四畳一間でゾンビな彼女といちゃつく
優しい文体に癒されますね。ゆっくりとした時間の流れを彼女らが具現しているようで不思議な感動がありました。 連載の方も応援してます。無理のないペースで、お疲れの出ませんように。 16/01/08 21:22
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癒されるどころか、率直に言って、わたしはひどい恐怖を覚えました。 まず、なぜか徹底して語られない、彼女の死因と、彼女が死んでまで解放されたがったしがらみ。「あらゆるしがらみから率先して解放されていった」という一文から、おそらく彼女の死因は自殺であろうと推察することはできるが、それ以外のすべてについては隠されたかのように言及されないという不自然さ。 そして、一割も伝わらないとわかっていて続けられるコミュニケーションと、不完全な復活を遂げた彼女と過ごす、大いなる悲劇とも言い得るこの現状を、それでも悲しみひとつせず幸福だと言い切る主人公。二か月もの間、四畳一間でふたりきりの、ごくごく狭い共依存の世界で、一度失われてしまった彼女の人間性へとめどなく注がれ続ける主人公の愛の大きさは、もはや尋常のものではなく、狂気の領域に片足を突っ込みかけているように思える。 その根源は、彼の言ったように育児にも似て、しかし、相手がかつての姿に戻ることを期待しているという点で明白に異なる。どちらかといえば、これは介護に近いのかもしれない。 介護系ヤンデレ。おそらく、彼の心情はそれに近く、余人の理解など到底叶わぬものであろう。 一方で、ことばを発せない彼女。 「彼女の胸中でいったいなにがあったのか、それは彼女にしか知り得ないことです」と主人公は書いた。発声もできず、表情筋さえほぼ機能していない彼女が何を考えているのかを、われわれ読者が描写から読み取ることは困難を極める。 しかし、彼女にはたしかに彼女自身の意思が存在する。主人公の目をまっすぐ見つめ続けた彼女が、そのとき、いったい何を思ってそうしたのか。主人公は、最終的にその考察を諦めてしまい、われわれは、描写からそれをおぼろげに推測するしかできない。 たとえば、主人公はこの生活について「この生気を失った花を愛でるのだって、どんな人にも誰にも何にも否定はできません」と言ったけれども、そのように、対等な恋人ではなく、花やペットのように愛でられるという生活に対して、彼女が何かを思ったとしても、それを彼女は主人公に決して伝えることができない。彼女の胸中は彼女にしかわからない。われわれにはわからない。 あるいは、そうやって生前のように何かに思いを巡らせることさえできないという可能性も否定はできない。つまり、彼女の胸中は、からっぽなのか。それとも、詰まっているものが十全に伝えられないのかは、われわれにはわからない。 もしもわれわれが彼女と同等の存在になったとしたら、いったいどうなるのか。われわれにはわからない。わたしにはわからない。彼女に対して感情移入を試みることができない。 主人公にも、彼女にも、誰にも感情移入できない。それが、わたしには恐ろしかった。 それでも、最後だけ口調を変えて示された未来への展望、いつの日か、ふたりが魔界にたどり着き、そして、彼女が元の人間性を取り戻せるようにと、わたしはこころの底から願わずにはいられません。 追記、『要介護系ヒロイン』とか『介護系ヤンデレ』というジャンルはこのSSを通じて初めて知りました。 16/01/09 13:56
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返信です。 >1メッセージさん ありがとうございます。空気感も重視して書きましたので、まったりしてくださったようで何よりです。 重ねて、応援ありがとうございます!ご期待に添えられるよう、適度にがんばります。適度に。 >2メッセージさん ここまでしっかりと読んでいただき、また大切なお時間を頂いて、筆者として感無量です。あったけえ……。 だいたいの部分は伝えられたようですが、やはり数点ほど描写が足りなかったようで、私の至らなさを実感します。 まず、文中で示したとおり彼女はこの二ヶ月の間にどんどん知性を取り戻しています。表情を出せなくとも、彼女の身振り手振りは意味のないものではありませんし、微笑むことはできます。一割も伝わっていない、とは「僕」が勝手にそう思ってるだけで、本当は「僕」の言葉はしっかり彼女に伝わっていました。 また、呂律が回らないだけでなにかを伝えたいという意志があるのも文中の通り。上記二点は呼吸させたときにありがとうと彼女が言った箇所で示しました。 ここからは恥ずかしながら私の下手な部分ですが、過去を回想しているところで「僕」は泣いています。それを見て彼女は自分の手で拭い、その拭った手を「僕」のシャツで拭った、と。あまりにも描写が不足していたりあっさりしすぎていたりで十全に伝えられなかった私のせいなので、反省しきりです。 彼女が話しかける部分も、というか全体的に彼女は意味のないおしゃべりはしてないです。「僕」が泣いたあとなので、彼女なりに拙い話し方でもなんとか言おうとしている感じが出せたらなと思ったのですが……。ダメだこりゃ。そりゃあ彼女に感情移入もできまいよ。いっぱい悲しい。 長文での感想メッセージ、誠に恐悦至極です。戒めとして、本文を(誤字脱字以外で)編集はしません。最後に伝えたいことは伝わっていたようなのでなによりです。 要介護ヒロインいいよね……。いい……。 鍵山白煙 16/01/09 14:57
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もういちど読み返してみて、声が出なくなりました。 彼女は、ただ主人公の語尾をおうむ返しにして「なー」と言ったんじゃなかったんだ。いまごろ気づいた。わたしはなんて勘違いを。ていうか見事にミスリードされた格好になるのかこれは。ああ。 でも、さっきわたしが彼女について恐怖だと書いたのは、まさにこれのことだったのです。 彼のことばは彼女に伝わっている、そして、彼女はいま、こんなにも彼のことを思っているというのに、彼にはたった一つを除いて何ひとつとして伝わっていない。 こんな。 SSで泣いたのはこれが初めてです。 でも、やっぱり、この主人公はヤンデレすぎる…… 13:56の名無し 16/01/09 17:38
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返信です。 >13:56の名無しさん 種明かししないと伝わらないミスリードは下の下なので、ここばかりは本当にお恥ずかしい限りです。そう、現状は彼女の思いは根本しか伝わることはありません。 でも、私はこの「魔物娘図鑑二次創作SS投稿所」という場所でこのSSを投稿しました。魔物娘図鑑の根底にあるものは「ラブラブ・アンド・ハッピーエンド」。 正直これってほかのサイトに投稿しても問題なさそうな内容ですし、これを他のサイトに投稿した場合はいろいろと話を膨らませる余地があるでしょうが、大方の道筋は愉快なものではないと思うんです。だからこそ、ここに投稿しました。 サキュバスの魔王の魔力下において、魔物娘は不幸になりえません。なんとかなると思ったら、なんとかなるんです。 半ば狂気に浸されたような姿になりながらも、それでも彼女を愛することを止めない「僕」が救われなかったら、付け加えて「僕」のことを死んでも愛している彼女が救われなかったら悲しいじゃないですか。 いまは辛いかもしれない。でも、この世界に生まれた以上は「辛い」で終わることは許されない。そんな願いを込めた幕引きにできていたら幸いです。 ついでに言うと、「僕」はそれほど狂ってもないと思います。二ヶ月もあったらどんなことでもだいたい慣れるでしょうし、努めてとにかくポジティブに考えてるだけなんですよね。彼女の前にいるときの男の子はたいてい、かっこつけたいものですから。 なぜ家財が布団しかないのか?なぜ自分が泣いてることをどうとも思ってないのか?など、「僕」についてもいろいろと考えを巡らせていただけると幸せになれるかも(私が)。これまた描写の欠落がありそうで怖いですが。 もしもこのSSをお気に入りいただけたのなら、書いたものとしてこれ以上の誉れはありません。二度の感想メッセージの投稿、本当にありがとうございます。 鍵山白煙 16/01/09 22:15
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ついこの間まで意思疎通の図りにくいゾンビのような種族はちょっと…、と思ってましたが鍵山白煙さんの表現を読んで惚れてしまいました。 「うあー」しか言えない(作品ではもっとしゃべってますが)膝の上に乗せたまま頭をなでたい。 別作品ですが、「君は優しい僕の悪魔」、「先輩と一年」もファンです。 16/05/29 10:42
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