■タイトル:『願いごとひとつ・・・』 ■作者:じゃっくりー -------------------------------------本文-------------------------------------
「・・・はぁ・・・いつになったら・・・伝えられるのかな・・・」
溜息を吐いて暗い夜道を歩く中学生位の少年。
短パン、無地のTシャツとオーソドックスながら違和感のない顔立ちである・・・

「っと・・・噂をすれば・・・ついてしまったよ・・・・はぁ・・・」
・・・何度目かわからない溜息をして彼は目の前の豪邸の呼び鈴を鳴らす。

・・・壁掛けの表札には【古里瀬】(こりせ)とかかれている・・・

ピンポーーン・・・・

「・・・ブツッ・・・・・はぁ〜い? 何方ですか?」
「すいません、永谷(えんや)です。白光(シカリ)様から準備できたから来てくださいと伝えてくれと言われて着ました。」
「あらぁ、ちょっと待っててね!!」
・・・室内からドタバタと騒がしい複数の足音とともに「はやくぅ!」「まって姉さんっ!」と聞こえる・・・
引っ越してきた初日から騒がしい家族だなぁ・・・

と、思案していたら・・・


ガチャッ


「ごめんなさいねぇ・・・待たせてしまって・・・」
・・・えっと・・・たしか長女さんだったっけかな?

「いえ、さほど待っていませんよ。」
「ほんとにごめんなさいね・・・20人も姉妹がいると準備も大変で・・・」
・・・長女さんは本当に申し訳なさそうに誤ってくる・・・
見ているコッチが申し訳ないくらい・・・

そして長女を皮切りに・・・

出てくる出てくる・・・・古里瀬家総勢22人・・・・

しかも叔父さん以外全員妖狐・・・・

いつ見ても多いなぁ・・・・(汗
しかも梨花おばさん・・・またお腹大きくなっている・・・まだ増えるんですか!?

と、数の多さに吃驚していると・・・

「やっほー! 一緒に行こうっ! 【裕樹】(ひろき)っ!」
ギュムっ、と前から思い切り抱きつかれる。
・・・髪の上の耳が顔に当たってめちゃくちゃクスグったい・・・
あと尻尾でお腹を弄らないで・・・・マジで・・・

「ぁぅ・・・・お、おぅ・・・・行こうか、【陽】(よう)。」
・・・古里瀬一家の中で裕樹と同い年の妖狐が嬉しそうにじゃれ付いている。

・・・その後ろで・・・

「あら、まるで恋人同士ね♪」
「よぅし、オレ達も負けてられないぞ♪」
「もぅ・・・子供達の前なんだから♪」

・・・夫のダンと妻の梨花が惚気ていたが・・・全員聞こえない振りをしたとさ・・・

そして裕樹たちは近場の神社まで歩き出した・・・

途中・・・

「なぁ陽?」
「何? 裕樹?」
隣に並んで歩いていてる陽に弘樹は前々から思っていた疑問を聞いてみることにした。
陽の耳に向けて・・・小声で。



「あのさ・・・妖狐って最初1〜2本の尻尾だろ? ・・・普通は・・・」
「うん・・・そうだよ?」
「・・・凄い失礼なこというけど・・・陽って処女なのに4本とか・・・ましてや妹の中に5本がいるのって・・・おかしくない?」
・・・そう。この家族、ほとんど妖狐の家族なので全員尻尾があるのが当たり前だが・・・明らかに本数がおかしいのである。
一番若いであろう姉妹の尻尾ですら4本、多いものだと・・・なんと7本もある・・・
今上げた姉妹は勿論、上から5番目以降の姉妹達はまだ彼氏すらいないのに・・・

「あぁ・・・それは・・・ね・・・・うぅ〜ん・・・原因は・・・アレ。」
といって陽が指差すは自身の親達。

「・・・あの二人が妊娠中でも構わずヤルから・・・その精がまだ赤ちゃんであるあたしらに来ちゃって・・・それの結果が・・・ご覧の通り、ってわけよ。」
といって親を指した指をぐる〜〜〜りと姉妹達にまわす。

(・・・・妊娠中は自重しましょうよ・・・叔父さん叔母さん・・・)

「あらあら♪」
「はははっ、そんなに褒めるなよ!」
・・・ちがうと思います。

・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

神社の石段を登るとそこは【口逢神社】(くちあわせじんじゃ)だった。
そしてその中規模の神社の社務所前に真っ白の毛並みの一派が・・・

「白光様、古里瀬一家連れてきましたよ。」
カツカツと神社の石段を登ってきたペースそのままでその一団に近づく裕樹。
そしてその一団からヒョッコリと顔を上げてこちらに向くは・・・

真っ白い毛並みの9尾の狐だった。

「ご苦労様です。では私たちは宴会していますので裕樹君と古里瀬家の方は本殿脇の大笹竹に願いを書いた短冊をお飾りください。その後こちらにて宴をしましょう。」
と丁寧に語るは白光その人(?)。・・・となりには遺影が飾られていた。

「わかりました。」
裕樹は古里瀬御一行を連れて本殿へと行くのだった・・・

・・・うち何名かはすでに宴会に参加しているように見えたが・・・気のせいだろう・・・

歩くこと30歩・・・

目の前には見上げるくらい高い竹が本殿の柱に括り付けられていた。・・・罰当たりな・・・
すでにもう両手じゃ数え切れない量の短冊が飾られていた。

「うわぁ、いつみても・・・すごいねぇ〜陽おねぇちゃんっ!」
「そうだね!・・・ようし、早速願い事書こっか?」
『おぉぉぉぉっ!!!』

・・・各自笹の前にある積まれた短冊と筆ペンをもって各々の願い事を書いていく・・・

・・・そしてドンドン笹に括り付けられていく・・・

・・・気付けば残るは裕樹と陽だけになっていた・・・

「・・・できた。」
「・・・で〜きたっ、と。」
・・・二人同時に出来たみたいだ。

「んじゃ・・・オレここに飾るよ。」
「んじゃアタシはすぐとなr・・・」
「だ、だめだっ!・・・と、となりは勘弁してくれ・・・」
・・・赤くなって俯く裕樹にキョトンとした顔だった陽はクスクスと忍び笑いをした後に・・・

「はいはい・・・んじゃ・・・アタシはここね!」
と、陽自身の背で届くギリギリの高さのところに短冊をくくる。


そして皆は宴会の場へと移動しているわけだが・・・


「・・・ねぇ裕樹? なんてかいたの?」
「ば、ばかっ・・・教えたら願い事の意味なくなるだろう・・・」
「えぇぇぇ〜教えてよぉ!! ケチぃぃ!!」
再び赤くなる弘樹の周りをグルグルと回りながら歩く陽。

そのとき笹の葉が風で揺れた・・・

ちょうど二人の書いた短冊が見えるように・・・

そこには・・・







『裕樹(陽)と恋人になれますように。     陽(裕樹)』









・・・この数日後、二人は恋人同士になるのだが・・・果たしてそれは短冊の効果なのか・・・
それは誰にもわからない・・・

【完】
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