■タイトル:『迷い、猫』 ■作者:じゃっくりー -------------------------------------本文-------------------------------------


「……ぅっ」
まだ月が出てる明るい夜のはずだった。
少年は木枯らしに耐えるようにコートをぎゅっと抱きかかえるようにしてランタンを持つ手を更に奥へと差出し、暗がりで真っ白な空間をただただ歩く。湿度が高いのか少年の透き通るような金の髪の先端には水、それも少しずつ大きくなったものがピチョンと時々彼の着込んだジャンパに滴りおちてそのまま地面へと流れていく。
そう彼は今現在霧の、それも深い深い夜霧の中をランタンの明かりを頼りに歩いているのだ。



―――事の発端は親から急な頼みごとだった。
二つ隣の町へのその買い物の帰りのこと、運悪く盗賊にあった少年は命を助ける代わりに件の買い物を渡すことになり、更には分からない町までの行き方を示す地図までとられてしまったのだ。
途方に暮れ、日も暮れて月が見えるころの事。仕方なく大きな道を歩いていると目の前に霧が立ち込め始めたのだ。先ほどの盗賊に唯一取られなかったランタンに火打石で火をともし、致し方なく歩き出そうとしたその時。

「えっ?」
少年は驚いて止まってしまったのだ。霧の中、それも人が前にいるかどうか判断しづらいほどの濃霧だというのに彼は見えたのだ、はっきりと。
ワーラビットを追いかける自分よりちょっと年若そうな少女が横切る様にして森へと入っていくのを、そこだけ絵画のようにはっきりとだ。

「あ、そ、そっちは危ないぞっ!」
深夜のランタンですら心もとない暗さを知ったことかと少女はまるで少年が見えていないように走り抜けていったのだった。

その途端……

―――(おいでよ、ぼうや…… )
白い白い視界の中、突如として聞こえた見知らぬ女性の声に少年は『いかなきゃいけない気がする、いかなきゃいけない』というなんの根拠もない考えに陥り、何を思ったか街道に沿っていたそのしっかりとした足をふらりと千鳥足になって深い霧の森の中へとすすんでいくではないか。

なぜ少年をそんな風にしたのか、誰がしたのか?
その答えはすぐにわかった。
少年の立っていたその街道、すっかり森の奥に消えていった少年をみやる様にいつの間にかその場所に女性が経っていたのだから。否、女性ではない。図鑑通りでいうならばワーキャットだがその雰囲気は果たして違うものであり、意味ありげに笑う口元は綺麗な加減の月を描いている。

「ふふふ、かわいい坊やが来ちゃったのね♪ 私、気に入っちゃったわ♪」
姿が少しずつ、少しずつ…白い霧になる様に、どうかするように紫と黒のまだら模様の毛が消えていく。黒いヒールの靴も、黒い蝶ネクタイについた赤銅色の鈴も、さらけ出すように強調された胸を支えるコルセットについた黒リボンとスペードのエンブレムも、長い長い紫の髪の毛に結ばれた黒いリボンも。


「いらっしゃい、不思議の国へ……旦那さまぁ♪」


―――すぅ、と消える。現れた時と同じ白い歯を見せる笑みと金の瞳を最後に、サッと。


一方その頃の少年はというと冒頭に紹介した通り絶賛迷子になっていたのだ。息も上がり始めてくるのは致し方ない、少年故に体力はそんなにないのだから。しかしそんな少年のことを死角から見続ける影がある。

そう、先ほど姿が煙のように消えた彼女だった。
しかしまた煙のようにあっと言う間に消えてしまう。

―――(ふふ、そうよ。そのまままっすぐ、ね♪)
―――「……このまま、まっすぐ……まっすぐ 」
何かの催眠術か、否、それにしては先ほどよりもくっきりと響く彼女の声。それもそうだ、だって少年の後ろにもういるのだから。気に入った、というのは嘘ではないようである。
そんな彼女にしきりに誘導された彼はただただ暗い森の中を歩く。意識が朦朧としているのか正気を失った瞳で前へと進み続ける。

―――もうランタンの灯火などとっくにないのに、だ。

「あ、明かり……」
「そう、明かり。あなたが求めている明かり。目の前にあるわよ? さぁお行きなさいな♪ 」
曇った瞳に再び輝きが灯る。少年の前に民家の明かりのようなものがみえたからだ。暗い暗い夜霧の森を無意識にとはいえ歩いたのだから体力も限界に近かったのだろう少年はハァハァと息を荒げながら目の前の希望へと歩きだし、小走りになり、持っていたランタンを放り投げて走り出し、そこにやっと行き着いたのだ。
どれだけ走ったのだろうか。
そうとう疲れていたのだろうか。



―――周りが今まで見たことも無い植物に変わっているのに気づかないほどに……。



「はぁ、はぁ……あ、あれ? こ、ここは、ココはどこっ!?!?」
「やぁ旦那様。ここは私、『チェシャ猫』のキーが住む世界…『不思議の国』さ♪」
「ふわぁ!?」
―――かぷっ♪
咄嗟である。正気に戻り自分が望まぬ形で異界に来たことに少年が狼藉する前に、彼女は今まで潜んでいた空間から彼に瞬時に抱き着いて彼の右耳をかぷりと噛んだのは。

「チュルッ、チュパッ」
「ぁ、ふ、ふわぁぁ!!? 」
「ぱぁ。ふふ、ずいぶんと可愛い声なんだねぇ旦那様♪」
彼女は膝が笑うほどにまで感じてくれた彼に満足なのか一度口を離すとふぅと耳元で吐息を一つ。これには彼もこらえきれず鳥肌を立ててその場にへたりこんでしまった。

「おやぁ、旦那様。ちょいとその場所は危ないよ?」
「ふ、ふぇ……わぷっ!?」
「あはぁ〜♪ 媚薬の雨よぉ♪ んぁ♪」
「は、ぅ、ぅぁっ♪ にゃ、にゃに、こりぇ、ぇぁぁ♪」
いつの間にか前に回ったキーはそっと抱き込むように彼を抱く、いやこれは逃がさないといった方がいいのだろうか。その二人に対して間髪いれずにやってくるハプニング、それはピンク色したあめであった。しかしこの雨はただの雨にあらず。

―――媚薬の雨である。それも強力な、ね。

どれほどか、と言うと……彼女が抱き留めた彼から上がる歓声とも悲鳴とも雄たけびともいえる声に比例して彼の下半身はこれ以上ない生まれて初めての怒張をみせつけ、あまつさえ下着の中に大量の射精を瞬時にしてしまうほどのである。
勿論年端もいかぬ少年が下着から染みるどころかあふれ出て地面に白い水たまりを作るほどに、それほどまで急激な性の開花をさせる強力な媚薬に少年と共にあびる彼女だって無事じゃあすむはずがない。
余裕ぶっていたにやけ顔がいつの間にか破顔し、しっぽをピンと逆立て耳を突っ伏し、口元からは涎を、穿き物をしていない下半身からは少年とは違うどろりとした白い液をこぼし、完全に発情したワーキャットにになっていた。

「にゃぁ、だ、旦那様ぁ♪ 子種、せぃし、せぃしちょうだぁい♪」
「あ、あぁ、ぁ、っ!? ふがぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!!!!! 」
「ふわぁぁぁ! しゅ、しゅごぃ、媚薬、のせぃで、お、おっきくなっ、て、りゅ、にゃぁぁぁ♪」

―――対面座位。

彼女から我慢できずに屈んで追っていた足を大きく広げ、彼の足を跨ぎしとどにぬれすぎて泡立っている壺口に急成長した彼の一物をあてがって、一気に腰を下ろした。
精通すらまだだった掛けにとってこの快楽は文字通り神経を焼き切るようなものであった。
しかし、そんな彼のことなどお構いなしに彼女は激しく腰を上下にふるう。彼の体に体を密着させ、雨によってできたどろりとしたローションのようなの水たまりの助けがあってか激しい水っ気を含んだ音と共に胸元が肌蹴、彼のほうもまた何度もピストンする彼女に踏ん張られる度に衣服が爪でポロボロになりしまいにはボロ布へと化して彼から全てはがれてしまった。互いにこすれあう胸の刺激にすでに意識を失う寸前の彼の精神はブラックアウトするまでもうカウントダウンにはいってしまってもいたしかたなし。

「あ、あぁぁぁ、うあぁぁぁ、で、でるぅ、なに、か、でる……んぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」
ぴたっ、と動きが止まる二人。良く見れば彼女の下腹部が徐々に膨らんでいくのが目に見えてわかる。それも秒単位で。
大きく膨らんだ尻尾が少しずつ元の太さに戻るころ、少年の意識はすでになかった。

「にゃふぅ…うふふ、イイわぁ、とってもいいわぁ旦那様ぁ♪」
気絶しても固さを失わない彼の棒に再び膣で愛撫しだす彼女は果たしてあと何回彼をイかせる気なのか……。









―――みなさん、夜霧の森でけっして少女を見ても追いかけないでください。
―――ほら、見ていますよ彼女たちが。
―――入り口である霧の中からずぅっと、ね……。


【完】 ------------------------------------------------------------------------------