月とスキュラの夜想曲
風の強い、晩秋の夜だった。雲ひとつない夜空を見上げながら、俺は釣り糸を垂らしていた。
那由多の星々が彩る天蓋に、月が美しく輝いている。よく澄んだ空だ。いつもならぼんやりとしか見えない西の三色連星が今日はよく見える。そんな美しく澄んだ空とは対照的に、海面はどこまでも深い闇に覆われている。月の僅かな明かりだけが、磯に打ち付ける波を浮かび上がらせていた。
くん、と釣り糸を引く感覚が、腕に伝わる。覚えのあるその動きに思わず相好を崩しながら、俺はゆっくりと釣り糸を引き上げた。
やがて、釣り糸を指先で掴んだメリアが、暗い海面に姿を現せた。
「どう、アデル。釣れてる?」
「今日はまだボウズだよ」
彼女がゆっくりと海から上がってくる。
肩まで伸びる癖のある赤毛。蒼く澄んだ切れ長の瞳。水に濡れた肢体は月明かりを浴びて、透き通るような白さを際立たせている。
紫色の腰布から下にはタコに似た八本の足が蠢いていた。彼女は人間ではない。スキュラと呼ばれる海の魔物だった。
「そう。まあ、アデルって釣りが下手だものね」
岩場に上がってくるメリアのために、俺はそっと体を脇に寄せた。そこにメリアが長い触手を器用に折りたたんで腰を落ち着かせる。服を通して伝わる彼女の体温が少しだけこそばゆい。
視界の端に映るメリアの表情には、かすかな笑みが見て取れる。白磁のような頬に少しだけ赤みが差していた。
「いいんだよ。もう一番の大物は釣り上げたし」
「それって私のこと?」
「他に誰がいるんだ」
問いかけに小さく首を振りながら、釣り糸を海に投げ込む。釣り針は暗闇の中へと飲まれ、あっという間に見えなくなった。
針が海に落ちる音にメリアの芝居がかった溜息が重なった。
「なら間違ってるわ。アデルが私を釣ったんじゃなくて、私がアデルを捕まえたのよ」
「捕まった覚えはないんだがな」
「骨抜きにされた、でもいいわよ」
「骨がないのはメリアの足の方だろう」
メリアが口を噤む。それが不快感によってではない事は、忍び笑いから伝わってきた。
一際強い海風がメリアの髪を弄ぶ。彼女は顔を上げて、空に見入っていた。つられるように俺も空に目を向けた。
「アデルと会ったのも、今日みたいな夜だったわね」
彼女の言葉に、かつての記憶が蘇る。メリアと出会ったのも今日みたいに月の綺麗な夜だった。
満月の浮かぶ静かな海。打ち寄せる白波の中、彼女はただじっと月を眺めていた。降り注ぐ淡い月明かりに照らされる彼女は幻想的で、この世のものとは思えない程、美しかった。捕まったという表現はたしかに間違っていないかもしれない。はじめて会ったその日から、俺はメリアに魅了されているのだから。
月日が経つのは早いものだ。あれからもう一年が経とうとしている。
「あの時のあなたには驚いたわ。だっていきなり、月が綺麗ですね、なんて言うんだもの」
眼差しを夜空に投げかけたままメリアが呟く。言葉の意味が分からず、俺は思わず眉をしかめていた。
別におかしい事をいったつもりはない。本当にあの日の月は綺麗だった。例えそれが、彼女に見とれていた事を誤魔化すつもりで出た言葉だとしても。驚かれる理由はなかったはずだ。
そんな考えが伝わったのだろう。メリアが苦笑を浮かべながら説明してくれた。
「その言葉、ジパングだとプロポーズの言葉なのよ?」
「…そうだったのか。だからあの時、顔を真っ赤にして逃げたのか」
「あれは魔物としては、一生の不覚だわ。どうせならそのまま襲っちゃえばよかった」
メリアは屈託のない笑みを浮かべながら肩を震わせていた。思えば、彼女がこうして笑う姿を見せるようになったのは、ここ最近の事だ。昔のメリアはどこか硬さの残る表情を浮かべてばかりだった。彼女はこうみえて臆病で、人見知りの傾向がある。それは、初見で俺から逃げ出した事からもよく分かる事だった。
彼女は見知らぬ相手と接することを極端に恐れている。人目のある昼間を避けて夜中に逢瀬を重ねているのも、それが理由だった。
「今日は寒いわね」
強い海風が飛沫を巻き上げ、俺たちの体を濡らしていく。吹きすさぶ風は冬の到来を告げているようだ。
メリアが濡れた体を擦り寄せてきた。甘えるような彼女の動きを感じながら、俺は小さく呟いた。
「もうそろそろ冬だからな」
「…それだけなの?」
メリアは恥らうように顔を赤らめ、潤んだ瞳で俺の事を見つめている。不満そうに唇を小さく尖らせる様子に、思わず苦笑が零れた。強気な割に臆病な彼女らしい曖昧なアプローチだ。
俺は釣り竿を傍らに置き、彼女の柔らかい体を抱き締めた。俺の肩に顎を乗せ、メリアが小さく呟いた。
「もう…女に恥をかかせるなんて…あなたって本当にひどい人ね」
「悪かったよ」
「だめ。許さないわ」
細くしなやかな腕で掻き抱かれるた俺の体に、ゆっくりと触手がまとわりついてくる。彼女の足は、その一本一本が俺の脚程も太さがあるというのに、俺の手の何倍も細やかに動く。そんな繊細で長い触手に絡め捕られた俺は、あっという間に衣類を奪われてしまった。
「なんで服を脱がすんだ?」
「ふふっ、女に恥をかかせた罰よ」
潮風が肌に突き刺さる。冬を間際に控えた海風は、思っていた以上に寒かった。
無意識に震える体を、メリアがぎゅっと抱きしめてくる。素肌に感じる彼女の体は暖かかった。
「たしかに、少し寒いな」
「そうね。でも、人肌で暖めあうには丁度いいわ」
はらりと布が落ちる音を耳にしながら、俺たちはどちらともなく唇を合わせた。
二人の体の中で、形のいい双丘が潰れている。わずかに震える体を掻き抱き、俺は彼女の唇に舌を入れていった。メリアは嬉しそうに頬を緩め、自ら舌を絡ませてきた。潮と甘さの混じった不思議な味わいが口の中へと広がっていった。
「んっ…ちゅっ…♪」
舌を絡ませ、歯茎を舐り、舌先を頬肉に擦り付ける。貪るような濃密な口付けに、メリアの唇から涎が零れ落ちていく。彼女はそれを気にする事なく、俺の首に両手で回したまま、キスに熱中していた。
「んっーっ…んっ…ふぅっ、んっ…♪」
蛸足を甘えるように絡みついてくる。粘液で塗れた触腕は、それ自体が甘い香りを放っていた。
彼女は二本の腕と八本の足、そのすべてを使って俺の体を刺激していく。粘液で濡れた触手が腰を這い回り、脇や内腿といった敏感な部分を撫で回す。吸盤が首筋に吸い付く感覚に、寒さとは違う理由で体が震えた。
「ふぁ…んっ…ちゅっ…♪」
月明かりに照らされたメリアは、蕩けた笑みを浮かべている。青く澄んだ瞳は情欲に揺れ、整った美貌は淫蕩に歪み、熱に浮かされた眼差しは俺の事だけを見つめていた。そこに普段の落ち着いた様子は欠片も存在しない。彼女は今、俺を求めている。ただの繁殖相手としてでも、餌としてでもなく。たった一人の、情愛を結ぶべき相手として、俺という存在を全身で欲していた。
細く伸びた腕を、しなやかな腰を、柔らかい胸を、そして長く柔らかい触手を。メリアはそのすべてを俺に擦り付け、二人の間の隙間を埋めようと必死に動いている。
降り注ぐ口付けは、どんな雄弁な言葉よりも深い愛情を表していた。唇を交わらす度、放たれる甘さが増していった。
「んっ…ちゅるっ…れろっ…んっ…♪」
メリアが扁平な舌を絡め、柔らかい唇を押し付けてくる。口の中に広がる甘い蕩けるような味。それを嚥下すればすればする程、俺の体は火照っていった。弾力を持った吸盤が、全身にキスをするように吸い付いてくる。月明かりに照らされた俺の身体には、メリアがつけた無数の痕が残っていた。彼女は自分の印を残そうと必死だった。
「アデルぅ…♪」
媚びるよう声色が薄い唇から漏れていく。彼女の腰からは、先ほどから淫靡な水音が絶え間なく聞こえていた。
腰と触手の境界面。秘裂から溢れた愛液が、彼女の脚を濡らしていた。メリアはそんな秘所を押し付けるように肢体をすり寄せてくる。充血しきった一物に押し付けられる肌は、驚く程にきめ細かく、吸い付くような感触を与えてきた。
「アデルのこんなに大きくなって…それにすっごく…いい匂いがする…♪」
メリアはわずかに腰を引きながら、触手で俺の脚を開いていく。露になったそそり立つ一物を見て、彼女は艶のある吐息を漏らした。全身と唇を絶え間なく愛撫され続けた俺の怒張は、既に十二分に充血していた。
「触ってもいないのにこんなにしちゃって…これで触ったらどうなるのかしら…♪」
一本の触手がそろそろと太腿から腰の付け根へと這い上がり、怒張へと巻きついてくる。触手が上下に動く度、吸盤が肉竿の表面を引っ張り、その感覚が俺の背筋に電気を走らせていった。
「くっ…あ…」
「アデルったら、相変わらず敏感よね…♪ オチンポの振動が、足にしっかり伝わってくるわ…♪」
根元から蛇のように巻きついた触手の先端が、カリ裏と亀頭の両方を同時に刺激する。その間も、吸盤は竿にキュウキュウと引き締めて離さない。彼女の足で愛撫されていく程、肉茎は硬さを増していく。自分でも痛いほど勃起しているのが理解出来た。鈴口から漏れ出す先走りが、感じている快楽の凄まじさを物語っていた。
「んっ…アデルのオチンポがビクビクしてる…それに汁もこんなに溢れて…♪」
触手の先端が鈴口を擦り上げ、漏れ出た先走りを器用に絡め取っていく。彼女は攻撃の対象を、一物の先端に定めたようだった。
たった一本の触腕が器用にしなり、カリ裏と亀頭、そして鈴口の三点を同時に攻め立てる。そして根元の方から竿を包み込む事も忘れない。
肉棒全体を翻弄する適度な締め付けと吸盤による愛撫。スキュラであるメリアの足だからこそ出来る芸当に、俺は射精感を高ぶらせていく。
「ふふっ…こんなにオチンポをパンパンにさせて…そんなに私のタコ足は気持ちいいかしら…♪」
「あ、あぁ…っ」
メリアが荒く息をつきながら、恍惚とした表情で問いかけてくる。俺はそれに余裕なく答えることしか出来ない。下手に声を出したら、その瞬間に射精してしまいそうだった。
一物が大きく跳ねる度、彼女は嬉しそうに頬を緩め、触手に力をこめてくる。性器への直接の刺激だけではない。体中で受ける抱擁と愛撫。睾丸から上がってきた精液は、既に尿道の中から溢れそうだった。
込み上げる射精感を懸命に抑えながら、俺はメリアの体を抱き締めた。そんな俺を愛おしげに両手で掻き抱きながら、彼女は顔中に口付けの嵐を投げかけていた。
「メ、メリア…それ以上は…」
「いいのよ…好きなだけ、出して…♪」
囁きが耳元を撫でていく。
メリアは俺の首筋に甘噛みをしながら、一物を覆う触手の動きを激しくしていった。女性器のように蠢く触手が竿全体を扱き、敏感な先端を締め付けてくる。そして鈴口に無数の吸盤が吸い付いてきたまさにその瞬間。俺の腰は激しく震えだし、あっけなく溜め込んでいた精液を撒き散らした。
「あぁんっ、熱いっ♪ あなたの精液が足の中でビュクビュクあふれ出てるっ♪」
彼女は満面の笑みを浮かべ、痙攣を繰り返す怒張へと刺激を送り続けている。尿道に残っている精液まで搾り出そうとするその動きに、俺はひたすらに欲望を吐き出し、彼女の触腕を白い染め上げていった。
「あぁっ…凄い…私の足、こんなにベタベタになっちゃった…♪」
射精を終えた一物から触手が離れていく。メリアの言う通り、彼女の足は俺の精液がドロドロと絡み付いていた。
メリアはそんな精液で白く染まった触腕を持ち上げ、自らの口元へと運んでいく。そして、俺が見守る中、彼女はそれをあえて見せ付けるように、音をたてて自らの口に含んでいった。
「ちゅるっ…くちゅ…はぁ…やっぱりあならの精液って…んっ、ぺろっ…すれきな味…♪」
白く塗れた自らの足を、メリアは至福に染まった表情で熱心に嘗めあげている。まるで口の中に広がる精液の味を楽しむように、白い精液を舌先で転がすその光景は、とても淫らなものだった。俺が見守る中、彼女は見せ付けるように嚥下を続けた。
「んっ、んっ…こくっ…はぁぁっ…すごく濃くて…甘くておいひぃ…んっ…こんなの、舐めてたら…おかしくなっちゃう…ちゅるっ…♪」
彼女の舌先が触腕をなぞり、唾液の跡をつけていく。既に精液の大半は彼女の口へ消え、白く染まっていた触手はてかてかと卑猥に輝いていた。それでも、メリアは物惜しげに触手を嘗め回し続けている。僅かな残滓も残さないと言わんばかりの執拗さに、俺の中の興奮が積もっていく。射精を終えたばかりだというのに、肉竿は既に堅さを取り戻し始めていた。
「アデルのオチンポ、出したばかりなのに…また大きくなってる…♪」
メリアが、膨れあがった怒張に気づき、わずかな笑みを零す。唇の端を吊り上げるような微笑は、普段の彼女なら決して見せない蟲惑的な熱っぽさが含まれていた。それが何を意味するかは、明白だった。
「これなら…もう一回出来そうね…♪」
メリアが巻きつけていた足を蠢かせ、俺の脚の間で器用に腰を落ち着かせる。正面から向かい合った彼女は、小さく笑みを浮かべ、一物の上から締まりのいい膣口を押し付けてきた。わずかに腰が揺れる度、秘裂から漏れた愛液が俺の陰部を濡らしていく。前戯もしていないというのに、メリアの体は受け入れる準備を終わらせていた。
「今度は膣中で…ね…♪」
「あぁ…次は一緒に」
「そうね。二人で気持ちよくなりましょう…♪」
俺が小さく頷き返すと、メリアは喜色に溢れた表情で腰を落とし始める。
締まりの強い膣口が先端を押し返す、わずかな抵抗感。それを潜り抜けた一物は、狭い膣道の中へと呑み込まれていった。その途端、身を焦がすような快楽が、俺の全身を駆け巡った。
「んふぁぁっ…入って、きたぁぁっ♪」
引き締まった膣口は肉竿を締め付けながら、ゆっくりと奥へと誘っていく。メリアの秘肉は、それ自体が吸盤のようだ。膣道は十二分に蜜で濡れているにも関わらず、その細さが実感出来るぐらい締まっている。そのため、陰茎が奥へと進めば進むほど、狂おしいぐらいに食らいついてくる。
膣内を埋めつくす無数の肉襞が膨れ上がった怒張に吸い付き、熱くうねった膣肉は肉棒を絡め取るように包み込んで離さない。滾々と湧き出る蜜液が、肉棒が埋め込まれる度に腰を濡らしていった。
「んぁ、すごいっ♪ 私の膣中を、オチンポが開いてるぅっ♪」
嬌声を木霊させながらメリアは激しく腰を震わせていた。先ほどまでとは異なり、今の彼女の声には余裕がなかった。
腰が大きく動く度に、肉竿を刺激する位置が変わり、俺の事を翻弄していく。カリ裏に吸い付いていた肉襞が擦れながら竿を撫で上げ、膣壁が大きく波打って亀頭を締め上げる。ぴったりと隙間なく張り付いた淫肉は、数え切れない程の交わりを経て、すっかり俺の敏感な部分を覚えこんでいた。その事が俺の興奮を昂ぶらせていく。
「あぁっ、あぁぁっ、すごいっ、アデルのがっ、膣中で暴れてるっ♪」
わずかに動く腰を押し上げ、俺はメリアの膣奥へと肉竿を進めていく。押し広げられた細い膣道は巧みに陰茎を飲み込みながら、適度な刺激を与えてくる。膣口が根元からこすり上げ、肉襞が全体を締め付ける。膣肉が吸い付くような収斂を繰り返す度、メリアは白い肌を仰け反らせて悦んだ。
「ひぅっ♪ らめっ、そんなに激しくっ、押されたらっ、あぅっ、んはぁぁぁぁっ♪」
彼女の体が一際大きく跳ねた瞬間、拘束の緩んだ膣道を肉竿が一気に駆け上がる。
亀頭が柔らかい独特の弾力を持った部位にぶち当たる。それが子宮口だと気づいた時には、メリアは大きく体を震わせて俺にしがみついてきた。
「んんんんんっ♪ そこっ、そこ弱いのっ♪ ふぁぁっ、んんっ♪」
二本の腕と八本の足、そのすべてが俺の体を強く抱く。拒絶するような声とは裏腹に、メリアは自ら腰を振り乱し、腰に回した触手で一物を更に奥へと押し込んでいる。俺はそんな彼女の無言の要望に応じるべく、子宮口を強く擦り上げた。
「ふぁぁぁぁっ♪ 私の奥にっ、熱いの、熱いのがあたってるっ♪」
彼女の嬌声を聞きながら、激しく腰を打ち付ける。膣内で攪拌された愛液が、腰を引く度に白く泡立って溢れ出していく。俺はそれを再び押し込むように、子宮口に向けて一物を打ち付けていった。蜜の跳ねる水音が夜の海に淫らに響いていた。
「あぁっ、ひぅっ、んふぁっ、んっ、んっ、んっ、ひゃぅぅぅっ♪」
既にメリアは体中で汗を浮かばせ、俺の成すがままになっている。
腰を振る度、彼女の香りの甘さが濃密になっていく。その蟲惑的な匂いに誘われるまま、俺はひたすらに腰を振り続けた。
時に楕円を描きながら、時に子宮を持ち上げるように突き上げながら、吸い付いてくる淫肉を熱心に捏ね回す。子宮口を中心に、俺はもてうる限りの方法で膣内を竿で押し広げ、亀頭をこすり付けていった。メリアはだらしなく舌を伸ばしたまま、呂律の回らない声を上げ始めた。
「アデルぅっ、きしゅ、キスしてぇっ♪」
舌を伸ばしたまま、メリアが顔を近づけてくる。俺はそんなだらしなく伸びた舌に吸い付き、自らのものを絡めていった。二人の間で唾液が垂れ、糸を引いて落ちていく。しかし二人とも、そんなことを気にする余裕もなくなっていた。
俺はメリアを強く抱きしめ、彼女は腕と触手で絡み付いてくる。両者の隙間が完全に埋まり、熱と粘膜が交わりあい、垣根がなくなっていく錯覚すら覚える程、濃密な性交だった。
「んーっ♪ んっーっ♪」
鼻にかかった声をあげながら、メリアはキスに没頭していた。トロンと蕩けた表情は既に半ば朦朧としており、小さな痙攣を繰り返す腰は一心不乱に揺れ続けている。
快楽によって下がりきった子宮口が、わずかに開閉を始める感覚が亀頭から伝わる。俺はその子宮口に向けて、ひたすら肉竿を叩きつけていく。腰を打ち付ける度に、溢れ出した蜜が激しい音を立てていた。
「らめっ…そんなに、はげしくっ、ついたりゃっ…♪」
打ち寄せる快楽の強さのせいか、彼女がキスをやめて訴えてくる。しかし汗と涙で塗れた顔は、更なる快楽を欲していた。だから俺は彼女の言葉を無視し、むしろ突き入れを激しくしていく。
その選択は正しかったようだ。突き入れに応じるように、彼女の足が俺の体を強く抱きしめる。痕が残りそうな程の強い抱擁が、彼女自身の限界の近さを物語っていた。
「やらぁっ、一人れっ、イきたくないぃっ♪ アデルもぉっ、一緒に、いっしょにイ…ってぇっっ♪」
竿の根元から這い上がってくる突然の新しい快感。わずかに視線を下に向ければ、メリアの触手が俺の睾丸を優しく揉み解していた。今までとは大きく異なる箇所を不意打ちのように刺激された事で、俺の体に激しい快楽が走っていった。
虚空を見つめて意識を朦朧とさせながらも、メリアは吸盤と触手を巧み使って、俺の睾丸から精液を尿道へ送り出そうとしていた。
「ふぁぁっ、あぁぁっ♪ あぅっ、ひゃぅぅっ、んんっ♪」
意味をなさない喘ぎ声。充満した彼女の香り。汗を浮かべて小刻みに痙攣する肢体は、今まで以上に俺の体に吸い付いて離れない。
蜜で潤う膣肉が絡みつき、俺の精を求めて細かい収縮を繰り返す。肉茎が取れそうな程強い締め付けに、思わず俺の顔が歪んだ。そんな反応に気づく様子もなく、メリアは回していた両手で俺の背中に爪を立てている。
「あぁぁぁっ、らめっ、イっ……ひゃうぅぅっっ♪」
白い喉を仰け反らせ、メリアの体が大きく跳ねる。
絶頂を迎えた肉壷が竿を締め付け、吸着した子宮口が亀頭に激しく吸い付いてくる。縮まった膣口からは愛液が止め処なく溢れ出し、腰を暖かく濡らしていく。刺激が俺の体中を駆け巡り、尿道を駆け上がった。
俺は彼女がもたらす刺激に従い、自らのすべてを最奥目掛けて注ぎ込んだ。
「ひゃぁっ♪ れてるっ♪ あでるの精子っ、わらしの子宮にたくひゃん、れてるっ♪」
根元からこみ上げた精液が、メリアの子宮口を目掛けて勢いよく飛び出す。吸い付くような収縮を繰り返す膣内。そのあまりの刺激の強さに、俺は腰を動かすことが出来ないでいた。焼け付くような快楽を堪えようと唇をかみ締め、ただひたすらに精を放ち続けた。
「んぁっ、しゅごい♪ すごくあっついの、まら出てりゅぅっ♪」
二度目の射精にも関わらず、濃密な塊が鈴口から溢れ出ているのが自覚できた。
メリアはそんな精の迸りを受けながら、舌をピンと伸ばしたまま、嬉しそうに背筋を大きく痙攣させていた。彼女の肉壁は一滴も逃さないと言わんばかりに蠢動を繰り返し、白い獣欲を受け止め続けている。
精液が膣中へと解き放たれる度、メリアは更に奥へと導くように、両手と触腕のすべてを使って俺の体を抱き締める。
「全部らしてぇっ♪ わたしの子宮、あにゃたの子種れっ、一杯にしてぇっ♪」
いつまでも続くのかと錯覚してしまうほど、射精は延々と続いていた。睾丸に絡みついた彼女の足が蠢く度に、溜め込んでいた精子がこみ上げ、膣中へと送られていく。
彼女の動きは、俺自身のすべてを吸い取るようだ。膣肉も、子宮口も、触手も、吸盤も、体も。メリアは俺を捕らえたまま、決して離そうとはしなかった。
「あぁっ、たくしゃんっ、れたぁっ…♪」
長かった射精も次第のその威力が弱まっていく。俺は最後の一絞りを子宮口に注ぎ込み、ゆっくりと一物を引き抜いた。
名残惜しげに絡み付く秘肉から、白く濁った粘液がドロリと音をたてて溢れ出す。それが精液なのか愛液なのか、攪拌されつくして泡立っているために判別することは出来ない。俺は荒い息を吐きながら、それを見つめていた。
「はぁ…はぁ…メリア…さすがにこれ以上は無理だ…」
「あっ…ふぁぁっ…あづいっ…♪ 膣中が…子種で、あちゅいよぉっ…♪」
メリアに俺の声は届いていない。小さな痙攣を繰り返す体は、事後の余韻に浸っていた。
彼女が意識を取り戻すまで、俺は八本の脚に絡みとられたままだった。
「痕…ついちゃったわね」
背中越しにメリアに抱きしめられながら、俺は夜の海を見つめていた。
激しい情事を終えた後、俺はようやく拘束から逃れることが出来た。体には彼女によってつけられた無数の痕が残っている。ありとあらゆる所についた痕跡が、情事の激しさと彼女の乱れ具合を雄弁に示していた。
細くしなやかな指先が、体中についた痕を撫でている。痛みは感じない。ただ、かすかに伝わる感触が、少しだけむずがゆかった。
「まあ、あれだけ激しければな…」
「…お願い、言わないで…恥ずかしいから」
東の空は暗く、まだ朝が来る気配はない。暗い海には潮騒だけが木霊している。後頭部に押し付けられた双丘からは、彼女の静かな鼓動が聞こえている。わずかに伝わる心音が疲れた体に心地よかった。
「…あなたの事になると、つい我を忘れるのよ…」
海に視線を投げかけながら、メリアがぽつりと呟いた。見上げた彼女は耳まで真っ赤に染まっていた。
普段は冷静な癖に、情事になると途端に甘えて俺を求めてくる。そんな彼女の二面性がたまらなく愛おしい。しかしそれを言えば、彼女を余計に追い詰めてしまうだろう。だから俺は、体に回された彼女の両手を握り締めるだけに留めた。
「ふふっ…」
「何がおかしいんだ?」
「なんでもないわ」
八本の足で俺を抱きしめながら、メリアは朗らかに笑っている。満月を背景に笑う彼女。それはまるで一枚の絵画のように美しい姿だった。
潮風が頬を撫でていく。その感触が火照った体にはやけに肌寒く感じられた。これからは人肌の恋しい季節になるだろう。出来ることなら、そんな寒い冬を彼女とずっと過ごしていたい。いや、冬だけではなく、これからもずっと。俺はそれを望んでいる事を自覚していた。伝えるならば、今が最適かもしれない。
「なぁ、メリア…海の中から見る月は、一体どんな風に見えるんだろうな」
「え、海の中の月…?」
メリアが小さく首を傾げて疑問を返してくる。俺はあえてそれには答えず、沈黙を保った。
察しのいい彼女はすぐにその言葉を理解したようだった。思案に暮れていた表情が、見る見るうちに赤くなる。触腕の先端は落ち着きがなく揺れ始めていた。
「えっと…本当に見てみたいの?」
「あぁ、出来れば…その…二人で、見てみたい」
彼女からの返答はない。けれど、俺の遠まわしな告白が伝わった事はすぐに分かった。真っ赤に染まった顔は、今まで見たことがないぐらい喜びに満ち溢れていた。
全身が八本の触手と二本の両手に包まれる。その抱擁を感じながら俺はメリアの細い腕を握り締めた。互いを抱く腕は、決して相手を放さない。そしてこれからも、離れる事はないだろう。
満面の笑みを浮かべた顔を隠すように、俺の肩に顔を埋めたメリアが小さな声で呟いた。
「月が綺麗ね」
「あぁ、そうだな」
夜空には満天の星々と真円を描く月が輝いている。
白い月明かりに照らされながら、俺たちは静かに口付けを交わした。
那由多の星々が彩る天蓋に、月が美しく輝いている。よく澄んだ空だ。いつもならぼんやりとしか見えない西の三色連星が今日はよく見える。そんな美しく澄んだ空とは対照的に、海面はどこまでも深い闇に覆われている。月の僅かな明かりだけが、磯に打ち付ける波を浮かび上がらせていた。
くん、と釣り糸を引く感覚が、腕に伝わる。覚えのあるその動きに思わず相好を崩しながら、俺はゆっくりと釣り糸を引き上げた。
やがて、釣り糸を指先で掴んだメリアが、暗い海面に姿を現せた。
「どう、アデル。釣れてる?」
「今日はまだボウズだよ」
彼女がゆっくりと海から上がってくる。
肩まで伸びる癖のある赤毛。蒼く澄んだ切れ長の瞳。水に濡れた肢体は月明かりを浴びて、透き通るような白さを際立たせている。
紫色の腰布から下にはタコに似た八本の足が蠢いていた。彼女は人間ではない。スキュラと呼ばれる海の魔物だった。
「そう。まあ、アデルって釣りが下手だものね」
岩場に上がってくるメリアのために、俺はそっと体を脇に寄せた。そこにメリアが長い触手を器用に折りたたんで腰を落ち着かせる。服を通して伝わる彼女の体温が少しだけこそばゆい。
視界の端に映るメリアの表情には、かすかな笑みが見て取れる。白磁のような頬に少しだけ赤みが差していた。
「いいんだよ。もう一番の大物は釣り上げたし」
「それって私のこと?」
「他に誰がいるんだ」
問いかけに小さく首を振りながら、釣り糸を海に投げ込む。釣り針は暗闇の中へと飲まれ、あっという間に見えなくなった。
針が海に落ちる音にメリアの芝居がかった溜息が重なった。
「なら間違ってるわ。アデルが私を釣ったんじゃなくて、私がアデルを捕まえたのよ」
「捕まった覚えはないんだがな」
「骨抜きにされた、でもいいわよ」
「骨がないのはメリアの足の方だろう」
メリアが口を噤む。それが不快感によってではない事は、忍び笑いから伝わってきた。
一際強い海風がメリアの髪を弄ぶ。彼女は顔を上げて、空に見入っていた。つられるように俺も空に目を向けた。
「アデルと会ったのも、今日みたいな夜だったわね」
彼女の言葉に、かつての記憶が蘇る。メリアと出会ったのも今日みたいに月の綺麗な夜だった。
満月の浮かぶ静かな海。打ち寄せる白波の中、彼女はただじっと月を眺めていた。降り注ぐ淡い月明かりに照らされる彼女は幻想的で、この世のものとは思えない程、美しかった。捕まったという表現はたしかに間違っていないかもしれない。はじめて会ったその日から、俺はメリアに魅了されているのだから。
月日が経つのは早いものだ。あれからもう一年が経とうとしている。
「あの時のあなたには驚いたわ。だっていきなり、月が綺麗ですね、なんて言うんだもの」
眼差しを夜空に投げかけたままメリアが呟く。言葉の意味が分からず、俺は思わず眉をしかめていた。
別におかしい事をいったつもりはない。本当にあの日の月は綺麗だった。例えそれが、彼女に見とれていた事を誤魔化すつもりで出た言葉だとしても。驚かれる理由はなかったはずだ。
そんな考えが伝わったのだろう。メリアが苦笑を浮かべながら説明してくれた。
「その言葉、ジパングだとプロポーズの言葉なのよ?」
「…そうだったのか。だからあの時、顔を真っ赤にして逃げたのか」
「あれは魔物としては、一生の不覚だわ。どうせならそのまま襲っちゃえばよかった」
メリアは屈託のない笑みを浮かべながら肩を震わせていた。思えば、彼女がこうして笑う姿を見せるようになったのは、ここ最近の事だ。昔のメリアはどこか硬さの残る表情を浮かべてばかりだった。彼女はこうみえて臆病で、人見知りの傾向がある。それは、初見で俺から逃げ出した事からもよく分かる事だった。
彼女は見知らぬ相手と接することを極端に恐れている。人目のある昼間を避けて夜中に逢瀬を重ねているのも、それが理由だった。
「今日は寒いわね」
強い海風が飛沫を巻き上げ、俺たちの体を濡らしていく。吹きすさぶ風は冬の到来を告げているようだ。
メリアが濡れた体を擦り寄せてきた。甘えるような彼女の動きを感じながら、俺は小さく呟いた。
「もうそろそろ冬だからな」
「…それだけなの?」
メリアは恥らうように顔を赤らめ、潤んだ瞳で俺の事を見つめている。不満そうに唇を小さく尖らせる様子に、思わず苦笑が零れた。強気な割に臆病な彼女らしい曖昧なアプローチだ。
俺は釣り竿を傍らに置き、彼女の柔らかい体を抱き締めた。俺の肩に顎を乗せ、メリアが小さく呟いた。
「もう…女に恥をかかせるなんて…あなたって本当にひどい人ね」
「悪かったよ」
「だめ。許さないわ」
細くしなやかな腕で掻き抱かれるた俺の体に、ゆっくりと触手がまとわりついてくる。彼女の足は、その一本一本が俺の脚程も太さがあるというのに、俺の手の何倍も細やかに動く。そんな繊細で長い触手に絡め捕られた俺は、あっという間に衣類を奪われてしまった。
「なんで服を脱がすんだ?」
「ふふっ、女に恥をかかせた罰よ」
潮風が肌に突き刺さる。冬を間際に控えた海風は、思っていた以上に寒かった。
無意識に震える体を、メリアがぎゅっと抱きしめてくる。素肌に感じる彼女の体は暖かかった。
「たしかに、少し寒いな」
「そうね。でも、人肌で暖めあうには丁度いいわ」
はらりと布が落ちる音を耳にしながら、俺たちはどちらともなく唇を合わせた。
二人の体の中で、形のいい双丘が潰れている。わずかに震える体を掻き抱き、俺は彼女の唇に舌を入れていった。メリアは嬉しそうに頬を緩め、自ら舌を絡ませてきた。潮と甘さの混じった不思議な味わいが口の中へと広がっていった。
「んっ…ちゅっ…♪」
舌を絡ませ、歯茎を舐り、舌先を頬肉に擦り付ける。貪るような濃密な口付けに、メリアの唇から涎が零れ落ちていく。彼女はそれを気にする事なく、俺の首に両手で回したまま、キスに熱中していた。
「んっーっ…んっ…ふぅっ、んっ…♪」
蛸足を甘えるように絡みついてくる。粘液で塗れた触腕は、それ自体が甘い香りを放っていた。
彼女は二本の腕と八本の足、そのすべてを使って俺の体を刺激していく。粘液で濡れた触手が腰を這い回り、脇や内腿といった敏感な部分を撫で回す。吸盤が首筋に吸い付く感覚に、寒さとは違う理由で体が震えた。
「ふぁ…んっ…ちゅっ…♪」
月明かりに照らされたメリアは、蕩けた笑みを浮かべている。青く澄んだ瞳は情欲に揺れ、整った美貌は淫蕩に歪み、熱に浮かされた眼差しは俺の事だけを見つめていた。そこに普段の落ち着いた様子は欠片も存在しない。彼女は今、俺を求めている。ただの繁殖相手としてでも、餌としてでもなく。たった一人の、情愛を結ぶべき相手として、俺という存在を全身で欲していた。
細く伸びた腕を、しなやかな腰を、柔らかい胸を、そして長く柔らかい触手を。メリアはそのすべてを俺に擦り付け、二人の間の隙間を埋めようと必死に動いている。
降り注ぐ口付けは、どんな雄弁な言葉よりも深い愛情を表していた。唇を交わらす度、放たれる甘さが増していった。
「んっ…ちゅるっ…れろっ…んっ…♪」
メリアが扁平な舌を絡め、柔らかい唇を押し付けてくる。口の中に広がる甘い蕩けるような味。それを嚥下すればすればする程、俺の体は火照っていった。弾力を持った吸盤が、全身にキスをするように吸い付いてくる。月明かりに照らされた俺の身体には、メリアがつけた無数の痕が残っていた。彼女は自分の印を残そうと必死だった。
「アデルぅ…♪」
媚びるよう声色が薄い唇から漏れていく。彼女の腰からは、先ほどから淫靡な水音が絶え間なく聞こえていた。
腰と触手の境界面。秘裂から溢れた愛液が、彼女の脚を濡らしていた。メリアはそんな秘所を押し付けるように肢体をすり寄せてくる。充血しきった一物に押し付けられる肌は、驚く程にきめ細かく、吸い付くような感触を与えてきた。
「アデルのこんなに大きくなって…それにすっごく…いい匂いがする…♪」
メリアはわずかに腰を引きながら、触手で俺の脚を開いていく。露になったそそり立つ一物を見て、彼女は艶のある吐息を漏らした。全身と唇を絶え間なく愛撫され続けた俺の怒張は、既に十二分に充血していた。
「触ってもいないのにこんなにしちゃって…これで触ったらどうなるのかしら…♪」
一本の触手がそろそろと太腿から腰の付け根へと這い上がり、怒張へと巻きついてくる。触手が上下に動く度、吸盤が肉竿の表面を引っ張り、その感覚が俺の背筋に電気を走らせていった。
「くっ…あ…」
「アデルったら、相変わらず敏感よね…♪ オチンポの振動が、足にしっかり伝わってくるわ…♪」
根元から蛇のように巻きついた触手の先端が、カリ裏と亀頭の両方を同時に刺激する。その間も、吸盤は竿にキュウキュウと引き締めて離さない。彼女の足で愛撫されていく程、肉茎は硬さを増していく。自分でも痛いほど勃起しているのが理解出来た。鈴口から漏れ出す先走りが、感じている快楽の凄まじさを物語っていた。
「んっ…アデルのオチンポがビクビクしてる…それに汁もこんなに溢れて…♪」
触手の先端が鈴口を擦り上げ、漏れ出た先走りを器用に絡め取っていく。彼女は攻撃の対象を、一物の先端に定めたようだった。
たった一本の触腕が器用にしなり、カリ裏と亀頭、そして鈴口の三点を同時に攻め立てる。そして根元の方から竿を包み込む事も忘れない。
肉棒全体を翻弄する適度な締め付けと吸盤による愛撫。スキュラであるメリアの足だからこそ出来る芸当に、俺は射精感を高ぶらせていく。
「ふふっ…こんなにオチンポをパンパンにさせて…そんなに私のタコ足は気持ちいいかしら…♪」
「あ、あぁ…っ」
メリアが荒く息をつきながら、恍惚とした表情で問いかけてくる。俺はそれに余裕なく答えることしか出来ない。下手に声を出したら、その瞬間に射精してしまいそうだった。
一物が大きく跳ねる度、彼女は嬉しそうに頬を緩め、触手に力をこめてくる。性器への直接の刺激だけではない。体中で受ける抱擁と愛撫。睾丸から上がってきた精液は、既に尿道の中から溢れそうだった。
込み上げる射精感を懸命に抑えながら、俺はメリアの体を抱き締めた。そんな俺を愛おしげに両手で掻き抱きながら、彼女は顔中に口付けの嵐を投げかけていた。
「メ、メリア…それ以上は…」
「いいのよ…好きなだけ、出して…♪」
囁きが耳元を撫でていく。
メリアは俺の首筋に甘噛みをしながら、一物を覆う触手の動きを激しくしていった。女性器のように蠢く触手が竿全体を扱き、敏感な先端を締め付けてくる。そして鈴口に無数の吸盤が吸い付いてきたまさにその瞬間。俺の腰は激しく震えだし、あっけなく溜め込んでいた精液を撒き散らした。
「あぁんっ、熱いっ♪ あなたの精液が足の中でビュクビュクあふれ出てるっ♪」
彼女は満面の笑みを浮かべ、痙攣を繰り返す怒張へと刺激を送り続けている。尿道に残っている精液まで搾り出そうとするその動きに、俺はひたすらに欲望を吐き出し、彼女の触腕を白い染め上げていった。
「あぁっ…凄い…私の足、こんなにベタベタになっちゃった…♪」
射精を終えた一物から触手が離れていく。メリアの言う通り、彼女の足は俺の精液がドロドロと絡み付いていた。
メリアはそんな精液で白く染まった触腕を持ち上げ、自らの口元へと運んでいく。そして、俺が見守る中、彼女はそれをあえて見せ付けるように、音をたてて自らの口に含んでいった。
「ちゅるっ…くちゅ…はぁ…やっぱりあならの精液って…んっ、ぺろっ…すれきな味…♪」
白く塗れた自らの足を、メリアは至福に染まった表情で熱心に嘗めあげている。まるで口の中に広がる精液の味を楽しむように、白い精液を舌先で転がすその光景は、とても淫らなものだった。俺が見守る中、彼女は見せ付けるように嚥下を続けた。
「んっ、んっ…こくっ…はぁぁっ…すごく濃くて…甘くておいひぃ…んっ…こんなの、舐めてたら…おかしくなっちゃう…ちゅるっ…♪」
彼女の舌先が触腕をなぞり、唾液の跡をつけていく。既に精液の大半は彼女の口へ消え、白く染まっていた触手はてかてかと卑猥に輝いていた。それでも、メリアは物惜しげに触手を嘗め回し続けている。僅かな残滓も残さないと言わんばかりの執拗さに、俺の中の興奮が積もっていく。射精を終えたばかりだというのに、肉竿は既に堅さを取り戻し始めていた。
「アデルのオチンポ、出したばかりなのに…また大きくなってる…♪」
メリアが、膨れあがった怒張に気づき、わずかな笑みを零す。唇の端を吊り上げるような微笑は、普段の彼女なら決して見せない蟲惑的な熱っぽさが含まれていた。それが何を意味するかは、明白だった。
「これなら…もう一回出来そうね…♪」
メリアが巻きつけていた足を蠢かせ、俺の脚の間で器用に腰を落ち着かせる。正面から向かい合った彼女は、小さく笑みを浮かべ、一物の上から締まりのいい膣口を押し付けてきた。わずかに腰が揺れる度、秘裂から漏れた愛液が俺の陰部を濡らしていく。前戯もしていないというのに、メリアの体は受け入れる準備を終わらせていた。
「今度は膣中で…ね…♪」
「あぁ…次は一緒に」
「そうね。二人で気持ちよくなりましょう…♪」
俺が小さく頷き返すと、メリアは喜色に溢れた表情で腰を落とし始める。
締まりの強い膣口が先端を押し返す、わずかな抵抗感。それを潜り抜けた一物は、狭い膣道の中へと呑み込まれていった。その途端、身を焦がすような快楽が、俺の全身を駆け巡った。
「んふぁぁっ…入って、きたぁぁっ♪」
引き締まった膣口は肉竿を締め付けながら、ゆっくりと奥へと誘っていく。メリアの秘肉は、それ自体が吸盤のようだ。膣道は十二分に蜜で濡れているにも関わらず、その細さが実感出来るぐらい締まっている。そのため、陰茎が奥へと進めば進むほど、狂おしいぐらいに食らいついてくる。
膣内を埋めつくす無数の肉襞が膨れ上がった怒張に吸い付き、熱くうねった膣肉は肉棒を絡め取るように包み込んで離さない。滾々と湧き出る蜜液が、肉棒が埋め込まれる度に腰を濡らしていった。
「んぁ、すごいっ♪ 私の膣中を、オチンポが開いてるぅっ♪」
嬌声を木霊させながらメリアは激しく腰を震わせていた。先ほどまでとは異なり、今の彼女の声には余裕がなかった。
腰が大きく動く度に、肉竿を刺激する位置が変わり、俺の事を翻弄していく。カリ裏に吸い付いていた肉襞が擦れながら竿を撫で上げ、膣壁が大きく波打って亀頭を締め上げる。ぴったりと隙間なく張り付いた淫肉は、数え切れない程の交わりを経て、すっかり俺の敏感な部分を覚えこんでいた。その事が俺の興奮を昂ぶらせていく。
「あぁっ、あぁぁっ、すごいっ、アデルのがっ、膣中で暴れてるっ♪」
わずかに動く腰を押し上げ、俺はメリアの膣奥へと肉竿を進めていく。押し広げられた細い膣道は巧みに陰茎を飲み込みながら、適度な刺激を与えてくる。膣口が根元からこすり上げ、肉襞が全体を締め付ける。膣肉が吸い付くような収斂を繰り返す度、メリアは白い肌を仰け反らせて悦んだ。
「ひぅっ♪ らめっ、そんなに激しくっ、押されたらっ、あぅっ、んはぁぁぁぁっ♪」
彼女の体が一際大きく跳ねた瞬間、拘束の緩んだ膣道を肉竿が一気に駆け上がる。
亀頭が柔らかい独特の弾力を持った部位にぶち当たる。それが子宮口だと気づいた時には、メリアは大きく体を震わせて俺にしがみついてきた。
「んんんんんっ♪ そこっ、そこ弱いのっ♪ ふぁぁっ、んんっ♪」
二本の腕と八本の足、そのすべてが俺の体を強く抱く。拒絶するような声とは裏腹に、メリアは自ら腰を振り乱し、腰に回した触手で一物を更に奥へと押し込んでいる。俺はそんな彼女の無言の要望に応じるべく、子宮口を強く擦り上げた。
「ふぁぁぁぁっ♪ 私の奥にっ、熱いの、熱いのがあたってるっ♪」
彼女の嬌声を聞きながら、激しく腰を打ち付ける。膣内で攪拌された愛液が、腰を引く度に白く泡立って溢れ出していく。俺はそれを再び押し込むように、子宮口に向けて一物を打ち付けていった。蜜の跳ねる水音が夜の海に淫らに響いていた。
「あぁっ、ひぅっ、んふぁっ、んっ、んっ、んっ、ひゃぅぅぅっ♪」
既にメリアは体中で汗を浮かばせ、俺の成すがままになっている。
腰を振る度、彼女の香りの甘さが濃密になっていく。その蟲惑的な匂いに誘われるまま、俺はひたすらに腰を振り続けた。
時に楕円を描きながら、時に子宮を持ち上げるように突き上げながら、吸い付いてくる淫肉を熱心に捏ね回す。子宮口を中心に、俺はもてうる限りの方法で膣内を竿で押し広げ、亀頭をこすり付けていった。メリアはだらしなく舌を伸ばしたまま、呂律の回らない声を上げ始めた。
「アデルぅっ、きしゅ、キスしてぇっ♪」
舌を伸ばしたまま、メリアが顔を近づけてくる。俺はそんなだらしなく伸びた舌に吸い付き、自らのものを絡めていった。二人の間で唾液が垂れ、糸を引いて落ちていく。しかし二人とも、そんなことを気にする余裕もなくなっていた。
俺はメリアを強く抱きしめ、彼女は腕と触手で絡み付いてくる。両者の隙間が完全に埋まり、熱と粘膜が交わりあい、垣根がなくなっていく錯覚すら覚える程、濃密な性交だった。
「んーっ♪ んっーっ♪」
鼻にかかった声をあげながら、メリアはキスに没頭していた。トロンと蕩けた表情は既に半ば朦朧としており、小さな痙攣を繰り返す腰は一心不乱に揺れ続けている。
快楽によって下がりきった子宮口が、わずかに開閉を始める感覚が亀頭から伝わる。俺はその子宮口に向けて、ひたすら肉竿を叩きつけていく。腰を打ち付ける度に、溢れ出した蜜が激しい音を立てていた。
「らめっ…そんなに、はげしくっ、ついたりゃっ…♪」
打ち寄せる快楽の強さのせいか、彼女がキスをやめて訴えてくる。しかし汗と涙で塗れた顔は、更なる快楽を欲していた。だから俺は彼女の言葉を無視し、むしろ突き入れを激しくしていく。
その選択は正しかったようだ。突き入れに応じるように、彼女の足が俺の体を強く抱きしめる。痕が残りそうな程の強い抱擁が、彼女自身の限界の近さを物語っていた。
「やらぁっ、一人れっ、イきたくないぃっ♪ アデルもぉっ、一緒に、いっしょにイ…ってぇっっ♪」
竿の根元から這い上がってくる突然の新しい快感。わずかに視線を下に向ければ、メリアの触手が俺の睾丸を優しく揉み解していた。今までとは大きく異なる箇所を不意打ちのように刺激された事で、俺の体に激しい快楽が走っていった。
虚空を見つめて意識を朦朧とさせながらも、メリアは吸盤と触手を巧み使って、俺の睾丸から精液を尿道へ送り出そうとしていた。
「ふぁぁっ、あぁぁっ♪ あぅっ、ひゃぅぅっ、んんっ♪」
意味をなさない喘ぎ声。充満した彼女の香り。汗を浮かべて小刻みに痙攣する肢体は、今まで以上に俺の体に吸い付いて離れない。
蜜で潤う膣肉が絡みつき、俺の精を求めて細かい収縮を繰り返す。肉茎が取れそうな程強い締め付けに、思わず俺の顔が歪んだ。そんな反応に気づく様子もなく、メリアは回していた両手で俺の背中に爪を立てている。
「あぁぁぁっ、らめっ、イっ……ひゃうぅぅっっ♪」
白い喉を仰け反らせ、メリアの体が大きく跳ねる。
絶頂を迎えた肉壷が竿を締め付け、吸着した子宮口が亀頭に激しく吸い付いてくる。縮まった膣口からは愛液が止め処なく溢れ出し、腰を暖かく濡らしていく。刺激が俺の体中を駆け巡り、尿道を駆け上がった。
俺は彼女がもたらす刺激に従い、自らのすべてを最奥目掛けて注ぎ込んだ。
「ひゃぁっ♪ れてるっ♪ あでるの精子っ、わらしの子宮にたくひゃん、れてるっ♪」
根元からこみ上げた精液が、メリアの子宮口を目掛けて勢いよく飛び出す。吸い付くような収縮を繰り返す膣内。そのあまりの刺激の強さに、俺は腰を動かすことが出来ないでいた。焼け付くような快楽を堪えようと唇をかみ締め、ただひたすらに精を放ち続けた。
「んぁっ、しゅごい♪ すごくあっついの、まら出てりゅぅっ♪」
二度目の射精にも関わらず、濃密な塊が鈴口から溢れ出ているのが自覚できた。
メリアはそんな精の迸りを受けながら、舌をピンと伸ばしたまま、嬉しそうに背筋を大きく痙攣させていた。彼女の肉壁は一滴も逃さないと言わんばかりに蠢動を繰り返し、白い獣欲を受け止め続けている。
精液が膣中へと解き放たれる度、メリアは更に奥へと導くように、両手と触腕のすべてを使って俺の体を抱き締める。
「全部らしてぇっ♪ わたしの子宮、あにゃたの子種れっ、一杯にしてぇっ♪」
いつまでも続くのかと錯覚してしまうほど、射精は延々と続いていた。睾丸に絡みついた彼女の足が蠢く度に、溜め込んでいた精子がこみ上げ、膣中へと送られていく。
彼女の動きは、俺自身のすべてを吸い取るようだ。膣肉も、子宮口も、触手も、吸盤も、体も。メリアは俺を捕らえたまま、決して離そうとはしなかった。
「あぁっ、たくしゃんっ、れたぁっ…♪」
長かった射精も次第のその威力が弱まっていく。俺は最後の一絞りを子宮口に注ぎ込み、ゆっくりと一物を引き抜いた。
名残惜しげに絡み付く秘肉から、白く濁った粘液がドロリと音をたてて溢れ出す。それが精液なのか愛液なのか、攪拌されつくして泡立っているために判別することは出来ない。俺は荒い息を吐きながら、それを見つめていた。
「はぁ…はぁ…メリア…さすがにこれ以上は無理だ…」
「あっ…ふぁぁっ…あづいっ…♪ 膣中が…子種で、あちゅいよぉっ…♪」
メリアに俺の声は届いていない。小さな痙攣を繰り返す体は、事後の余韻に浸っていた。
彼女が意識を取り戻すまで、俺は八本の脚に絡みとられたままだった。
「痕…ついちゃったわね」
背中越しにメリアに抱きしめられながら、俺は夜の海を見つめていた。
激しい情事を終えた後、俺はようやく拘束から逃れることが出来た。体には彼女によってつけられた無数の痕が残っている。ありとあらゆる所についた痕跡が、情事の激しさと彼女の乱れ具合を雄弁に示していた。
細くしなやかな指先が、体中についた痕を撫でている。痛みは感じない。ただ、かすかに伝わる感触が、少しだけむずがゆかった。
「まあ、あれだけ激しければな…」
「…お願い、言わないで…恥ずかしいから」
東の空は暗く、まだ朝が来る気配はない。暗い海には潮騒だけが木霊している。後頭部に押し付けられた双丘からは、彼女の静かな鼓動が聞こえている。わずかに伝わる心音が疲れた体に心地よかった。
「…あなたの事になると、つい我を忘れるのよ…」
海に視線を投げかけながら、メリアがぽつりと呟いた。見上げた彼女は耳まで真っ赤に染まっていた。
普段は冷静な癖に、情事になると途端に甘えて俺を求めてくる。そんな彼女の二面性がたまらなく愛おしい。しかしそれを言えば、彼女を余計に追い詰めてしまうだろう。だから俺は、体に回された彼女の両手を握り締めるだけに留めた。
「ふふっ…」
「何がおかしいんだ?」
「なんでもないわ」
八本の足で俺を抱きしめながら、メリアは朗らかに笑っている。満月を背景に笑う彼女。それはまるで一枚の絵画のように美しい姿だった。
潮風が頬を撫でていく。その感触が火照った体にはやけに肌寒く感じられた。これからは人肌の恋しい季節になるだろう。出来ることなら、そんな寒い冬を彼女とずっと過ごしていたい。いや、冬だけではなく、これからもずっと。俺はそれを望んでいる事を自覚していた。伝えるならば、今が最適かもしれない。
「なぁ、メリア…海の中から見る月は、一体どんな風に見えるんだろうな」
「え、海の中の月…?」
メリアが小さく首を傾げて疑問を返してくる。俺はあえてそれには答えず、沈黙を保った。
察しのいい彼女はすぐにその言葉を理解したようだった。思案に暮れていた表情が、見る見るうちに赤くなる。触腕の先端は落ち着きがなく揺れ始めていた。
「えっと…本当に見てみたいの?」
「あぁ、出来れば…その…二人で、見てみたい」
彼女からの返答はない。けれど、俺の遠まわしな告白が伝わった事はすぐに分かった。真っ赤に染まった顔は、今まで見たことがないぐらい喜びに満ち溢れていた。
全身が八本の触手と二本の両手に包まれる。その抱擁を感じながら俺はメリアの細い腕を握り締めた。互いを抱く腕は、決して相手を放さない。そしてこれからも、離れる事はないだろう。
満面の笑みを浮かべた顔を隠すように、俺の肩に顔を埋めたメリアが小さな声で呟いた。
「月が綺麗ね」
「あぁ、そうだな」
夜空には満天の星々と真円を描く月が輝いている。
白い月明かりに照らされながら、俺たちは静かに口付けを交わした。
12/01/08 05:19更新 / メガンテ