ぷろろーぐ〜期侍の新人〜
「・・・。」
一人の男が眉をひそめて広告をじっと見つめていた。
白衣を着た少年と言っていいほどの幼い容姿をした男であった。
その手に持っているのは「もっと広く我が社を知ってもらうのよ!」という社長の一言で制作されたとある派遣企業の広告である。
ハーピー便で世界中に飛ばされた・・・否、飛ばされてしまったこの広告には問題点があった。
彼はこの事実についてどうしようか絶賛悩み中である。
「・・・社長。」
「何かしら?」
少年が声をかけたのは妙齢の女性。20代半ばのように見えるが果たしてそうだろうか?というのも、彼女は見た感じサキュバスという姿をしているので人間感覚の年齢があてにならない。まだ18歳かもしれないしもしかしたら80歳かもしれない。
少年のかけた言葉からこのエレメンタルの社長であると推察できる。
しかしどこか砕けた印象のよく言えば気さく、悪く言えば威厳に欠ける、と言ったところか。
少年は結局彼女へチラシの不備を伝える事にしたらしい。
「これ。」
「あら?今日から配達してもらってるウチの広告じゃない。」
「違う。」
「・・・?どこからどう見てもウチの広告―」
「字が違う。」
「・・・え?」
「『お急ぎの依頼をお【待】ち』の方になってる。急いでるのか待っているのか分からなくなってる。」
「・・・。」
「まぁ、気付かない人もいると思うけど。」
「・・・。」
「今日から新しい人くるんでしょう?せめて初日ぐらいはしっかりしてよ。」
「・・・気をつけます・・・。」
どちらが上司か分からない会話をしつつ、二人は各々の持ち場に戻る。
今日も仕事は来ないのだろうか、もしかしてチラシの効果があるのかそんなことを考えながら。
「おはよーございまーす。」
「「おはよう。」」
「うーわ。今日も息ぴったり。」
「偶々。」
「もう・・・茶化さないの!」
少年は無関心といった様子だが女性の方はまんざらでも無いようだ。
今頃・・・というより出社時間ぴったりに入って来た男、年の頃は20前後といったところだろうか。軽薄な印象をあらゆる者に植え付けるかのような軽い男であるが根は真面目だと自称している。
「今日から新しい人くるんだっけ?可愛い子だったらいいなぁ。」
「ざーんねん。男の子よ。」
「なんだよ男かよ・・・。」
「・・・来る。」
次の瞬間、カランカランとウェルカムベルが安っぽい音を奏でながらドアが開いた。
「お、おはようございます!」
若干緊張しながらも元気よく飛び込んできた人物が件の新入社員らしい、年は10の半ばを越えたあたり。いかにも元気印といった感じの人物であるらしかった。
「ホント千里眼でも持ってるんじゃねーか・・・?」
「お前もできるはず。」
「あいにく修行不足でね・・・。」
「修行・・・?」
パンパン。と手を打ち鳴らし。先刻まで不甲斐ない姿を晒していた女性が突然凛々しく
「はいはい。私語は慎んで。新人クンも来たことだし、自己紹介といきましょう。私がこのエレメンタルを統括しています。マリア=クロイツです。砕けた言い方をすれば社長という役職ですね。これからよろしくお願いしますね。こちらが私の使役している精霊、ウンディーネのドナです。」
マリアの横にしゅわしゅわと泡が集まり透き通った人型をした精霊が現れた。
彼女は優雅に一礼すると「よろしくお願いします。」と丁寧に挨拶をした。
(突然真面目になった!)
(いつもこれぐらい真面目ならいいのに。)
「よ、よろしくお願いします!ベネディクト=ルービンシュタインです!契約精霊はイグニスです!よろしくお願いします!」
ベネディクトと名乗った少年は深々と礼をした。なんとも礼儀正しい少年である。そして少年の頭上にボッと火の玉が灯る。純精霊らしくその姿は人の形を保っていなかった。
「(純精霊・・・?)よろしくな! 俺はフランクリン=シュヴァリエ。で、こいつが相棒のシルフ。フィンだ。」
突然旋風が巻き、薄緑色のワンピースを着たような姿の幼女がふわふわと浮きながらくりくりとした瞳で物珍しそうにベネディクトをのぞき込んでいた。
しばらくうろうろしていたが観察に飽きたのだろうか、にぱっと笑って「よろしくねッ!」と一言残すと旋風とともに消えてしまった。
「はは・・・。自由な奴・・・。」
相棒の少しばかり失礼な行動にばつが悪そうに苦笑を浮かべる。
「・・・地神 司。担当は錬金術と土地開発。契約精霊はノーム。」
ツカサと名乗った少年が手を差し出すと、その手のひらからにょきにょきと芽が生え、果実が実り、そのまま掌サイズの女の子が生えてきた。分体というものだろうか、小さい女の子はそのままこくりと会釈をすると、よじよじと彼の腕を上り、そのまま頭の上でちょこんと俯せになったまま動かなくなってしまった。甘えたがりな性格のようだ。
「それと・・・今来たばかりのようだから一応。ようこそ、魔界国家ポローヴェへ。」
「え!?ど、どうして分かったんですか・・・!?」
「ここに来て純精霊が一日もつわけが―
カランカラン!と激しく安っぽい音にツカサの声が遮られ、
「すみません。精霊使いの方に依頼ができるというのはここですか・・・?」
続いたらいいな
一人の男が眉をひそめて広告をじっと見つめていた。
白衣を着た少年と言っていいほどの幼い容姿をした男であった。
その手に持っているのは「もっと広く我が社を知ってもらうのよ!」という社長の一言で制作されたとある派遣企業の広告である。
ハーピー便で世界中に飛ばされた・・・否、飛ばされてしまったこの広告には問題点があった。
彼はこの事実についてどうしようか絶賛悩み中である。
「・・・社長。」
「何かしら?」
少年が声をかけたのは妙齢の女性。20代半ばのように見えるが果たしてそうだろうか?というのも、彼女は見た感じサキュバスという姿をしているので人間感覚の年齢があてにならない。まだ18歳かもしれないしもしかしたら80歳かもしれない。
少年のかけた言葉からこのエレメンタルの社長であると推察できる。
しかしどこか砕けた印象のよく言えば気さく、悪く言えば威厳に欠ける、と言ったところか。
少年は結局彼女へチラシの不備を伝える事にしたらしい。
「これ。」
「あら?今日から配達してもらってるウチの広告じゃない。」
「違う。」
「・・・?どこからどう見てもウチの広告―」
「字が違う。」
「・・・え?」
「『お急ぎの依頼をお【待】ち』の方になってる。急いでるのか待っているのか分からなくなってる。」
「・・・。」
「まぁ、気付かない人もいると思うけど。」
「・・・。」
「今日から新しい人くるんでしょう?せめて初日ぐらいはしっかりしてよ。」
「・・・気をつけます・・・。」
どちらが上司か分からない会話をしつつ、二人は各々の持ち場に戻る。
今日も仕事は来ないのだろうか、もしかしてチラシの効果があるのかそんなことを考えながら。
「おはよーございまーす。」
「「おはよう。」」
「うーわ。今日も息ぴったり。」
「偶々。」
「もう・・・茶化さないの!」
少年は無関心といった様子だが女性の方はまんざらでも無いようだ。
今頃・・・というより出社時間ぴったりに入って来た男、年の頃は20前後といったところだろうか。軽薄な印象をあらゆる者に植え付けるかのような軽い男であるが根は真面目だと自称している。
「今日から新しい人くるんだっけ?可愛い子だったらいいなぁ。」
「ざーんねん。男の子よ。」
「なんだよ男かよ・・・。」
「・・・来る。」
次の瞬間、カランカランとウェルカムベルが安っぽい音を奏でながらドアが開いた。
「お、おはようございます!」
若干緊張しながらも元気よく飛び込んできた人物が件の新入社員らしい、年は10の半ばを越えたあたり。いかにも元気印といった感じの人物であるらしかった。
「ホント千里眼でも持ってるんじゃねーか・・・?」
「お前もできるはず。」
「あいにく修行不足でね・・・。」
「修行・・・?」
パンパン。と手を打ち鳴らし。先刻まで不甲斐ない姿を晒していた女性が突然凛々しく
「はいはい。私語は慎んで。新人クンも来たことだし、自己紹介といきましょう。私がこのエレメンタルを統括しています。マリア=クロイツです。砕けた言い方をすれば社長という役職ですね。これからよろしくお願いしますね。こちらが私の使役している精霊、ウンディーネのドナです。」
マリアの横にしゅわしゅわと泡が集まり透き通った人型をした精霊が現れた。
彼女は優雅に一礼すると「よろしくお願いします。」と丁寧に挨拶をした。
(突然真面目になった!)
(いつもこれぐらい真面目ならいいのに。)
「よ、よろしくお願いします!ベネディクト=ルービンシュタインです!契約精霊はイグニスです!よろしくお願いします!」
ベネディクトと名乗った少年は深々と礼をした。なんとも礼儀正しい少年である。そして少年の頭上にボッと火の玉が灯る。純精霊らしくその姿は人の形を保っていなかった。
「(純精霊・・・?)よろしくな! 俺はフランクリン=シュヴァリエ。で、こいつが相棒のシルフ。フィンだ。」
突然旋風が巻き、薄緑色のワンピースを着たような姿の幼女がふわふわと浮きながらくりくりとした瞳で物珍しそうにベネディクトをのぞき込んでいた。
しばらくうろうろしていたが観察に飽きたのだろうか、にぱっと笑って「よろしくねッ!」と一言残すと旋風とともに消えてしまった。
「はは・・・。自由な奴・・・。」
相棒の少しばかり失礼な行動にばつが悪そうに苦笑を浮かべる。
「・・・地神 司。担当は錬金術と土地開発。契約精霊はノーム。」
ツカサと名乗った少年が手を差し出すと、その手のひらからにょきにょきと芽が生え、果実が実り、そのまま掌サイズの女の子が生えてきた。分体というものだろうか、小さい女の子はそのままこくりと会釈をすると、よじよじと彼の腕を上り、そのまま頭の上でちょこんと俯せになったまま動かなくなってしまった。甘えたがりな性格のようだ。
「それと・・・今来たばかりのようだから一応。ようこそ、魔界国家ポローヴェへ。」
「え!?ど、どうして分かったんですか・・・!?」
「ここに来て純精霊が一日もつわけが―
カランカラン!と激しく安っぽい音にツカサの声が遮られ、
「すみません。精霊使いの方に依頼ができるというのはここですか・・・?」
続いたらいいな
13/11/07 13:39更新 / はっきんだま
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