前篇
ろんぐろんぐあごー、わんすあぽんなたいむ、じすいずあぺん。
イギリスとフランスはそれはそれはキノコ派とタケノコ派のごとく争っていました。
そのため、イギリスの王様は家族のことなどそっちのけで軍議に明け暮れており、姫様は寂しく過ごしていました。
何時も遊んでやれない娘を不憫に思った王様は、せめて友達がそばにいれば、と思いロンドンで一番の技師に人形を造らせ、娘に贈ることにしました。
そしてその人形というのが稲穂のように美しく金色に輝く長い髪に、深く澄んだ青い瞳をした、それはそれは美しい人形。
すぐに娘は気に入りました。
城下町へ行く時も、勉強をする時も、お風呂に入る時も…仲良しの二人は何時も一緒‼
しかし、少女が一人前の女性になるときというのは、決まって人形を手放してしまうもの。そう、例えどんなに仲良しでもね。
それでも、二人の友情は崩れませんでした。
ドイツへ姫様が嫁ぐ際、姫は人形にこう呟き、嫁入り道具へ人形を加えたのです。
「私に子供が出来たら、一緒に遊んであげてね。」
こうして人形は世代を超えて愛され続けたのでした。
さて、時は2015年12月のロンドン。
クリスマスを控えたおもちゃ屋は次々と家族連れを飲み込んでは笑顔にして吐き出しています。
テディベアを抱えたグリズリー、レゴでいっぱいのバケツを買ってもらったサイクロプス、ヘルハウンドの子はサッカーボールを買ってもらったようです。
一方、向かいの骨董品屋には…
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!!」バンバンバン!!
般若の形相でおもちゃ屋を睨み付け、ショーケースを叩く人形の姿がありました。
「どうしたのよ、いきなり怪獣みたいな大声出して…」
「ジョセフィーヌ怪獣じゃないもん!」
「営業時間中は静かにする。それはできるよな?」
「●はい。」
淫魔の夫婦にたしなめられ、店には再び閑古鳥が鳴き始めました。
「なんて言うわけないでしょおおおおおおおおおおおお!?なんで、なんで私よりもあんな大量生産された安物のおもちゃが売れていくのよ!?」
「まあまあ」
「そもそもねぇ‼貴方達さっさと子供作りなさいよ‼私が子供の手に触れられないままどんだけ時間がたったと思うの!?」
「そうねぇ〜」
「ジョン・ケイのとっつぁんが飛び杼を造ったころだっけか?」
「あらやだ!この娘が来た時にはとっくに私たち選挙権持ってたわよ?」
「だっけ?いや〜長いこと一緒にいたもんだね〜」
「これからもよろしくね♡」
「喜んで♡」
なんでこいつらに子供がいないんだろう。そう思いつつ人形はため息をつきました。察しの良い方ならもうお気付きでしょう。
そう、このジョセフィーヌと呼ばれる人形は共和制を訴えたくせに独裁者になったチョビ髭やユ○ヤ人を虐めたチョビ髭らが作った歪んだ時代の流れから王家の人々の手を離れ、バマツの骨董品屋と流れ着いてしまったのです。
「はぁ…」
娘たちの優しい手のひら。メイドのキキーモラが焼いたクッキー、ドレスの石鹸の匂い。懐かしい思い出に浸れば浸るほどに惨めで悲しくなっていく。
「えーぎょーどりょくがたりないよ。」
隣の棚のガーゴイル(と言ってもマーライオンの石造ですが)が呟きました。
「なにそれ?」
「お客さんにぃ、自分をかってくださーい、て売り込まなきゃ。あたいはただ寝てるのが好きだから、このままでいいけど。ふあ〜。」
ガーゴイルはまたゴロリとポーズを変え、寝始めました。
「えーぎょーどりょく…か。」
それからジョセフィーヌはえーぎょーどりょくを始めました。
道行く人に微笑みを投げかけ、時には歌い、時にはトイピアノを弾き…
「おかしい…」
売れませんでした。
「売れないわねー」
「はぁ〜…私はね、ただ、もう一度だけでいいから、人形として子供の遊び相手になりたいのよ…」
「私たちも毎晩必至にヤッてるんだけどな〜」
「そう…」
「悲観するな!これを見てみろ!」
主人のインキュバスが広げたのはロンドンタイムス。
「何でもジパングのヤマナカとかいうプロフェッサーがIPS細胞なるものを開発しているらしい!」
「それとこれとどう関係あるのよ…」
「人と魔物…いやそれどころか男同士でも子供が作れるようになるらしいぞ…」
「まぁ!」
「やっとツキが回ってきたな!俺達にも子供が出来る可能性が…」
「ありまぁす!」
ダメだ…こいつらお花畑カップルに付き合ってられない…‼
「おい!どこ行くんだ!!」
買い手がつかないならえーぎょーどりょくするしかない!ジョセフィーヌは隠していた4枚の5ポンド紙幣を手に走り出しました。
さあ御立合い!これから始まるのはクリスマスの奇跡の大冒険!
「ヘイ!タクシー!クインズパークまで!」
おい!!
イギリスとフランスはそれはそれはキノコ派とタケノコ派のごとく争っていました。
そのため、イギリスの王様は家族のことなどそっちのけで軍議に明け暮れており、姫様は寂しく過ごしていました。
何時も遊んでやれない娘を不憫に思った王様は、せめて友達がそばにいれば、と思いロンドンで一番の技師に人形を造らせ、娘に贈ることにしました。
そしてその人形というのが稲穂のように美しく金色に輝く長い髪に、深く澄んだ青い瞳をした、それはそれは美しい人形。
すぐに娘は気に入りました。
城下町へ行く時も、勉強をする時も、お風呂に入る時も…仲良しの二人は何時も一緒‼
しかし、少女が一人前の女性になるときというのは、決まって人形を手放してしまうもの。そう、例えどんなに仲良しでもね。
それでも、二人の友情は崩れませんでした。
ドイツへ姫様が嫁ぐ際、姫は人形にこう呟き、嫁入り道具へ人形を加えたのです。
「私に子供が出来たら、一緒に遊んであげてね。」
こうして人形は世代を超えて愛され続けたのでした。
さて、時は2015年12月のロンドン。
クリスマスを控えたおもちゃ屋は次々と家族連れを飲み込んでは笑顔にして吐き出しています。
テディベアを抱えたグリズリー、レゴでいっぱいのバケツを買ってもらったサイクロプス、ヘルハウンドの子はサッカーボールを買ってもらったようです。
一方、向かいの骨董品屋には…
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!!」バンバンバン!!
般若の形相でおもちゃ屋を睨み付け、ショーケースを叩く人形の姿がありました。
「どうしたのよ、いきなり怪獣みたいな大声出して…」
「ジョセフィーヌ怪獣じゃないもん!」
「営業時間中は静かにする。それはできるよな?」
「●はい。」
淫魔の夫婦にたしなめられ、店には再び閑古鳥が鳴き始めました。
「なんて言うわけないでしょおおおおおおおおおおおお!?なんで、なんで私よりもあんな大量生産された安物のおもちゃが売れていくのよ!?」
「まあまあ」
「そもそもねぇ‼貴方達さっさと子供作りなさいよ‼私が子供の手に触れられないままどんだけ時間がたったと思うの!?」
「そうねぇ〜」
「ジョン・ケイのとっつぁんが飛び杼を造ったころだっけか?」
「あらやだ!この娘が来た時にはとっくに私たち選挙権持ってたわよ?」
「だっけ?いや〜長いこと一緒にいたもんだね〜」
「これからもよろしくね♡」
「喜んで♡」
なんでこいつらに子供がいないんだろう。そう思いつつ人形はため息をつきました。察しの良い方ならもうお気付きでしょう。
そう、このジョセフィーヌと呼ばれる人形は共和制を訴えたくせに独裁者になったチョビ髭やユ○ヤ人を虐めたチョビ髭らが作った歪んだ時代の流れから王家の人々の手を離れ、バマツの骨董品屋と流れ着いてしまったのです。
「はぁ…」
娘たちの優しい手のひら。メイドのキキーモラが焼いたクッキー、ドレスの石鹸の匂い。懐かしい思い出に浸れば浸るほどに惨めで悲しくなっていく。
「えーぎょーどりょくがたりないよ。」
隣の棚のガーゴイル(と言ってもマーライオンの石造ですが)が呟きました。
「なにそれ?」
「お客さんにぃ、自分をかってくださーい、て売り込まなきゃ。あたいはただ寝てるのが好きだから、このままでいいけど。ふあ〜。」
ガーゴイルはまたゴロリとポーズを変え、寝始めました。
「えーぎょーどりょく…か。」
それからジョセフィーヌはえーぎょーどりょくを始めました。
道行く人に微笑みを投げかけ、時には歌い、時にはトイピアノを弾き…
「おかしい…」
売れませんでした。
「売れないわねー」
「はぁ〜…私はね、ただ、もう一度だけでいいから、人形として子供の遊び相手になりたいのよ…」
「私たちも毎晩必至にヤッてるんだけどな〜」
「そう…」
「悲観するな!これを見てみろ!」
主人のインキュバスが広げたのはロンドンタイムス。
「何でもジパングのヤマナカとかいうプロフェッサーがIPS細胞なるものを開発しているらしい!」
「それとこれとどう関係あるのよ…」
「人と魔物…いやそれどころか男同士でも子供が作れるようになるらしいぞ…」
「まぁ!」
「やっとツキが回ってきたな!俺達にも子供が出来る可能性が…」
「ありまぁす!」
ダメだ…こいつらお花畑カップルに付き合ってられない…‼
「おい!どこ行くんだ!!」
買い手がつかないならえーぎょーどりょくするしかない!ジョセフィーヌは隠していた4枚の5ポンド紙幣を手に走り出しました。
さあ御立合い!これから始まるのはクリスマスの奇跡の大冒険!
「ヘイ!タクシー!クインズパークまで!」
おい!!
15/12/11 23:21更新 / レッズ周作
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