開幕だニャン!
「頼むでみゃーさん!スンも追い詰められとるんや!」
「むぅう…みゃーはこの時間帯は狩りの時間やんニャ…また遼馬が投げればええニャ!」
「そないなこと言わんといてえな!な!…今投げたらみゃーさんにセーブ付くんやで…?」
セーブ。投手の働きを表す一つの指標。みゃーさんと呼ばれる虎模様の毛並みのケット・シーの目は、すでに狩人の目となっていた。
すぐに中年の男は内線をベンチにつなげる。
「監督ッ!説得いけました!」
興奮する男をよそに彼女は漆黒のグローブを片手に、コキリ、コキリと肩を、ゴロゴロとノドを鳴らし通路へ向かう。
「…来よったか。審判!選手交代や!」
あわただしくなるグラウンド。京セラドームに鳴り響くSee Off。
阪神タイガース、選手の交代をお知らせします。ピッチャー…オ・スンファン…変わりまして…みゃーさん…ピッチャーはみゃーさん…背番号222。″
「ジリジリと我らタイガースを追い詰めるドラゴンズ!3点リードながら守護神オ・スンファンは1失点!なおもワンナウトながら2,3塁にランナーを背負っての降板です!そして現れたのは天使か悪魔かはたまた小悪魔か!?期待の救世主みゃーさん!開幕3戦目にて満を持しての登場です!」
「待っとったよみやこちゃん!がんばろなぁ!」
ふにゃりとした笑顔で形部タヌキの梅ちゃんこと梅野リカが出迎える。
「だー!もう!グラウンドではみゃーさん呼べって言ってるのに!」
「はいはい…んじゃお題はいるけんね…まず代打で出てった小笠原はん。さっそくやけど敬遠しよ!一塁空いとるし…その後のエルナンデスはん押さえてゲッツーもらうんや!」
「ふぅ〜…ホンマは敬遠なんかしたないんやけどニャア…信じたるわ恋女房…」
「ホンマ!?おおきに!」
とてとてと梅ちゃんはホームベースに向かう。
さてと、狩りの準備ニャ。
ガリガリガリ…
「慎重にマウンドをならすのはみゃーさんこと猫村みやこ。昨年ドラフト7位ルーキーながらキャッチャー梅野と共に阪神をその小さな体で日本シリーズへ導きました!阪神ファン4万人が見つめる中、遂に今シーズン初登板です!」
ガリガリガリ…
「しっかし…長い準備でんなぁ…」
ガリ…
まぁこんなもんでええかニャ。さてと。
コロン…
ふぅ〜ブルペンと違ってこっちのマウンドは気持ええニャ〜♪
掘ってよし!寝ころんでよしニャ!
「な…なんと寝転がってしまった〜!これは猫の面目躍如か!これには阪神ファンは…」
「みゃーさーん!ゆっくり投げてえからね!」 「せやせや!まだ6時や!」
「キャーこっち向いてー!!」 「唐澤!ボーク取ったんなよ!取ったらいてこますぞ!」
「一斉にみな写真撮影を始めている〜!!そしてヤジは何と球審の唐澤へ!!」
一気に和む球場だがこりゃいかんとサードから一人の男が駆け寄った。
マウンドで膝を折り、みゃーさん。と優しく頭を撫でつつ話しかける。
「んんぅ…何ニャ?つよぽん…」
「みゃーさん。梅ちゃんまっとるで!」
はっ!いけないいけない…試合中だったニャ…
みやこは起き上がりぺこりと気恥ずかしそうにつよぽんこと西岡に頭を下げる。
西岡はええんやで、がんばろな。と、優しく答えサードに帰る。
ホームでは恋女房、リカが笑顔を崩さず待っていた。
そうだ。仕事をせねば。凛とした面持ちでキュッと球を握る。
「さあピッチャー第1球…投げました!とっ!あああ!!」
「ぐう…ああああああ…!!」
伸びのある134キロのストレートはリカのミットでなく…
小笠原の股間めがけて飛び込んで行った。
当然彼は自分の股間を抑え悶絶する。
「これでワンナウト満塁!ついに逆転のランナーを出してしまいました!小笠原はまだ立てない!これにはレフトスタンド中日ファンも…」
「みゃーさーん!いつものことだから!」 「後3人ぶつけてー!」
「おいゴルァ唐澤ぁ!!退場さすなや!!させたら殺すぞ!!!」
「あはは…この対戦相手ファンも魅了させてしまう愛くるしさもみゃーさんの実力のうち…ですよね?」
「そ、そらそうよ…」
困った顔で初老の解説者は答えた。
「みやこちゃん!あたし敬遠てゆうたやん!!」
すぐさまタイムを取りマウンドへ駆け寄るリカと内野手陣。
「なーにが敬遠ニャ。みゃーは敬遠嫌いニャ。それに3球も節約でけたんニャで?わかるニャ?この3球の重さ。エコロジーエコロジー。」
まったく悪びれずみやこは答えた。
肩の力がスポンと抜けてしまい、思わずリカはメガネを直す。
「ハッハッハッ。ミヤコはいいコネ。」
ファーストゴメスが屈託なき笑顔でみやこを撫でる。
ちょっと嫌そうにみやこはニヤリと返す。
「ま、最後勝てればいいよね。」
「セカンド、打たしてええからね!」
これが阪神や。タイガースや。みんな甘甘やねんなぁ…
ふぅと一息。リカはホームへ帰る。
「…」
不敵に無表情で待ち構えるはエルナンデス。内野はゲッツー体制。
外野はバックホーム体制。
グイッと小さな体を伸ばし、第1球!膝もとへずどんとボールが収まった!
実際は135キロながら、みやこのコントロール、リカの配球が150キロを超えんばかりの球へと変える。
そして第2球。つるりと外へ逃げるスライダー!
なんとか開幕3連敗は避けようと、エルナンデスは巨体をうまくかがめミート!
イナズマの如き打球はファールゾーンへ。
あと二人!あと二人!阪神ファンの声は少し、また少し大きくなる。
「アホかぁ…皆何年野球見とるんやねん?」
「後1球…だニャ!」
肉球と良く砥がれた爪にひっかけられたボールは先ほどとは比べ物にならないスピードで打者から逃げる!当然追う!しかし軸のぶれたスイングは情けない音と共にボールを打ち損ね、鳥谷が、上本が、ゴメスが、確実に球を自らのグラブに収める。一塁眞鍋塁審の高らかなアウトコールと共に球審はゲームセットを告げた。
「魔球キャットボール…(カットボール)」
「だニャ!」
放送席!!放送席!!本日のヒロインは見事なタイムリーとリリーフ!梅野選手とみゃーさんこと猫村選手です!″
「梅ちゃん。串カツ食いにいこニャ!」
「あたしのこと誰やおもてんねん。もう予約済みや!」
「むぅう…みゃーはこの時間帯は狩りの時間やんニャ…また遼馬が投げればええニャ!」
「そないなこと言わんといてえな!な!…今投げたらみゃーさんにセーブ付くんやで…?」
セーブ。投手の働きを表す一つの指標。みゃーさんと呼ばれる虎模様の毛並みのケット・シーの目は、すでに狩人の目となっていた。
すぐに中年の男は内線をベンチにつなげる。
「監督ッ!説得いけました!」
興奮する男をよそに彼女は漆黒のグローブを片手に、コキリ、コキリと肩を、ゴロゴロとノドを鳴らし通路へ向かう。
「…来よったか。審判!選手交代や!」
あわただしくなるグラウンド。京セラドームに鳴り響くSee Off。
阪神タイガース、選手の交代をお知らせします。ピッチャー…オ・スンファン…変わりまして…みゃーさん…ピッチャーはみゃーさん…背番号222。″
「ジリジリと我らタイガースを追い詰めるドラゴンズ!3点リードながら守護神オ・スンファンは1失点!なおもワンナウトながら2,3塁にランナーを背負っての降板です!そして現れたのは天使か悪魔かはたまた小悪魔か!?期待の救世主みゃーさん!開幕3戦目にて満を持しての登場です!」
「待っとったよみやこちゃん!がんばろなぁ!」
ふにゃりとした笑顔で形部タヌキの梅ちゃんこと梅野リカが出迎える。
「だー!もう!グラウンドではみゃーさん呼べって言ってるのに!」
「はいはい…んじゃお題はいるけんね…まず代打で出てった小笠原はん。さっそくやけど敬遠しよ!一塁空いとるし…その後のエルナンデスはん押さえてゲッツーもらうんや!」
「ふぅ〜…ホンマは敬遠なんかしたないんやけどニャア…信じたるわ恋女房…」
「ホンマ!?おおきに!」
とてとてと梅ちゃんはホームベースに向かう。
さてと、狩りの準備ニャ。
ガリガリガリ…
「慎重にマウンドをならすのはみゃーさんこと猫村みやこ。昨年ドラフト7位ルーキーながらキャッチャー梅野と共に阪神をその小さな体で日本シリーズへ導きました!阪神ファン4万人が見つめる中、遂に今シーズン初登板です!」
ガリガリガリ…
「しっかし…長い準備でんなぁ…」
ガリ…
まぁこんなもんでええかニャ。さてと。
コロン…
ふぅ〜ブルペンと違ってこっちのマウンドは気持ええニャ〜♪
掘ってよし!寝ころんでよしニャ!
「な…なんと寝転がってしまった〜!これは猫の面目躍如か!これには阪神ファンは…」
「みゃーさーん!ゆっくり投げてえからね!」 「せやせや!まだ6時や!」
「キャーこっち向いてー!!」 「唐澤!ボーク取ったんなよ!取ったらいてこますぞ!」
「一斉にみな写真撮影を始めている〜!!そしてヤジは何と球審の唐澤へ!!」
一気に和む球場だがこりゃいかんとサードから一人の男が駆け寄った。
マウンドで膝を折り、みゃーさん。と優しく頭を撫でつつ話しかける。
「んんぅ…何ニャ?つよぽん…」
「みゃーさん。梅ちゃんまっとるで!」
はっ!いけないいけない…試合中だったニャ…
みやこは起き上がりぺこりと気恥ずかしそうにつよぽんこと西岡に頭を下げる。
西岡はええんやで、がんばろな。と、優しく答えサードに帰る。
ホームでは恋女房、リカが笑顔を崩さず待っていた。
そうだ。仕事をせねば。凛とした面持ちでキュッと球を握る。
「さあピッチャー第1球…投げました!とっ!あああ!!」
「ぐう…ああああああ…!!」
伸びのある134キロのストレートはリカのミットでなく…
小笠原の股間めがけて飛び込んで行った。
当然彼は自分の股間を抑え悶絶する。
「これでワンナウト満塁!ついに逆転のランナーを出してしまいました!小笠原はまだ立てない!これにはレフトスタンド中日ファンも…」
「みゃーさーん!いつものことだから!」 「後3人ぶつけてー!」
「おいゴルァ唐澤ぁ!!退場さすなや!!させたら殺すぞ!!!」
「あはは…この対戦相手ファンも魅了させてしまう愛くるしさもみゃーさんの実力のうち…ですよね?」
「そ、そらそうよ…」
困った顔で初老の解説者は答えた。
「みやこちゃん!あたし敬遠てゆうたやん!!」
すぐさまタイムを取りマウンドへ駆け寄るリカと内野手陣。
「なーにが敬遠ニャ。みゃーは敬遠嫌いニャ。それに3球も節約でけたんニャで?わかるニャ?この3球の重さ。エコロジーエコロジー。」
まったく悪びれずみやこは答えた。
肩の力がスポンと抜けてしまい、思わずリカはメガネを直す。
「ハッハッハッ。ミヤコはいいコネ。」
ファーストゴメスが屈託なき笑顔でみやこを撫でる。
ちょっと嫌そうにみやこはニヤリと返す。
「ま、最後勝てればいいよね。」
「セカンド、打たしてええからね!」
これが阪神や。タイガースや。みんな甘甘やねんなぁ…
ふぅと一息。リカはホームへ帰る。
「…」
不敵に無表情で待ち構えるはエルナンデス。内野はゲッツー体制。
外野はバックホーム体制。
グイッと小さな体を伸ばし、第1球!膝もとへずどんとボールが収まった!
実際は135キロながら、みやこのコントロール、リカの配球が150キロを超えんばかりの球へと変える。
そして第2球。つるりと外へ逃げるスライダー!
なんとか開幕3連敗は避けようと、エルナンデスは巨体をうまくかがめミート!
イナズマの如き打球はファールゾーンへ。
あと二人!あと二人!阪神ファンの声は少し、また少し大きくなる。
「アホかぁ…皆何年野球見とるんやねん?」
「後1球…だニャ!」
肉球と良く砥がれた爪にひっかけられたボールは先ほどとは比べ物にならないスピードで打者から逃げる!当然追う!しかし軸のぶれたスイングは情けない音と共にボールを打ち損ね、鳥谷が、上本が、ゴメスが、確実に球を自らのグラブに収める。一塁眞鍋塁審の高らかなアウトコールと共に球審はゲームセットを告げた。
「魔球キャットボール…(カットボール)」
「だニャ!」
放送席!!放送席!!本日のヒロインは見事なタイムリーとリリーフ!梅野選手とみゃーさんこと猫村選手です!″
「梅ちゃん。串カツ食いにいこニャ!」
「あたしのこと誰やおもてんねん。もう予約済みや!」
15/04/01 00:03更新 / レッズ周作
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