- *その石は誠実。輝きの名はトパーズ* -
辺りの景色はすっかり闇夜へと変わり一面にはとても綺麗な夜空が広がります。
ノエルとアデルはそこで暮らす魔物娘
バジリスクのジャンヌと野営をしながら
ジャンヌの言うミアという青年を待ちます。
"ジャンヌさんの好きな人なんだね"
"どんな魔物娘も愛する人の前では
ただの恋する乙女なのよねぇ。わかるわ❤"
"わ、わかってくれるんですかっ!?
彼を想うと…カラダが疼いてェ…❤
あっ…すみません…。取り乱しちゃって…。"
まだまだ夜は更けていきます。
広がる夜空に月が堂々と居座るころ。
不穏な風が辺りに吹き抜けていきます。
〜*〜*〜*〜
"やぁやぁ。こんばんは
オイラだよぉ、ジャンヌさんよぉ"
"君は…!?" "やはりアナタなのね"
"ミアっ!こんばんはっ!
また来てくれて私嬉しいわっ❤"
"おぉう…また会ったなぁ
なら、オイラの目的も…わかるよなぁ?"
"ミア?何を言っているの?
アナタは一体何者なのっ?何をするのっ!?"
"・・・。ククッ…。
オイラはなぁ…考えていたのさぁ
オイラの能力はアンタにゃあちっと
相性がわるそうでぇ、どうすっかなぁって
だから近くで様子を見てたのさぁ
どこまでチカラが通用してんのかをなぁ"
- ぱちり - デミヤムが指輪を付けた指を鳴らす。
合図を受けた指輪から魔力が吹き出し始めます。
デミヤムを包むように周囲に魔力のモヤが展開し
周囲を飲み込みながら渦を巻いていきます。
"アデルっ!下がっててっ!!
何が起こるのかわからないわっ!!"
"ジャンヌさん!危ないよ!!
ノエルっ!君は大丈夫なのっ!?"
"ミアっ…?ねぇ…。ミアっ…!?
どうしてっ…どういうことなの…っ!?"
"・・・。これも仕事なんよぉ。
さぁ、行くよぉ。- エスペビース -"
デミヤムが唱えた瞬間から辺り一帯が淀み
まるで彼の意志に従うかの様に空間が歪みます。
"っ…!!アデルっ!こっちに来ないでっ!!
ジャンヌもっ!アデルを見ていて頂戴っ!!"
ノエルはデミヤムと対峙します。
"オイラの仕事はぁ、あの黒髪を回収…
それだけなんだがぁ。魔物娘は厄介だよなぁ"
がちゃり。。ぎっ。ぎっ。ギィーッ…。。。
デミヤムはそう言うと、背中に背負う弓矢
アーチェリーを構えノエルを捉え始めます。
"それだけじゃあ…脅しにならないわよ?"
ひゅんっ。。。とすっ。
デミヤムが一発。放った矢はノエルの
身体を掠めて地面へと突き立ちました。
"それじゃあ…動けなくなってもらうよぉ
オイラにゃあ、アンタらの魅力は効かねぇからなぁ"
"アナタっ…本気…なのね…?
本気で戦うというつもり…なのね?"
ノエルは手をかざしてデミヤムへと
魔力の塊をぶつけにかかります。
ノエルが放った魔力はデミヤムへ向かい
デミヤムの体へ当たり。命中したように見えました。
"どこ狙ってるんだぃ?オイラはこっち"
ノエルは"はっ!?"と驚き振り向きます。
確かにデミヤムはそこに居て矢を構えていました。
不思議に思いながらその場を離れるノエル
デミヤムがいた場所にはノエルの魔力の残骸が
確かに残ってはいたのです。
"早めにあがりてぇんだぁ。
ノエルさんよぉ。ごめんなぁ。
- エスペビース -
- ヴィジィー・ルビーア -"
デミヤムは空高く天へ弓を構え矢を放ちます。
ただ適当に放った様に。ノエルは見ていました。
"っ!!ノエルさんつ!!
上っ!上をよく見てくださいっ!!"
そう大声を上げたのは戦いを見ていたジャンヌ。
ジャンヌには何が起きているか"見えていた"のです。
ノエルは改めてよく空を観察し始めます。
すると。見えはしないのですが
幾つもの風きり音が聞こえる事に気付きました。
"見えねぇよなぁ。わからねぇよなぁ。
そりゃあそうさ。そうしてるんだからなぁ"
"アナタっ…。ふざけたチカラね"
ノエルは身構えて魔力の防壁を
身の回りに展開して防御を試みます。
ひゅん。カッカッカッカッカッカッカッカッ。。
防壁にぶつかる矢の雨。その数は数千にも及ぶ
当たる瞬間まで矢は見えることはありません。
矢の雨が降り止むまで数時間。
デミヤムはジャンヌへと語りかけます。
"なぁ。ジャンヌさんよぉ。
そいつをオイラに渡しちゃあくれぇかぃ?"
"そ、それは…無理。というか
ミアは…嘘をついていたの…??
嘘で…私を騙していたの…?"
"嘘も何もオイラははじめから
アンタの事を探りたかっただけよぉ
オイラの能力が通用しねぇアンタの事をなぁ"
"よそ見なんて余裕なのかしらっ!?"
"おっと。ごめんなすって。"
ジャンヌと話すデミヤムに対して
背後から魔力をデミヤムへ撃ち込むノエル。
ですが。それさえもデミヤムへは届かない。
まるでそこに居なかったかのように空を切ります。
〜*〜*〜*〜
"わからないわ…。これほど
これほどのチカラがあるのに
どうして教団なんかにいるのかしらっ"
"オイラにゃあ、チカラなんてねぇっ
いい加減にっおとなしくしたらどうだぃっ"
デミヤムの止めどなく降り注ぐ矢の攻撃を
ノエルは魔力で作った防壁で防ぎます。
今の戦況は一方的で防戦一方な状態なのです。
"ジャンヌさん。君も見てる?
彼の手元からは何かしてるようには
あまり見えないんだけど。。"
"そ、そう?私には感じるわ
彼が何をどう仕掛けてくるのか"
"えっ。わかるの?
ならどうにかノエルに教えられたら…"
そう答えるジャンヌと悩むアデル
そんな時、悩むアデルの指輪がチラつきます。
"ジャンヌさんはデミヤムのことを
今はどういう風に思っているの?"
"・・・。ミアのことですよね
デミヤム。それが彼の本当の名なのね。
私は…彼のこと何も知らないわ
だから、本当の彼を。知りたいわ"
"その気持ちに、偽りはないの?"
"ないわ。例え、彼が私を騙していても
私は彼のことを好きになってしまったもの
これはきっと、ノエルさんも同じはずよ❤"
その瞬間。アデルの指輪が輝きます。
指輪はまるでアデルとジャンヌの意志を汲むよう
その光は優しく辺りを照らしノエルへと続きます。
"ノエルへ…っ届いてくれっ"
"ノエルさんっ!お願い…っ!!"
不思議な魔力の光がノエルへ吸い込まれていきます。
その瞬間。ノエルの目元に変化が起こります。
まるでバジリスクの仮面の様な模様が浮かびます。
そして。
"…?さっきより攻撃が見える…?
いいえ。これは…気配を感じられる…?"
"化粧が変わったところでぇ
オイラにゃあ通用しねぇよぉ"
デミヤムが弓矢を構え直し
先程とは違う構えでノエルを捉えます。
"いいえ。化粧は大切だけれど
これはアナタのチカラの仕組みを知れるわ"
"・・・。へぇ、じゃあ。
尚更もう幕を降ろさないといけねぇ
- エスペビース -
- ムエル・フレット -"
びゅんっ。ぱぁっんっっ。。
デミヤムが唱えた後の攻撃は凄まじいものでした。
この矢はとても早く当たると炸裂したのです。
"先程までなら危なかったわ
でも今ならなんとか対処ができそう"
びゅんっ。びゅんっ。ぱぁっんっっ。。
はぁっ!!ばぁーんっ!!!
デミヤムが放つ攻撃をとにかく躱し
ノエルは魔力をデミヤムへ撃ち込みます。
"ごほぁ…!?!?がぁ…っ!!
なんでぇ…オイラがぁわかったぁ…??"
膝から崩れ落ちるデミヤムにノエルは
急いで駆け寄り掴みにかかります。
"アナタの想い人のおかげよ
でもどうしてこうなったかはわからないけど
ふふっ…アナタ、幸せ者ね?"
通常、魔物娘の攻撃は男性には強力で
一撃でも喰らえば精を漏らしてしまいますが
デミヤムはまともに攻撃として
その身に一撃を受けた為に血反吐を吐き悶えます。
〜*〜*〜*〜
どうにかデミヤムを捕まえたノエルと
見守っていたアデルとジャンヌは集まりました。
これからデミヤムをどうするのかと。
"オイラをどうするんでぃ"
"君の目的は、僕なんだよね。"
"おぅよ。オイラだけじゃあねぇ
あの場の10人がお前さん達の敵よぉ"
"つまり。あと9人はいるのね"
"どう仕掛けてくるかぁ
オイラにもわかりゃあしねぇがなぁ"
"君はこれからどうするの?"
"敵に情でもかけるつもりかぃ?
悪りぃがお前さんを狙うつもりだぁ
失敗なんて知られりゃあ、殺されるなぁ"
"い、嫌よ。ミアと離れるだなんて
私は、ミアとこれからも一緒に居たいの"
"デミヤム。指輪を外せるかしら"
"指輪?そいつぁ無理だと思うなぁ
アンタ知ってるんじゃあないかぃ?
これは外せないし外そうとすれば
付けている人間はおかしくなっちまう"
"・・・。えっ?えっ!?"
"お前さん。その様子じゃあ
何も知らねぇんだなぁ。いいかぃ?
この指輪は…あ、れっ、えぇ"
"デミヤムっ!?" "アナタ!大丈夫!?"
"デミヤムっ!?、しっかりして!!
私が傍にいるっここにいるからっ!!"
ジャンヌがデミヤムに触れます。
デミヤムの顔が青白く染め上がります。
"あ、嗚呼。
ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ。"
ジャンヌがデミヤムに寄り添うと途端に
デミヤムは苦しみ悶え始めます。
それを嘲笑うかの様に指輪は輝きます。
"これはマズいかもしれないわ"
"ど、どうしたらいいのっ!?!?
私はデミヤムにどうしてあげたらいいのっ!?"
"デミヤム!大丈夫!?"
慌てる3人。苦しみに蝕まれるデミヤム
どうにかこうにか考える3人に疑問が浮かびます。
"そういえばっ!途中で私に何をしたのかしらっ?
あれはジャンヌさんが何かしてくれたのでしょう?"
"ち、違うわっ!あればアデルさんがっ
あの時は必死でっ。私も何がなんだかっ"
"・・・。アデルが?
アデル。何かしたのかしら?"
"僕にもよくわからないんだ
ジャンヌさんと話をしていたら
僕の指輪が輝き始めたんだよ"
"それって、もう1回できたりしないかしら"
"よくわからないよ、でも。
ジャンヌさん。デミヤムをどうしたい?"
"ミアを…デミヤムと幸せになりたいの"
ジャンヌがそう言うとアデルの指輪が輝き
その輝きは全員を包むよう膨らみ始めます。
そして。3人を包んだ光は
倒れるデミヤムへと吸い込まれていきました。
【作者より。】
次回。本題に入らせて頂きます。
デミヤムの過去。それは一体なんなのか。
ジャンヌはそこで何を見るのか。