸、じわりと浮かぶ汗と火照った体。
 くしゃりと歪んだ表情は戸惑いと羞恥と恐怖、そして期待がない交ぜになっている。
「どうして、ですか」
「え〜、なにが?」
「わたしは、男のヒトじゃ、ないですよ」
「知ってるよ〜。でも、いいじゃん。気持ちいいんだし〜」
「そんな、んむぅ!」
 数本の触手がミリィの胸に絡みつき、小ぶりな胸を寄せてパイズリをする。
 にゅるりと細い触手が口に入り込むと甘い味のする液体が口いっぱいに広がる。
「んぅ、ん〜〜〜♪」
 にちゅ、にちゅと粘液の音。
 ダークスライムの手がミリィのお腹をなで、太ももを撫でる。
 魅了の魔力を込めた体液は媚薬の効果があり、既にミリィは体のどこを触られても快楽を感じてしまう。
「んん〜〜〜〜っ♪」
 ビクビクと体を震わせ、ミリィは何度目かの絶頂を味わう。
 思考はピンク色の靄に包まれ、なぜ自分がこんな目に合っているのかもわからなくなっていた。
「んふふ〜。そろそろいいかにゃあ」
 口から触手を引き抜くと、ダークスライムは顔を近づけ、唇を重ねる。
「ん、んちゅ、ちゅ、ちゅ」
 貪るような、甘えるようなキス。
 舌を絡めない濃厚なキスにミリィの抵抗は徐々に弱まっていく。
 互いにキスに夢中になっている、その間にダークスライムの姿が変化していく。
 触手の形が崩れ、足の形が緩み、液体の様にミリィの体に広がっていく。
 広がったダークスライムの一部は足を包み、腰を包み、手を包み。
 元の体積よりも量を増やしながらダークスライムの体はミリィを包み込み、最後には頭でミリィを取り込んでしまう。
「〜〜〜〜〜っっ♪」
 ぐにゅぐにゅと蠢くダークスライムの体。
 与えられる快楽は今まで以上で、ミリィは目を見開く。
 体を震わせながらも快楽に顔を歪める。
 落ちることのない絶頂を何度も何度も味合わされる。
 その間も、ダークスライムとのキスは続く。
 次の変化は突然現れた。
 ミリィが一際大きく震えた後、その姿が陽炎の様にぼやけ、消えた。
 代わりにダークスライムの中に浮かんでいたのは奇妙な絵柄のついた球体。
 ミリィの姿は、どこにもなかった。

「ふぅ。これでよし、と」
 体を元に戻したダークスライムは満足気に笑みを浮かべ、丁寧に飼い葉の上にその球体をおく。
 よく見ると、ダークスライムの体にはもう一つ別の球体が浮かんでいた。
 この球体はダークスライムの核に当たる部分で、魔力の源でもある。
「あ、出てきた出てきた」
 飼い葉の上に置かれた核から紫色の液体がにじみ出てきた。
 その量は核の大きさからは想像も出来ないほど多く、粘度も高い。
 そして水溜りの様に広がった粘液は核を内に収めたまま形を変えていく。
「ふふ、おはよう。気分がどうかにゃ〜?」
 ダークスライムが笑いかけた時、彼女はうっすらと目を開ける。
「あれ、貴女は……っ!」
 慌てて自分の体を抱きかかえ、
「え、な、え、ええええ!?」
 驚きのあまり悲鳴を上げた。
「どうして、私、あれ、なんで!?」
「おはよう、そしておめでとう。これで貴女もダークスライムだにゃ」
 必死に自分の体を隠そうと手を触手を使っているのは、ミリィとよく似たダークスライム、いや、ダークスライムとなったミリィだった。


 
 
 転がり落ちた先は魔物穴。
 人の人生はここで終了して、若い娘は新たな人生を歩みます。
 幸か不幸か、娘には姉が居ます。
 転がった先の運命はどのようなものになるのか。
 それを知る為には、もう少し様子を見ることにしましょう。


「ただいま」
「お帰り……アンタ」
 リアは家に入ってきたミリィを見て目を丸くする。
「服はどうしたのよ」
「あ、そういえば。忘れてた」
「馬鹿。忘れてどうするのよ」
 はぁとため息をついてパチンとミリィの頭を叩くリア。
 あまりにも何時も通りの態度なので、逆にミリィが驚いてしまう。
「姉さん、どうして驚いていないの? 私、ダークスライムになったんだよ」
「そりゃ驚くよ。けどそれよりも、あんたが素っ裸で外を出歩いていたって方が驚いたよ」
 改めてリアはミリィを頭から足先(?)まで見る。
 髪型や顔立ち、体つきに至るまでミリィと全く同じで、足元だけ水溜りの様な粘液が蠢いている。
「ダークスライムってスライムの一種なのよね」
「うん。普通のスライムと色々と違うみたいなんだ」
「それは見ればわかるけど、ねぇ」
 人間の時よりも遥かに明るくなった妹を見ながらリアは呟く。
「服位着たらどうなの」
「え〜、このままじゃ駄目?」
 もう一度ため息をつく。
「あんたの好きにしなさい」
「はーい」
 


 それからのミリィは以前よりも明るく快活な娘となりました。
 村の中ではフードのついたローブを羽織り、朝も昼も晩も関係なくいつもの倉庫へ若者を連れ込み楽しむ毎日。
 姉のリアはずっと心配していた妹の問題が解決したのに、今度は妹から貞操を守る日々が始まってしまった。


「姉さんも、ほら、ダークスライムになろうよ」
「馬鹿いってんじゃないよ。ほら、今日は隣町に行くんだからさっさと人に化ける」
「うん、ああ、もう。わかったから、そんなに急かさなくてもいいじゃない」

 二人の姉妹はとても仲良く過ごしましたとさ。

























「はぁ。サキュバスになった私がダークスライムになんか、なれる訳ないじゃない。本当に、昔から間が悪いんだから、ミリィったら」

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