読切小説
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とあるコンビニ、バックヤードにて。
「ったく、こいつらも可哀想になあ。」
バイトの少年が呟く。少年の目線の先には夥しいほど大量のビニール傘。
そう、ここはバックヤード内の置き傘置き場である。
「あと数日で、あの鬼店長に‘‘廃棄‘‘されるんだかんなあ・・・」
(‘‘廃棄‘‘は嫌だ。でもどうすればいいの?)
コンビニに放置された置き傘は、忘れた日の日付を書いた札を貼り、数日後にその店の店長が廃棄するのが基本だ。
「安いからって好き放題に放置しやがって。‘‘九十九神‘‘っつーもんを知らねえのか?」
(そう、全ての私達は‘‘九十九神‘‘の一つ。私達が知っていても意味無いけど。)
「こいつらが一斉に化けて出てきたら、大変なことになるだろうな。」
(化けて出る?・・・そ れ だ あ っ !)
「おっと、そろそろ休憩も終わりか。せめてこの1本でも助けてやりてえなあ・・・。」
(よし、人間がいなくなった!今のうちに化けるよ!ほかのみんなも私に続いて!)
少年がいなくなるとほぼ同時に、傘たちは姿を変え・・・。

〜1分後〜

「10分近く休憩残ってた。(小並感)」
そんな暢気なことを言いながらのんびりする少年に、誰かが声をかけてきた。
『すいません、私達のご主人様を知りませんか?』
女性の声だ。同僚は男だし、間違えて入った女性客だろう。
「・・・ここバックヤードですよ?人探しなら表の同僚n・・・」
固まったのも無理はない。その視線の先にいたのは・・・
日付の紙が貼ってあるビニール傘を頭にかぶり、一本歯の白塗り下駄を履き、使い道が一切わからない透明のマントを羽織り、ピンク色の何かを巻き胸を隠し、包帯のようなもので足を拘束(!)し、大切なものを一切隠せてない透明な前垂れ(!)を首から垂らした、謎の幼女だったのだから。
「ち、」
『ち?』
「ち、ち、ちちちちちちちち」
『?』
「痴女だあああああ!」

〜五分後〜

『落ち着きましたか?』
「はい、なんとか。」
『で、私達のご主人は・・・』
「・・・少なくとも俺も同僚も君みたいな(倒錯的な格好の)女の子にご主人とか呼ばれるような(変態的な)人じゃないよ。」
『ならここ以外にいるってことですよね!みんなー!外にいるんだってー!』
その少女のその声に合わせて、ギイと置き傘置き場の扉が開く。
そこからまるで溢れ出すように少女たちが飛び出し、口々に「ありがとー」「おにーさんのおかげだよー」と礼を述べ、去っていく。無論少女たちは皆同じ格好だ。
「・・・」しょうねん は ほうしん している!
『さて、私は外には行きません。』最初の子が言う。
「え」
『私は良いのです。買った次の日に私を置き傘し、そこからずっと取りに来ないあんな薄情な人はご主人とは認めません。』
「え、あ、ひょっとしてビニール傘の‘‘九十九神‘‘の子?でもなんで俺?」
ようやく少年も理解したようだ。
『私達の為に可哀想にと哀れんでくれました。』
「え?」
『私達‘‘九十九神‘‘を知り、私達のために怒ってくれました。』
「そ、それは人として普通じゃ・・・」
『私達に‘‘一斉に化けて出る‘‘と言う、逃げるためのヒントを与えてくれました。』
「それは冗談d」
『そして何よりも「せめてこの一本でも助けてやりたい」と、私を掴み取ってくれました!』
「それ撫でただけd」
『あそこまでされてはもう我慢できません!』
最後の砦であったピンク色の何かを解き、少年に巻きつける。どうやらピンク色の何かは舌だったようだ。
『さあ、私をお使いくださいご主人様!』
「え、ちょ、まアッー!」

「‘‘少年‘‘のやつ、とっくに休憩終わってるのに来ないな。呼びにいかねえと。」
14/08/18 01:07更新 / 耐熱皿

■作者メッセージ
‘‘同僚‘‘さん。あなたは、桁違いにデカイビニール傘の中で、冒涜的なピンク色の何かに巻き付かれつつ、幼女と交わっている‘‘少年‘‘さんという、大変冒涜的な何かを見てしまったので、1d8/1d20のSANチェックをお願いします。読者の方も同様にお願いします。

傘と聞いて置きビニール傘を想像し、服の色と傘の色が同じなことに気がつき、ビニール傘がほぼ透明なのに気づいてしまい、こんなブッ飛んだ内容になりました。

追記:本当はもっとシリアスにするつもりがどうしてこうなった(白目)

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