願いを叶える龍 |
昔むかーしのお話……かも知れないし、つい最近のお話かもしれない。
ある小さな村に弥助と言う者が居た。 弥助はとてものんびりとしていて大のめんどくさがりやであった。 いい年になっても嫁も娶らず、必要な時だけ体を動かし、 時折、暇な時間には裏山の中へ入り、岩場で鳥の声と風の音を聞きながら 寝転び眠ったりもした。 そんな弥助はある日とても不思議な事に出会った…… 「んー、今日も良く寝た……」 弥助は岩場でいつものように眠り、いつものように目を覚ました。 ふと天を見上げると、空はもう茜色に染まり始めていた。 「ああ、もうこんな時刻か、そろそろ帰るとするか」 弥助は茜色に染まり始めた空を見ると、めんどくさそうに腰を上げ、 寝ていた岩場からゆっくりと降り、帰路を歩み始めた。 「ん? なんだこれは?」 弥助が帰りの道をゆっくりと歩いていると、 道端にぽつんと、蜜柑くらいの大きさの橙色の玉が落ちていた。 「七七七?」 弥助がそれを拾ってよく見てみると、中心に小さく七七七と書かれていた。 「はぁ〜、変な玉だなぁ。宝石か何かなんだろうか……」 弥助はその玉をしばらくじっと見ていた…… すると、その玉は淡く光を放ち始めた。 「お?」 すると弥助の手の上にあった玉は忽ち姿をかえ、 目の前に一人の美しい女性の姿が現れた。 しかし彼女の下半身は蛇……いや龍のようで、人間とは大きくかけ離れていた。 「お主がわらわを呼び出したのかえ?」 「呼び出す?……たぶんはい」 弥助はその性格のお陰か否か、目の前の異常な光景にまったく動じずに 平然としていた。尤も目の前の女性には敵意らしきものを感じなかったから かもしれないが…… 「ではお主の願い事を言うてみよ」 「願い事? ひょっとして叶えてくれるとか?」 「当然じゃ、その為にお主はわらわを呼び出したのじゃろう?」 その言葉を聞き、弥助は少し考えた。 「この先何不自由なく平和に暮らしたい」 「抽象的すぎじゃ、それでは叶えられぬ」 「……うーん。世間や父さん母さんに迷惑かけず、距離を置いて 楽に暮らしていけるようになりたい」 「ふうむ……」 下半身が龍の姿をした女は難しい顔をして、しばらく考えた。 「お主女子は好きか?」 「人並みには」 「ふむ、ではお主に一人の美しき妻を与えよう」 「それは私の願いと大きくかけ離れているような……」 「気にするでない、そやつがこれからはお主の生涯を満たすであろう」 「はあ、じゃあそれでお願いします」 「うむ、ではこの場所に向かうが良い」 彼女はそう言うと、どこから取り出したのか、 古びた地図を弥助に手渡した。 「ではわらわはまた眠らせてもらう」 彼女はそう言うとまたあの玉に戻り、空へと飛んでいった。 「……夢? あ、違うのか……」 弥助はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、 自分の手に握られていた地図を見ると、また呆然と空を見上げた。 「あれは一体なんだったんだ?……まあ人生こんなこともあるか」 普通の人から見れば異常な事態にも、あまり深く考えない主義の弥助にとっては、 その一言で先程の状況もすぐに色あせてしまったのだった。 「さて、何が書いてあるのやら」 弥助はその辺の丁度よさそうな石の上に座って、 その地図を開き、内容を見始めた。 「ああこの池か……」 地図には裏山の全様が描かれており、 ある池の所に赤い丸が記してあった。 (ここに行けって事なのか? ……今からじゃあめんどくさいなぁ) そう思った弥助だが、今この時ばかりは 今すぐその池に行きたくて堪らなくなった。 おそらく、弥助にとってはこんなに感情に突き動かされるのは 久しくないことだっただろう。 弥助は小走りでその池に向かった…… その池は弥助が子供の頃から遊び場にしていて、 大人になっても時折釣りをしに来たり、暑い日は木陰でのんびりと過ごしたりと 良く来るお気に入りの場所であった。 (誰か…居る…) 池に着く頃には日もだいぶ暮れ、辺りは薄暗くなっており、 弥助の所からははっきりとは分からないが、 池の畔に、おそらく座っているであろう、人影があった。 弥助はゆっくりゆっくりとその人影に近づいて行った。 しばらくするとその姿はだんだん鮮明になり、 着物を着た女性の後ろ姿である事が分かった。 そこから見える彼女の長髪はとても白く、薄暗い暗闇の中で 儚く光っているようにも見えた。 (……) 弥助は何か違和感を覚えながらも、 またゆっくりとその女性に近づいて行く。 「誰ですか?」 女性が弥助に気づいたのか、こちらの方へ向き直る。 「!」 二度も同じ物を見てさすがに弥助は驚いた。 彼女もあの女性のように下半身が人間のものではなかった。 しばらく弥助と彼女は向かい合っていた。 弥助の方は直ぐに落ち着きを取り戻しはしたが、 どう言葉を返せばいいのか分からなかった。 なぜなら不思議なことに、この時、今まで、女性にそこまで 執着しなかった弥助が、一目惚れとは行かないまでも、 彼女を異性として強く意識してしまったからだ。 「あの……弥助様を、私はずっと見ていました」 その沈黙を破ったのは彼女の方からだった。 「え、見ていた?」 「あ、急に変な事を言い出し申し訳ございません。 貴方様は私のことを知っているはずがないのに……」 彼女はそう言って顔を赤くして俯く。 「私の名前は白夜、白蛇の白夜(びゃくや)です」 彼女が尾をズルズルと音を立てながら弥助に近づく…… 「貴方様が十を越えた頃から私はお慕いしておりました…… 私は貴方様が好きです。愛しております」 彼女は近づいて行く…… 「貴方様の眠っている所を影から見ていました。 貴方様が水浴びをしている所を影から見ていました。 貴方様が釣りをしている所を影から見ていました。 貴方様が物思いに耽っている所を影から見ていました」 彼女は近づいて行く…… 「眠っている貴方様の体中を這い回ったこともありました。 眠っている貴方様の身体中を嘗め回したこともありました。 眠っている貴方様に私の尾で抱擁したこともありました」 彼女は近づいて行く…… 「けれど、貴方様の前に現れることだけは 怖くて恐ろしくて……決してできませんでした」 弥助は蛇に睨まれた様に体が動きませんでした。 そんな弥助の手を、彼女はそっと取りました。 「けれど、今日龍神様が私の前に現れこう言ったのです。 『白夜、お主はこのままでよいのか? 愛する男をいつ奪われるのやもしれんぞ?』 ……私は貴方様を奪われたくなくて、私を見て欲しくて、 勇気を出してこうして貴方様の目の前に……」 弥助はある事を思い出していた。 子供の頃、白蛇を何度か救い出していたという事実を。 一つ、小さな岩に押しつぶされていた所を助けたこと。 二つ、鳥に食べられそうになっていた所を助けたこと。 三つ、捕らえられた白蛇を自分の家から放してやったこと。 おそらく最初の二つは偶然によるものだっただろう。 しかし、結果として弥助は彼女に惚れられてしまったのだ。 「ま、まさか私が子供の頃助けたあの白蛇は……」 彼女は黙って頷き、自分の体を弥助に密着させた。 「じゃあ、あの龍が言っていた妻は白夜さん……」 「弥助様、やはり貴方様がここに来られたのは 龍神様によるお導きだったのですね」 彼女は尾を弥助の足に絡める。 「私は貴方様の妻として一生を尽くします。 どうか、私を貴方様だけの物にしてください」 彼女は弥助の胸に顔を埋めると、 彼女の上半身の四倍の長さはあろうかという尾が弥助の全身に絡みついた。 そしてまた場を静寂が包み込んだ。 しばらく経って、弥助の胸に顔を埋めていた彼女は 顔を上げ、尾の拘束を解きこう言った。 「……申し訳ありません、唐突過ぎました。 私のようなものに、いきなり妻にして下さいと言われても すぐには答えを出せるはずがありませんよね」 「あ…いえ…」 もう弥助は彼女になんと言えばいいのか分からなくなっていた。 「あの…もう暗くなってまいりましたし、 今日は私の家に泊まって行きませんか?」 「は、はい、そうですね。 明かりになる物も持っていないですし……」 弥助は流されるままに、彼女の家に泊まる事になった。 「では、池の中に入りますので少々目と息を止めていて下さいませ」 「え?」 彼女は、弥助を自分の豊満な胸に抱き寄せ、 しっかりと抱きしめ、池の中に飛び込んでいった。 池に入ってから三十秒も経たずに、弥助は彼女の家へと着いた。 彼女の家は洞窟になっており、とても暗く、 明かりになるのは松明と焚火だけであった。 奥にも道があるようだが、暗すぎて明かり無しでは進む事は出来ないだろう。 すぐ近くに水の溜まった穴もある、おそらくそこから彼女は出入りを しているのだろう。 「大丈夫ですか?」 「だ、大丈夫です。ちょっと寒いですけれど……」 「申し訳ありません。すぐに火を強くします」 彼女は石で囲まれた焚火に薪を加えた。 そうすると、さっきまでほんの僅かであった炎が 激しく燃え始めた。 「お夕食の方もすぐお作りしますので、 少しだけ待って戴けませんか?」 「いえ、急がずにゆっくりとどうぞ」 弥助は緊張しながらも何とか言葉を紡ぐことができた。 彼女は夕食を淡々と作り始めた。 やはり洞窟内で暮らして居るからか、調理用の道具も余りなく 手の込んだ物は作る事が出来なかった為、 そこまで夕食を作るのに時間のかかることはなかった。 「すみません。この様な食事しか……」 出されたのは池で取れる魚や貝。 山でとれるであろう茸や山菜、そして動物達の肉。 それらが、丁寧に調理され弥助の前に並べられたのであった。 「……これは美味しい」 「お口に合いましたでしょうか?」 「はい、とても。もしかしたら母さんより上手いかもしれません……」 「ふふ…そうですか……」 彼女は、自分の作った料理を褒められて照れながらも、とても喜んだ。 その後、二人は殆ど喋る事はなかったが、 向かい合っていた弥助を見つめる彼女の瞳は、 決して逸らされることはなかった。 どれくらい時間が経っただろうか…… 「お布団をお敷き致します」 沈黙に耐えかねたのかは分からないが、 彼女は棚の中から布団一式を取り出し、 柔らかそうな藁の上に敷き始めた。 (……ぅ) 弥助の方はというと、少しだけ打ち解けてしまったのがいけないのか 彼女のに対して劣情を抱いていた。 下半身は蛇という一種の妖のような格好であるが、 弥助にとってはそれも大変魅力的に感じてしまい、 更には上半身の白い肌の触れ心地や、着物の谷間から主張する胸の大きさなどは、 見ているだけでも、男を発情させるには十分のように思えた。 (いけないいけない……) 弥助は別のことを考えようとしながらも、 彼女の美しい肢体が頭の中から離れなかった。 そんな弥助の後ろ姿を見た彼女は、妖しく微笑むのであった。 「ふふふ……弥助様。お布団をお敷きしました。 さあ、一緒に眠りましょう?」 彼女は欲望を押さえ込もうとしている弥助の背中に、 胸を押し付け耳元で優しく囁いた。 「あ、ああ……は…い…」 弥助は彼女に導かれながら、布団の中…… 彼女の豊満な胸の谷間に顔を埋めた。 もう弥助の陰茎は破裂しそうな位に勃起していた。 「弥助様、私の中で貴方様の欲望を全て吐き出してくださいませ」 彼女はそう言うと、下半身のすぐ下に今までなかった……いや見えなかった 割れ目をゆっくりと開き弥助の陰茎を挿入するように促した。 「……こ、これに?」 弥助は戸惑った、中には明らかに人の膣内にあるべき物ではないものが蠢いている。 「一瞬で天国へと行くことができますよ?」 彼女の言葉に呼応するように中の何かが蠢いた。 「さあ、何も恐れることはありません。 私の乳房を吸いながら、貴方様はただ気持ちよくなれば良いのですから」 彼女はそう言って着物をはだけさせる。 弥助は彼女の乳房に助けを求めながら、一思いに何かが蠢く割れ目へと挿入した。 その割れ目の中に弥助の陰茎が入ったとたん、 さっきまで開いていた皮が陰茎にぴったりと吸い付き、締め付け始め、 中の何かに一斉に蹂躙された。 「あ……あ……」 「気持ちいいですか? 私の尾で弥助様の体は支えていますから、 弥助様はゆっくりと快楽を味わってくださいませ」 弥助は彼女の乳房を吸いながら、何度も何度も射精した。 彼女はただそんな弥助を愛おしげに撫で、 弥助が射精しつくし疲れ果てて眠るまで、優しい言葉をかけながら ずっと抱きしめ続けていた…… 一週間後…… 弥助は白蛇の白夜とめでたく? 結ばれる事となった。 そしてやはりというべきか、彼女は夫を愛しすぎているが故 弥助はなかなか外に出して貰えることはなかった。 「なあ白夜、そろそろ外に出て日の光に当たってみたいんだ」 「……ここの生活に何かご不満な事でもあるのですか?」 「いや、私は十分幸せなんだけれども、日光に当たらないと いろいろと健康に差し障るんじゃないかなー、と……」 「その必要はありません。この場所にずっと居れば、 貴方様は何不自由なく暮らして行けるのですから」 (こんなに美しい妻が居るのに 逃げたり浮気したりするつもりはないんだけどなぁ) こうして少々の不満はありながらも、 彼女の尾に巻かれて弥助は幸せそうに苦笑するのであった。 |
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