連載小説
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旅立ち、千年祭
「クロノ、いつまで寝ているつもりだ。はやく起きろ」

「・・・ん あ、あと五分」
クロノ と呼ばれた男はもぞもぞと動くと、まくらに顔をうずめる。
「そうか、ならばお前のパソコンを粗大ゴミに・・・」

「うぉぉい!起きた、起きましたよ!」

「まったく。身支度をして降りてこい、今日は、約束があるのだろ?」

「あぁ、そういえば今日からだっけ」

ガルディア王国 建国1000年目の大祭
千年祭

クロノは身支度を整えると、居間に行く
「あれ、父さんは?」

「千年祭の警備で早くに出たぞ」

「へぇ、相変わらずだね、折角のお祭りなんだから、母さんと一緒にみて回れば良いのに」

「なに、来月まで祭りはやっているんだ、どこかで時間を見つけて楽しむとするよ。私も警備に出る、チャンスはいくらでもあるさ」

「ふぅん、まあ、二人がそれでいいなら良いけど。
さて、俺はそろそろ行くよ」

「まて、祭りに乗じて悪事を働く輩がいるかもしれん、こいつを持っていけ」
クロノの手に木刀が渡される
「そんな大げさな」

「お守りのようなものだ」

「まあ、そういうことなら・・・それじゃあ、いってきます」

「うむ、気を付けて行ってこい」

千年祭会場

「うわぁ、すごい人だな、さすが千年祭」
千年を祝う祭りと言うだけあり様々な出し物や屋台がところ狭しと立ち並び、人や魔物で溢れていた

「おぉ、魔物種族対抗レースかすげぇな、ん?スキュラのたこ焼き?大丈夫なのか?あれ、・・・おおっと」

「ひゃっ!」
あっち、こっちと目移りしていたせいか、クロノは誰かにぶつかってしまう
「すまない、大丈夫か?アリスじゃないか、怪我はないか?」

「あぅ、だ、だいじょうぶです。ありがとうごさいます」
差し出されたクロノの手に掴まり引き起こされたアリスは服に付いた土を払い落としながらそう答える
「え?あ、あれ、おとしちゃったのかな」

「ん?どうした?」

「あ、あの、かあさまからもらったペンダントがなくて」

「す、すまない、もしかして俺とぶつかった時に無くしたのかもしれない、一緒に探すよ」

「あ、ありがとうございます」

「そういえば、まだ名前も教えて無かったな、俺の名前はクロノ。よろしくな」

「わたしのなまえは・・・えーと、マ、マール。マールといいます」

「マールね、よし、じゃあペンダント探しをしていきますか」

「はい!よろしくおねがいします!」

この二人の出会いが、時を越え、遥か未来を改変させる旅をするとこになるとは、まだ誰も知ることは無かった。

「ここら辺はほとんど探したけど、見つからないな」

「誰かに盗られちゃったのかな」

「可能性はありえるけど、とりあえず落とし物として届いてないか祭りの本部に行ってみよう」

「はい、届いてるといいなぁ」

「お、クロノじゃねぇか、お前も来てたのか」
二人が本部へと向かおうとしたところで一人の男が声をかけてきた。
「誰かと思えば道具屋の息子、ザッカじゃねぇか」

「説明不要にしてくれてありがとよって、おいい!」

「ひゃっ!」
ザッカの大声にマールは思わず声を上げ、クロノのかげに隠れてしまう。
「お、お前、こんな愛らしい娘といつ知り合ったんだよ!」

「ついさっきな」

「そうか。とうとうお前もロリっ娘の良さが」

「お前と一緒にすんなロリコン、自警団に付き出すぞ」

「そいつは、勘弁だなぁ」

「あの、ザッカさん」
ザッカになれたのかマールがクロノのかげから顔を出す
「ん?なんだいお嬢ちゃん」

「あの、人間さんの女の子はいけないですけど、魔物の女の子なら、別に小さい女の子たくさんいますよ?なんで付き合ったりしないんですか?」

「あー、それはなコイツの周りが問題なんだよ」
その問いに答えたのはザッカではなく、クロノだった

「コイツに好意を寄せる魔物が揃いも揃って筋肉質な娘ばっかなんだよミノタウロスとか、ウシオ二とか。で、この町って小型の魔物が少ない土地ってのもあってあんなことになってるんだよ」

「そうなんですか」

「と こ ろ で!」
二人の会話を割って入るようにザッカが話し始める
「お嬢ちゃんはなんでクロノと一緒にいるんだい?そのちいさなお口でいってごらん?」

「わたしの大切なペンダント落としちゃって、探すの手伝って貰ってるんです」

「そうかい・・・ん?ペンダント?そいつはこれのことか?」

「あ!それです!わたしの大切なペンダント」
ザッカはポケットから黄色い珠水晶のペンダントを取り出しマールにみせる
「さっき拾って本部に届けようとしたんだが、その必要は無くなったなぁ。ほら、今度は無くさないようそのいちさいお手てでしっかり持っとくんだぞ」

「きっとお前は良いことをしているんだろうがその口調が全てを台無しにしてるぞ」
呆れているクロノをよそにザッカはマールにペンダントを渡す

「ありがとうございます!」

「うんうん、やっぱり幼女の笑顔は最高だな。ところでクロノこれからルッカのショー見に行くんだろ?そろそろ時間じゃないか?」

「そういえばそうだな、じゃあ、俺はこれで失礼するよ」

「あ、あの!」

「ん?」

一人立ち去ろうとするクロノにマールが声をかける
「あの、そのショーわたしも一緒に行っても良いですか?」

「いいけど、たぶん女の子にはつまんないよ?」

「いいんです、クロノさんと一緒にみたいんです」

「そっか、じゃあ、一緒に行こうか、ザッカお前は?」

「いや、このタイミングで俺を誘うとか、お前も色々台無しだわ」
ザッカは呆れたようなしぐさをしてクロノをみる

「俺はちょっと用事が出来た、お前が魅せてくれた可能性に賭けるぜ!必ずこの千年祭で幼女の彼女を手に入れる!」
ザッカはそう声を上げると足取り軽く二人の元を去って行った

「・・・行こうか」

「はい、ザッカさん彼女さんできるといいですね」

千年祭 展望台広場

「おーい、ルッカ」
クロノは広場の中心で機材をいじくっているメガネをかけた男に声をかける
「おう、クロノか待っていたぞ・・・」
ルッカはクロノの隣に立つマールの姿をみるやいなや走りよりクロノの肩を掴む

「クロノ、お前までロリコンになってしまったのか?私はまた、ロリコンの友を増やしてしまうのか、私はもう嫌だぞ目を醒ましてくれ」
ルッカはガクガクとクロノの肩を揺らす

「お、おちつけ、俺はロリコンに目覚めたわけじゃない信じてくれ」

「そうなのか、慌てて損したぞ。なら、その娘はなんなんだ?」
クロノから離れ、メガネを掛け直すとマールをみる

「はじめまして、マールといいます。私が無理を行ってクロノさんに着ついてきちゃったんです」

「そ、そうだったのか、すまない私の早とちりだったようだ」
ルッカはばつの悪そうに頭をぽりぽりと掻いた

「それで、お前はなんのショーをやるつもりなんだ?」
内容を知らされず呼ばれたクロノはルッカの後ろに置かれている機材の数々をみて怪訝そうに聞く

「よくぞ聞いてくれた、今日、私は科学の限界をこえる!」

「ご託はいいよ、どんなマシンなんだ?」

「なんと人を瞬間移動させる。すごいだろう?ずごいよなぁ?」

「おぉ?すごい・・・のか?」

「すごーい!ほんとうに瞬間移動できるんですか?」
いまいちピンと来ていないクロノをよそにマールは目をキラキラさせて声を上げる
「ふっ、やはりわかる者にはわかるのだ、このすごさが」

「ルッカさん!どうやって瞬間移動するんですか?」

「ちょうどいい、これから行うショーは瞬間移動の実演ショーなのだ
マール君、参加しないか?」

「いいんですか?やったー!」

「ち、ちょっと待てよ、ほんとに大丈夫なんだろうな?」

「心配するな、このように実演ショーをやるんだ、しっかり実験もしている。失敗ない。と考えてもらっていい」

「クロノさん、わたし、やってみたいんです」

「んー、マールがそう言うなら」

「よし、役者は揃った!いよいよショーの開幕だ!」

三人がショーの準備をしている内に見物人がちらほらと現れた

「ふむ、ショーと言うにはいささかギャラリーがすくないが、まあいいだろう。よし、マール君そこの装置の上に乗ってくれ」

「はい!」

ルッカの指示で、マールは円盤状の装置の上に立つ
それを確認するとルッカは装置を起動させ、続々と集まるギャラリーに向けて声を上げる

「さあさあ皆さん、お立ち会い、これよりルッカによる科学ショーの開幕だ!ここにいるアリスの少女を右の装置から、左の装置へと瞬間移動してみせよう!」

ギャラリーは思い思いの考えを口にしながら少女の行方を見守る。その中にはクロノの姿もある

「スイッチ オン!」

ルッカの声とともに装置がその出力を上げていく

(あれ、ペンダントが光ってる)
マールがそう感じた時にはすでに異変が起きていた

「なんだ!数値が狂っているのか、この出力、異常だぞ!」
その言葉にギャラリーはパフォーマンスかと歓声を上げる。しかし、ルッカは違った

「まずい!クロノ!マールを引っ張りだせ!」

「え?」
途端に名前を呼ばれ困惑するクロノ

「急げ!間に合わなくなる!」
そのクロノを急かすようにルッカが声を張り上げる

その姿に異常を感じたクロノは慌ててマールの乗っている装置に駆け寄る。しかし、興奮したギャラリーが進行を阻む

「マール!すぐにその装置から降りろ!」
クロノは声を張り上げる。しかし、マールにその声は届かない

「え?なに、ペンダントの光が強く・・・!!」
ペンダントの光がよりいっそ輝くと同時に、黒い歪みが生まれた
マールの身体は黒い歪みへと吸い込まれていく

「マール!」
なんとかギャラリーから身を乗り出したクロノがマールに手を伸ばす
「クロノさん!」
マールも伸ばされた手を掴もうと必死に手を伸ばす。

しかし、お互いの手が届くことは無かった




15/05/26 20:54更新 / ほぼROM専
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■作者メッセージ
どうも、ほぼROM専です
連載してみようか、という感じで今回挑戦してみます
掲載頻度をできるだけ落とさないよ頑張ります。

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