剣姫、牛鬼を退けて牛鬼に転ずるのこと
牛鬼とは嵐のようなものだ。
身を潜めて通り過ぎるのを待つよりほかに避ける手立てもないが、身を潜めていたからといって災いを受けずに済むわけでもない。
***
人が血にまみれて高笑いする様を、美しいと思った。
修理は自らに降りかかった返り血をぬぐうのも忘れて、そこに立ち尽くすより他になかった。
牛鬼を追い払うのにはたっぷり二刻(四時間)ほどを要した。
それでも日の国全てに語られるべき武勇伝であろう……牛鬼を相手にして、なんの術法も奇特も無しに、ただの二人で追い返したのだから。
そこは戦場であった。いや、誰がそれを信じるだろう?一部始終を見ていた修理本人にしてからが信じかねるというのに。
木々はなぎ倒され、土は吹き飛ばされて岩肌を晒し、その岩にしてからが半ば砂と化していた。城攻めの杭でも開けるのが難しそうな大穴の底には陶器のかけらのようなものが転がっている。
その正体は牛鬼の足がたたきつけられて焼き上がった土だ。
再びこの一帯を緑が覆うことになれば、さぞ絶景として人を呼ぶだろう。
ただし、山が崩れてしまわぬ限りは。
その中心に立つものが、十五、六の小娘であると、いったいこの世の誰が信じるだろう?
***
伊吹家の紅姫は武芸の達者である。
この意見に賛同するものは、実のところそれほど多くない。
彼女を知るものはかぶりを振ったあとこう続けるのが常だ――――強いだの弱いだの、そのような尺度で計れるものではない。
さらに続けるだろう。たとえば狩人の放つ矢は雷より弱い。
だからといって狩人が恥じるだろうか?
火矢で焼け出されたものが射手の腕前を気にするだろうか?
もはや人ではない。人の形をした戦だ。
天地も己も飲み込んで顧みるところのない、燎原の火そのものだ、と。
これでまだ己の技量を鼻にかけるとか、権威を振りかざすとか、酒色をむさぼるとか、いっそ辻斬りをたしなむとか。
そういう態度を取っていればあるいは人がましく扱われることもあったかもしれない。
だがそれもない。雪をたたえた山嶺のごとく人を寄せ付けぬ美貌には、笑みも涙も、怒りすら無縁のものであろうと思われた。
そして――――行いを決する理由も、また人間離れしているのである。
先日、流れ者の無頼が六人がかりで城下の豪商をかどわかすということがあった。
誰にも顔を見られず一滴たりとも彼我の血を流さず、およそこの手の犯罪としては理想的といってもいい首尾で意気揚々と根城に引き返した彼らを待ち受けていたのは。
赤樫の木刀を携えた、紅姫であった。
六人ことごとくを打ちのめして帰ってきた彼女に、家臣たちはこぞって質問した。
何故に賊の根城へ先回りできたのか。その問いに、紅姫はこともなげに答えた。
そちらのほうが城から近かったからだ。
……故に紅姫の立場というのは実に厄介なものである。
泰平の世に一国を覆してなお余りある武力を持ち、その行動は天命にも似て正しく、天運にも似て推し量ることもできない。
嫁に出そうにも生ける武神を娶ろうという度胸のある若君などいない。
伊吹家に世継ぎの心配が「ない」こともまた面倒な状況に拍車をかけている。極論すれば放っておいてもいいからだ。
家の秩序を第一とする家臣達の中にはいっそ放逐するか命を召し上げてしまえばどうだと酒の肴に話すものがあるほどだが、それが実行に移されたことはない。
かくして紅姫は他国の姫君がうらやむ――――あるいは想像したこともない自由の中にあった。
彼女がそれをどう思っているのか、誰にもわからないことではあったけれども。
***
……哄笑はまだ続いている。
渦巻く風はまだ健在な枝を鳴らし、不意に厚くなりはじめた雲から響く遠雷の音とあいまって、この世のものとは思えない不気味な唸りを上げていた。
あたかも天地そのものが紅姫の狂奔に煽られてでもいるかのようであった。
夏目修理は紅姫の近習である。お互いに幼少の頃より共に過ごし、寵愛を受けている、と言って差し支えない。
故に牛鬼の討伐という大任にもただ一人で随行した。
……純粋に、紅姫の武勇に比肩するほどの技量を持ち、その内心を多少なりとも汲み取れるものが家中にいないというだけの理由であったが。
修理は今やその肩書きだけで珍重されるようになってしまった男の忍び……くのいちの婿という意味ではない、本当の意味での忍者である。
感情を押し殺すことには慣れていた。臓腑をくすぐられるような奇妙な感覚が脳髄に上る前に呼吸を整えてそれを打ち消す。
聞き惚れていたかったのに、と未熟な部分が言うが、無視できる範疇だった。心配しなければならないことは二つ。
紅姫の怪我の把握と、急変する天候への備えだ。
「姫さま――――」
哄笑が止んだ。心なしか吹き荒れる風も遠雷の音も鳴りを潜めた。
その名の通り全身を朱色に染めた紅姫が振り返り、目を見開いた。そこに修理がいることに今初めて気づいたとでも言いたげな顔だった。
暗くなってきた光の加減か、両目が金色に見えた。
「修理か」
修理は信じがたいものを見た。実は自分はとうに死んでいるのではないかと考えたほどだ。
黙して笑わずただ斬るのみ―――ゆえに石鬼の異名すら取る古今無双の剣客が、こちらを向いて微笑んだのだ。
その声に修理が反応するよりも早く、紅姫の四肢から力が抜け、そして演目を終えた糸繰り人形のようにその場に倒れ伏した。
慌てて駆け寄る――――抱え上げた身体が暖かい。
屍ではない。息はある。脈もある。
骨は少なくとも砕けていないし、血が止まらぬような深傷もない。
背中に担ぎ上げて紐でくくる。乳房が背中に触れる。胸に不意の、そして未知の痛み。
最初の一歩目を踏み出しながら考える――――そして理解する。これは女の熱だ。
そして驚く。なんとも間抜けなことに、修理は生まれて初めて、長年仕えた主を女だと思ったのだ。
***
修理は庵に駆け込んだ。紅姫がこの山中でねぐらにしていた場所だ。
なにやら物騒かつ愉快な謂われがあるそうだが、つとめて気にしないことにしている――――紅姫にまつわるその手の話題をいちいち気にしていてはキリがない。
修理なりの処世術であった。
取り急ぎ自分についた牛鬼の返り血や泥汚れを落とし、それから主のために湯を沸かし、手ぬぐいを絞る。
寝ている主を拭き清めるのに、修理は往生した。行為それ自体にではない。思わずその肌に指を食い込ませたくなる自分の心情に、だ。
脂汗がにじむ。息を荒げるのを止めるので精一杯。男は狼だしまたそうならざるを得ない――――クノイチたちが笑っていたことを思い出す。
結局、拭き終わるのにかかった時間はいつもの三倍ほど。
打擲されても文句は言えないだろうが、あいにく彼の主はその手の傲慢とは縁がないし、第一意識が無くては動くこともできまい。
ともあれ清めていて気がついたことがある。紅姫の負った傷の軽さだ。
深傷こそ避けられたものの、それこそ嵐に匹敵する牛鬼の暴虐を前にして人体が不可避に負ったはずの無数の傷が、ことごとく消えて失せていた。
その代わりとでも言うように、なにやら全身に彫り物のような経文のような曰く言い難い模様が浮かび上がっている。
修理はこれを見たことがある。それも、ごく最近。ただそのあたりの記憶にもやがかかっていて、正体を吟味することができないでいるのだ。
その記憶に焦点が合ってきて、なにやら恐ろしいものが浮かび上がってきたころ。
紅姫が目を開いた。そう見た次の瞬間には、すでに床から上半身を起こしている。もしこれが戦場の動きであれば百人のうち五十人までが気づきもせぬうちに首を落とされ、気づいた残りの四十九人も、身動きを取れないまま殺されているだろう。
「ここは山中の庵で私は気絶していて……半刻ばかりが過ぎた、というあたりか?」
ろくに見回しもせずに言った言葉に、それでも頷くほかない。事情を語るのに一切の過不足が無いからだ。
「お加減はいかがですか、姫様」
無言のままの手招きに応じて、正座したままにじり寄る。およそ主従に、あるいは未婚の男女に許された距離はすでに爪半分ほど過ぎていた。
さすがにこれ以上は−−−−と腰を引こうとした刹那、それが来た。
濡れたような温もり。
先ほどの起床と同じか、それを凌駕するほどの勢いと間合いの外し方である。
“それ”を唇だと理解できた理由は、視野に紅姫の顔以外の何者も写っていなかっただけだ。
口の中を遠慮なしに舐りまわされる。初めて水飴や蜂蜜を口にした童のような勢いだ。
思わず紅姫の肩に手を伸ばすが、指先が触れただけで止まる。
突き放そうとしているのか迎え入れようとしているのか----あるいは自らがどう思っているのか、わからない。
ただ肌の熱だけが染みてきて、それが背筋を上って――――その悦楽で、逆に目が醒めた。
肩を思いきり押しやる。突き放すためというより、それを手がかりにして飛び退るためであった。
「……お、お戯れを!」
「戯れ?」
立ち上がり、襦袢が音もなく畳に伏せる。
一歩を踏み出すたびに音がする。
綱が切れかかるときの音、大樹が音を立てて倒れるときの音。
筋が膨らみ骨がきしみ、内側から形が変わっていく音。
強いものが、より強い力でどうしようもなく変貌する、音。
ふき取ったはずの血が肌から染み出していく。それが固まって逆立ち、剛毛が全身を覆う。
文様が集まって蜘蛛を象る。皮膚を突き破って伸びた蜘蛛の足が固まり、腕もまた膨れあがって異形に転じる。
人はそれを、牛鬼と呼んでいた。
「修理。考えたことはなかったのか?」
凪いだ水面に似て穏やかな表情だけは変わらない、否。
口元に浮かんだ、ただの女のように艶めいた笑みだけが、目の前に立っている巨大な影が決定的に違うものだと修理に教えていた。
「なぜ私がお前をそばに置いていたのか、考えたことは無かったのか?」
返答に窮する。忍者にはあるまじきことに、行動を思考に持って行かれた。
なぜならその問いこそ、修理がこの数年来ずっと抱えていたことだからだ。
「私は考えたことがなかった。そういうものだろうと思っただけだ」
牛鬼の蜘蛛脚が畳を破る。増えた重みに床下の骨組みが悲鳴を上げた。
目に見えて力そのものとなった女が、目の前の獲物に歩を進めている。
「だが違った」
退くことはできない。こちらに向かってくるのは自分の主だからだ。
進むことはできない。こちらに向かってくるのが牛鬼の姿だからだ。
紅姫が打ち振った腕が伸びる。否。それは牛鬼が獲物を捕らえるのに使う綱であった。
人の鍛えたいかなる鋼よりも強靱な天然の鞭が、古今無双の技量をもって襲いかかってくる。忍びの体術とて避けようのない一手である。
無論神仏の助けも天魔の気まぐれもなく、水が低きに流れるよりも、炎が夜を照らし、群雲が月を隠すよりもなお自然に両腕を縛られ、そのまま引き倒されてしまった。
「私はお前が欲しかった。それだけだ」
腕が完全に拘束され、手を動かすこともままならない。
脚を動かそうとするたびに、騎手の練達に手綱を取られた馬のように引き止められ、また動かされる。
「動くな。怪我をするぞ」
いかなる手技によるものか、紅姫が異形の手先を捻ると荒縄のような蜘蛛糸から細い繊維がほつれ、修理の服の内側に入りこむ。
細引きが鎖帷子の輪を一つひとつ食いちぎり、忍びの業で鍛えられた防具が、ただの鉄くずへと堕していく。
牙をむく顔はまるで笑みのよう。胸元にこぼれおちる唾液が、責めに使う煮え湯よりも熱く感じた。そして熱いのは、胸元ばかりではなかった。
「男とはこんなものか?いや、それともお前がそういうものなのか?
なあ、修理。小娘のように組み敷かれてねじ伏せられても、男とは股座をいきり立たせるものなのか?」
一刻前の紅姫が発したものならまずその意図を問うだろう。あるいは誰がそのようなことを吹き込んだか、と。
そのどちらにせよ、知らないことであるのは明白だからだ。だが今は違う。反応を熟知した上で問うている。詰っている。
顔が火を発するほど熱くなり、すすり泣くような声が自分のものだと理解したころには、身につけた忍びの業は無意味となっていた―――何よりも、刃を支えるべき心が粉々に砕けてまったのだから。
「……ああ、そんな顔をするんじゃない」
獰猛な笑みを保ったまま、気遣わしげな声を出す。その意図するところを読み取って、修理の背中に怖気が走った。
「丸呑みにしてやりたくなるじゃないか」
首筋から顎の下にかけて、鼻面に到るまでを舐め上げられる。焼きごてのように熱く、蜜のように甘い感触に身震いし、あるか無いかわからないほどだった抵抗の意志が、いよいよ根こそぎにされた。
喉笛を牙で触られて、悲鳴を上げることすらできない。
せわしなく吐き出す息が熱い。視界が潤む。異形と化したはずの主の身体が……この世の何よりも美しく見えた。
「姫様……ひめ、さまぁ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
強くなってきた雨足が、すすり泣いて媚びを売り、許しを請う声を消してくれることを祈った。
ミイラ取りがミイラになるどころの話ではない。役立たずを通り越して、これではただの生け贄ではないか。
いずれ灰になるまで共にあるのだと思っていた。影に潜み影となって、ただ道具となって使い潰されることを良しとしていた。
人でなしとして育てられたからには、せめて人の役に立とう。そう思っていた。
ところが、今はどうだ。
色子のように組み敷かれ菓子のようにねぶられ、技は封じられ気概まで砕かれて。
どんな悪夢でも見たこともないほど惨めな目に遭って……だというのに、それを喜んでいる自分がいる。
ありえない、と忍びの者としての心得が叫ぶ。己が人でないのと同じように、仕える主を人と思ってはならない。
主とは忠誠という概念そのものであり、自らの決定でなくてはならない。
同じところに立つ、同じものだと考えてはならない。
だけど、と弱々しく応える声があった。牛鬼の血を浴びてから、急に胸の奥で疼きだした声だ。
まだ忍びの心得を刻み込まれる前の、名すら無かった、遠い昔の声。
一緒に来いと差し伸べられた手に触れたとき。名を尋ねられたとき、初めてその裸体を目の当たりにしたとき。
胸の奥に灯った火の名前を、何と呼べば良かったのだろう。
そうだ。自分はずっと。
この肌に触れたいと思ってきたのでは、なかったか。
「……っ!」
口から声にならない絶叫がほとばしる。
それに気づいたときには、牛鬼の……否、紅姫の露になった腹筋に顔を埋めていた。
獣じみた息を吐き、言葉も節度も何もかもを忘れて、ただひたすらに目の前の雌を味わう。
縛られているのがもどかしかった。身動きが取れないのが歯がゆかった。
喘いでばかりの口が、されるがままに粘液を吐き出す己の陰茎が、それに酔うばかりで、何も返せない己が悔しかった。
「姫様っ、姫様っ……!
ずっと、初めてお目にかかったときから、お慕い申しておりましたっ、姫様っ……!」
子供のように泣きじゃくる。
いや、それは正確ではなかった。
修理の中にはずっと、泣き虫と呼ばれていた小さな子供がいて。
ただ紅姫と出会った時から、主にふさわしい忍びであるようにと蔵に押し込められていたのだ……修理の心中にある蔵に。
今や姫はむき出しの雌となって修理の前にあり、泣いていた子供は、喜んで身を捧げる贄となっていた。
「嬉しいぞ」
その声が耳に届き腑に落ちるよりも早く……何とも比べることができず、何にも例えられないような、ただひたすらに強い、としか表現できないような。
強いて言えば、紅姫の剣技にも似た、“その”感覚が来た。
腰から脳天にかけて稲妻が走る。大鯨にでも飲まれたかのように、自分の中にあった何もかもが溶かされて貪られる。
行く先は煮えたぎった壺の中。
酒と蜜と肉と、とにかく酩酊と甘露と、あらゆる美味が一緒くたになったものが、もはや己を離れた修理の心身に襲いかかる。
「……っ、あ、ぅ、ふぅっ……♪いいぞ、修理っ……もっとだ、もっと、私にそれをよこせ……っ♪
お前の子種で、私を、孕ませてみせろっ……♪」
喜悦の声で、「自分」が肉体に戻る。
見上げれば泥をいじくり回すような濡れて粘ついた音を立てながら、紅姫が修理の腰に自らのそれを打ち付けていた。
破瓜を示す一筋の血は女陰からこぼれた粘液で薄まり、修理が吐き出した子種と混ざって、言われなければ判ずることは難しい。
「姫様、また……っ、はっ、また、出ますっ……!」
まして、腰を一度打ち付けるごとに新たな快楽の証を注ぎ込んでいるとなれば、なおさら。
滝の水を桶で受けるように、次から次へと新しい子種が作られていく。
あふれかえる身体とは逆に、心は餓えて乾いていく。喉が渇いたからと塩水を飲めば、このようになるだろうか。
七度を数える立て続けの射精の後、いつの間にか拘束は解かれていた。そうなれば後は獣のように貪るばかりであった。
どちらからともなく口をねじ込み舌を絡ませて、手で雌雄の粘液を混ぜ合わせて互いの身体に塗りたくる。
槍に似た足先で快楽のツボを押されたお返しに、いきり立った肉槍で紅姫のそこかしこをつつく。
乳房を吸いながら、子種を大きな手で搾り取られる。お互いに抱き合って、睦言を交わす……。
修理が紅姫から離れたのは、少なくとも一月の日数を射精が超過した後であった。
「……どうした?」
文字通り精魂尽き果てた修理を、余裕の笑みをたたえて紅姫が見下ろす。
そこに浮かんでいるのは満足と余裕を共に備えた表情で、あえて言えば「腹八分目」の顔だった。
「……姫様、その……厚かましい、お願いなのですが……どうか……その、俺と……夫婦に……」
なってください、が言えなかった。めおと、を言い終わる前に、口が紅姫の口で塞がれたからだ。
***
牛鬼とは嵐のようなものだ。
身を潜めて通り過ぎるのを待つよりほかに避ける手立てもないが、身を潜めていたからといって災いを受けずに済むわけでもない。
もし牛鬼を退けるものがあったとしても、それは同じ牛鬼に違いあるまい。
***
伊吹家の所領には鳴雲山と呼ばれる山がある。そこに足を運んではならない。
牛鬼が居を構え、夫と睦み合っているからだ。
噂ではその牛鬼、伊吹家の姫君が転じたものだとも言うが、あらゆる史書も古老も、沈黙を守るのみである。
身を潜めて通り過ぎるのを待つよりほかに避ける手立てもないが、身を潜めていたからといって災いを受けずに済むわけでもない。
***
人が血にまみれて高笑いする様を、美しいと思った。
修理は自らに降りかかった返り血をぬぐうのも忘れて、そこに立ち尽くすより他になかった。
牛鬼を追い払うのにはたっぷり二刻(四時間)ほどを要した。
それでも日の国全てに語られるべき武勇伝であろう……牛鬼を相手にして、なんの術法も奇特も無しに、ただの二人で追い返したのだから。
そこは戦場であった。いや、誰がそれを信じるだろう?一部始終を見ていた修理本人にしてからが信じかねるというのに。
木々はなぎ倒され、土は吹き飛ばされて岩肌を晒し、その岩にしてからが半ば砂と化していた。城攻めの杭でも開けるのが難しそうな大穴の底には陶器のかけらのようなものが転がっている。
その正体は牛鬼の足がたたきつけられて焼き上がった土だ。
再びこの一帯を緑が覆うことになれば、さぞ絶景として人を呼ぶだろう。
ただし、山が崩れてしまわぬ限りは。
その中心に立つものが、十五、六の小娘であると、いったいこの世の誰が信じるだろう?
***
伊吹家の紅姫は武芸の達者である。
この意見に賛同するものは、実のところそれほど多くない。
彼女を知るものはかぶりを振ったあとこう続けるのが常だ――――強いだの弱いだの、そのような尺度で計れるものではない。
さらに続けるだろう。たとえば狩人の放つ矢は雷より弱い。
だからといって狩人が恥じるだろうか?
火矢で焼け出されたものが射手の腕前を気にするだろうか?
もはや人ではない。人の形をした戦だ。
天地も己も飲み込んで顧みるところのない、燎原の火そのものだ、と。
これでまだ己の技量を鼻にかけるとか、権威を振りかざすとか、酒色をむさぼるとか、いっそ辻斬りをたしなむとか。
そういう態度を取っていればあるいは人がましく扱われることもあったかもしれない。
だがそれもない。雪をたたえた山嶺のごとく人を寄せ付けぬ美貌には、笑みも涙も、怒りすら無縁のものであろうと思われた。
そして――――行いを決する理由も、また人間離れしているのである。
先日、流れ者の無頼が六人がかりで城下の豪商をかどわかすということがあった。
誰にも顔を見られず一滴たりとも彼我の血を流さず、およそこの手の犯罪としては理想的といってもいい首尾で意気揚々と根城に引き返した彼らを待ち受けていたのは。
赤樫の木刀を携えた、紅姫であった。
六人ことごとくを打ちのめして帰ってきた彼女に、家臣たちはこぞって質問した。
何故に賊の根城へ先回りできたのか。その問いに、紅姫はこともなげに答えた。
そちらのほうが城から近かったからだ。
……故に紅姫の立場というのは実に厄介なものである。
泰平の世に一国を覆してなお余りある武力を持ち、その行動は天命にも似て正しく、天運にも似て推し量ることもできない。
嫁に出そうにも生ける武神を娶ろうという度胸のある若君などいない。
伊吹家に世継ぎの心配が「ない」こともまた面倒な状況に拍車をかけている。極論すれば放っておいてもいいからだ。
家の秩序を第一とする家臣達の中にはいっそ放逐するか命を召し上げてしまえばどうだと酒の肴に話すものがあるほどだが、それが実行に移されたことはない。
かくして紅姫は他国の姫君がうらやむ――――あるいは想像したこともない自由の中にあった。
彼女がそれをどう思っているのか、誰にもわからないことではあったけれども。
***
……哄笑はまだ続いている。
渦巻く風はまだ健在な枝を鳴らし、不意に厚くなりはじめた雲から響く遠雷の音とあいまって、この世のものとは思えない不気味な唸りを上げていた。
あたかも天地そのものが紅姫の狂奔に煽られてでもいるかのようであった。
夏目修理は紅姫の近習である。お互いに幼少の頃より共に過ごし、寵愛を受けている、と言って差し支えない。
故に牛鬼の討伐という大任にもただ一人で随行した。
……純粋に、紅姫の武勇に比肩するほどの技量を持ち、その内心を多少なりとも汲み取れるものが家中にいないというだけの理由であったが。
修理は今やその肩書きだけで珍重されるようになってしまった男の忍び……くのいちの婿という意味ではない、本当の意味での忍者である。
感情を押し殺すことには慣れていた。臓腑をくすぐられるような奇妙な感覚が脳髄に上る前に呼吸を整えてそれを打ち消す。
聞き惚れていたかったのに、と未熟な部分が言うが、無視できる範疇だった。心配しなければならないことは二つ。
紅姫の怪我の把握と、急変する天候への備えだ。
「姫さま――――」
哄笑が止んだ。心なしか吹き荒れる風も遠雷の音も鳴りを潜めた。
その名の通り全身を朱色に染めた紅姫が振り返り、目を見開いた。そこに修理がいることに今初めて気づいたとでも言いたげな顔だった。
暗くなってきた光の加減か、両目が金色に見えた。
「修理か」
修理は信じがたいものを見た。実は自分はとうに死んでいるのではないかと考えたほどだ。
黙して笑わずただ斬るのみ―――ゆえに石鬼の異名すら取る古今無双の剣客が、こちらを向いて微笑んだのだ。
その声に修理が反応するよりも早く、紅姫の四肢から力が抜け、そして演目を終えた糸繰り人形のようにその場に倒れ伏した。
慌てて駆け寄る――――抱え上げた身体が暖かい。
屍ではない。息はある。脈もある。
骨は少なくとも砕けていないし、血が止まらぬような深傷もない。
背中に担ぎ上げて紐でくくる。乳房が背中に触れる。胸に不意の、そして未知の痛み。
最初の一歩目を踏み出しながら考える――――そして理解する。これは女の熱だ。
そして驚く。なんとも間抜けなことに、修理は生まれて初めて、長年仕えた主を女だと思ったのだ。
***
修理は庵に駆け込んだ。紅姫がこの山中でねぐらにしていた場所だ。
なにやら物騒かつ愉快な謂われがあるそうだが、つとめて気にしないことにしている――――紅姫にまつわるその手の話題をいちいち気にしていてはキリがない。
修理なりの処世術であった。
取り急ぎ自分についた牛鬼の返り血や泥汚れを落とし、それから主のために湯を沸かし、手ぬぐいを絞る。
寝ている主を拭き清めるのに、修理は往生した。行為それ自体にではない。思わずその肌に指を食い込ませたくなる自分の心情に、だ。
脂汗がにじむ。息を荒げるのを止めるので精一杯。男は狼だしまたそうならざるを得ない――――クノイチたちが笑っていたことを思い出す。
結局、拭き終わるのにかかった時間はいつもの三倍ほど。
打擲されても文句は言えないだろうが、あいにく彼の主はその手の傲慢とは縁がないし、第一意識が無くては動くこともできまい。
ともあれ清めていて気がついたことがある。紅姫の負った傷の軽さだ。
深傷こそ避けられたものの、それこそ嵐に匹敵する牛鬼の暴虐を前にして人体が不可避に負ったはずの無数の傷が、ことごとく消えて失せていた。
その代わりとでも言うように、なにやら全身に彫り物のような経文のような曰く言い難い模様が浮かび上がっている。
修理はこれを見たことがある。それも、ごく最近。ただそのあたりの記憶にもやがかかっていて、正体を吟味することができないでいるのだ。
その記憶に焦点が合ってきて、なにやら恐ろしいものが浮かび上がってきたころ。
紅姫が目を開いた。そう見た次の瞬間には、すでに床から上半身を起こしている。もしこれが戦場の動きであれば百人のうち五十人までが気づきもせぬうちに首を落とされ、気づいた残りの四十九人も、身動きを取れないまま殺されているだろう。
「ここは山中の庵で私は気絶していて……半刻ばかりが過ぎた、というあたりか?」
ろくに見回しもせずに言った言葉に、それでも頷くほかない。事情を語るのに一切の過不足が無いからだ。
「お加減はいかがですか、姫様」
無言のままの手招きに応じて、正座したままにじり寄る。およそ主従に、あるいは未婚の男女に許された距離はすでに爪半分ほど過ぎていた。
さすがにこれ以上は−−−−と腰を引こうとした刹那、それが来た。
濡れたような温もり。
先ほどの起床と同じか、それを凌駕するほどの勢いと間合いの外し方である。
“それ”を唇だと理解できた理由は、視野に紅姫の顔以外の何者も写っていなかっただけだ。
口の中を遠慮なしに舐りまわされる。初めて水飴や蜂蜜を口にした童のような勢いだ。
思わず紅姫の肩に手を伸ばすが、指先が触れただけで止まる。
突き放そうとしているのか迎え入れようとしているのか----あるいは自らがどう思っているのか、わからない。
ただ肌の熱だけが染みてきて、それが背筋を上って――――その悦楽で、逆に目が醒めた。
肩を思いきり押しやる。突き放すためというより、それを手がかりにして飛び退るためであった。
「……お、お戯れを!」
「戯れ?」
立ち上がり、襦袢が音もなく畳に伏せる。
一歩を踏み出すたびに音がする。
綱が切れかかるときの音、大樹が音を立てて倒れるときの音。
筋が膨らみ骨がきしみ、内側から形が変わっていく音。
強いものが、より強い力でどうしようもなく変貌する、音。
ふき取ったはずの血が肌から染み出していく。それが固まって逆立ち、剛毛が全身を覆う。
文様が集まって蜘蛛を象る。皮膚を突き破って伸びた蜘蛛の足が固まり、腕もまた膨れあがって異形に転じる。
人はそれを、牛鬼と呼んでいた。
「修理。考えたことはなかったのか?」
凪いだ水面に似て穏やかな表情だけは変わらない、否。
口元に浮かんだ、ただの女のように艶めいた笑みだけが、目の前に立っている巨大な影が決定的に違うものだと修理に教えていた。
「なぜ私がお前をそばに置いていたのか、考えたことは無かったのか?」
返答に窮する。忍者にはあるまじきことに、行動を思考に持って行かれた。
なぜならその問いこそ、修理がこの数年来ずっと抱えていたことだからだ。
「私は考えたことがなかった。そういうものだろうと思っただけだ」
牛鬼の蜘蛛脚が畳を破る。増えた重みに床下の骨組みが悲鳴を上げた。
目に見えて力そのものとなった女が、目の前の獲物に歩を進めている。
「だが違った」
退くことはできない。こちらに向かってくるのは自分の主だからだ。
進むことはできない。こちらに向かってくるのが牛鬼の姿だからだ。
紅姫が打ち振った腕が伸びる。否。それは牛鬼が獲物を捕らえるのに使う綱であった。
人の鍛えたいかなる鋼よりも強靱な天然の鞭が、古今無双の技量をもって襲いかかってくる。忍びの体術とて避けようのない一手である。
無論神仏の助けも天魔の気まぐれもなく、水が低きに流れるよりも、炎が夜を照らし、群雲が月を隠すよりもなお自然に両腕を縛られ、そのまま引き倒されてしまった。
「私はお前が欲しかった。それだけだ」
腕が完全に拘束され、手を動かすこともままならない。
脚を動かそうとするたびに、騎手の練達に手綱を取られた馬のように引き止められ、また動かされる。
「動くな。怪我をするぞ」
いかなる手技によるものか、紅姫が異形の手先を捻ると荒縄のような蜘蛛糸から細い繊維がほつれ、修理の服の内側に入りこむ。
細引きが鎖帷子の輪を一つひとつ食いちぎり、忍びの業で鍛えられた防具が、ただの鉄くずへと堕していく。
牙をむく顔はまるで笑みのよう。胸元にこぼれおちる唾液が、責めに使う煮え湯よりも熱く感じた。そして熱いのは、胸元ばかりではなかった。
「男とはこんなものか?いや、それともお前がそういうものなのか?
なあ、修理。小娘のように組み敷かれてねじ伏せられても、男とは股座をいきり立たせるものなのか?」
一刻前の紅姫が発したものならまずその意図を問うだろう。あるいは誰がそのようなことを吹き込んだか、と。
そのどちらにせよ、知らないことであるのは明白だからだ。だが今は違う。反応を熟知した上で問うている。詰っている。
顔が火を発するほど熱くなり、すすり泣くような声が自分のものだと理解したころには、身につけた忍びの業は無意味となっていた―――何よりも、刃を支えるべき心が粉々に砕けてまったのだから。
「……ああ、そんな顔をするんじゃない」
獰猛な笑みを保ったまま、気遣わしげな声を出す。その意図するところを読み取って、修理の背中に怖気が走った。
「丸呑みにしてやりたくなるじゃないか」
首筋から顎の下にかけて、鼻面に到るまでを舐め上げられる。焼きごてのように熱く、蜜のように甘い感触に身震いし、あるか無いかわからないほどだった抵抗の意志が、いよいよ根こそぎにされた。
喉笛を牙で触られて、悲鳴を上げることすらできない。
せわしなく吐き出す息が熱い。視界が潤む。異形と化したはずの主の身体が……この世の何よりも美しく見えた。
「姫様……ひめ、さまぁ……ごめんなさい、ごめんなさい……」
強くなってきた雨足が、すすり泣いて媚びを売り、許しを請う声を消してくれることを祈った。
ミイラ取りがミイラになるどころの話ではない。役立たずを通り越して、これではただの生け贄ではないか。
いずれ灰になるまで共にあるのだと思っていた。影に潜み影となって、ただ道具となって使い潰されることを良しとしていた。
人でなしとして育てられたからには、せめて人の役に立とう。そう思っていた。
ところが、今はどうだ。
色子のように組み敷かれ菓子のようにねぶられ、技は封じられ気概まで砕かれて。
どんな悪夢でも見たこともないほど惨めな目に遭って……だというのに、それを喜んでいる自分がいる。
ありえない、と忍びの者としての心得が叫ぶ。己が人でないのと同じように、仕える主を人と思ってはならない。
主とは忠誠という概念そのものであり、自らの決定でなくてはならない。
同じところに立つ、同じものだと考えてはならない。
だけど、と弱々しく応える声があった。牛鬼の血を浴びてから、急に胸の奥で疼きだした声だ。
まだ忍びの心得を刻み込まれる前の、名すら無かった、遠い昔の声。
一緒に来いと差し伸べられた手に触れたとき。名を尋ねられたとき、初めてその裸体を目の当たりにしたとき。
胸の奥に灯った火の名前を、何と呼べば良かったのだろう。
そうだ。自分はずっと。
この肌に触れたいと思ってきたのでは、なかったか。
「……っ!」
口から声にならない絶叫がほとばしる。
それに気づいたときには、牛鬼の……否、紅姫の露になった腹筋に顔を埋めていた。
獣じみた息を吐き、言葉も節度も何もかもを忘れて、ただひたすらに目の前の雌を味わう。
縛られているのがもどかしかった。身動きが取れないのが歯がゆかった。
喘いでばかりの口が、されるがままに粘液を吐き出す己の陰茎が、それに酔うばかりで、何も返せない己が悔しかった。
「姫様っ、姫様っ……!
ずっと、初めてお目にかかったときから、お慕い申しておりましたっ、姫様っ……!」
子供のように泣きじゃくる。
いや、それは正確ではなかった。
修理の中にはずっと、泣き虫と呼ばれていた小さな子供がいて。
ただ紅姫と出会った時から、主にふさわしい忍びであるようにと蔵に押し込められていたのだ……修理の心中にある蔵に。
今や姫はむき出しの雌となって修理の前にあり、泣いていた子供は、喜んで身を捧げる贄となっていた。
「嬉しいぞ」
その声が耳に届き腑に落ちるよりも早く……何とも比べることができず、何にも例えられないような、ただひたすらに強い、としか表現できないような。
強いて言えば、紅姫の剣技にも似た、“その”感覚が来た。
腰から脳天にかけて稲妻が走る。大鯨にでも飲まれたかのように、自分の中にあった何もかもが溶かされて貪られる。
行く先は煮えたぎった壺の中。
酒と蜜と肉と、とにかく酩酊と甘露と、あらゆる美味が一緒くたになったものが、もはや己を離れた修理の心身に襲いかかる。
「……っ、あ、ぅ、ふぅっ……♪いいぞ、修理っ……もっとだ、もっと、私にそれをよこせ……っ♪
お前の子種で、私を、孕ませてみせろっ……♪」
喜悦の声で、「自分」が肉体に戻る。
見上げれば泥をいじくり回すような濡れて粘ついた音を立てながら、紅姫が修理の腰に自らのそれを打ち付けていた。
破瓜を示す一筋の血は女陰からこぼれた粘液で薄まり、修理が吐き出した子種と混ざって、言われなければ判ずることは難しい。
「姫様、また……っ、はっ、また、出ますっ……!」
まして、腰を一度打ち付けるごとに新たな快楽の証を注ぎ込んでいるとなれば、なおさら。
滝の水を桶で受けるように、次から次へと新しい子種が作られていく。
あふれかえる身体とは逆に、心は餓えて乾いていく。喉が渇いたからと塩水を飲めば、このようになるだろうか。
七度を数える立て続けの射精の後、いつの間にか拘束は解かれていた。そうなれば後は獣のように貪るばかりであった。
どちらからともなく口をねじ込み舌を絡ませて、手で雌雄の粘液を混ぜ合わせて互いの身体に塗りたくる。
槍に似た足先で快楽のツボを押されたお返しに、いきり立った肉槍で紅姫のそこかしこをつつく。
乳房を吸いながら、子種を大きな手で搾り取られる。お互いに抱き合って、睦言を交わす……。
修理が紅姫から離れたのは、少なくとも一月の日数を射精が超過した後であった。
「……どうした?」
文字通り精魂尽き果てた修理を、余裕の笑みをたたえて紅姫が見下ろす。
そこに浮かんでいるのは満足と余裕を共に備えた表情で、あえて言えば「腹八分目」の顔だった。
「……姫様、その……厚かましい、お願いなのですが……どうか……その、俺と……夫婦に……」
なってください、が言えなかった。めおと、を言い終わる前に、口が紅姫の口で塞がれたからだ。
***
牛鬼とは嵐のようなものだ。
身を潜めて通り過ぎるのを待つよりほかに避ける手立てもないが、身を潜めていたからといって災いを受けずに済むわけでもない。
もし牛鬼を退けるものがあったとしても、それは同じ牛鬼に違いあるまい。
***
伊吹家の所領には鳴雲山と呼ばれる山がある。そこに足を運んではならない。
牛鬼が居を構え、夫と睦み合っているからだ。
噂ではその牛鬼、伊吹家の姫君が転じたものだとも言うが、あらゆる史書も古老も、沈黙を守るのみである。
11/09/25 10:52更新 / 青井