忍び寄るマシンガン。いや、混沌。
「ぐがああ…ずぴぃいいいい…ンゴゴゴ!!」
「トリ、席代わってくれや。」
「駄目です。」
新幹線の、それも大先輩の隣であっても寝られるみゃーさん。
いったん甲子園を清宮くんやオコエくん達に明け渡すため、今日は横浜でのビジターゲームだ。
「うーん…やっぱひっかかるねんなぁ…」
鉛筆片手に記録用紙とにらめっこする形部狸の梅野リカちゃん。
「うみゃ…リカ…何なやんどるんにゃ…」
あ、起きた。
「それがなぁ…このスコアブック見てんか。」
記録されているのは今日の横浜の先発投手、マインドフレイアのエレーラの成績。
リーグ前半戦終了直前に入団した謎の外国人選手だ。
「みゃー?フツーのちょっと球が速いだけの外人ピーだニャ。」
「そこもそやけど…ほら…ここ…」
エレーラはここまで4回先発している。が、その4回ともチームが大量得点で勝利している。それも相手エースを打ち負かしての勝利だ。
「なぁ?巨人が7失点、ヤクルトが10失点、そんで広島カープが8失点…」
「みゃう…?そんなんたみゃたみゃだニャ。野球は筋書きのないドラマ、だ
みゃ。」
「せやけども…うーん。」
「マウンドでニヤニヤしよってからに…不気味やなぁ…」
先行タイガース。一番鳥谷。
(まぁまぁ…そう見た目で判断しないでくださいまシ…)
「!?」
(驚いてくださるなんて…光栄ですわ♪でも、舐めてると…痛い目見せちゃいマス♪)
スッ…グニャ…
大きく振りかぶるエレーラ。
軟体亜人特有のやわらかい腕をめいいっぱい撓らせた。
ズドン!!
(ほらネ?)
「はは…ビデオで見とった以上やで…」
この後大和は三振、福留が出塁したものゴメスのショートフライでこの回を終えた。
「本日の実況、現役時代は起きているのかいないのか分からないスタイルで相手を惑わし続けた盗塁女王、ドーマウスの福元雪乃さんにお越しいただいております。」
「Zzz…はっ!よろしくお願いします。」
「やー福元さん、先ほどのエレーラのピッチング…素晴らしいですね!手元の計測器では155キロが記録されました!」
「見ての通り。敵ながらあっぱれやね。(寝てましたなんて言えない…)」
「彼女ははマインドフレイアの特徴を生かしたスリングショット投法の使い手と騒がれておりますねぇ。現役時代福元さんはこういった選手との対戦は?」
「クラーケンとかと試合したことはあるけど…覚えてへんわ…Zzz…」
おとぼけ解説者はほっといてタイガースベンチ。
出塁したマートンを見つめる名将和田、この試合の腹を決めた模様。
「梅野!…分かるな?」
「へぇ。この試合、コツコツ行くしかありませんわ。」
打席に立ったリカは注文通りバントの構えをとった。
1点の攻防になるであろうこの試合をさっさと決めてしまいたい。
(つまんないノ。そうケチケチしないでヨ。)
(うっさいなぁ…話しかけてくんなやスルメ!)
(まさかテレパシーにケンカ売って来るナンテ…)
(はよ投げろやスルメ!イカ臭いんじゃ!)
(な…!何ようるさいわねこのグリグりメガネ!クラーケンと一緒にしないデ!)
(あーあーはよなげんと…)
ボーク!!
(アレ?)
球審、白井です!ただ今、中々投球しないエレーラ投手に対してボークの宣告を致しました。依って、一塁ランナーに進塁権が与えられました!″
中々投球動作に入らないエレーラに、遂にボークが宣告された。マートンは悠々と2塁へ進む。
(にししー!)
(こ、このクソガキ…)
「あちゃーボーク出ちゃいましたね、福元さん。ピッチャーの心理としてはいかがでしょうか?」
「Zzz…分からへん。」
(まあいいワ…どうせあなたは私のエジキ。お好きなようになさいなさいナ!)
「へへっ!んじゃ遠慮なく!」
ピッチャー、ファースト、キャッチャーの間にコロリと転がるボール。
「キャッチャー!アタシが捕るヨ!」
(なんや…?)
ボールを取ったエレーラはガバリと、まるで獲物を捕えるようにリカにタッチ。
「はい、ノルマ達成!…ガァッ!ぐ…あ…ああ…」
(は〜い頭ン中お掃除シマショーネー?)
「梅野ナイスバント!」
「ふふふ…ありがとうございます…」
あれ?
15/08/15 22:43更新 / レッズ周作
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