第7話〜共闘〜
親魔物派都市ティグリスは東にそびえる山脈を挟んで教団領と隣接していた。
だからと言って教団の脅威におびえていたわけではない。
山脈を越える道はあれどその道は険しく、教団がその山脈を越えてくることはなかった。
だが、勝てる見込みがあるのであれば多少無理をしてでも険しい山脈を越えようと考えるだろう。
例えば『自分たちの領地に隣接する親魔物派の都市の防衛隊の半数が何らかの理由で都市を離れている時』などは・・・
〜親魔物派都市 ティグリス〜
森から引き返してきたアリアナたちが目にしたのはその数、1000はいるであろう教団と都市の防衛隊が激戦を繰り広げている惨状だった。
魔物は旧世代よりその姿が変われど、あらゆる面で人間を上回っている、身体能力などがいい例だ。
だが、都市の防衛隊は200強、それに対して教団は1000を超えている、魔物娘が不利なのは明らかだった。
アリアナは焦りを露わにしていた。
「クッ...教団め、我らの留守を狙ったな!」
「アリアナ様、1人で先走らないでください!」
「わかっている!」
ノーマにとがめられることで落ち着きを取り戻した。
彼女は自分を落ち着かせるために2、3度深呼吸をし兵士たちに叫んだ。
「全軍、教団に対して奇襲を仕掛ける! 私に続けぇ!!」
『オオオォーーーーー!!!』
アリアナは教団の軍勢を横から奇襲するべく馬を駆り突撃した、兵士たちも彼女に続き教団めがけ突っ走る。
だが...
「なんだ!? 敵の増援!?」
不運にも敵に見つかってしまった。
「見つかったか...やむを得ん、このまま突撃ぃ!!」
だが彼女は突撃を敢行した。
「敵襲ぅ! 敵s「邪魔だ!!」『ドガァ』ぐあぁ!!」
「敵の増援だ! 応戦せよ!!」
『ウオオオォーーーー!!!』
「敵は不意を突かれて混乱している、押し返せ!!」
『オオォーーーーーー!!!』
彼女は敵の1人を馬で跳ね飛ばしながら突撃した、それに続き防衛隊の兵士たちも教団兵に突撃した。
だが教団への側面からの突撃が功を奏し教団は混乱状態に陥った。
だが、決して戦況が好転したわけではなく、数による戦力の差は開いていくのだった...
〜北の森〜
その戦闘の様子を1つの人影が森の南端にある木の上から見下ろしていた。
まるで、戦闘の行方を見守るように・・・
「さて、あとどれほど持つのか...」
〜親魔物都市ティグリス〜
ティグリスの防衛隊は必死に戦っているが数で物を言わせている教団を前にしては消耗戦を強いられ、防衛隊の消耗は激しかった。
「食らえ!!」
「フッ!」
「ぎゃぁ!」
「もらったぁ!!」
「フン!!」
「ぐあぁ!」
「おのれ...次から次へと...!」
アリアナも教団兵をすでに20人近く倒しているが、異界の軍との連戦により体力はほとんど残されていなかった。
(このままでは敗北は時間の問題...せめて兵士たちが万全の状態であれば...)
ティグリスの防衛隊の人数は約500人、普段の状態であれば1000や、2000の教団兵に遅れは取らない。だが彼女の率いていた兵は300人の兵士は異界の軍との戦闘で捕虜となった者こそいないがまともに戦えるのは200人ほど、しかもほぼ全員が体力を消耗していた。
合計400人ほどの兵士で少なくとも約1000人の教団兵を相手にしていることになる、どう見ても不利な戦いだった。
もちろんアリアナも例外ではなくすでに限界が近かった。
そんな彼女に1人の教団兵が近づく。
「お前がこの都市を納めているヴァンパイアか」
「だとしたら...なんだ...」
「お前を殺せば俺の名も上がる、名誉のために死んでもらうぞ!!」
「やらるものなら...やってみろ...」
だが彼女はすでに体力の限界、動くことすらできない。
対して教団兵は薄汚い笑みを浮かべ手に持った剣を振り上げた。
「アリアナ様! 今参ります!!」
「よそ見すんなぁ、魔物!!」
ノーマは自分の主の危機を救おうとアリアナのもとに向かおうとするが教団兵が立ちふさがる。
「無駄な抵抗だ、死ねぇい!!」
教団兵がアリアナにとどめを刺そうと剣を振り下ろした。
だが...
「早まるな雑兵が...」
バギィイインン!!!
教団兵の持っていた剣に黒い線が走り、次の瞬間耳鳴りのような何かが砕けるような音とともに艦が爆発し教団兵は明後日の方向に吹き飛ばされた。
その音と宙を舞う教団兵に気付き一瞬戦闘が止まった。
「随分と危機的な状況ではないか...手を貸そう...」
〜アリアナ視点〜
何が起きたかわからなかったアリアナだが聞き覚えのある声に顔を上げた。
そこにはつい先ほど身も凍るような殺気を放ち彼女に怒りの言葉を浴びせた指導者が立っていた。
「な...何故貴様がここに?」
「貴様らが引き返したのが少々気になってな...」
「そうではない、何故助けた?」
「この者たちは好かんのでな...」
指導者は彼女の問いに背を向けたまま答えた。
だが、状況は変わらない、確かに彼女は命拾いしたが教団に包囲ままだという事実は変わらない。
「き、貴様何者だ!」
「教団の者ではないな、魔物どもの味方か!!」
「この人数の中よくたった1人で乗り込めたものだ!」
「よくも我らが同志を、覚悟しろ!」
周囲を囲んでいる教団兵が口々に言う、だが指導者はそんな彼らに目もくれなかった。
「1人か...貴様らは盲目か? 誰が貴様らを1人で相手してやるものか...」
指導者がそう言った直後...
ドォォォーーーン!!!!!
教団の後衛がいるであろう地点で爆発が起きた。
「なんだ! 敵か!?」
「まだ増援がいるのか!?」
ヒュォォォォォーーーーーー!!!!!
混乱する彼らの頭上を『巨大な黒い甲虫の様なもの』が通過した。
それも1つや2つでなはい、その数は20はいるだろうか。
それは地上10メートルほどを旋回しながら教団兵だけを光弾で攻撃していた。
「何だアレは!!」
「光の弾を撃ってくるぞ!!」
「クソッ! 魔法弾が効かない!!」
教団は混乱状態だった、中には甲虫に向かって魔法弾を放つ者もいたが当たっても効果はなかった。
そんな教団をよそに甲虫の様なものは光弾を吐きながら地上5メートルほどの空中で止まり、脇腹に当たる部分がスライドドアのように開き、異世界の兵士が飛び降りてきた。
他の甲虫も同じように空中で止まり兵士が飛び降りてきた、地上に着地した兵士はその手に持った杖のような武器を構え、私たちにしたように教団兵に向かって光弾を放ち攻撃している。
彼女はその光景をただ眺めることしかできなかった。
突如現れた甲虫の群れ、そしてそこから飛び降り教団兵を戦う異世界の兵士。
目の前で起きていることがあまりにも『一方的攻撃』だったからだ。
その攻撃にさらされている教団は...
「だめだ、勝てない...!」
「逃げろ、逃げろー!!」
「助けてくれぇ!!」
教団はすでに戦意を喪失していた。
まだ戦っている者もいるが、すでに逃げ出している者も増えてきていた。
(あれほど苦戦していた教団がこれほどあっという間に崩れるとは...
此奴らは何者だ、何故その力を我々に振るわない...?)
彼女がそう思案していると。
「それは、我々が戦うべき相手は貴様らではないからだ。」
「!?」
まるで心を読んでいたかのように指導者が答えた。
「戦うべき...相手?」
「そうだ、戦うべき...というよりは倒すべき...滅ぼすべき敵といった方が正しい...」
「それが我々でなくても、何故教団に攻撃を?」
「それは、あの雑兵どもと手を組んでいる者が我らが敵だからだ...」
「何者なんだ、そいつらは...」
「その者たちは「なんだこいつ!?」
2人の会話を遮ったのは魔物の悲鳴でもティグリスの兵士の声でも、異界の兵士の声でもない。
教団兵の悲鳴だった。
2人は会話を中断し悲鳴を上げた教団兵を見た。
その教団兵は1人の異界の兵士と交戦し異界の兵士が被っていた兜を弾き飛ばし兵士の素顔を見て悲鳴を上げていた。
それもその筈だろう、異界の兵士の素顔は...
肌色はは赤っぽい灰色で、毛は生えておらず皮膚は何処か硬質感を帯びていた。
瞼が無く、目は黄色く縦に瞳孔が裂けていた。
鼻は顔の中心あたりに蛇の鼻ような穴が開いているだけだった。
耳はなく側頭部には耳の役割を果たすのであろう穴が開いていた。
歯は狼のように鋭い牙で唇はただその牙を隠す役割しか果たしていなかった。
その容姿一言で言えばまさに
「ば、化け物ぉ!!」
その一言を聞いて異界の兵士に怒りを感じたのだろう教団兵の首をつかみ30センチほど持ち上げた。
「貴様らはいつもそうだ、我々を化け物と罵り自分たちを正常な生き物と捉えたがる、それがいかに愚かで浅はかな行為とも知らずに!!
500年だ、お前らの傲慢な差別で我々は500年もの間奪われ、踏みにじられ続けてきた!!」
声に怒りと憎しみを交えた声で教団兵にそう言い放つと教団が撤退しつつある方向にその教団兵を投げ飛ばした。
怒りからか、肩で息をする彼に背後から指導者が近づく。
「落ち着きを取り戻したか...」
「申し訳ございません、怒りで我を失いました...」
「まぁ良い、此度の戦には勝ったのだ、兜を被り部隊の者と合流するがいい。」
「はっ!」
指導者は優しい声で兵士を落ち着かせ部隊への合流を促した。
その光景を見ていたアリアナは指導者に問いかけた。
「人間...ではなかったのだな。」
「・・・そうだ、人間ではない...彼らも...我もだ...」
彼女の問いに対して指導者は悲しそうな声でそう答えた。
「あの兵士が言っていた『500年』とは何だ?」
「その時が来たら語ろう...今はまだ語る時ではない...それより」
「それより?」
「戦には勝った、勝利を宣言しなくても良いのか?」
アリアナは、今は勝利したという事実と彼らが敵ではない事実を受け止め残された体力で勝利を宣言しようとした。だがその時1人の兵士が彼女に近づいた。
「アリアナ様大変です!!」
「なんだ、何があった?」
「教団の増援です!!」
「増援...数は?」
「その数、約1万です!!」
「な!? 1万だと!!」
だからと言って教団の脅威におびえていたわけではない。
山脈を越える道はあれどその道は険しく、教団がその山脈を越えてくることはなかった。
だが、勝てる見込みがあるのであれば多少無理をしてでも険しい山脈を越えようと考えるだろう。
例えば『自分たちの領地に隣接する親魔物派の都市の防衛隊の半数が何らかの理由で都市を離れている時』などは・・・
〜親魔物派都市 ティグリス〜
森から引き返してきたアリアナたちが目にしたのはその数、1000はいるであろう教団と都市の防衛隊が激戦を繰り広げている惨状だった。
魔物は旧世代よりその姿が変われど、あらゆる面で人間を上回っている、身体能力などがいい例だ。
だが、都市の防衛隊は200強、それに対して教団は1000を超えている、魔物娘が不利なのは明らかだった。
アリアナは焦りを露わにしていた。
「クッ...教団め、我らの留守を狙ったな!」
「アリアナ様、1人で先走らないでください!」
「わかっている!」
ノーマにとがめられることで落ち着きを取り戻した。
彼女は自分を落ち着かせるために2、3度深呼吸をし兵士たちに叫んだ。
「全軍、教団に対して奇襲を仕掛ける! 私に続けぇ!!」
『オオオォーーーーー!!!』
アリアナは教団の軍勢を横から奇襲するべく馬を駆り突撃した、兵士たちも彼女に続き教団めがけ突っ走る。
だが...
「なんだ!? 敵の増援!?」
不運にも敵に見つかってしまった。
「見つかったか...やむを得ん、このまま突撃ぃ!!」
だが彼女は突撃を敢行した。
「敵襲ぅ! 敵s「邪魔だ!!」『ドガァ』ぐあぁ!!」
「敵の増援だ! 応戦せよ!!」
『ウオオオォーーーー!!!』
「敵は不意を突かれて混乱している、押し返せ!!」
『オオォーーーーーー!!!』
彼女は敵の1人を馬で跳ね飛ばしながら突撃した、それに続き防衛隊の兵士たちも教団兵に突撃した。
だが教団への側面からの突撃が功を奏し教団は混乱状態に陥った。
だが、決して戦況が好転したわけではなく、数による戦力の差は開いていくのだった...
〜北の森〜
その戦闘の様子を1つの人影が森の南端にある木の上から見下ろしていた。
まるで、戦闘の行方を見守るように・・・
「さて、あとどれほど持つのか...」
〜親魔物都市ティグリス〜
ティグリスの防衛隊は必死に戦っているが数で物を言わせている教団を前にしては消耗戦を強いられ、防衛隊の消耗は激しかった。
「食らえ!!」
「フッ!」
「ぎゃぁ!」
「もらったぁ!!」
「フン!!」
「ぐあぁ!」
「おのれ...次から次へと...!」
アリアナも教団兵をすでに20人近く倒しているが、異界の軍との連戦により体力はほとんど残されていなかった。
(このままでは敗北は時間の問題...せめて兵士たちが万全の状態であれば...)
ティグリスの防衛隊の人数は約500人、普段の状態であれば1000や、2000の教団兵に遅れは取らない。だが彼女の率いていた兵は300人の兵士は異界の軍との戦闘で捕虜となった者こそいないがまともに戦えるのは200人ほど、しかもほぼ全員が体力を消耗していた。
合計400人ほどの兵士で少なくとも約1000人の教団兵を相手にしていることになる、どう見ても不利な戦いだった。
もちろんアリアナも例外ではなくすでに限界が近かった。
そんな彼女に1人の教団兵が近づく。
「お前がこの都市を納めているヴァンパイアか」
「だとしたら...なんだ...」
「お前を殺せば俺の名も上がる、名誉のために死んでもらうぞ!!」
「やらるものなら...やってみろ...」
だが彼女はすでに体力の限界、動くことすらできない。
対して教団兵は薄汚い笑みを浮かべ手に持った剣を振り上げた。
「アリアナ様! 今参ります!!」
「よそ見すんなぁ、魔物!!」
ノーマは自分の主の危機を救おうとアリアナのもとに向かおうとするが教団兵が立ちふさがる。
「無駄な抵抗だ、死ねぇい!!」
教団兵がアリアナにとどめを刺そうと剣を振り下ろした。
だが...
「早まるな雑兵が...」
バギィイインン!!!
教団兵の持っていた剣に黒い線が走り、次の瞬間耳鳴りのような何かが砕けるような音とともに艦が爆発し教団兵は明後日の方向に吹き飛ばされた。
その音と宙を舞う教団兵に気付き一瞬戦闘が止まった。
「随分と危機的な状況ではないか...手を貸そう...」
〜アリアナ視点〜
何が起きたかわからなかったアリアナだが聞き覚えのある声に顔を上げた。
そこにはつい先ほど身も凍るような殺気を放ち彼女に怒りの言葉を浴びせた指導者が立っていた。
「な...何故貴様がここに?」
「貴様らが引き返したのが少々気になってな...」
「そうではない、何故助けた?」
「この者たちは好かんのでな...」
指導者は彼女の問いに背を向けたまま答えた。
だが、状況は変わらない、確かに彼女は命拾いしたが教団に包囲ままだという事実は変わらない。
「き、貴様何者だ!」
「教団の者ではないな、魔物どもの味方か!!」
「この人数の中よくたった1人で乗り込めたものだ!」
「よくも我らが同志を、覚悟しろ!」
周囲を囲んでいる教団兵が口々に言う、だが指導者はそんな彼らに目もくれなかった。
「1人か...貴様らは盲目か? 誰が貴様らを1人で相手してやるものか...」
指導者がそう言った直後...
ドォォォーーーン!!!!!
教団の後衛がいるであろう地点で爆発が起きた。
「なんだ! 敵か!?」
「まだ増援がいるのか!?」
ヒュォォォォォーーーーーー!!!!!
混乱する彼らの頭上を『巨大な黒い甲虫の様なもの』が通過した。
それも1つや2つでなはい、その数は20はいるだろうか。
それは地上10メートルほどを旋回しながら教団兵だけを光弾で攻撃していた。
「何だアレは!!」
「光の弾を撃ってくるぞ!!」
「クソッ! 魔法弾が効かない!!」
教団は混乱状態だった、中には甲虫に向かって魔法弾を放つ者もいたが当たっても効果はなかった。
そんな教団をよそに甲虫の様なものは光弾を吐きながら地上5メートルほどの空中で止まり、脇腹に当たる部分がスライドドアのように開き、異世界の兵士が飛び降りてきた。
他の甲虫も同じように空中で止まり兵士が飛び降りてきた、地上に着地した兵士はその手に持った杖のような武器を構え、私たちにしたように教団兵に向かって光弾を放ち攻撃している。
彼女はその光景をただ眺めることしかできなかった。
突如現れた甲虫の群れ、そしてそこから飛び降り教団兵を戦う異世界の兵士。
目の前で起きていることがあまりにも『一方的攻撃』だったからだ。
その攻撃にさらされている教団は...
「だめだ、勝てない...!」
「逃げろ、逃げろー!!」
「助けてくれぇ!!」
教団はすでに戦意を喪失していた。
まだ戦っている者もいるが、すでに逃げ出している者も増えてきていた。
(あれほど苦戦していた教団がこれほどあっという間に崩れるとは...
此奴らは何者だ、何故その力を我々に振るわない...?)
彼女がそう思案していると。
「それは、我々が戦うべき相手は貴様らではないからだ。」
「!?」
まるで心を読んでいたかのように指導者が答えた。
「戦うべき...相手?」
「そうだ、戦うべき...というよりは倒すべき...滅ぼすべき敵といった方が正しい...」
「それが我々でなくても、何故教団に攻撃を?」
「それは、あの雑兵どもと手を組んでいる者が我らが敵だからだ...」
「何者なんだ、そいつらは...」
「その者たちは「なんだこいつ!?」
2人の会話を遮ったのは魔物の悲鳴でもティグリスの兵士の声でも、異界の兵士の声でもない。
教団兵の悲鳴だった。
2人は会話を中断し悲鳴を上げた教団兵を見た。
その教団兵は1人の異界の兵士と交戦し異界の兵士が被っていた兜を弾き飛ばし兵士の素顔を見て悲鳴を上げていた。
それもその筈だろう、異界の兵士の素顔は...
肌色はは赤っぽい灰色で、毛は生えておらず皮膚は何処か硬質感を帯びていた。
瞼が無く、目は黄色く縦に瞳孔が裂けていた。
鼻は顔の中心あたりに蛇の鼻ような穴が開いているだけだった。
耳はなく側頭部には耳の役割を果たすのであろう穴が開いていた。
歯は狼のように鋭い牙で唇はただその牙を隠す役割しか果たしていなかった。
その容姿一言で言えばまさに
「ば、化け物ぉ!!」
その一言を聞いて異界の兵士に怒りを感じたのだろう教団兵の首をつかみ30センチほど持ち上げた。
「貴様らはいつもそうだ、我々を化け物と罵り自分たちを正常な生き物と捉えたがる、それがいかに愚かで浅はかな行為とも知らずに!!
500年だ、お前らの傲慢な差別で我々は500年もの間奪われ、踏みにじられ続けてきた!!」
声に怒りと憎しみを交えた声で教団兵にそう言い放つと教団が撤退しつつある方向にその教団兵を投げ飛ばした。
怒りからか、肩で息をする彼に背後から指導者が近づく。
「落ち着きを取り戻したか...」
「申し訳ございません、怒りで我を失いました...」
「まぁ良い、此度の戦には勝ったのだ、兜を被り部隊の者と合流するがいい。」
「はっ!」
指導者は優しい声で兵士を落ち着かせ部隊への合流を促した。
その光景を見ていたアリアナは指導者に問いかけた。
「人間...ではなかったのだな。」
「・・・そうだ、人間ではない...彼らも...我もだ...」
彼女の問いに対して指導者は悲しそうな声でそう答えた。
「あの兵士が言っていた『500年』とは何だ?」
「その時が来たら語ろう...今はまだ語る時ではない...それより」
「それより?」
「戦には勝った、勝利を宣言しなくても良いのか?」
アリアナは、今は勝利したという事実と彼らが敵ではない事実を受け止め残された体力で勝利を宣言しようとした。だがその時1人の兵士が彼女に近づいた。
「アリアナ様大変です!!」
「なんだ、何があった?」
「教団の増援です!!」
「増援...数は?」
「その数、約1万です!!」
「な!? 1万だと!!」
15/11/14 23:18更新 / @サイエンティスト
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