読切小説
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サンダーバードの追跡Video
はぁ……っ!
全身の力が抜ける、息が抜ける、肺と喉が音を立てて空気を、酸素を取り込もうとする。
全力で逃げた、大丈夫だ、こんな森の中じゃああんなスピードは出し用が無い。
そう思っていた、そう、普通は出せるはずがないスピードで。
目の前に紫電が走った。
真っ白い肌。
深蒼の羽。
蒼と金で彩られた美しい翼。
見るものを引きこむような橙の瞳。
体の中でもひときわ目を引く金に蒼いメッシュの入った美しい髪。
鳥の冠羽にも、二つ尻尾にも見える独特の髪型。
そして何より人間と違うのが。
一つ、美しい翼が肩から繋がって腕として生えていること。
二つ、その足は、腿こそ人の肌として美しい色を見せているが…。
膝から下は、鳥のソレ、つまり木に止まるための尖爪と、三本指を持っていた。

パチンッ。
電気が弾ける音がした、この辺りには静電気を起こすようなものも無し、近くで雷がなっているわけでもない。
なのになぜか電気の伝わる、弾けるような軽快な音が聞こえた。
反魔物領国家であるこの場所に魔物が堂々と住み着けるわけがない、どうせどこかの子供のいたずらだろう、そう思ってその場は立ち去った。
バチバチッ。
森林巡回兵の詰所近くまで来ても、その音は鳴り止まずに、むしろその音量をあげていた、獲物の近くに居る、隠しきれぬ興奮を表すように。
とてつもなく悪趣味なイタズラだ、子供だったら首根っこを掴んで怒鳴りつけてやろうか。
そんな風に意地汚い考えを巡らせながら音のなる方へ近寄っていった、それが私の運の尽きだった。

鈍、言葉で表すならそういう感じの、重く、強く、なおかつ巨大な音が鳴った。
その瞬間、私の目の前には。

「さぁ、畏れたまえ、逃げたまえ、選択の権利は君自信が持っている」

随分と軽く、可愛らしい声でそんな風に、意地の悪い、見てるだけでとても腹立たしい、そんな笑みを浮かべながら。
少女が、私を見つめて立っていた、否、飛んでいた。
跳んでいたではない、飛んでいたのだ。
自らの腕についた、一対の巨大な翼を使って、全身に雷と言う暴力を纏いながら、見下すように、嘲笑うように、此方を見つめていたのだ……。

私は目の前の光景が理解できなかった、反魔物領国家の中で魔物を見ることは愚か、魔物の姿を記した書物すら閲覧禁止と言う規制がかかり、見ることが不可能なこの国で。
今までの教えを真っ向から、時速200キロでぶちぬいて、さらに穴の空いたその常識を上からプレスするような。
そんな美しい姿をした、魔物に出会ってしまったのだから。

魔物とは……、醜悪で下劣な、人にとって害成す存在であり、みな、幻術によって人を惑わせ、堕落させ、神の教えに背いた、暗く、絶望の象徴ともいえる、道徳の欠片もない最低の生物であり、この世の中で最も憎むべき存在である。
そう教えられてきた、教えこまれて、来たのだ、だが実際は全く違った、人間の女では勝てないほどに、美貌と、無邪気さと、明るさを全て一緒に持っていて、なおかつ、男であれば――それこそ何十何百と女を抱いた男でも――、一瞬でオチるであろう可愛らしい笑みと、声を持っていた。
走りながら、そう、全力で走りながらそこまで思案した、さて、どこまでにげきれたかと後ろを振り返ろうとしたその時。
目の前に雷のように落下して来た、蒼い翼を持つ女の子。
ニコニコと無邪気な笑みの中に爛々と輝く獲物を狩る鷹のような鋭い瞳。
私は足が震えた、膝が笑って動けなかった、相手は可愛らしく、ニコニコ笑っているだけなのに、じっと此方を見つめる瞳を見るだけで。
大人の男――性別詐称ではある――が、何も出来ずに、タダ足を、腕を、手を、体を震わせて、怯えることしか出来ない。
それほどの威圧感が、彼女からは発せられていた、いや、発せられていたのは、圧倒的な、圧倒的すぎるほどの、欲望だった。
歯の根が合わず、ガチガチと音を立て、目には涙が溜まって、今にも腰が抜けて失禁してしまいそうなほど恐ろしい。
自分よりも幼い姿をした少女のはずなのに、どうしてこんなにも恐ろしいのだろう、訳が分からず、少女が一歩踏み出すところまで完全に思考がどこか別の遠い場所にとんでいた。

ガサッ……。
その、リアルな音によって完全に意識が現実に引き戻された。
あの距離を一瞬で詰めてきたこの少女のことだ、多少逃げた所ですぐに捕まってしまうだろう。
だからこそ、魔術師が作った、魔物の嫌がる匂いを出す煙球とやらを一つ護身用、兼実験用に試作品を持ち歩いていた。
良心の叱咤を受けつつ、少女の腿に蹴りを入れて怯んだところに、煙球を地面にたたきつけると、白い煙が立ち上がり、目の前の少女がゲホゲホと咳き込むのが聞こえた、少なくとも煙い時に咳き込むのは人間と同じようだった。
視界と呼吸を一時的に奪ったことで私自身にも余裕が生まれて来た。
一気に森に向かって全力疾走し、森の奥まで一気に逃げ込んだ、が完全に迷ってしまった、戻り道を確認もせずただ目の前だけを見て走り続けたのだ、迷って当たり前だろう。

全身の力が抜ける、息が抜ける、肺と喉が音を立てて空気を、酸素を取り込もうとする。
全力で逃げた、大丈夫だ、こんな森の中じゃああんなスピードは出し用が無い。
そう思っていた、そう、普通は出せるはずがないスピードで。
目の前に紫電が走った。
無邪気な笑顔で、此方をじっと見つめる少女は、間違い用もない、さっきの女の子だ。
あぁ、追いかけっこは私の負け……そう悟った、この子は間違いない、ココで私を喰らうのだ、腹を裂いて、軟らかい腸を引きずり出し……そして……。

「ひっ……ぁ……あぁ……」
声を抑えることも忘れて、泣き出しそうになっている、自分がいる。
彼女はそんな私にためらうこと無く近づいて、その大きな翼で……私の体を……


優しく、優しく抱きしめて、優しい声で慰めてくれた。

「大丈夫だよ……、怖がらないで……あなたを傷つけたりしない、ボクは君に知ってほしいだけなんだ、君たちに知ってほしいんだよ、魔物娘と言う存在がどんなものか。」

そう言いながら、私の服の内側に、その翼を、腕を押し込んでくる、唐突な行動につい彼女の腕を抑えてしまう、彼女が行なっていた行動を忘れて。
バチッ。
そんな音とともに、私の体は、私の意識は弾けてしまった、否、飛ばされてしまった。
手の先から一瞬で体全体に広がった感覚、私は知らない感覚だが、彼女の表情は相変わらず優しい、優しいが、少し違う。
瞳の奥に、焔のような、燃え上がる何かが映り込んでいた、本の虫で、なおかつこんなふうに男装をしている女を女として見初めてくれる人なんてよっぽどの物好きでないと居ないだろう。
しかし、彼女は違う、気づいているはずだ、体に触れられてしまったのだから、私が女だということはバレているはずだ、それにもかかわらず彼女は私を抱き続ける。

「とっても可愛いね、ボクなんかよりもずっと、ずぅぅぅっと可愛い」

彼女の口から出たのはそんな言葉だった、私が? 可愛い? 何の冗談かと思ったが、彼女の表情は真剣そのもので、その言葉がお世辞でもなければでまかせでも無いことを教えてくれる、彼女は心から私のことを可愛い、と言ってくれたのだ。
相変わらず優しい笑みを浮かべている、安心して良い、此方に任せればいい、とそう言う風に受け取ってしまう。
彼女の手はいつの間にか、胸を押さえ込んでいる晒布に手をかけて……。

ブチッと不快な音を立てて、魔物娘の強い力で持って引きちぎった。
男性のふりをしていた自分の最も女性らしい場所を直接柔らかく、細糸のような毛の集まった羽で優しく撫でられる、それだけで男性として抑え込んでいた『女』の欲望がゆっくりと頭を持ち上げるのだ。
それで、なおかつ優しく優しく撫でられているだけなのに、パチパチと電流が走るような快感が脳に響く、否、走るような、ではなく、実際に電流が走っている、彼女自身が放電しているのだろうこの電流は、私の肌を焼いて、脳を犯し、全身を蕩けさせるような快感をもたらしてくれる。

彼女の愛撫を受けていると、不意に下半身に不快感を感じた、そう、下着が濡れて肌に張り付く、あの不快な感覚だ。
まさかこの歳で漏らしたのか、などといらぬ心配でさっきまで受けた愛撫に寄る快感など消えてしまった、むしろ目の前の美しい少女にこんな痴態を見られると言う考えが、嫌われてしまわないか、軽蔑されないか、等の普通ではありえない感情を抱かせる。
時間にして数十分、知り合ったばかりの私に彼女が好意を抱いているはずもないのに、嫌われてしまわないか、などという出張った考えをしてしまう。
そんな思考を真正面から打ち破るように、彼女が私の履いているズボンに手をかけた。
下着も一緒に掴まれ、ベルトを外され、下ろすよ? と一つ確認をとってから、一気に足元までズボンを摺り降ろされる。
すでにドロドロに溶けていたそこは、下着に粘っこい糸を引いてたれていく愛液、ヒクヒクと動く陰唇、見ているだけで卒倒してしまいそうなくらい淫らで、それでいて、女性らしい、女性特有の美しさを持っているように見えた。
そんな私の女の部分に、彼女がゆっくりと口をつける。

「ちゅっ……んむっ…ぴちゃ……ぴちゃ…」

私にはわざと大きな音を立ててるようにしか思えない、私に聴かせるために大きい音を……、時折此方を上目で見てくる様子から、多分そうなのだろう。
そういう風に現実逃避をしても、胸とは比べ物にならないくらいの快感が登ってくる。
舌が擦れるたびに、子宮から愛液が溶け出す、淫核を吸われるたびに声を上げて体を反らしてしまう。
ただ口だけでの、ただの愛撫でコレなのだ、先ほどのように、パチパチと弾ける電気を流し込まれては、私自身、意識を保っていられるかどうか、不安になってしまう。

「ちゅぅぅっ…んふふっ美味しいよ…君の蜜、すっごく美味しい……」

うっとりとした表情で彼女はそう呟く、最後に一言「もっと出して欲しいなぁ」と付け足しながら……。
その言葉は私にとって更なる快感波という処刑台に立たされる宣告に他ならなかった、彼女の本気、それこそ先ほどの電流などが児戯に思えてしまうほどの快感をたたきつけられるだろう、そんなものを受けて、私は廃人にならずに、壊れずに彼女に伝えられるだろうか……。
いつの間にか私の心を支配した、この感情を。
『愛しい、愛してる、好き、大好き、ずっと一緒にいて欲しい』という、人間特有の、あまりに醜く、あまりにも甘い、感情を。

ぴちゃぴちゃと濡れた音が聞こえる、時折、ぱちんっと弾けるような音が混ざる。
その濡れた音に重なるのは、細い細い私自身の、私自身が聞いたことのない声。

「くぁぁッ♥しょこはぁぁっ!ぁぁぁん♥」

すっかり蕩けた顔でサンダーバードの少女からの激しい愛撫を受けている私は、与えられる快楽を享受するだけの雌に成り下がっていた。
ぱちんっという弾けた音がするたびに、淫核と子宮が激しい熱を訴えて、脳が快楽漬けにされ、大きな絶頂を迎えてしまう。
まともに喋る事もできずに、彼女にただただおまんこを弄られ、何もせずとも、何もされないと、ヒクヒク動いて求めてしまうような淫乱な体に作り変えられてしまった。

変化には相当な時間がかかった、が、変化し始めてからは早かった。
バチバチと言った電流が伝うような音、今まで嬌声をあげていた少女の口からは悲鳴が漏れ、続いてバキバキと言った、骨格がずれるような音が響き始めた。
黒だった髪が蒼いメッシュの入った金髪に変わり、肘から先は美しい蒼から黄色に変わるグラデーションの入った美しい羽が生えそろって行き、翼に形を変えていく。
足は、膝から先が羽毛に覆われ、脛のあたりからは、足の形が変わって、鳥のような、しっかりとした爪を持っていても、美しい足に変わっていく。
衣服は、脱がされなかった上着のみで、下は丸出しの格好でその場にへたり込んでしまった。
だが、全身が千切れそうなくらいの痛みで泣き、喘いでいる時にも、彼女を犯したサンダーバードの少女は優しく優しく少女を抱きながら、時折キスを降らせ、彼女を落ち着かせるために頑張っていた、それはまるで病気のこどもをあやして元気付ける母親のような姿であった。

しばらくして、私が気がつくと、彼女は変わらず微笑んでいた。
変わっていたのは私の方で、彼女と同じ色の翼、同じ色の足、同じ色の髪になって、彼女に抱かれていたのだ。
髪は長くなり、服装こそ変わってしまったが、顔つきは元のままであり、なおかつ髪の色が変わったことによって随分変わった印象を受ける、と彼女の瞳に写った自分を見つめてそう思ってしまった。
彼女は私が起きたことに気づいた瞬間にっこり微笑むと、開口一番こう言った。

「君はもう魔物娘、ボク達と同じサンダーバードだ、どうかな? 新しい体は、不快感とかはないかい? 少し慣れるまでの辛抱さ」

いきなり人の体を作り替えて随分な態度だが、自然と悪い気はしなかった、だって、彼女と同じ姿に成れたのだから。
彼女が言うには、私がサンダーバードに成ったから、自分の巣へ戻って一休みしたい、とのことだった。
私もついていく、と言うと、そんなに綺麗な場所でもないし、美味しいものも出せないけれど、ボクからしてみれば大歓迎だよ、と返事をしてくれた。
別に食べ物を欲しがるわけでもないし、あまり綺麗な場所だと萎縮してしまう、私は多くを望むことを知らないで育った人間だ、貴女と一緒にいられれば、それが一番なんだ、と告げると、彼女は今まで見せなかった表情を、顔を赤くして驚いて

「そうかな……そんなこと言われたのは初めてだ……。」

と、俯いてしまった。

意外と、私と似ているような気がしなくもなかった。

彼女の住居についたら、まず一番初めにこう言ってやろう。

「貴女を愛しています、貴女に惹かれてしまいました、貴女の優しさを独り占めしたいんです、貴女を愛しても、いいですか?」
13/07/29 23:55更新 / 八夢=ルスト

■作者メッセージ
どうでしたでしょうか?
相変わらずヌルい描写でしかも今回は殊更わけわかめ。
感想やアドバイスお待ちしております。

裏話:この話を書き始めたのが夜中の2時、書き始めた理由が、「あ、サンダーバード書きてぇ」というなんとも言えない理由でございました。
1時間と40分ほどで仕上げた超突貫作品ですので穴とか描写不足とかヤヴァイと思います。

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