人斬り勇者の末路
とある反魔物領にあからさまに不審者っぽい男がいた。
全身をすっぽり包む黒のマントとフードを目深に被り顔を隠している。
これだけでも怪しいが、マントの背中の部分が不自然に盛り上がっている。
形状からして、おそらく剣。しかも小柄な男に合わないほどの大剣。
そんな不審者はスラムのとある汚い酒場にいた。
「・・・そうですか。」
トーンが高い、残念そうな声。
非常にこの場にお似合いな形に反して、不釣り合いな声色をしている。
「すまねぇな小僧。そもそも反魔物領のそばに魔物なんかよりつかねぇ。いないとこにゃ討伐依頼なんぞきやしねぇよ。」
「・・・そうですね。わざわざありがとうございます。」
「・・・誰か探してんのか?」
「!・・・いいえ。」
「そうか。ならいいんだがよ・・・。」
酒場の店主をやっていると自然と人を見る目ができあがるのだろうか。
何かを察した様子であったが、何も触れずにいたのは優しさか鬱陶しさか。
どちらにせよ彼は『特定の誰か』を探してるわけではない。
「・・・まぁ、その辺にいるやつらなら何か情報なりもってんだろ。酒場ってな『そういう』場所だしな。」
「・・・そうですね。そうしてみます。」
ちょうど朝日が昇り始めたころ、彼はとある洞窟に来ていた。
先ほどの都市とはさほど離れていない洞窟であるが、最近ワームが住み着いたらしい。
やはり冒険者があつまる酒場での情報交換は効率的だなと感心しながら、彼は洞窟へ入っていく。
洞窟の奥へ進むと、だんだんワームが居るような痕跡が見受けられる。
粗く削り取られた岩壁、砕かれて石や砂になってしまった岩、あげくにはワームが掘り起こしたであろう穴まである。
「これは・・・地中を掘り進んでこの洞窟に来たのか・・・。」
洞窟の入り口付近にはこのような痕跡が見られなかったため、装結論づけられる。
実際、ワームの力なら岩盤を掘り起こすぐらい簡単だろう。
人のにおいに誘われて来たのだろうか。それともたまたまここにたどり着いたのだろうか。そんなことを考えてると―
ごごご・・・
と微かな地鳴りが聞こえてくる。
「気付いた・・・ね。」
と呟くと、おもむろに駆けだした。
広い場所広い場所。
そう言いながら彼は洞窟のなかを走る。
そして、明かりの差す開けた場所にでた。
「ん・・・。」
暗い場所からいきなり明るい所に出てきたからか、目に少しだけ痛みを覚える。
そして、
「わ・・・。」
大きな穴があった。
天井の巨大な穴から差す光に照らされ、少しだけ寂しくも神秘的な光景が目の前にあった。
「ここから入って来たんだ・・・。」
感傷に浸っている間にも地鳴りは確実に大きくなってやがて小さな地震のような揺れを伴ってきている。
「さて・・・。」
ばっ!とマント投げ捨て、大きな剣を鞘から引き抜く。
少年から青年への過渡期といったところかあどけなさと精悍さを併せ持つ彼の顔があらわになる。
そして―
ばごん!という轟音とともに巨大な巨大なモノが飛び出してきた。
傾国というのか、絶世の美女の上半身に、蛇のように長く、しかし硬質でごつごつした鱗がびっしりと生えている下半身は紛れもなくワームそのものであった。
「あはぁ♥」
オスの匂いで発情して完全に興奮状態にあり、非常に危険だということが一目で分かる。
その蕩けた表情から察するに、随分と長い間『おあずけ』状態だったのだろうか。
「随分と司祭の野郎が言ってたのと違いますね。」
教団と袂を分かった元勇者として、魔物に関する知識がいかに偏っているかを痛感したが、すぐに戦闘に入ると予想されるこの状況で呑気に長考している暇はない。
ずしん!と重々しい音とともに地面に下り立つと、
「オスゥゥゥゥゥゥ♥」
と奇声を上げながら全力で突進してくる。
両手を広げて逃げ場を無くし、確実に捕まえようと目前まで迫ってくるその様は、さながらファランクスを組む重装歩兵部隊といったところか。
がりがりと地面を削りながら全力疾走するその姿に、生半可な勇者では失禁そ禁じ得ないだろう。
「はっ!」
と一喝。ブン!と肩から腰にかけて袈裟斬りの要領で剣を這わせる。
ギィン!という硬質音と共に剣はその手に遮られてしまうが、力を込めて押し切ろうとする。
結果、ガリガリとワームと共に岩壁に突っ込む形になる。
彼は壁に激突する寸での所で軽く跳び、壁を足場にして再び跳躍する。
どごん!と鈍い音と共にワームは岩を粉々に砕きながら、頭から壁に埋没する。
「っつ〜・・・。」
腕が痺れる。裂くような痛みもある。
おそらく筋繊維が断裂しているだろう。
使えないわけじゃない。まだ戦える。
ぼごっ!と壁から飛び出してきたワームは、
「むぅ〜・・・。」
と唸りながら彼を睨む。
抵抗されて不機嫌になったのだろうか。
「うがぁああぁあぁぁぁあ!」
とその大きな手を握りしめ、全力で少年目がけて突っ込んで、拳を突き出す。
彼女の大きな質量と突進力があいまって、強烈な一撃を生み出す。
ガンッ!と剣の腹で受け止めるも、その衝撃は流しきれず、
「ぐっ・・・あっ!」
その体は宙に浮き、剣がするりと抜けてしまう。
その瞬間、しゅるり・・・と足首に巻き付く感触を感じとり、ぐんっ!と体が引っ張られる。
そして、引っ張られた先にはワームの肢体があった。
「んっ♥くふぅ♥」
という声と共に少年の体が優しく受け止められる。
「つかまえたぁ♥」
と彼女はご満悦な様子で、
「ふぅ・・・降参。」
少年も両手を挙げて降参するしかなかった。
「んむぅ・・・ちゅっ・・・ふぅ♥」
二人の熱い吐息が行き交う。
お互いの舌を受け入れ、蛇のように絡みつかせ、ぬろぬろと粘膜に唾液を塗り込んで貪る。
息苦しくなるほど熱い抱擁に包まれて、少年もワームも必死に互いに奉仕する。
少年の体はワームの下半身に巻き付かれ、その上力強い両腕に拘束されている。
拘束された体はワームの上半身にぐりぐりと押しつけられ、彼女の柔らかさと暖かさを実感させられる。
その下では二人の結合部から粘液が滴っており、長時間行為に及んでいたことを思わせる。
実際、少年が捕まってから丸一日が経過しようとしていた。
その間ずっと二人は繋がっていたのであった。
「んっ♥んっ♥」
とワームは全身で少年を感じる喜びを享受し、
「・・・・・・。」
少年は度重なる性感と疲労で意識が混濁し、彼女の求められるままに反射を繰り返すだけとなっていた。
さらにしばらく経つと、少年は意識を取り戻した。
ワームは満足したのだろうか。気持ちよさそうに寝息を立てている。
体は拘束され、下腹部も繋がったままであったが、度重なる行為でどろどろになっているため、抜けるのは容易だった。
とりあえずこのべたべたしているこの体を清めたかったが、今はそんな余裕もなく、
「早く街から離れなきゃ・・・。」
と今直面している問題に向き合わなければならなかった。
ここは反魔物領である。従って、魔物がここにいるのはまずい。
ワームなのであるから多少のことではやられてしまわないと思うが、万が一ということもある。
あの街に彼並の手練れがいないとは限らない。
彼はあっさりと負けてしまったが、神の加護を既に失った・・・というより、自ら拒絶したからだと今でも思っている。
彼と同等の技量を持ち、かつ神の加護を一身に受けた勇者ならばあるいは彼女を狩ってしまうかもしれない。
天使などの神格が出てこないとも限らない。
何より彼は人間の汚さや狡賢さを身をもって味わっている。
一刻も早くこの場を立ち去り、親魔物領に身を潜めるか、あるいは追っ手を撒くなり撃退するなりの手段を講じられる時間と地形が欲しかった。
かといって、
「言うこと聞いて・・・くれるかなぁ・・・?」
このまま起こすとさっきの続きを誘っていると捉えられてまた時間を潰してしまうかもしれない。
さぁ如何したものかと考えていると、
「逃げれば追ってきてくれるかな・・・?」
酒場で聞いたワームの特性を思い出した。
「んっ・・・?」
ワームが目を覚ます。まず最初に感じたのは
(寒い・・・。)
続けて
(寂しい・・・。)
であった。
がばっ!と跳ね起きると少年がいない事を確認する。
「なんで?なんで?」
と慌てて彼を探す。
錯乱状態で正しい行動が取れるはずもない。そこへ、
ふわりとそよ風が吹き込んできた。
そこにいままでそばにいた匂いをかぎ取る。
ふわ・・・と一瞬惚けた顔になるが、彼が逃げ出したことに対して途方も無い怒りを感じる。
彼をもう一度捕まえなければ。
もう一度いっぱいいっぱい愛し合って二度と逃げようなんて思わないほど快楽漬けにしなければ。
単調、故に暴力的な発想。
ワームが危険と言われる所以である。そして、
がんっ!という音と共に彼女は壁を破壊し、岩を踏み砕き、匂いを辿って最短かつ最速の道を「作りながら」彼の元へ疾走する。
ばごんっ!という音とともに岩壁が吹き飛ばされた。
ここは少年と初めて会った場所、天井に大穴の空いた大空洞であった。
「くんくん・・・くんくん・・・。」
ここだ。とワームは確信する。
きっと近くに―
「おーい。」
その声に導かれ、空を見上げる。
「こっちこっち。」
どうやって上ったのか、彼は月明かりに照らされ、全裸でそこに立っていた。
荷物もマントも剣も回収し、全裸でそこに立っていた。
「なんで!」
彼を問いただす。
「・・・。」
答えてくれない。
「嫌い!?」
「・・・ねぇ・・・もう一回追いかけっこしようか。」
「ふぇ・・・?」
「もう一回僕を捕まえることが出来たら、もうどこにも行かないよ。・・・約束する。」
ぎらりとワームの目が光る。
狩りの高揚と情欲の光である。
「もうどこにも行かない?」
「うん。・・・約束。」
「わかった♪」
今回だけは許してあげよう。
そう思った。
がっ!
ワームの下半身が少年の脚を捉える。
疲労した少年の脚で彼女から逃げ切れる道理はなく。決着はあっさりついた。
洞窟を出てしばらく進んだ山中である。
「つかまえたぁ♥」
嬉しそうな弾む声とともに少年の体をぎゅっと抱き寄せる。
「〜♪」
と鼻歌まで歌い始める始末である。そして、
くるりと身を翻し、洞窟へ戻ろうとした。
「ストップ!ストップ!」
慌てて彼女を止める。
せっかく距離を稼げたのにここで戻られてはたまらない。と。しかし、
ぎっ!と睨みつける彼女の視線に、
「う・・・。」
と一瞬たじろぐが、ここで手を拱いていてはだめだ、と、
体のバネは利用して、弾けるように彼女の手をふりほどき、そして、
ちゅっ♥
と、彼女の唇に吸い付く。
「?!〜♥」
一瞬、目を白黒させ、何が起きたのかを理解すると、
どさり、と少年を地面に押し倒す。
そのままじゅるじゅると口内を舐り、舌を絡ませ、唾液を交換する。
「んん♥むちゅっ♥ちゅぱっ♥」
と卑らしい音を響かせ、二人は愛情表現に没頭していく。
ぐるぐると蜷局を巻き、その中へ少年と自信を閉じ込めていく。
少年も負けじと、その柔らかな乳へと手を伸ばし、優しく揉みしだいてほぐしてゆく。
「んむぅ♥んん〜♥」
と、敏感な素肌に触れられ、くぐもった嬌声を上げる。
次第に火照っていく体と、硬さを増していく乳房の先端を確認すると、乳首にそっと指を這わせ、ぴんっとすこし強めに弾いた。
「んんんんっ!」
と軽い絶頂に達すると、体が弛緩し、だらりと少年に覆い被さった体の重量が増す。
「んむ・・・。」
と少年は彼女の舌を唇で噛むように力を加えると、そのまま、
ちゅるるるるるるる・・・、ぬぽんっ!
と一気に舌をしごき上げながら引き抜いた。
「んはぁ♥」
とワームは蕩けた顔を晒し、ぴくぴくと体を震わせた。
(もう少し・・・)
昨日の地獄のような長時間セックスで、彼女は全身性感帯だということは分かった。
そして、くちゅり、と彼女の秘部に剛直を宛がうと、ぎり・・・。とワームの下半身が少年を引き寄せようとする。
その瞬間、ぐっと脚に力を込め、その力に抵抗する
「はえぇ・・・?」
弄ばれて蕩けた脳髄で必死に思考を巡らせたが、彼の意図が分からなかった。
従って、ワームは最も単純な力技という手段にでる。
ぎりぎりと締め付ける力を増し、少年の逸物を自分の蜜壺に収めようとする。
少年も可能な限りの力を振るって、必死に抵抗する。
「なんでぇ・・・?ちょうだい♥ちょうだい♥」
と思いつきでいやらしくおねだりをしながら、締め付ける尾の力はどんどん増していく。
やがて、少年も限界がきて、
(今だ!)
ごちゅん!と一気に彼女の秘所を貫いて、最奥、子宮口へとディープキスをする。
「はひ・・・きゃふううぅぅぅぅうぅぅうぅぅうぅ♥♥♥」
一気に絶頂への階段を駆け上がる彼女と共に、その膣はうねうねとうねり、少年を可愛がる。
ぐちゅぐちゅと咀嚼し、ぬろぬろと蠕動し、ちゅぅぅぅっと先端に吸い付きながら精液を催促する。
一瞬の出来事であったが、彼を天国へ導くには十分の刺激であった。
「っく・・・うぁぁぁぁ!」
という叫びと共に彼女の中でびくびくと暴発を繰り返し、やがで全てを吐精すると、弱々しく微動を繰り返す。
二人とも力を使い果たし、ぐったりと地面へ突っ伏して、抱き合うのであった。
「はぁ・・・はぁ・・・ねぇ・・・一つだけ・・・言うこと聞いてくれる・・・?」
「うん♥・・・うん♥」
「もっと・・・二人で・・・ゆっくり・・・できるところへ・・・引っ越したいな。」
「うん♥・・・もっと・・・いっぱいしよぉ♥」
「うん・・・じゃあもうちょっとしたら・・・新しい住処・・・探しに・・・行こうね・・・。」
「うん♥・・・でも・・・もうちょっとだけ・・・このまま♥」
「そうだね・・・もうちょっとだけ・・・ね。」
二人はやがて新天地を求めて旅立つ。
争いとは無縁の聖地を探すために。
それまでは二人で主神からの逃避行を楽しむのだ。
END
全身をすっぽり包む黒のマントとフードを目深に被り顔を隠している。
これだけでも怪しいが、マントの背中の部分が不自然に盛り上がっている。
形状からして、おそらく剣。しかも小柄な男に合わないほどの大剣。
そんな不審者はスラムのとある汚い酒場にいた。
「・・・そうですか。」
トーンが高い、残念そうな声。
非常にこの場にお似合いな形に反して、不釣り合いな声色をしている。
「すまねぇな小僧。そもそも反魔物領のそばに魔物なんかよりつかねぇ。いないとこにゃ討伐依頼なんぞきやしねぇよ。」
「・・・そうですね。わざわざありがとうございます。」
「・・・誰か探してんのか?」
「!・・・いいえ。」
「そうか。ならいいんだがよ・・・。」
酒場の店主をやっていると自然と人を見る目ができあがるのだろうか。
何かを察した様子であったが、何も触れずにいたのは優しさか鬱陶しさか。
どちらにせよ彼は『特定の誰か』を探してるわけではない。
「・・・まぁ、その辺にいるやつらなら何か情報なりもってんだろ。酒場ってな『そういう』場所だしな。」
「・・・そうですね。そうしてみます。」
ちょうど朝日が昇り始めたころ、彼はとある洞窟に来ていた。
先ほどの都市とはさほど離れていない洞窟であるが、最近ワームが住み着いたらしい。
やはり冒険者があつまる酒場での情報交換は効率的だなと感心しながら、彼は洞窟へ入っていく。
洞窟の奥へ進むと、だんだんワームが居るような痕跡が見受けられる。
粗く削り取られた岩壁、砕かれて石や砂になってしまった岩、あげくにはワームが掘り起こしたであろう穴まである。
「これは・・・地中を掘り進んでこの洞窟に来たのか・・・。」
洞窟の入り口付近にはこのような痕跡が見られなかったため、装結論づけられる。
実際、ワームの力なら岩盤を掘り起こすぐらい簡単だろう。
人のにおいに誘われて来たのだろうか。それともたまたまここにたどり着いたのだろうか。そんなことを考えてると―
ごごご・・・
と微かな地鳴りが聞こえてくる。
「気付いた・・・ね。」
と呟くと、おもむろに駆けだした。
広い場所広い場所。
そう言いながら彼は洞窟のなかを走る。
そして、明かりの差す開けた場所にでた。
「ん・・・。」
暗い場所からいきなり明るい所に出てきたからか、目に少しだけ痛みを覚える。
そして、
「わ・・・。」
大きな穴があった。
天井の巨大な穴から差す光に照らされ、少しだけ寂しくも神秘的な光景が目の前にあった。
「ここから入って来たんだ・・・。」
感傷に浸っている間にも地鳴りは確実に大きくなってやがて小さな地震のような揺れを伴ってきている。
「さて・・・。」
ばっ!とマント投げ捨て、大きな剣を鞘から引き抜く。
少年から青年への過渡期といったところかあどけなさと精悍さを併せ持つ彼の顔があらわになる。
そして―
ばごん!という轟音とともに巨大な巨大なモノが飛び出してきた。
傾国というのか、絶世の美女の上半身に、蛇のように長く、しかし硬質でごつごつした鱗がびっしりと生えている下半身は紛れもなくワームそのものであった。
「あはぁ♥」
オスの匂いで発情して完全に興奮状態にあり、非常に危険だということが一目で分かる。
その蕩けた表情から察するに、随分と長い間『おあずけ』状態だったのだろうか。
「随分と司祭の野郎が言ってたのと違いますね。」
教団と袂を分かった元勇者として、魔物に関する知識がいかに偏っているかを痛感したが、すぐに戦闘に入ると予想されるこの状況で呑気に長考している暇はない。
ずしん!と重々しい音とともに地面に下り立つと、
「オスゥゥゥゥゥゥ♥」
と奇声を上げながら全力で突進してくる。
両手を広げて逃げ場を無くし、確実に捕まえようと目前まで迫ってくるその様は、さながらファランクスを組む重装歩兵部隊といったところか。
がりがりと地面を削りながら全力疾走するその姿に、生半可な勇者では失禁そ禁じ得ないだろう。
「はっ!」
と一喝。ブン!と肩から腰にかけて袈裟斬りの要領で剣を這わせる。
ギィン!という硬質音と共に剣はその手に遮られてしまうが、力を込めて押し切ろうとする。
結果、ガリガリとワームと共に岩壁に突っ込む形になる。
彼は壁に激突する寸での所で軽く跳び、壁を足場にして再び跳躍する。
どごん!と鈍い音と共にワームは岩を粉々に砕きながら、頭から壁に埋没する。
「っつ〜・・・。」
腕が痺れる。裂くような痛みもある。
おそらく筋繊維が断裂しているだろう。
使えないわけじゃない。まだ戦える。
ぼごっ!と壁から飛び出してきたワームは、
「むぅ〜・・・。」
と唸りながら彼を睨む。
抵抗されて不機嫌になったのだろうか。
「うがぁああぁあぁぁぁあ!」
とその大きな手を握りしめ、全力で少年目がけて突っ込んで、拳を突き出す。
彼女の大きな質量と突進力があいまって、強烈な一撃を生み出す。
ガンッ!と剣の腹で受け止めるも、その衝撃は流しきれず、
「ぐっ・・・あっ!」
その体は宙に浮き、剣がするりと抜けてしまう。
その瞬間、しゅるり・・・と足首に巻き付く感触を感じとり、ぐんっ!と体が引っ張られる。
そして、引っ張られた先にはワームの肢体があった。
「んっ♥くふぅ♥」
という声と共に少年の体が優しく受け止められる。
「つかまえたぁ♥」
と彼女はご満悦な様子で、
「ふぅ・・・降参。」
少年も両手を挙げて降参するしかなかった。
「んむぅ・・・ちゅっ・・・ふぅ♥」
二人の熱い吐息が行き交う。
お互いの舌を受け入れ、蛇のように絡みつかせ、ぬろぬろと粘膜に唾液を塗り込んで貪る。
息苦しくなるほど熱い抱擁に包まれて、少年もワームも必死に互いに奉仕する。
少年の体はワームの下半身に巻き付かれ、その上力強い両腕に拘束されている。
拘束された体はワームの上半身にぐりぐりと押しつけられ、彼女の柔らかさと暖かさを実感させられる。
その下では二人の結合部から粘液が滴っており、長時間行為に及んでいたことを思わせる。
実際、少年が捕まってから丸一日が経過しようとしていた。
その間ずっと二人は繋がっていたのであった。
「んっ♥んっ♥」
とワームは全身で少年を感じる喜びを享受し、
「・・・・・・。」
少年は度重なる性感と疲労で意識が混濁し、彼女の求められるままに反射を繰り返すだけとなっていた。
さらにしばらく経つと、少年は意識を取り戻した。
ワームは満足したのだろうか。気持ちよさそうに寝息を立てている。
体は拘束され、下腹部も繋がったままであったが、度重なる行為でどろどろになっているため、抜けるのは容易だった。
とりあえずこのべたべたしているこの体を清めたかったが、今はそんな余裕もなく、
「早く街から離れなきゃ・・・。」
と今直面している問題に向き合わなければならなかった。
ここは反魔物領である。従って、魔物がここにいるのはまずい。
ワームなのであるから多少のことではやられてしまわないと思うが、万が一ということもある。
あの街に彼並の手練れがいないとは限らない。
彼はあっさりと負けてしまったが、神の加護を既に失った・・・というより、自ら拒絶したからだと今でも思っている。
彼と同等の技量を持ち、かつ神の加護を一身に受けた勇者ならばあるいは彼女を狩ってしまうかもしれない。
天使などの神格が出てこないとも限らない。
何より彼は人間の汚さや狡賢さを身をもって味わっている。
一刻も早くこの場を立ち去り、親魔物領に身を潜めるか、あるいは追っ手を撒くなり撃退するなりの手段を講じられる時間と地形が欲しかった。
かといって、
「言うこと聞いて・・・くれるかなぁ・・・?」
このまま起こすとさっきの続きを誘っていると捉えられてまた時間を潰してしまうかもしれない。
さぁ如何したものかと考えていると、
「逃げれば追ってきてくれるかな・・・?」
酒場で聞いたワームの特性を思い出した。
「んっ・・・?」
ワームが目を覚ます。まず最初に感じたのは
(寒い・・・。)
続けて
(寂しい・・・。)
であった。
がばっ!と跳ね起きると少年がいない事を確認する。
「なんで?なんで?」
と慌てて彼を探す。
錯乱状態で正しい行動が取れるはずもない。そこへ、
ふわりとそよ風が吹き込んできた。
そこにいままでそばにいた匂いをかぎ取る。
ふわ・・・と一瞬惚けた顔になるが、彼が逃げ出したことに対して途方も無い怒りを感じる。
彼をもう一度捕まえなければ。
もう一度いっぱいいっぱい愛し合って二度と逃げようなんて思わないほど快楽漬けにしなければ。
単調、故に暴力的な発想。
ワームが危険と言われる所以である。そして、
がんっ!という音と共に彼女は壁を破壊し、岩を踏み砕き、匂いを辿って最短かつ最速の道を「作りながら」彼の元へ疾走する。
ばごんっ!という音とともに岩壁が吹き飛ばされた。
ここは少年と初めて会った場所、天井に大穴の空いた大空洞であった。
「くんくん・・・くんくん・・・。」
ここだ。とワームは確信する。
きっと近くに―
「おーい。」
その声に導かれ、空を見上げる。
「こっちこっち。」
どうやって上ったのか、彼は月明かりに照らされ、全裸でそこに立っていた。
荷物もマントも剣も回収し、全裸でそこに立っていた。
「なんで!」
彼を問いただす。
「・・・。」
答えてくれない。
「嫌い!?」
「・・・ねぇ・・・もう一回追いかけっこしようか。」
「ふぇ・・・?」
「もう一回僕を捕まえることが出来たら、もうどこにも行かないよ。・・・約束する。」
ぎらりとワームの目が光る。
狩りの高揚と情欲の光である。
「もうどこにも行かない?」
「うん。・・・約束。」
「わかった♪」
今回だけは許してあげよう。
そう思った。
がっ!
ワームの下半身が少年の脚を捉える。
疲労した少年の脚で彼女から逃げ切れる道理はなく。決着はあっさりついた。
洞窟を出てしばらく進んだ山中である。
「つかまえたぁ♥」
嬉しそうな弾む声とともに少年の体をぎゅっと抱き寄せる。
「〜♪」
と鼻歌まで歌い始める始末である。そして、
くるりと身を翻し、洞窟へ戻ろうとした。
「ストップ!ストップ!」
慌てて彼女を止める。
せっかく距離を稼げたのにここで戻られてはたまらない。と。しかし、
ぎっ!と睨みつける彼女の視線に、
「う・・・。」
と一瞬たじろぐが、ここで手を拱いていてはだめだ、と、
体のバネは利用して、弾けるように彼女の手をふりほどき、そして、
ちゅっ♥
と、彼女の唇に吸い付く。
「?!〜♥」
一瞬、目を白黒させ、何が起きたのかを理解すると、
どさり、と少年を地面に押し倒す。
そのままじゅるじゅると口内を舐り、舌を絡ませ、唾液を交換する。
「んん♥むちゅっ♥ちゅぱっ♥」
と卑らしい音を響かせ、二人は愛情表現に没頭していく。
ぐるぐると蜷局を巻き、その中へ少年と自信を閉じ込めていく。
少年も負けじと、その柔らかな乳へと手を伸ばし、優しく揉みしだいてほぐしてゆく。
「んむぅ♥んん〜♥」
と、敏感な素肌に触れられ、くぐもった嬌声を上げる。
次第に火照っていく体と、硬さを増していく乳房の先端を確認すると、乳首にそっと指を這わせ、ぴんっとすこし強めに弾いた。
「んんんんっ!」
と軽い絶頂に達すると、体が弛緩し、だらりと少年に覆い被さった体の重量が増す。
「んむ・・・。」
と少年は彼女の舌を唇で噛むように力を加えると、そのまま、
ちゅるるるるるるる・・・、ぬぽんっ!
と一気に舌をしごき上げながら引き抜いた。
「んはぁ♥」
とワームは蕩けた顔を晒し、ぴくぴくと体を震わせた。
(もう少し・・・)
昨日の地獄のような長時間セックスで、彼女は全身性感帯だということは分かった。
そして、くちゅり、と彼女の秘部に剛直を宛がうと、ぎり・・・。とワームの下半身が少年を引き寄せようとする。
その瞬間、ぐっと脚に力を込め、その力に抵抗する
「はえぇ・・・?」
弄ばれて蕩けた脳髄で必死に思考を巡らせたが、彼の意図が分からなかった。
従って、ワームは最も単純な力技という手段にでる。
ぎりぎりと締め付ける力を増し、少年の逸物を自分の蜜壺に収めようとする。
少年も可能な限りの力を振るって、必死に抵抗する。
「なんでぇ・・・?ちょうだい♥ちょうだい♥」
と思いつきでいやらしくおねだりをしながら、締め付ける尾の力はどんどん増していく。
やがて、少年も限界がきて、
(今だ!)
ごちゅん!と一気に彼女の秘所を貫いて、最奥、子宮口へとディープキスをする。
「はひ・・・きゃふううぅぅぅぅうぅぅうぅぅうぅ♥♥♥」
一気に絶頂への階段を駆け上がる彼女と共に、その膣はうねうねとうねり、少年を可愛がる。
ぐちゅぐちゅと咀嚼し、ぬろぬろと蠕動し、ちゅぅぅぅっと先端に吸い付きながら精液を催促する。
一瞬の出来事であったが、彼を天国へ導くには十分の刺激であった。
「っく・・・うぁぁぁぁ!」
という叫びと共に彼女の中でびくびくと暴発を繰り返し、やがで全てを吐精すると、弱々しく微動を繰り返す。
二人とも力を使い果たし、ぐったりと地面へ突っ伏して、抱き合うのであった。
「はぁ・・・はぁ・・・ねぇ・・・一つだけ・・・言うこと聞いてくれる・・・?」
「うん♥・・・うん♥」
「もっと・・・二人で・・・ゆっくり・・・できるところへ・・・引っ越したいな。」
「うん♥・・・もっと・・・いっぱいしよぉ♥」
「うん・・・じゃあもうちょっとしたら・・・新しい住処・・・探しに・・・行こうね・・・。」
「うん♥・・・でも・・・もうちょっとだけ・・・このまま♥」
「そうだね・・・もうちょっとだけ・・・ね。」
二人はやがて新天地を求めて旅立つ。
争いとは無縁の聖地を探すために。
それまでは二人で主神からの逃避行を楽しむのだ。
END
13/07/21 23:04更新 / はっきんだま