第3話〜思惑〜
〜城塞 会議室〜
本国帰還直後、我々は会議室に呼ばれた。
ここで指導者様直々に命令を頂く、ということになっている。
「失礼します。」
隊長が挨拶をし、会議室に入るとすでに指導者がそこにいた。
対峙した瞬間、緊張を通り越し恐怖すら感じる。
他の隊員たちも、同じようだ。
全軍の最高権威者であると同時に『最高戦力』である彼に呼び出されたのだ、
当然だろう。
「ゴースト・アイ諸君、よく戻ってくれた...諸君らの活躍は我らの歴史に刻まれる大いなる行いとなるだろう、よくやった。」
「ありがとうございます。指導者様、この身に余る光栄でございます。」
「だが、勝利の祝福をしている暇はない...時間が惜しい、今再びゲートの向こう側に行ってもらう。」
その言葉に隊員がざわめく。
隊長が指導者に尋ねる。
「お言葉ですが、指導者様、何故ですか?」
「『奴ら』があの世界にいた、そう報告したのは貴様だな?」
「はい、そのとうりであります。」
「そして我々はその世界に足を踏み、襲撃を受けた。」
「はい...」
「その襲撃者は『奴ら』の配下とみて間違いない、ならば『奴ら』が準備を整える前に我らから仕掛ける必要がある。」
「つまり、我々は...」
「貴様らは、我が軍勢が向こうの世界に渡れるように、向こうの世界でゲートを造ってもらう。」
この時彼は指導者の目論見を悟った。
「攻め入る気ですか...!?」
「そうだ。」
「彼女らもですか...!?」
「『魔物』のことか? それは向こうの出方による。」
「彼女らは敵ではありません!」
「敵ではない...か、だが味方とも限らんだろう?」
「『奴ら』に加担している十字とも敵対しています!」
「ならば魔物を説得してみるが良い、だから貴様らを再びかの地へと送るのだ。」
「...!」
「魔物を味方に付けたいのならば、せいぜいうまく立ち回るが良い。」
彼は何も言えなかった。
〜親魔物都市ティグリス ティグリス城 謁見の間〜
彼らが飛び去った後、ノーマ達は親魔物都市ティグリス城の城主であり、領主であるヴァンパイア、アリアナ・ティグリスに呼び出された。
呼び出された理由は先の調査の報告、彼らが落としていった『破片』についてだ。
「騎士ノーマ、先の調査の任、誠にご苦労であった。」
「はっ、ありがたきお言葉です。」
「さて、報告の方を聞かせてもらいたい。」
アリアナはノーマに労いの言葉をかけると調査結果を報告するようにノーマに求めた。
「はっ、我々調査班は黒い鳥を調査中、その鳥に乗ってきたという異世界の人間らしき者に遭遇、彼らと2,3質問を交わし、黒い鳥と彼らに関する情報を入手しました。」
「鳥に乗ってきた? どういうことだ?」
「はい、森に落ちた黒い鳥は彼らの空飛ぶ乗り物で、彼らは『偵察を目的に作られた』と言っていました。」
「乗り物だと? あれがか...それと異世界の人間とは?」
「はい、彼らは自分自身を『異世界の支配者、この世界における人間に近い』と言っていました。」
「近い...か、他に何か言っていたか?」
「はい、教団と我々との関係性を聞かれました。」
「教団との関係...なぜそのようなことを?」
「わかりません、彼らに目的を聞こうとしたとき『箱のようなもの』が彼らを回収し飛び去ってしまいました。」
「まて、『箱』とはなんだ?」
「彼らを回収しに来たであろう彼らの乗り物かと思われます。」
「他には?」
「特にありませんが...武器が特徴的でした。」
「武器?」
「はい、杖のような、こん棒のような...最近教団で出回っている鉄砲に近い形をしていました。」
「そうか、それと。お前が拾ってきた破片について何かわかったか?」
「現在、町中の鍛冶、金属装飾品の職人、軍に所属している魔術師を集め調査しましたが。全員が『こんな金属見たことがない、わからない』と言っています。」
「ふむ、ご苦労。」
一通り報告を聞いた彼女は俯き、1人考えた。
(異世界の支配者、鳥や箱のような乗り物、鉄砲...何者だ。)
しばし考えた後彼女は顔を上げノーマに言った。
その時、ノーマは嫌な予感がした。
「ノーマよ、その者たちがもう1度現れた時私に知らせよ。」
「なぜですか?」
「その者たちと戦う事になるかもしれんからだ。」
「待ってください、彼らは目的は殲滅ではない、戦いでは無いといっていました!」
「だが、それが嘘かもしれないぞ?」
「ならば、我々を生かして返したりするでしょうか!」
「情報をとるためにあえて生かしただけかもしれない。」
「そんな、何故そこまで彼r「『偵察』と言っていたな?」...え?」
ノーマはアリアナが何を言っているかわからなかった。
「偵察と言っていたそうだな、その者たちの目的が。」
「は、はい。」
「空を飛ぶ乗り物、鉄砲のような武器、もしその者たちがこの世界への侵略を考えていたとしたらどうする?」
「そ、それは...」
「何の備えもないよりは警戒するに越したことはないだろう?」
「はい...」
「現れたら知らせよ、その時にはお前たちにも働いてもらうからな。」
「はい。ですが、彼らが和平を望んだ時は、彼らとの話し合いの席について頂きます。」
「うむ、考えておこう。」
「ありがとうございます。」
そう言ってノーマは謁見の間を後にした。
だが、先ほどの領主の言葉が頭から離れない。
『この世界への侵略を考えていたとしたらどうする?』
ノーマは力なく上を見上げた。
(戦争...という事にはならないだろう? 侵略などしないだろう?)
今の彼女にはそう願うことしかできなかった。
本国帰還直後、我々は会議室に呼ばれた。
ここで指導者様直々に命令を頂く、ということになっている。
「失礼します。」
隊長が挨拶をし、会議室に入るとすでに指導者がそこにいた。
対峙した瞬間、緊張を通り越し恐怖すら感じる。
他の隊員たちも、同じようだ。
全軍の最高権威者であると同時に『最高戦力』である彼に呼び出されたのだ、
当然だろう。
「ゴースト・アイ諸君、よく戻ってくれた...諸君らの活躍は我らの歴史に刻まれる大いなる行いとなるだろう、よくやった。」
「ありがとうございます。指導者様、この身に余る光栄でございます。」
「だが、勝利の祝福をしている暇はない...時間が惜しい、今再びゲートの向こう側に行ってもらう。」
その言葉に隊員がざわめく。
隊長が指導者に尋ねる。
「お言葉ですが、指導者様、何故ですか?」
「『奴ら』があの世界にいた、そう報告したのは貴様だな?」
「はい、そのとうりであります。」
「そして我々はその世界に足を踏み、襲撃を受けた。」
「はい...」
「その襲撃者は『奴ら』の配下とみて間違いない、ならば『奴ら』が準備を整える前に我らから仕掛ける必要がある。」
「つまり、我々は...」
「貴様らは、我が軍勢が向こうの世界に渡れるように、向こうの世界でゲートを造ってもらう。」
この時彼は指導者の目論見を悟った。
「攻め入る気ですか...!?」
「そうだ。」
「彼女らもですか...!?」
「『魔物』のことか? それは向こうの出方による。」
「彼女らは敵ではありません!」
「敵ではない...か、だが味方とも限らんだろう?」
「『奴ら』に加担している十字とも敵対しています!」
「ならば魔物を説得してみるが良い、だから貴様らを再びかの地へと送るのだ。」
「...!」
「魔物を味方に付けたいのならば、せいぜいうまく立ち回るが良い。」
彼は何も言えなかった。
〜親魔物都市ティグリス ティグリス城 謁見の間〜
彼らが飛び去った後、ノーマ達は親魔物都市ティグリス城の城主であり、領主であるヴァンパイア、アリアナ・ティグリスに呼び出された。
呼び出された理由は先の調査の報告、彼らが落としていった『破片』についてだ。
「騎士ノーマ、先の調査の任、誠にご苦労であった。」
「はっ、ありがたきお言葉です。」
「さて、報告の方を聞かせてもらいたい。」
アリアナはノーマに労いの言葉をかけると調査結果を報告するようにノーマに求めた。
「はっ、我々調査班は黒い鳥を調査中、その鳥に乗ってきたという異世界の人間らしき者に遭遇、彼らと2,3質問を交わし、黒い鳥と彼らに関する情報を入手しました。」
「鳥に乗ってきた? どういうことだ?」
「はい、森に落ちた黒い鳥は彼らの空飛ぶ乗り物で、彼らは『偵察を目的に作られた』と言っていました。」
「乗り物だと? あれがか...それと異世界の人間とは?」
「はい、彼らは自分自身を『異世界の支配者、この世界における人間に近い』と言っていました。」
「近い...か、他に何か言っていたか?」
「はい、教団と我々との関係性を聞かれました。」
「教団との関係...なぜそのようなことを?」
「わかりません、彼らに目的を聞こうとしたとき『箱のようなもの』が彼らを回収し飛び去ってしまいました。」
「まて、『箱』とはなんだ?」
「彼らを回収しに来たであろう彼らの乗り物かと思われます。」
「他には?」
「特にありませんが...武器が特徴的でした。」
「武器?」
「はい、杖のような、こん棒のような...最近教団で出回っている鉄砲に近い形をしていました。」
「そうか、それと。お前が拾ってきた破片について何かわかったか?」
「現在、町中の鍛冶、金属装飾品の職人、軍に所属している魔術師を集め調査しましたが。全員が『こんな金属見たことがない、わからない』と言っています。」
「ふむ、ご苦労。」
一通り報告を聞いた彼女は俯き、1人考えた。
(異世界の支配者、鳥や箱のような乗り物、鉄砲...何者だ。)
しばし考えた後彼女は顔を上げノーマに言った。
その時、ノーマは嫌な予感がした。
「ノーマよ、その者たちがもう1度現れた時私に知らせよ。」
「なぜですか?」
「その者たちと戦う事になるかもしれんからだ。」
「待ってください、彼らは目的は殲滅ではない、戦いでは無いといっていました!」
「だが、それが嘘かもしれないぞ?」
「ならば、我々を生かして返したりするでしょうか!」
「情報をとるためにあえて生かしただけかもしれない。」
「そんな、何故そこまで彼r「『偵察』と言っていたな?」...え?」
ノーマはアリアナが何を言っているかわからなかった。
「偵察と言っていたそうだな、その者たちの目的が。」
「は、はい。」
「空を飛ぶ乗り物、鉄砲のような武器、もしその者たちがこの世界への侵略を考えていたとしたらどうする?」
「そ、それは...」
「何の備えもないよりは警戒するに越したことはないだろう?」
「はい...」
「現れたら知らせよ、その時にはお前たちにも働いてもらうからな。」
「はい。ですが、彼らが和平を望んだ時は、彼らとの話し合いの席について頂きます。」
「うむ、考えておこう。」
「ありがとうございます。」
そう言ってノーマは謁見の間を後にした。
だが、先ほどの領主の言葉が頭から離れない。
『この世界への侵略を考えていたとしたらどうする?』
ノーマは力なく上を見上げた。
(戦争...という事にはならないだろう? 侵略などしないだろう?)
今の彼女にはそう願うことしかできなかった。
15/10/05 03:37更新 / @サイエンティスト
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