連載小説
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溶けた心の行き先
「はい♥夕餉が出来ましたよ、旦那様♥」
僕はその声で引き戻された、ぼーっとしている時間が長かったためか
身体が一瞬だけ言うことを聞かず
「へぇっ?あ、あぁ…」
間抜けな声が口から漏れて、誤魔化すように顔を背ける、それを見て彼女は
「ふふ♥お待たせしてすいません、旦那様…今運びますね?」
どうやら待たせてしまってぼーっとしていたと勘違いしたらしい、いそいそと
キッチンに入っていった、そして僕はここでやっと違和感に気が付く、
「何故」自分は旦那様と呼ばれることに違和感を覚えないのだろうか?
「何故」彼女を見て胸が高鳴るのだろうか?「何故」料理を楽しみにしているのだろうか?「何故」と言う言葉が頭の中で数回反響すると、彼女が蛇の体をしならせて料理を運んできた
その動き、テーブルに料理を置く仕草一つ一つが僕を惹き付けて魅了させる
彼女の身体で巻き付かれたらどんなに気持ちが良いだろうか?そう考えて
頭を振ってその考えを止めた、自分は何を考えていた?今何を思った?そう考えていると
彼女は心配そうに顔を覗き込んできた
「どうしたんですか?何か粗相をしてしまったでしょうか?…旦那様…」
そう言って今にも消え入りそうな顔をするので慌てて
「いっ、いや違う!ただ考え事をしていたんだ…」
彼女は胸をなで下ろす
「そもそも名前を知らないし…君のことを何も知らないから…まだ…その」
そう言って言いづらそうにしていると、彼女が
「旦那様?…その…なんですか?…」
そう言って少し詰め寄る様に近付いてくるのでビックリしてしまい、
つい言ってしまった
「その…君が怖いんだ…何もしないって言う確証はないし…殺されてしまうかもって…」
そう言うと彼女は声を荒らげて私を抱き締めるようにして言い放った
「私が旦那様を傷付けるなんてこと有り得ません!
私はただ旦那様に尽くしたいだけです!」
そう言って抱き締めて、身体を巻き付けてくる、僕は思わず目を瞑ってしまったが
抱きしめられていると、心が安らいでいき、彼女の香りが鼻を抜けていき力が抜けて
身を任せるような状態になる、そうして、数秒ほどして離されると彼女は
「さぁ…今度こそ頂きましょう?冷めては美味しく食べて頂けませんから♥」
そう言って僕に微笑んだ、あぁ…私は今…確かに呑み込まれているんだな…
心を溶かされて…飲まれているんだな…と思ってしまえるほど心地の良い時間だった
「うん…食べよう…君が作ったものだからね…」
僕はこの先彼女には逆らうことも逃げることも出来なくされてしまうのだろう
そんな未来を想像して、心が高鳴り、鼓動が早くなった、僕はもう、彼女に
溶かされてしまったのだから
「あっ…申し遅れました…旦那様?私は白蛇の妖火 白(ヨウビ ハク)と申します♥」
彼女の声が耳に届きやその名前が頭に刻み込まれて行くような気がした
「僕の名前は------…これから…その…宜しくね…白さん」
「白…とお呼びください♥旦那様?はい♥末永く…宜しくお願い致します♥」
そうしてご飯を食べ始めた
「(旦那様…じっくりと少しづつ…私が溶かして差し上げますからねぇ…♥)」
僕は彼女の獲物を見つけた蛇のような目には、気が付くこともなく
ご飯を食べ進めるのだった…
16/06/02 14:16更新 / TqFbマン
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■作者メッセージ
前作を読んでくれているとストーリーが分かります!やっぱり、無自覚侵食って良いですよね…これからも彼には、ゆっくりと溶け落ちていただきます…貴方は…どうなるんでしょうね?

「ふふふ…旦那様…見つけましたよ♥」

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