読切小説
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すてきな三にんぐみ
昔々、有るところに三人組の泥棒がおりました。


黒い帽子に黒いマントに身を隠し、今宵も獲物を求めて歩いていました。


三人組の武器はそれぞれ違います。一人目は魔法仕掛けのラッパ銃、二人目は特製の胡椒の入った胡椒吹き、三人目は身の丈より大きな赤い斧。


この三人組は極悪非道な事で国中の悪い意味での有名人です。彼らを一目見たならば、サキュバスはパッと気絶して、アマゾネスは戦意を失い、ドラゴンは恐れおののき、バフォメットは泣き出し、挙げ句の果てには魔界に住んでいる元教団勇者も大慌てで逃げてしまう始末でした。


親魔物派や反魔物派ではない彼らは、ただ無差別に盗みを繰り返していました。

先ずは馬車や荷車を引いている馬やケンタウロスやミノタウロスに胡椒吹きを吹き付けて動きを止め、次に斧で車輪を真っ二つにして、最後にラッパ銃を突き付けて、「さあ、命が惜しくば金目の物をだせ。」と言い、頭の天辺から爪先は勿論の事、金歯まで奪っていた。


彼らの住み処は、森の魔物娘逹も近寄らないような荒れ果てた禿げ山の洞窟である。其処には、今まで奪った金銀宝石が箱に沢山積めてあった。


「今日も沢山盗ったなぁ。」「おう、これでまたお宝が増えたってもんだ。」「いやー、今日も働いた働いたっと。」


三人組は口々にそう言い、ご満悦な表情を浮かべていた。


さて、ブラックハーピーの羽よりも暗い夜の事だった。三人組は何時ものように盗みを働いていた、だがその日は少し違っていた。


魔物娘ではなく普通の馬が引いていた馬車を襲って中を覗くと、そこにはまだ年端もいかない小さな子供達が傷だらけで入っていた。更によく見ると、人間の子供達の他に魔物娘の子供達がいた。子供達から話を聞いてみると、この馬車は教団の護送用で朝には街に着きそこで悪しき魔物とそれ与した者として処刑されてしまうそうです。三人組は親魔でも反魔でもありませんが、魔物娘の本当の事は大体知っているので教団のやりそうな事だと、納得しました。


奪う物も無いので仕方無く三人組はその子達を住み処へ連れていきました。子供逹も、教団に連れていかれれば処刑されてしまうので怖がるどころか喜んで連れて行かれました。


住み処に連れてきた三人組は、子供達にパンとスープをあげて寝床をこしらえてあげました。子供達は疲れていたのか、直ぐに眠ってしまいました。


「これからどうする?」「どうするって言ってもなぁ。」「取り敢えず、明日になったら親魔の街に送ろう。」そう言い合い、三人組も寝床につきました。


それから朝になって皆起きました。そして子供達の一人のラミアのティファニーちゃんが洞窟にある宝の入った箱を見つけて開けてしまいました。


ティファニーちゃんは、「こんなに宝物を集めてどうするの?」と聞きました。三人組は顔を見合わせて話し合いました。そうです、彼らは集めてから後の事を全く考えていませんでした。







それからです、彼らは国中を歩き孤児や可哀想な子供を集め始めました。何故なら、「集めた宝で、他の可哀想な子達を助けてあげよう。」と三人組の一人が言い出し、それに他のふたりが同意したからです。しかも、教団に捕まっている子供逹も助けてあげました。(最初に言ったが、彼らはドラゴンやバフォメットよりも強いのです。)


子供達を集めたあと、三人組は皆で住めるように洞窟よりも広い、大きな御屋敷を今まで集めた宝で買い取りました。その後、その子達を御屋敷に住ませてあげました。更にその後、その御屋敷の噂が国中に広まり、親のいない子や引き取りの無い子達が人間や魔物娘を問わずやって来ました。(たまに教団がやってかましたが彼らは(ry


そして、十年二十年が過ぎていき子供達はすっかり大人になり、結婚して子供が生まれて家を建てていき大きな街が出来ました。彼ら三人組の死後も、皆が忘れないように三本の塔を建てました。三人組にちょっと似ている塔を、ね。
おしまい
11/06/29 00:11更新 / イノウエ食堂

■作者メッセージ
色んな魔物娘を、名前だけですが出してみました。

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