- *蛇の生殺しは人間を噛み殺します* -
不思議な光に包まれた3人はどこか知らない見慣れない土地へと足を踏み入れていました。
"ここは…どこかしらね"
"ノエル。ジャンヌさん。怪我はない?"
"・・・。えぇ。"
アデルとノエルは気が付いていない様子ですが
ジャンヌは何かを感じとっているみたいでした。
得体の知れない違和感を感じているジャンヌに
突然降り立った場所の周りの声が聞こえ始めます。
〜*〜*〜*〜
「デミは本当にいい子だな!」
「本当に真面目よねぇ」
"はい!なんでも手伝うよ!!"
「ありがとよ!そうだ!デミ!
今度、村に魔物が来るらしいけど大丈夫か?」
「心配よね?怖かったら
すぐ大人に何か言って頂戴ね?」
"まかせてよ!ボクが魔物が
悪いことしないか、見ててやるさ!"
「ははっ!頼もしいな!」
「無理はだめよ?デミヤム」
"へへっ!、わかってるさ"
〜*〜*〜*〜
"ここはデミヤムの昔の記憶かしら?"
"ごめんね。僕にもさっぱり…。"
"あ、あれ。ミア…デミヤムの昔の姿…
ち、小さくて…か、可愛い…かも…///"
"2人とも。この場所に彼が苦しむ原因
何か、普通ではないことが起こるのよ"
"…?ジャンヌさんにも見えてるの?"
"え、えっ?あ、うん。
ここは彼の意識の中だから…かな"
"きっと私たちはあそこにいる
過去の存在の人達とは関わりあえないわ
過去の映像を体験する感じね"
"じゃあ、とりあえず見ていこう"
"デミ…。待っていてね"
3人が覚悟を決めてその場を見ていると
そこから思いもしなかった出来事が起こります。
デミヤムの住む小さな村の中へ
魔物の軍勢が侵入してきたのです。
旧時代の風景。その魔物も魔物らしい
とても凶悪な見た目をしておりました。
その軍勢のリーダーらしき魔物が語りかけます。
「我々魔物は、アナタ方ニンゲンを知りたい
しばらくの間この村とアナタ方をお守りします
その代わりにアナタ方の事を教えてはくれないか」
「そ、それは本当ですか!
それはそれはとても助かります!!」
「本当に、危害を加えたりは…しませんか…?」
「アナタ方の不安や心配事も含めて
我々は改めて、アナタ方の事を知りたいのですよ」
蛇の姿の様なその魔物は優しく語りかけます。
自分たちには危険はないから受け入れください。と。
その魔物が率いる軍勢の魔物たちは人々と交わり
それまであった人間と魔族の溝を埋めていきました。
〜*〜*〜*〜
"なぁなぁ!オマエたちは
なんのためにここへやってきたんだっ?"
「我々はニンゲンを知りたいのさ
もちろんキミの事も知りたいな。少年。」
"おとなが言ってたんだけどさ!
オマエたちは本当になんなんだろうな!って"
「ククッ…。まぁ、怪しまれているよな
そこの少年。少年は我々の事が怖く見えるかい?」
すると。幼いデミヤムは蛇の魔物へ駆け寄り
その魔物の近くへと近づき一緒に座り込みます。
"おとなはいろいろはなしてるけどさ!
ボクはオマエのこと、いいやつだと思ってる!"
"それは我々が何を考えているのか
わからないとしてもイイヤツだと思うのかい?"
"ん〜…。よくわからないな!
でも、ボクはオマエのこと信じてるよ!!"
「少年…。ワタシはキミが好きだな」
"あの魔物。旧時代の存在にしては
やけに人間と親しげにしたがるわね"
"あ、あれが。私たちの先祖でしょうか?"
"ジャンヌ…。確かに、あそこの魔物の軍勢
どことなく砂漠の魔物の特徴に似ているわね"
リーダーらしい蛇の魔物を筆頭に
包帯を巻いたミイラの魔物やゾンビの魔物が多数。
"ボクは魔物はわるいやつばかりだから
関わるのはダメだって言われてるんだけどさ!
オマエはきっといいやつだよ!!"
「少年。今日はもう遅いから帰るんだ
ワタシが家まで送ってあげるから。行こう。」
〜*〜*〜*〜
場面が切り替わり。違う日の風景が写し出されます。
「少年。なにをしているんだ?」
"あ!魔物さんじゃないか!!
ボクは今ここで釣りをしているんだよ!!"
「少年。少年は魔物の事は好きか?」
"他のやつらはよくわからないけど
とりあえず、オマエのことは好きだな"
「ククッ…。そうかそうかっ」
"オマエは悪いこととかしてないからな
オマエが疑われてもボクが庇ってやるから!"
「わるいこと。確かにしていないな…
ま、じきにこの時間も終わるんだがな」
"あの魔物。いい人そうだね"
"・・・。それはどうかしらね。。"
"で、デミヤム…この時から…
こういう作業とか…得意だったんだね…///"
3人はデミヤムと魔物が関わりあっていくのが
とても微笑ましく見えて仕方がありません。
だから。次の風景でも、そんな風景が広がり
人間と魔物が親しく暮らす日々が映ると思いました。
次の風景から、3人は驚愕し戦慄します。
〜*〜*〜*〜
轟々と炎が踊る。村を人を飲み込みながら
広場を建物を人々を舐めるように焼き尽くす。
「ククッ…。感謝するよニンゲンたち
愚かなキサマらのおかけで、我々魔王軍は進軍し
侵略進行をとても簡単に行えそうだよ」
誰かの叫び声が響く。建物の壊れる音が聞こえる
あらゆる場所から血と絶望の臭いが漂ってきます。
その最中。立ち尽くす影がありました。
「ごめんな、少年。
どうやら、ワタシはイイやつじゃなかった」
"なんで…っ!なんでなんだっ!?!?!?"
「…少年。本当にごめんな。」
デミヤムの背後には彼の両親と思われる肉塊があり
彼の家屋だったであろう残骸に覆い潰されています。
"魔物…ッ!!なんでっ!!うらぎった!?"
「こんなことになってすまないが
これが我々の…自分の仕事だったんだよ」
そういうと蛇の魔物は背後から弓矢を取り出します。
"う、うぅ…うあぁ…うわぁぁあああっ…。"
「少年。せめて大好きなキミだけは
ワタシの手で最後は安らかにしてあげたい」
がちゃり。。ぎっ。ぎっ。ギィーッ…。。。
デミヤムは泣き叫ぶことしかできません。
魔物は静かにデミヤムを至近距離で捉えます。
"ね、ねえっ!どうにかできないのっ!?
私たちは見てることしかできないのっ!?!?
ねぇっ!!ノエルっ!アデルっ!ねぇってばっ"
"ごめん。わからないよ"
"落ち着いてジャンヌ。これはもう済んだこと
実際に彼が体験して、その身に遭ったことなのよ
これはあくまで映像でしかないのよ…。"
〜*〜*〜*〜
「せめて。苦しまないで逝っておくれ」
"あ、嗚呼。
ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ。"
するとその時。不可思議な現象が起こります。
「…っ!?なんだっ!?なにごとだっ!?
少年の姿に何かモヤがかかり始めているっ!?!?」
魔物は驚愕に目を見開きます。
デミヤムの姿がその場から消えはじめます。
「…少年が消えた。なんなんだっ
・・・。いや、これも何かの縁なんだろうな
今回は特別に見逃しておいてやろう
ごめんな。少年。」
その場にいた少年は姿を消しました。
まるで最初からその場にいなかったかのように。
全てが焼け落ち、朽ち果てていくころには
村から退いていく魔物たちの軍勢と蛇の魔物。
最後に蛇の魔物は村へ振り返ります。
村に残してしまった少年は大丈夫なのかと。
後ろ髪引かれる思いで、魔物として帰ります。
なにもかもがなくなった場所で
少年は1人。ずっとずっと泣き続けました。
"ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛"
彼の絶叫は誰にも届くことはありませんでした。
〜*〜*〜*〜
3人は呆然としながら、幼い彼を見つめます。
今だけでも、この子を独りにはさせたくありません。
"わ、私は。アナタを裏切ったりしないよっ
ぜったいっ。ずっとずっと。傍に居てあげるよ"
ジャンヌはそう言って呟くと手を伸ばします。
映像なので触れる事はできませんが、頭を撫でます。
"オイラにゃあ。その言葉は信じられねぇなぁ"
3人がハッとして後ろを振り向くと本人がいました。
映像の幼いデミヤムを慰めるジャンヌへ向かい
本物のデミヤムが静かに座り込んでおりました。
"こんな所を見られるなんてなぁ
おぃ黒髪。お前さんは何者なんだぃ?"
"僕は…僕にもよくわからないんだよ"
困ったなと頭を掻きはじめるアデルの姿
デミヤムの目にはその手の指輪が確かに見えました。
"…ククッ…。なるほどなぁ
お前さんがどうやってここへ入ったのかぁ
なんとなくわかった気がするよぉ"
デミヤムは静かに微笑みかけます。
デミヤムの指からは黄色い輝きが溢れています。
"オイラにもこの指輪の事はわかりゃあしねぇ
でもな。魔物への強い否定が強い原動力になる
そんな気がするよぉ"
"ね、ねぇ。デミヤムはどうして
私なんかに近付いてきてくれたの…?"
"アンタもオイラの記憶を覗いたんだろぉ?
とても似ていたんだ。優しかったあの人になぁ"
"ミアっ…デミヤムは…私の事…
どう思っているの?どういう風に見ているの…?"
"よくわかりゃあしねぇなぁ
黒髪も…そうだろうが。この指輪は
そういう想いも破壊の力に変えるんだろうよぉ"
"デミヤム。アナタ自身はどう思うの?"
"君は。君の感じるモノがあるはずだよ"
"オイラの想い…。そりゃあ…。"
"で、デミヤム。私はアナタを助けたい"
"あ〜ぁ。オイラにゃあ。わからねぇ
それになぁ。仕事をしくじったやつにゃあ
どんな仕打ちが待ってるかわかりゃあしねぇ
誰かがしばらく匿ってくれりゃあ、なぁ?"
"え、えっ?それってもしかして…///❤"
"ふふっ。これ以上は無粋ね///"
"よかったね、なんとかなってさ"
デミヤムとジャンヌは強く手を繋ぎます。
彼の指輪は落ち着きを取り戻していきます。
そして。
4人の居る空間は静かに散っていきました。
そして、全員無事で現実へと戻ってきました。
"お前さんはオイラと似たような事ができるんだなぁ
オイラのチカラは望んだ幻を作り出せるんよぉ"
"僕は…君のチカラも使えるのかな?"
"そいつぁよくわからねぇんのよぉ
悪りぃなぁ。何も教えてやれなくてよぉ"
悪かったと顔を伏せるデミヤムに
ジャンヌはしっかりとした手つきで寄り添います。
"わ、私が彼を見張っておきますからっ
何かあれば、ノエルさんに連絡を入れますっ
だ、だからっ、彼を責めないでほしいっ"
"そうね。アナタ方には連絡用の魔導石を渡すわ
これには転送魔法も仕込んであるからね"
"ノエルは2人をどうするつもりなの?"
"何もしないわよ。仲良くなりたいの❤"
"魔王の娘つーのは、変わり者なんだなぁ"
"あ、ありがとうっ!ノエルっアデルっ!!"
〜*〜*〜*〜
かくして。デミヤムとジャンヌは
仲睦まじく仲良く過ごす事にしました。
そして。アデルとノエルは旅立ちます。
いつまでもここにばかり居るわけにもいきません。
"これでよかったの?"
"私にも、よくわからないわ。
でも、彼の魔力から不安定感が消えたから
多分、もう彼は…2人は大丈夫。そんな気がするわ"
2人もまた、改めてお互いの親睦を深め
そして、最初の街 - プレイルート - へ帰ります。
〜*〜*〜*〜
"あ、あの。この後、どうする?
2人っきりになっちゃったけど…///"
"オイラも男だしなぁ。据え膳食わぬは男の恥
しばらくはアンタと一緒に暮らす事にするよぉ"
"そ、それって!こ、婚約…っ!?///
私と生涯を過ごしたい…ってコト…///❤"
"オイラにゃあ、性欲はねぇからなぁ
いろんなことは。もうちょい後になるぜぇ"
"き、きゃっ///❤❤❤
ぷ、プロポーズ…っ…だよね…っ///❤❤"
"やれやれ、世話が焼けるなぁ"
誠実の石。トパーズはこうして転がり落ちました。
その結果が幸か不幸か。それはまだわかりませんが。
【作者より。】
1人目のテーマは誠実。
過去の恐ろしい幻に怯えた少年はもういません。
それでは、2人目の石ころまで
またどうぞお楽しみにお待ちくださいませ。
嗚呼。これはあくまで自己紹介なのです。