ある日目覚めたら
崩れた建築物。乱立する柱の数々。それらが砂の中から突き出ている光景は、まるで巨大な樹々が所々に顔を出しているようだ。
そんな光景をオレは、じっと眺めていた。
(遂に辿り着いたぞ!)
湧き上がる興奮に身体が震えてくるのが止まらない。
オアシスの村から旅立って三日、漸く目的の遺跡群の地に辿り着いた。
(緊張の連続で、ほんと疲れたよ。ギルタブリに襲われたときは、もうダメかと思ったもんな)
何とか逃げ出したものの、逃げ込んだ先の洞窟で夜盗達と出くわしてしまい、其処からも逃げ出してみれば先ほどのギルタブリが何故かデビルバグの群れを引き攣れて現れる始末。
「漸く見つけたぞ!アタシから逃げ切れるとって、何だコイツらは?」
「逃がさねえぞ、こんガキャって、何で魔物がこんなに?」
「「「「キャー!!!男が一杯よーー!!!」」」
「「「「ギャー!!!魔物娘が一杯よー!!!!」」」
双方から悲鳴が湧き上がった。
魔物娘からは嬉しさのこもった悲鳴。
対して夜盗達からは文字通りの悲鳴。
そのチャンスを逃さずオレは、一気にその場から走り出す。
「まちな!逃がさないよ!」
「ま、まちやがれ!こんガキャっ!」
走り出したオレにギルタブリと夜盗の頭目と思えるヤツが叫びながら駆け寄ってくる。
オレは腰のポーチから煙玉を二つ取り出すと、振り向きざま追い駆けてくる二人に投げつける。
「そんなもん、このアタシに通用すると思ってるのかい」
爪と尻尾で二つ共割ったギルタブリが、ニヤリとサソリ科特有の嗜虐的な笑みを浮かべる。が、すぐに異変が起こる。
「ンっ!な、何だこれは?か、体が、ンァッ!!へ・・変だぞ?!」
突如、湧き上がる体の異変にギルタブリはその場に蹲ってしまう。
それはギルタブリの隣りにいる夜盗の頭目も同じだった。
「テ、テメェ!何しやがった?!」
「いま投げつけた煙玉。アレにアルラウネの蜜とホルスタウロスのミルクに、あと興奮剤を混ぜてあるんだ」
オレのタネあかしに、両方とも絶句してしまう。
「な、何ですって!アッ!」
「こ、このっ!おファ!」
二人ともいい具合に効いてきたみたいだ。
「オマケにこの幻覚作用のある粉もプレゼントしちゃおう」
やめろとか、待てとか言っているが気にすることなく、オレは鼻歌交じりにその粉をご丁寧に風上に回ってから振り撒く。月明かりを受けてキラキラと輝くそれは、すぐに辺り一面に広がり効果を発揮する。
「ああ、アンタってなんて素敵なの!」
「くー、美女がいる、絶世の美女がここにいる!!」
早くも効いてきた二人から視線を伸ばすと、その先では予想通りの騒ぎが繰り広げられている。
「うォー!オマエはオレのものだ!」
「あん!そうよ、アタシはアナタのものよ!」
「さあ、いけッ!イってしまえ!」
「いいわーー!!いいのよーー!!」
「も、もうダメだーー!」
「まだよ!もっと頑張りなさい!!」
「おねえちゃーん、合いたかったよーー!!」
「ええ!おねえちゃんはここにいるわ。さあ、いらっしゃい」
「ほ、本当か?本当にオレの子供を・・・」
「うん、本当よ。アナタの子供なら十人でも二十人でも生んであげる♪」
「もう夜盗なんて辞めてやるーー!!」
「そうよ!これからは二人で愛の巣を築くのよーー!!」
大乱交場と化したその場にオレは「仲よく暮らせよー」とお祝いの言葉を残して立ち去って行き。
こうしてオレの目の前に目的の遺跡群が現れたのだ。
「よーし、やるぞーー!!」
気合を入れるとオレは、第一歩を力強く踏み出した。
ダンッ! ピキッ!
「えっ?」
オレの踏み出した第一歩は、入り込んだ遺跡の小部屋の床全てを崩壊させた。
「うそだろーーー?!」
そんな叫び声を残して、オレは暗い穴倉へと落ちていった。
パラパラと何かが落ちてくる音にオレは目を開ける。
「ここは・・・そうか、オレは地下に落ちて」
まず身体に意識を向ける。手や足をゆっくり動かす。
(どうやら骨折は無いみたいだな)
それから身体をゆっくり起こす。・・・五体満足らしい。
次に周りを見廻してみる。少し薄暗いが見えないことはない。良く解らないものがあるが、いくつか解るものもある。例えば自分の下のある物。
(どうやら、ベットらしいな)
床に降りると上を見上げる。落ちてきた小部屋の入り口が見えるが、そこは高すぎる位置に在る。周りにある物を積み上げれば何とか届くと思えるが、一人では動かすことが無理なものが多い。
「ま、いいか」
オレは、この部屋の出口と思える場所に歩き出した。
部屋を出ると、人が四人横に並んでも大丈夫な通路と思える場所に出る。前と後ろに伸びておりいたる所に部屋の入り口が並んでいる。オレ慎重に足を進める。途中、部屋の入り口を慎重に覗き込んでみる。
(ここは・・・変な人形があるな。首や足が無いのはどうしてだろうな。此の部屋は、棚だけがたくさんあるな。こっちは・・・本棚に似ているな。あっちは、テーブルとイスが幾つもあるな・・・なんかカフェにそっくりだな。)
それから暫くして、オレは噴水に似ているオブジェの傍に腰を降ろしていた。
「なんか城下町の広場に似ているな」
書き込んだ地図を見てオレは頷く。何となくだが雰囲気が似ているのだ。
「だとするなら、どこかにお宝が在る筈だ」
(宝飾店とか武器屋とかも在る筈だからな)
淡い期待に胸を躍らせ、オレは歩き出した。
程なくして一つの部屋でオレはソレを見つけた。
目の前にデンと巨大な箱が置かれていた。大きさは人一人が入り込める程のもので、四つの面全ては綺麗に磨き上げられていた。暗がりの中でもオレの姿が映るのが判るほどだ。
「お、いかにもお宝の予感がするな」
懐からナイフを取り出すと、慎重に調べ始める。
箱の一面にナイフの刃先を当てて、音を立ててみる。キンッと金属同士を打ち付け合う音が響くことから、中が空洞ではないことが解るが。
「へー。傷が全然付いてないや」
オレは思わず感心してしまう。何度かナイフを振ってみたが、かすり傷一つつけることが出来ない。
(これ、姿見として売り込めるな。それとも、サバトに実験道具として持ち込んだほうが儲かるかな)
そんなことを考えながら、オレは他の面も調べる。その内二つは同じだったが、最後の一面だけ違っていた。
(ん、ここだけ違う音がするな)
最後の一面のある一箇所。そこだけ音の響き方が違っていた。
(もしかしたら)
ナイフを垂直にして慎重に動かす。刃先が少しだけ潜り込み、カチッと何かが外れる音がすると、その部分だけが中に入り込む。そして丸いボタンが一つ姿を現す。
「ビンゴ!」
現れたボタンを躊躇せず、オレは押した。
パシュッと音がすると箱に縦に線が走り、そのまま観音開きをしていく。オレの目の前で箱が開ききり、中身をさらけ出す。
「女の子?」
オレの言葉通り一人の女の子が入っていた。両腕を胸の前で交差させて、目を閉じている姿はまるで眠っているみたいだ。そしてその腕や脚のある部分には、レンガのような模様があった。遺跡で眠っていること、腕と脚の模様、ここから導き出される結論は。
「・・・・ゴーレムか」
オレは一人頷く。それから手を伸ばすと、ゴーレムの頬に触れる。
「柔らかいな・・・さすが古の技術だな」
暫く触れていると、突然ゴーレムが両手を伸ばしてオレに掴みかかる。手を伸ばしていたため避けることも出来ず、ゴーレムに掴まれるとそのまま抱きしめられてしまう。
「くっ、しまっ」
力強く抱きしめられると強引にキスをされてしまう。
「ンっ!ぐっむ!むっ、むん!」
「チュッ、チューー」
それから暫くしてオレはゴーレムから解放されると、距離をとり油断なく身構える。
が、ゴーレムはオレを見つめると奇妙な言葉を話し始める。
「唾液による成分接取完了、続いて成分分析開始・・・分析終了、DNAパターン登録開始・・・登録終了、続いて視認による身体的特徴を登録します」
「四人?何を言ってるんだ」
オレの言葉に何も反応せず、ゴーレムはオレを見つめる。
「・・・視認による登録を終了。続いて声紋登録に移ります。先ほどの声が録音されているため、そちらを使用します・・・声紋分析終了・・・声紋登録終了します。以上のプロセスを持ちまして、アナタをマスターとして登録いたします」
「ま、マスターだって?」
驚くオレを見つめながら、ゴーレムは箱から出てくるとオレの前に立ち、頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます、マスター。このたびは、私をお買い上げいただき有り難うございます。唯今より私が誠心誠意を持ちまして、マスターにお仕えさせていただきますので何卒よろしくお願いいたします」
「か、買い上げ?」
「はい。マスターは、私をお買い上げされたのですよね。ですから私は、是よりマスターにお仕えさせていただきます」
オレの困惑を余所にゴーレムは、笑顔で答える。その笑顔は作り物とは思えないほど自然なもので、オレは思わず横を向いてしまう。
その途端ゴーレムは、悲しげな声を出してくる。
「もしかして、マスターは私のことがお気に召しませんでしたか?」
「え、如何したんだ?」
「申し訳ありません。マスターのお気持ちも知らずに、私だけ有頂天になってしまいまして」
見ればゴーレムは俯いている。心なしか、その肩も少し震えている。
「ちょっと、突然どうしたんだい?」
「はい、解かっております。では私はコンテナの中に戻りますので、私が入りましたら扉を閉めてください」
「だからさ、オレが言いたいのは」
「皆まで言わなくても解ります。さあ、どうぞ扉を閉めてください。短い間ですがマスターに出会えたことを私は嬉しく思います」
オレが何か伝えようとしても、ゴーレムは自分の世界に入り込んでいて聞く耳を持たない。箱の中に入り込むと、涙を流しながら扉を閉めてくださいと言うばかりだ。
そんな態度にいい加減頭に来たので、オレはゴーレムに大声で怒鳴りつけることにした。
「あー、もう!マスター命令だ!静かにしろ!」
「了解しました、マスター」
オレの命令発言にゴーレムは、大人しくなる。
一息つくと、オレはゴーレムに漸く質問を始める。
「まず、オマエはゴーレムでいいんだな?」
「はい、その通りです。マスターの言われる通り、私はゴーレムbQ563794番、家庭用特別仕様タイプ、特殊機能搭載型最新鋭機、商品名『アンテ・ルーチンス・フレンスキー』と申します」
「次に、ここは何所か判るか?」
「少々お待ちください。暗視モードオン、周囲をサーチ及びスキャンします」
そう言い放つと、ゴーレムは周りを見回す。
「・・・解析終了。内部データーと照合開始・・・確認終了。解りましたマスター。現在地は『ゴーレム販売店【ゼペットハウス】7号店』であります」
「ゴーレム販売店?」
「はい。私の記憶データーによりますと、時代の最先端をゆく超有名店であります。支店だけでもこの大陸に五十店舗御座います」
ゴーレムの話にオレは首を傾げる。聞いたことが無いからだ。
「・・・ですが変ですね。私の内蔵時計によりますとまだ日が出ているはずですが。それにライトも点けてないなんて」
周りの薄暗い光景にゴーレムは疑問を持つ。そんなゴーレムにオレはある一つのことを伝える。
「実はな、ここは砂漠に埋まっているんだ」
「砂漠ですって!マスター、冗談でもきつ過ぎます。砂漠はこの大陸には存在しませんよ」
「いや、本当のことなんだよ」
「では、調べてみます。GPNシステム作動・・・衛星回線に接続・・・接続不能・・・音波探査システム作動・・・解析終了。現在地は地中に約15m、地表に大量の砂を確認。状況から判断して砂漠と結論します。・・・まさかこの上に砂漠が広がっているなんて」
ゴーレムが驚いた表情で呟く。
「それに、そのゴーレム販売店も聞いたことが無いんだ」
「そんな、誰でも知っているはずですよ!」
ゴーレムが悲鳴にも似た声を出す。
そんなゴーレムに対して、オレは申し訳ない気持ちになりながらも事実を伝える。
「・・・君に伝えるのは酷いかも知れないけど、これは事実なんだ。実は君は何百年以上もここで眠り続けていたんだ」
「う、うそ?私はそんなに・・・」
「その間に世界ももの凄く変わったんだ」
オレの言葉にゴーレムは、呆然としてしまう。オレはそんなゴーレムの傍らに腰を降ろすとそのまま寄り添う。
「・・・マスター?」
「・・・落ち着くまでこうしているから。このままでいると良い」
「・・・ありがとうございます、マスター」
かすれた声で礼を言うと、ゴーレムはオレの肩に顔を寄せて静かに泣きはじめた。
・・・・どれ位こうしていたのだろう。
「・・・もう大丈夫です、マスター」
オレの傍を離れたゴーレムはしっかりとした声で話す。
「もういいのか?」
「はい、ご心配をお掛けしましたマスター」
ゴーレムの返事にオレは頷くと、再度質問を始める。
「それで、これから如何するんだ?」
「如何すると言われましても、私にはマスターが全てですから」
「つまりオレが如何するか決めていいんだね」
「・・・はい。マスターが決めてください。私はマスターに従います」
ゴーレムのその言葉に、オレは二つの命令を伝える。
「まず、一つ目。これからはオレと一緒に行動すること。ま、これはゴーレムとして当然だと思うけど。改めて命令するよ」
「了解しました、マスター」
そしてもう一つの命令を伝える。
「それともう一つ。今をもってオレをマスターと呼ぶことと、敬語で話すことを禁止する。これからはベルツと呼び捨てにすること」
「な、何ですって!」
オレの命令にゴーレムは驚愕する。
「そ、そんな!よ、呼び捨てにするなんて」
「あ。そういえば君のこともこのままじゃいけないね」
オレはうーんと考えると、そのことを伝える。
「よし、今から君はアンテだ!」
「あ、アンテ?」
「そう、君の名前だよ」
オレの思い付きにゴーレム、アンテは目を丸くする。
「私に名前など」
「安易すぎたかな」
「い、いえ!トンでもございません!私如きに名前を付けてくださるなんて」
驚きが抜けきってないのか、声が少し可笑しくなっている。
「それで、アンテはオレの言うことは聞けないのかな?」
オレの意地悪な言い方に、アンテは困ってしまう。
「わ、私はゴーレムですから、マスターの言葉には従わなければなりません。ですが仕えるべきマスターに対して敬語を使わず、ましてや呼び捨てにするなど」
「そのマスターのオレが許可しているんだよ。だから難しく考えなくていいんだ。これはマスターに従ってのことなんだから」
「た、確かにそうですね」
オレの言葉にアンテは頷く。
「で、ではいきます。・・・そ、そのベ・・・ベルツ・・様」
「もう一度」
「うーー!・・・べ・・ベル・・・ツ」
「ま、良いだろ。・・・けど、そんなに照れることなんかい?」
「当たり前です!ゴーレムとしては在り得ないことなんですから」
アンテの困り顔にオレは笑いながら答える。
「マスターであるオレの言葉に従っているだけなんだから。気にしなくていいんだよ」
アンテはため息をつくと、オレを見つめて話す。
「・・・考えるのが何だか愚かに思えます。私は馬鹿にされているのですか?」
「そんなことは無いよ」
「その笑顔はなんですか?」
「もともとだよ」
依然として納得していない顔をするアンテに、オレはとりあえず当面の問題を伝えることにする。
「とにかくここから脱出しないと」
「はい、そうですね」
アンテも頷くとオレに脱出する方法を話し始める。
「方法としては、マスター・・・ベルツが落ちてきたところがここから一番近いですし、私とマス、ベルツで協力すれば出られるはずです」
「他に出口はないのか?」
オレの質問にアンテは首を横に振る。
「他のルートは地下に向かうものばかりです。その場所以外はありません」
「なら、そこに行こう」
言い切るとアンテの手を握り歩き出す。
「ま、マスター!何をなさるのですか!」
「手を繋いだだけだけど」
「その様なことをされなくても」
「ほら。口調、口調」
「・・・ベルツは変です。可笑しいです」
「いいじゃないか」
そんなことを話しているうちに目的地に辿り着く。早速部屋にあるものを二人で動かしてゆく。重いものを集めて土台を作ると、丈夫なものをさらに積みあげてゆき階段状に仕上げる。階段が出来上がるころには、二人とも疲れきっていた。けどお互いに顔を見合わせて笑い合う。
二人で出来上がった階段を昇ってゆき、出口へあと一段となったところで、アンテが立ち止まってしまう。
「アンテ、どうした?」
「その・・ここを出ると外に出られるのですよね」
「そうだけど」
アンテは不安な表情でオレに話す。
「私は外の世界で生きて行けるのでしょうか?」
「なんだ、そんなことか」
「でも、私にとっては重要なことなんですよ!」
オレはアンテに笑いかけると「ほら!」と繋いでいた手を引っ張る。
最後の階段を二人で昇り、同時に外へ飛び出す。
抗議の声を上げる暇もなく外に連れ出されたアンテは、目を丸くしている。
「な、簡単だろ」
オレのイタズラにアンテは、大声で猛抗議してくる。
「どうしてこんなことをするのですか!マスターは相手のことを考えているのですか!というより、考えて行動しているのですか!それでも私のマスターですか!」
「でも、簡単だったろ」
笑顔で答えるオレにアンテは口をパクパクさせる。
そこで真面目な顔をすると、オレはアンテに語りかける。
「真面目に慎重にもいいけど、時には大胆に行動することも必要なんだよ」
「マスターは、ベルツは大胆すぎます」
見つめられるのに気恥ずかしさを感じたのか、アンテは横を向いてしまう。
「なら、丁度いいんじゃない」
「何がですか?」
不貞腐れるアンテにオレは真面目に答える。
「真面目なアンテがこれから一緒なんだからさ。オレと合わせて丁度つり合うだろ」
気楽なもの言いにアンテは、呆れた表情をして答える。
「アナタと出会ってマスター登録してしまったこと事態が、私の運のつきなんですね」
「今頃気が付いたのかい」
たっぷりの皮肉を込めた返事にも、オレは笑いながら答える。
アンテはそんなオレを見つめると、軽く一息吐き出してから右手を差し出す。
「仕方ないですね。ですが、これからは容赦なくしますので覚悟してなさいねベルツ」
差し出された右手を握りながら、オレも挨拶する。
「よろしく、アンテ」
そんな光景をオレは、じっと眺めていた。
(遂に辿り着いたぞ!)
湧き上がる興奮に身体が震えてくるのが止まらない。
オアシスの村から旅立って三日、漸く目的の遺跡群の地に辿り着いた。
(緊張の連続で、ほんと疲れたよ。ギルタブリに襲われたときは、もうダメかと思ったもんな)
何とか逃げ出したものの、逃げ込んだ先の洞窟で夜盗達と出くわしてしまい、其処からも逃げ出してみれば先ほどのギルタブリが何故かデビルバグの群れを引き攣れて現れる始末。
「漸く見つけたぞ!アタシから逃げ切れるとって、何だコイツらは?」
「逃がさねえぞ、こんガキャって、何で魔物がこんなに?」
「「「「キャー!!!男が一杯よーー!!!」」」
「「「「ギャー!!!魔物娘が一杯よー!!!!」」」
双方から悲鳴が湧き上がった。
魔物娘からは嬉しさのこもった悲鳴。
対して夜盗達からは文字通りの悲鳴。
そのチャンスを逃さずオレは、一気にその場から走り出す。
「まちな!逃がさないよ!」
「ま、まちやがれ!こんガキャっ!」
走り出したオレにギルタブリと夜盗の頭目と思えるヤツが叫びながら駆け寄ってくる。
オレは腰のポーチから煙玉を二つ取り出すと、振り向きざま追い駆けてくる二人に投げつける。
「そんなもん、このアタシに通用すると思ってるのかい」
爪と尻尾で二つ共割ったギルタブリが、ニヤリとサソリ科特有の嗜虐的な笑みを浮かべる。が、すぐに異変が起こる。
「ンっ!な、何だこれは?か、体が、ンァッ!!へ・・変だぞ?!」
突如、湧き上がる体の異変にギルタブリはその場に蹲ってしまう。
それはギルタブリの隣りにいる夜盗の頭目も同じだった。
「テ、テメェ!何しやがった?!」
「いま投げつけた煙玉。アレにアルラウネの蜜とホルスタウロスのミルクに、あと興奮剤を混ぜてあるんだ」
オレのタネあかしに、両方とも絶句してしまう。
「な、何ですって!アッ!」
「こ、このっ!おファ!」
二人ともいい具合に効いてきたみたいだ。
「オマケにこの幻覚作用のある粉もプレゼントしちゃおう」
やめろとか、待てとか言っているが気にすることなく、オレは鼻歌交じりにその粉をご丁寧に風上に回ってから振り撒く。月明かりを受けてキラキラと輝くそれは、すぐに辺り一面に広がり効果を発揮する。
「ああ、アンタってなんて素敵なの!」
「くー、美女がいる、絶世の美女がここにいる!!」
早くも効いてきた二人から視線を伸ばすと、その先では予想通りの騒ぎが繰り広げられている。
「うォー!オマエはオレのものだ!」
「あん!そうよ、アタシはアナタのものよ!」
「さあ、いけッ!イってしまえ!」
「いいわーー!!いいのよーー!!」
「も、もうダメだーー!」
「まだよ!もっと頑張りなさい!!」
「おねえちゃーん、合いたかったよーー!!」
「ええ!おねえちゃんはここにいるわ。さあ、いらっしゃい」
「ほ、本当か?本当にオレの子供を・・・」
「うん、本当よ。アナタの子供なら十人でも二十人でも生んであげる♪」
「もう夜盗なんて辞めてやるーー!!」
「そうよ!これからは二人で愛の巣を築くのよーー!!」
大乱交場と化したその場にオレは「仲よく暮らせよー」とお祝いの言葉を残して立ち去って行き。
こうしてオレの目の前に目的の遺跡群が現れたのだ。
「よーし、やるぞーー!!」
気合を入れるとオレは、第一歩を力強く踏み出した。
ダンッ! ピキッ!
「えっ?」
オレの踏み出した第一歩は、入り込んだ遺跡の小部屋の床全てを崩壊させた。
「うそだろーーー?!」
そんな叫び声を残して、オレは暗い穴倉へと落ちていった。
パラパラと何かが落ちてくる音にオレは目を開ける。
「ここは・・・そうか、オレは地下に落ちて」
まず身体に意識を向ける。手や足をゆっくり動かす。
(どうやら骨折は無いみたいだな)
それから身体をゆっくり起こす。・・・五体満足らしい。
次に周りを見廻してみる。少し薄暗いが見えないことはない。良く解らないものがあるが、いくつか解るものもある。例えば自分の下のある物。
(どうやら、ベットらしいな)
床に降りると上を見上げる。落ちてきた小部屋の入り口が見えるが、そこは高すぎる位置に在る。周りにある物を積み上げれば何とか届くと思えるが、一人では動かすことが無理なものが多い。
「ま、いいか」
オレは、この部屋の出口と思える場所に歩き出した。
部屋を出ると、人が四人横に並んでも大丈夫な通路と思える場所に出る。前と後ろに伸びておりいたる所に部屋の入り口が並んでいる。オレ慎重に足を進める。途中、部屋の入り口を慎重に覗き込んでみる。
(ここは・・・変な人形があるな。首や足が無いのはどうしてだろうな。此の部屋は、棚だけがたくさんあるな。こっちは・・・本棚に似ているな。あっちは、テーブルとイスが幾つもあるな・・・なんかカフェにそっくりだな。)
それから暫くして、オレは噴水に似ているオブジェの傍に腰を降ろしていた。
「なんか城下町の広場に似ているな」
書き込んだ地図を見てオレは頷く。何となくだが雰囲気が似ているのだ。
「だとするなら、どこかにお宝が在る筈だ」
(宝飾店とか武器屋とかも在る筈だからな)
淡い期待に胸を躍らせ、オレは歩き出した。
程なくして一つの部屋でオレはソレを見つけた。
目の前にデンと巨大な箱が置かれていた。大きさは人一人が入り込める程のもので、四つの面全ては綺麗に磨き上げられていた。暗がりの中でもオレの姿が映るのが判るほどだ。
「お、いかにもお宝の予感がするな」
懐からナイフを取り出すと、慎重に調べ始める。
箱の一面にナイフの刃先を当てて、音を立ててみる。キンッと金属同士を打ち付け合う音が響くことから、中が空洞ではないことが解るが。
「へー。傷が全然付いてないや」
オレは思わず感心してしまう。何度かナイフを振ってみたが、かすり傷一つつけることが出来ない。
(これ、姿見として売り込めるな。それとも、サバトに実験道具として持ち込んだほうが儲かるかな)
そんなことを考えながら、オレは他の面も調べる。その内二つは同じだったが、最後の一面だけ違っていた。
(ん、ここだけ違う音がするな)
最後の一面のある一箇所。そこだけ音の響き方が違っていた。
(もしかしたら)
ナイフを垂直にして慎重に動かす。刃先が少しだけ潜り込み、カチッと何かが外れる音がすると、その部分だけが中に入り込む。そして丸いボタンが一つ姿を現す。
「ビンゴ!」
現れたボタンを躊躇せず、オレは押した。
パシュッと音がすると箱に縦に線が走り、そのまま観音開きをしていく。オレの目の前で箱が開ききり、中身をさらけ出す。
「女の子?」
オレの言葉通り一人の女の子が入っていた。両腕を胸の前で交差させて、目を閉じている姿はまるで眠っているみたいだ。そしてその腕や脚のある部分には、レンガのような模様があった。遺跡で眠っていること、腕と脚の模様、ここから導き出される結論は。
「・・・・ゴーレムか」
オレは一人頷く。それから手を伸ばすと、ゴーレムの頬に触れる。
「柔らかいな・・・さすが古の技術だな」
暫く触れていると、突然ゴーレムが両手を伸ばしてオレに掴みかかる。手を伸ばしていたため避けることも出来ず、ゴーレムに掴まれるとそのまま抱きしめられてしまう。
「くっ、しまっ」
力強く抱きしめられると強引にキスをされてしまう。
「ンっ!ぐっむ!むっ、むん!」
「チュッ、チューー」
それから暫くしてオレはゴーレムから解放されると、距離をとり油断なく身構える。
が、ゴーレムはオレを見つめると奇妙な言葉を話し始める。
「唾液による成分接取完了、続いて成分分析開始・・・分析終了、DNAパターン登録開始・・・登録終了、続いて視認による身体的特徴を登録します」
「四人?何を言ってるんだ」
オレの言葉に何も反応せず、ゴーレムはオレを見つめる。
「・・・視認による登録を終了。続いて声紋登録に移ります。先ほどの声が録音されているため、そちらを使用します・・・声紋分析終了・・・声紋登録終了します。以上のプロセスを持ちまして、アナタをマスターとして登録いたします」
「ま、マスターだって?」
驚くオレを見つめながら、ゴーレムは箱から出てくるとオレの前に立ち、頭を下げて挨拶をする。
「おはようございます、マスター。このたびは、私をお買い上げいただき有り難うございます。唯今より私が誠心誠意を持ちまして、マスターにお仕えさせていただきますので何卒よろしくお願いいたします」
「か、買い上げ?」
「はい。マスターは、私をお買い上げされたのですよね。ですから私は、是よりマスターにお仕えさせていただきます」
オレの困惑を余所にゴーレムは、笑顔で答える。その笑顔は作り物とは思えないほど自然なもので、オレは思わず横を向いてしまう。
その途端ゴーレムは、悲しげな声を出してくる。
「もしかして、マスターは私のことがお気に召しませんでしたか?」
「え、如何したんだ?」
「申し訳ありません。マスターのお気持ちも知らずに、私だけ有頂天になってしまいまして」
見ればゴーレムは俯いている。心なしか、その肩も少し震えている。
「ちょっと、突然どうしたんだい?」
「はい、解かっております。では私はコンテナの中に戻りますので、私が入りましたら扉を閉めてください」
「だからさ、オレが言いたいのは」
「皆まで言わなくても解ります。さあ、どうぞ扉を閉めてください。短い間ですがマスターに出会えたことを私は嬉しく思います」
オレが何か伝えようとしても、ゴーレムは自分の世界に入り込んでいて聞く耳を持たない。箱の中に入り込むと、涙を流しながら扉を閉めてくださいと言うばかりだ。
そんな態度にいい加減頭に来たので、オレはゴーレムに大声で怒鳴りつけることにした。
「あー、もう!マスター命令だ!静かにしろ!」
「了解しました、マスター」
オレの命令発言にゴーレムは、大人しくなる。
一息つくと、オレはゴーレムに漸く質問を始める。
「まず、オマエはゴーレムでいいんだな?」
「はい、その通りです。マスターの言われる通り、私はゴーレムbQ563794番、家庭用特別仕様タイプ、特殊機能搭載型最新鋭機、商品名『アンテ・ルーチンス・フレンスキー』と申します」
「次に、ここは何所か判るか?」
「少々お待ちください。暗視モードオン、周囲をサーチ及びスキャンします」
そう言い放つと、ゴーレムは周りを見回す。
「・・・解析終了。内部データーと照合開始・・・確認終了。解りましたマスター。現在地は『ゴーレム販売店【ゼペットハウス】7号店』であります」
「ゴーレム販売店?」
「はい。私の記憶データーによりますと、時代の最先端をゆく超有名店であります。支店だけでもこの大陸に五十店舗御座います」
ゴーレムの話にオレは首を傾げる。聞いたことが無いからだ。
「・・・ですが変ですね。私の内蔵時計によりますとまだ日が出ているはずですが。それにライトも点けてないなんて」
周りの薄暗い光景にゴーレムは疑問を持つ。そんなゴーレムにオレはある一つのことを伝える。
「実はな、ここは砂漠に埋まっているんだ」
「砂漠ですって!マスター、冗談でもきつ過ぎます。砂漠はこの大陸には存在しませんよ」
「いや、本当のことなんだよ」
「では、調べてみます。GPNシステム作動・・・衛星回線に接続・・・接続不能・・・音波探査システム作動・・・解析終了。現在地は地中に約15m、地表に大量の砂を確認。状況から判断して砂漠と結論します。・・・まさかこの上に砂漠が広がっているなんて」
ゴーレムが驚いた表情で呟く。
「それに、そのゴーレム販売店も聞いたことが無いんだ」
「そんな、誰でも知っているはずですよ!」
ゴーレムが悲鳴にも似た声を出す。
そんなゴーレムに対して、オレは申し訳ない気持ちになりながらも事実を伝える。
「・・・君に伝えるのは酷いかも知れないけど、これは事実なんだ。実は君は何百年以上もここで眠り続けていたんだ」
「う、うそ?私はそんなに・・・」
「その間に世界ももの凄く変わったんだ」
オレの言葉にゴーレムは、呆然としてしまう。オレはそんなゴーレムの傍らに腰を降ろすとそのまま寄り添う。
「・・・マスター?」
「・・・落ち着くまでこうしているから。このままでいると良い」
「・・・ありがとうございます、マスター」
かすれた声で礼を言うと、ゴーレムはオレの肩に顔を寄せて静かに泣きはじめた。
・・・・どれ位こうしていたのだろう。
「・・・もう大丈夫です、マスター」
オレの傍を離れたゴーレムはしっかりとした声で話す。
「もういいのか?」
「はい、ご心配をお掛けしましたマスター」
ゴーレムの返事にオレは頷くと、再度質問を始める。
「それで、これから如何するんだ?」
「如何すると言われましても、私にはマスターが全てですから」
「つまりオレが如何するか決めていいんだね」
「・・・はい。マスターが決めてください。私はマスターに従います」
ゴーレムのその言葉に、オレは二つの命令を伝える。
「まず、一つ目。これからはオレと一緒に行動すること。ま、これはゴーレムとして当然だと思うけど。改めて命令するよ」
「了解しました、マスター」
そしてもう一つの命令を伝える。
「それともう一つ。今をもってオレをマスターと呼ぶことと、敬語で話すことを禁止する。これからはベルツと呼び捨てにすること」
「な、何ですって!」
オレの命令にゴーレムは驚愕する。
「そ、そんな!よ、呼び捨てにするなんて」
「あ。そういえば君のこともこのままじゃいけないね」
オレはうーんと考えると、そのことを伝える。
「よし、今から君はアンテだ!」
「あ、アンテ?」
「そう、君の名前だよ」
オレの思い付きにゴーレム、アンテは目を丸くする。
「私に名前など」
「安易すぎたかな」
「い、いえ!トンでもございません!私如きに名前を付けてくださるなんて」
驚きが抜けきってないのか、声が少し可笑しくなっている。
「それで、アンテはオレの言うことは聞けないのかな?」
オレの意地悪な言い方に、アンテは困ってしまう。
「わ、私はゴーレムですから、マスターの言葉には従わなければなりません。ですが仕えるべきマスターに対して敬語を使わず、ましてや呼び捨てにするなど」
「そのマスターのオレが許可しているんだよ。だから難しく考えなくていいんだ。これはマスターに従ってのことなんだから」
「た、確かにそうですね」
オレの言葉にアンテは頷く。
「で、ではいきます。・・・そ、そのベ・・・ベルツ・・様」
「もう一度」
「うーー!・・・べ・・ベル・・・ツ」
「ま、良いだろ。・・・けど、そんなに照れることなんかい?」
「当たり前です!ゴーレムとしては在り得ないことなんですから」
アンテの困り顔にオレは笑いながら答える。
「マスターであるオレの言葉に従っているだけなんだから。気にしなくていいんだよ」
アンテはため息をつくと、オレを見つめて話す。
「・・・考えるのが何だか愚かに思えます。私は馬鹿にされているのですか?」
「そんなことは無いよ」
「その笑顔はなんですか?」
「もともとだよ」
依然として納得していない顔をするアンテに、オレはとりあえず当面の問題を伝えることにする。
「とにかくここから脱出しないと」
「はい、そうですね」
アンテも頷くとオレに脱出する方法を話し始める。
「方法としては、マスター・・・ベルツが落ちてきたところがここから一番近いですし、私とマス、ベルツで協力すれば出られるはずです」
「他に出口はないのか?」
オレの質問にアンテは首を横に振る。
「他のルートは地下に向かうものばかりです。その場所以外はありません」
「なら、そこに行こう」
言い切るとアンテの手を握り歩き出す。
「ま、マスター!何をなさるのですか!」
「手を繋いだだけだけど」
「その様なことをされなくても」
「ほら。口調、口調」
「・・・ベルツは変です。可笑しいです」
「いいじゃないか」
そんなことを話しているうちに目的地に辿り着く。早速部屋にあるものを二人で動かしてゆく。重いものを集めて土台を作ると、丈夫なものをさらに積みあげてゆき階段状に仕上げる。階段が出来上がるころには、二人とも疲れきっていた。けどお互いに顔を見合わせて笑い合う。
二人で出来上がった階段を昇ってゆき、出口へあと一段となったところで、アンテが立ち止まってしまう。
「アンテ、どうした?」
「その・・ここを出ると外に出られるのですよね」
「そうだけど」
アンテは不安な表情でオレに話す。
「私は外の世界で生きて行けるのでしょうか?」
「なんだ、そんなことか」
「でも、私にとっては重要なことなんですよ!」
オレはアンテに笑いかけると「ほら!」と繋いでいた手を引っ張る。
最後の階段を二人で昇り、同時に外へ飛び出す。
抗議の声を上げる暇もなく外に連れ出されたアンテは、目を丸くしている。
「な、簡単だろ」
オレのイタズラにアンテは、大声で猛抗議してくる。
「どうしてこんなことをするのですか!マスターは相手のことを考えているのですか!というより、考えて行動しているのですか!それでも私のマスターですか!」
「でも、簡単だったろ」
笑顔で答えるオレにアンテは口をパクパクさせる。
そこで真面目な顔をすると、オレはアンテに語りかける。
「真面目に慎重にもいいけど、時には大胆に行動することも必要なんだよ」
「マスターは、ベルツは大胆すぎます」
見つめられるのに気恥ずかしさを感じたのか、アンテは横を向いてしまう。
「なら、丁度いいんじゃない」
「何がですか?」
不貞腐れるアンテにオレは真面目に答える。
「真面目なアンテがこれから一緒なんだからさ。オレと合わせて丁度つり合うだろ」
気楽なもの言いにアンテは、呆れた表情をして答える。
「アナタと出会ってマスター登録してしまったこと事態が、私の運のつきなんですね」
「今頃気が付いたのかい」
たっぷりの皮肉を込めた返事にも、オレは笑いながら答える。
アンテはそんなオレを見つめると、軽く一息吐き出してから右手を差し出す。
「仕方ないですね。ですが、これからは容赦なくしますので覚悟してなさいねベルツ」
差し出された右手を握りながら、オレも挨拶する。
「よろしく、アンテ」
11/11/22 22:46更新 / 名無しの旅人