第2話〜遭遇〜
〜何かが墜落した森〜
「なぁ、ホントにこっちであってるのかよ?」
「多分大丈夫でしょ、森に入る前に方向は確認したんだから。」
「『多分』て...」
「森って目印になるものとか無いから、知らず知らずのうちに進んでる方向が変わっててたりしてね」
「森の中で迷子はゴメンだね」
「2人とも、お喋りは結構だが今は任務中だ、集中しろ。」
「はいよ」
「はーい」
つい先ほどのことだ、耳鳴りのような音と地面を揺らすほどの轟音とともにこの森に何かが墜落した。
それが何なのかはよくわからないが、目撃者のほとんどが、
『黒い鳥のようなものが煙を吐きながら森に落ちた』と言っている。
しかもその鳥が落ちたであろう場所から黒い煙が上がっており、『その煙を目指して進めば落ちたのが何かわかるのではないか?』という意見が出たため。
私たちが『鳥』を探しにこの森に派遣された。
調査隊はアマゾネスのメリッサとエルフのテュール
それと隊長である私、デュラハンのノーマの3人だ。
「だけどさ、落っこちた鳥っては教団領から飛んできたんでしょ?」
「そうだって聞いてるけど、それがどうしたんだ?」
「いや、ひょっとして教団が攻めてきたんじゃないかなぁって...」
「そん時はそん時だ、いい男がいればアタシがいただいてくさ!」
「それで相手が勇者とかだったら?」
「何とかなるだろ」
「なるといいねー...」
初めはに周囲に気を配っていた2人だがなにも現れず、特に変わった様子の無いいつもの森の空気に緊張感は途切れ、今ではピクニック気分だ。
「2人とも気を引き締めろ、いつ何が起こるかわからないからな。」
「だけど隊長、今のところ何も発見できてないぜ?」
「たしかにそうだが、方向は間違っていないはずだ、そうだろうテュール?」
「ええ、煙が見えたのが北の方角だったので、大体はあってると思いますよ?」
「大体って...お前は適当だねー、ホントにエルフかい?」
「エルフだけど? サキュバスかアマゾネスにでも見える?」
(気を引き締めるように注意したはずがまた緊張感が無くなってしまった...)
3人が会話をしながら道もない森の中を進んでいくと
「...ッ! おい、2人ともあれを見ろ!」
「何だありゃ?」
「あわー、すごい」
3人の前方に真ん中あたりから折れて倒れている木があった、それも1本2本などではなく3人の進行を阻むように何十本も折れており、すべて向かって左側に倒れている。
「いったい何が、いや誰が...」
「こりゃすげーや、ミノタウロスでも通ったのかね?」
「いや、ミノタウロスでもこんなことはしないよ」
3人は調べるため、折れた木々に急いで駆け寄った、すると
折れた木々の直ぐ隣に折れた木々に沿って地面が抉られたような跡があり、その抉られた跡の反対側にも折れて木々が列をなしていた。
「な、なにがあったんだ、ここで...」
「これも鳥がやったのか...?」
「どうやらそうみたいですね...」
2人が驚く中テュールだけが冷静にそう言った。
「テュール?」
「何で分かるんだ?」
「あれを見ればわかりますよ。」
テュールはそう言いながら木々が倒れている方向を指さした。
その方向には、黒煙が上がっていた...
「なるほどね。」
「隊長どうします?」
「むろん偵察に行くぞ。」
3人は黒煙に向かって歩き出した。
〜実験機不時着現場〜
不時着後、隊長は部下の安全を確認し全員で実験機の修理を試みていた。
周囲は偶然にも開けており、機体を修理するには十分な広さだった。
奇跡的に死人けが人は1人もいなかったが状況は最悪だ。
「通信機は修理できないのか?」
「無理ですね、予備の部品が全部やられましたから。」
「右スラスターの方はどうだ?」
「手の施しようがありません、爆発しないだけでも奇跡でしたよ...」
「レーダーや探知装置はどうだ?」
「レーダーは使い物になりません、探知装置も出力が下がり、ほとんど反応しません。」
「どのみち使えないか...銃座は使えるのか?」
「銃座は使えます、ジェネレーターが生きててくれたので問題ありません。」
「そうか、わかった。」
あまり期待はしていなかったが、酷いものだ...
簡単に説明すれば動けず喋れず目も見えないったところだ...
銃座が使えるのが不幸中の幸いといったところか、だが弾は無限じゃない。
「本国はすでに動いているのでしょうか?」
「わからん、だが通信が途切れたのだ、おそらく動いているだろう。」
「だと良いですけど...」
「回収艇が来るかもしれん、救難信号を出しておけ、それと誰か1人木の上に待機させろ。」
「了解...」
我々だけがこの世界に取り残された...そう考えれば普段戦闘訓練に明け暮れている兵士でさえここまで士気が下がるのだ、何か事の進展があればいいのだが...
そう考えていると。
「隊長、本国から電文です!」
「何!? 通信機は死んだはずじゃなかったのか!?」
「死んだのは送信機能だけだったようで、受信機能は無事でした。」
「それで受信できたのか...それで、内容は?」
「はい、『実験機、全搭乗員回収のため、L型カーゴシップを送る、待機されたし』とのことです。」
「よし、そうか!!」
助けが来ることを知るや否や、部下たちに聞こえるように言った
「全員そのまま聞け、我々を回収するために本国が回収部隊を派遣するとの通信があった。到着時刻は不明だが助けが来る、回収部隊を待つため、我々は現状のまま待機する!!」
その報告を聞いて部下たちの表情に希望が戻った。
だがここで新たな疑問が浮かんだ、ここで待機している間、何も起こらないとは限らないからだ。
「・・・全員に武装装備を命じろ。」
「どうしました?」
「いや、都市が存在する世界で墜落した我々を気に留めない輩がいると思うか?」
「それは、つまり...」
「推測が正しければどこかの勢力の偵察部隊と接触するかもしれない、ということだ。」
「了解しました。」
通信で全員に武装装備を命じた、すると部下たちは機体の中に入り、少しして武装をして出てきた。
「隊長」
「なんだ?」
「先ほどの偵察部隊とは、敵、ですか?」
「わからん、だが万が一の...」
事態を想定して。そう言おうとした時だった。
パキンッ!
「!?」
茂みから何かが割れる音がした、全員がその音のしたであろう方向に銃を向けた。
〜鳥墜落現場〜
黒煙の発生源に来るとそこには黒い鳥が右羽から黒煙を吐いて鎮座していた。
それだけではない、その周りに20人ほどの人影がいて、1人が指示を出しほかの者たちがそれに従っているような感じだった。
見つかってはなるまいと、ノーマ達3人は近くの茂みに身を隠し彼らの様子を窺いつつ彼らには聞こえない音量で会話をしていた。
「何だあいつらは、教団の連中か?」
「いや、教団とは様子が違う。別の組織の可能性もある。」
「でも妙な服装ですねー、鎧にしては薄いし服にしてはでこぼこしてるし、顔にも兜みたいなのを被ってて顔が見えませんし」
彼らの服装は、上はところどころにポケットがいた長袖の黒い防弾チョッキ、下は上と同じようにポケットのついた防弾性の黒い長ズボンに機動性を重視した黒いブーツ、そして顔を覆うほどのフルフェイスのバイザー。
彼女たちには見慣れない服装であるのは仕方のないことだった。
「だが、あいつらが鳥に乗っていたとしたら目的は何だ?」
「というかあいつら人間か?精の匂いが全然しねぇ。」
「狙撃します?」
「戦ってどうする馬鹿者。」
「だって剣や弓矢の類持ってませんし...」
「あの人数相手じゃ勝てるかどうかわからないだろ。」
交戦を提案するテュールをノーマとメリッサが諭す。
「何を話しているのかが分かればいいのだが...」
「それじゃ向こうの茂みに移動しないかい?少しは距離が縮まるぜ?」
彼らの会話内容を聞きたいノーマにメリッサが右前方の茂みを指さして提案する。
「あの茂みに移動する、私についてこい。」
「りょーかい」
「はーい」
ノーマを先頭に移動を開始したその時。
パキンッ!
「「「!!?」」」
運悪く落ちていた小枝を踏んで折ってしまったようだ。
その音に彼らも気づき手に持っている杖のような物をこっちに向けた。
(不味い、どうする!? このまま逃げるか!? いや、逃げたところでこいつ等が追ってこないとも限らない!)
(かなりやばいよこれは...逃がしてくれそうにもないねぇ...)
(今のわかるの!? 何こいつら耳どうなってんの!?)
3人が困惑していると
「茂みに身をひそめるものに次ぐ、おとなしく出てこい! そうすれば命までは取らない!」
彼らが降伏勧告をしてきた、投降すれば命は取らないという典型的なものだ。
(どうする? あいつらの言葉を信じられるか? いや、初めから殺す気で来るならば私たちはもう死んでいるはず...いや、罠かもしれない...はめる理由がない...)
だがこのときノーマは焦っていた、今この瞬間の自分の選択に部下2人の命がかかっているのだからそれもそのはずである。
「どうすんのさ、ノーマ隊長...あたしは従うぜ。」
「私もです隊長、覚悟はできてます。」
(私は...)
〜実験機不時着現場〜
(さて...)
茂みに潜む何者かに対して警告はした、あとは言葉が通じていることと我々の言うことを信じてくれるのを祈るだけだ。
(頼む、出てきてくれよ...)
彼がそう願っていると
ガサガサ...
草をかき分ける音とともに3つの人影が出てきた。
1人は鎧を着こみ剣を持っている。
1人は褐色肌が特徴的で、軽装、1人目と同じように剣を持っている。
1人は白肌に金の髪、弓矢を持っている。
(これがニンゲンか? いや違うな、3人とも耳が長い...)
自分たちに忍び寄っていた人物を目の当たりにしながらも冷静にそう判断した。
何から聞こうかと迷っていると、先に向こうから口を開いた。
「本当に命までは取らないのだな?」
「ん? あぁ、我々の目的は目撃者の殲滅ではないからな。」
「ならば何故我々に降伏を促した?」
「こちらもいろいろと聞きたいことがあるからだ。」
「答えられることなら答えよう、その代わりこちらも聞きたいことがある。」
「いいだろう、ならば質問は交互にするというのはどうだ?」
(向こうの発した一言からあっという間にお互い情報交換をできる状態まで来てしまった、流れとは恐ろしいものだ。)
「だが、その前にその杖を下ろしてもらおうか?」
「おっと、これは失礼した。」
部下に銃を下ろすように合図する。
全員が銃を下ろし終えたところで1つ目の質問。
「まず1つ目、君たちは何者だ?」
「我々は、この森のすぐ南にある町の部隊の者だ、お前たちのその鳥が落ちてきたので調査をしに来た。後ろの2人は私の部下だ。」
「人間ではなさそうだが?」
「ああ、我々は魔物と言われる種族だ。」
ノーマはハキハキと答える。
「次はこちらの番だな、お前たちは何者なんだ?」
(我々と同じ質問か、まぁあたりまえだろう)
「我々は...異世界においてその世界の支配者を名乗っているものだ。」
「この世界でいう人間のようなものか?」
「それに近い何か、といった方が正しい。」
隊長も答える
(人間に近い何か?何者なんだ...)
「2つ目の質問だ、君たちは3人とも見た目が若干異なるが、種族は異なるものなのか?」
「そうだ、種族名でいうならば私はデュラハンだ、後ろに2人はアマゾネスとエルフだ。」
「いくつもの種族が共存している、ということかな?」
「そうだ。」
(いくつもの種族が共存か...中々興味の引かれる御方々だ...)
「次は私だな、お前たちの乗ってきた鳥のようなものは何なのだ?」
「これか? これは...実験機、そう聞かされている。」
「ジッケンキ? 実験ということは何かを試しているのか?」
「あぁ、異世界における強行上空偵察を目的に作られているとかなんとか...詳しいことはわからん。」
「そうか...」
(異世界から来たということで間違いなさそうだな...)
「3つ目の質問だ、十字を掲げている連中との関係は?」
「十字...教団の事か?」
「教団? 宗教組織か何かか?」
「我々魔物を一方的に敵視している連中だ、我々は共存を望んでいるというのに...」
「なるほど...」
(一方的に敵視か...まるで『奴ら』だな)
「今度はこっちだ、お前たちの目的は何だ?」
「目的...か、それはな」
彼がそう答えようとしたとき、突然陽の光が遮られた。
何かと思い上を見ると巨大な箱をぶら下げた何かがそこにあった。
(な、何だ! あれは!?)
テュールもメリッサも驚いていた。
困惑している彼女たちをよそに彼らは。
「カーゴシップ! 助けが来たぞ!!」
どうやらあれはカーゴシップと呼ばれる物らしい、私たちがその場で呆けているとカーゴシップにつりさげられた箱が開き黒い鳥...実験機に光を浴びせた。
すると、実験機が浮かび上がり箱の中に吸い込まれるように少しずつ上昇していく。
「実験機を回収するのか! 全員機体に掴まれ、置いてかれるぞ!!」
隊長格の彼がそう叫ぶ、すると部下たちは次々に実験機に飛び乗った。
そこで我に返り隊長格に叫ぶ。
「待て! 最後の質問に答えてないぞ、お前たちの目的は何だ!!」
「それはいずれ分かる、その時に答えよう。さらばだ諸君!またいずれどこかで会おう!!」
そう言い終えた直後に箱が閉じ彼らは飛び去ってしまった。
私たちはそれを見ていることしかできなかった。
「結局何が目的だったんですかねあいつら?」
「だけど『またいずれ』ってまたこの世界に来るってことかな...」
「恐らくな、だが...」
ふと地面に目をやると実験機の破片のようなものが転がっていた。
ノーマはそれを拾い上げ、彼らが去った方角を見て。
「敵でないことを願おう。」
そう言った。
〜カーゴシップ内〜
『ゴースト・アイ諸君ご苦労だった、帰還途中で済まないが次の作戦についてなんだが...。』
「早速か、少しは休ませてほしいものなんですがね。」
『そういうな、次の作戦内容の説明場所は『会議室』だ。』
「おい待ってくれ、それって...」
『次の作戦説明は指導者様が行う。』
「なぁ、ホントにこっちであってるのかよ?」
「多分大丈夫でしょ、森に入る前に方向は確認したんだから。」
「『多分』て...」
「森って目印になるものとか無いから、知らず知らずのうちに進んでる方向が変わっててたりしてね」
「森の中で迷子はゴメンだね」
「2人とも、お喋りは結構だが今は任務中だ、集中しろ。」
「はいよ」
「はーい」
つい先ほどのことだ、耳鳴りのような音と地面を揺らすほどの轟音とともにこの森に何かが墜落した。
それが何なのかはよくわからないが、目撃者のほとんどが、
『黒い鳥のようなものが煙を吐きながら森に落ちた』と言っている。
しかもその鳥が落ちたであろう場所から黒い煙が上がっており、『その煙を目指して進めば落ちたのが何かわかるのではないか?』という意見が出たため。
私たちが『鳥』を探しにこの森に派遣された。
調査隊はアマゾネスのメリッサとエルフのテュール
それと隊長である私、デュラハンのノーマの3人だ。
「だけどさ、落っこちた鳥っては教団領から飛んできたんでしょ?」
「そうだって聞いてるけど、それがどうしたんだ?」
「いや、ひょっとして教団が攻めてきたんじゃないかなぁって...」
「そん時はそん時だ、いい男がいればアタシがいただいてくさ!」
「それで相手が勇者とかだったら?」
「何とかなるだろ」
「なるといいねー...」
初めはに周囲に気を配っていた2人だがなにも現れず、特に変わった様子の無いいつもの森の空気に緊張感は途切れ、今ではピクニック気分だ。
「2人とも気を引き締めろ、いつ何が起こるかわからないからな。」
「だけど隊長、今のところ何も発見できてないぜ?」
「たしかにそうだが、方向は間違っていないはずだ、そうだろうテュール?」
「ええ、煙が見えたのが北の方角だったので、大体はあってると思いますよ?」
「大体って...お前は適当だねー、ホントにエルフかい?」
「エルフだけど? サキュバスかアマゾネスにでも見える?」
(気を引き締めるように注意したはずがまた緊張感が無くなってしまった...)
3人が会話をしながら道もない森の中を進んでいくと
「...ッ! おい、2人ともあれを見ろ!」
「何だありゃ?」
「あわー、すごい」
3人の前方に真ん中あたりから折れて倒れている木があった、それも1本2本などではなく3人の進行を阻むように何十本も折れており、すべて向かって左側に倒れている。
「いったい何が、いや誰が...」
「こりゃすげーや、ミノタウロスでも通ったのかね?」
「いや、ミノタウロスでもこんなことはしないよ」
3人は調べるため、折れた木々に急いで駆け寄った、すると
折れた木々の直ぐ隣に折れた木々に沿って地面が抉られたような跡があり、その抉られた跡の反対側にも折れて木々が列をなしていた。
「な、なにがあったんだ、ここで...」
「これも鳥がやったのか...?」
「どうやらそうみたいですね...」
2人が驚く中テュールだけが冷静にそう言った。
「テュール?」
「何で分かるんだ?」
「あれを見ればわかりますよ。」
テュールはそう言いながら木々が倒れている方向を指さした。
その方向には、黒煙が上がっていた...
「なるほどね。」
「隊長どうします?」
「むろん偵察に行くぞ。」
3人は黒煙に向かって歩き出した。
〜実験機不時着現場〜
不時着後、隊長は部下の安全を確認し全員で実験機の修理を試みていた。
周囲は偶然にも開けており、機体を修理するには十分な広さだった。
奇跡的に死人けが人は1人もいなかったが状況は最悪だ。
「通信機は修理できないのか?」
「無理ですね、予備の部品が全部やられましたから。」
「右スラスターの方はどうだ?」
「手の施しようがありません、爆発しないだけでも奇跡でしたよ...」
「レーダーや探知装置はどうだ?」
「レーダーは使い物になりません、探知装置も出力が下がり、ほとんど反応しません。」
「どのみち使えないか...銃座は使えるのか?」
「銃座は使えます、ジェネレーターが生きててくれたので問題ありません。」
「そうか、わかった。」
あまり期待はしていなかったが、酷いものだ...
簡単に説明すれば動けず喋れず目も見えないったところだ...
銃座が使えるのが不幸中の幸いといったところか、だが弾は無限じゃない。
「本国はすでに動いているのでしょうか?」
「わからん、だが通信が途切れたのだ、おそらく動いているだろう。」
「だと良いですけど...」
「回収艇が来るかもしれん、救難信号を出しておけ、それと誰か1人木の上に待機させろ。」
「了解...」
我々だけがこの世界に取り残された...そう考えれば普段戦闘訓練に明け暮れている兵士でさえここまで士気が下がるのだ、何か事の進展があればいいのだが...
そう考えていると。
「隊長、本国から電文です!」
「何!? 通信機は死んだはずじゃなかったのか!?」
「死んだのは送信機能だけだったようで、受信機能は無事でした。」
「それで受信できたのか...それで、内容は?」
「はい、『実験機、全搭乗員回収のため、L型カーゴシップを送る、待機されたし』とのことです。」
「よし、そうか!!」
助けが来ることを知るや否や、部下たちに聞こえるように言った
「全員そのまま聞け、我々を回収するために本国が回収部隊を派遣するとの通信があった。到着時刻は不明だが助けが来る、回収部隊を待つため、我々は現状のまま待機する!!」
その報告を聞いて部下たちの表情に希望が戻った。
だがここで新たな疑問が浮かんだ、ここで待機している間、何も起こらないとは限らないからだ。
「・・・全員に武装装備を命じろ。」
「どうしました?」
「いや、都市が存在する世界で墜落した我々を気に留めない輩がいると思うか?」
「それは、つまり...」
「推測が正しければどこかの勢力の偵察部隊と接触するかもしれない、ということだ。」
「了解しました。」
通信で全員に武装装備を命じた、すると部下たちは機体の中に入り、少しして武装をして出てきた。
「隊長」
「なんだ?」
「先ほどの偵察部隊とは、敵、ですか?」
「わからん、だが万が一の...」
事態を想定して。そう言おうとした時だった。
パキンッ!
「!?」
茂みから何かが割れる音がした、全員がその音のしたであろう方向に銃を向けた。
〜鳥墜落現場〜
黒煙の発生源に来るとそこには黒い鳥が右羽から黒煙を吐いて鎮座していた。
それだけではない、その周りに20人ほどの人影がいて、1人が指示を出しほかの者たちがそれに従っているような感じだった。
見つかってはなるまいと、ノーマ達3人は近くの茂みに身を隠し彼らの様子を窺いつつ彼らには聞こえない音量で会話をしていた。
「何だあいつらは、教団の連中か?」
「いや、教団とは様子が違う。別の組織の可能性もある。」
「でも妙な服装ですねー、鎧にしては薄いし服にしてはでこぼこしてるし、顔にも兜みたいなのを被ってて顔が見えませんし」
彼らの服装は、上はところどころにポケットがいた長袖の黒い防弾チョッキ、下は上と同じようにポケットのついた防弾性の黒い長ズボンに機動性を重視した黒いブーツ、そして顔を覆うほどのフルフェイスのバイザー。
彼女たちには見慣れない服装であるのは仕方のないことだった。
「だが、あいつらが鳥に乗っていたとしたら目的は何だ?」
「というかあいつら人間か?精の匂いが全然しねぇ。」
「狙撃します?」
「戦ってどうする馬鹿者。」
「だって剣や弓矢の類持ってませんし...」
「あの人数相手じゃ勝てるかどうかわからないだろ。」
交戦を提案するテュールをノーマとメリッサが諭す。
「何を話しているのかが分かればいいのだが...」
「それじゃ向こうの茂みに移動しないかい?少しは距離が縮まるぜ?」
彼らの会話内容を聞きたいノーマにメリッサが右前方の茂みを指さして提案する。
「あの茂みに移動する、私についてこい。」
「りょーかい」
「はーい」
ノーマを先頭に移動を開始したその時。
パキンッ!
「「「!!?」」」
運悪く落ちていた小枝を踏んで折ってしまったようだ。
その音に彼らも気づき手に持っている杖のような物をこっちに向けた。
(不味い、どうする!? このまま逃げるか!? いや、逃げたところでこいつ等が追ってこないとも限らない!)
(かなりやばいよこれは...逃がしてくれそうにもないねぇ...)
(今のわかるの!? 何こいつら耳どうなってんの!?)
3人が困惑していると
「茂みに身をひそめるものに次ぐ、おとなしく出てこい! そうすれば命までは取らない!」
彼らが降伏勧告をしてきた、投降すれば命は取らないという典型的なものだ。
(どうする? あいつらの言葉を信じられるか? いや、初めから殺す気で来るならば私たちはもう死んでいるはず...いや、罠かもしれない...はめる理由がない...)
だがこのときノーマは焦っていた、今この瞬間の自分の選択に部下2人の命がかかっているのだからそれもそのはずである。
「どうすんのさ、ノーマ隊長...あたしは従うぜ。」
「私もです隊長、覚悟はできてます。」
(私は...)
〜実験機不時着現場〜
(さて...)
茂みに潜む何者かに対して警告はした、あとは言葉が通じていることと我々の言うことを信じてくれるのを祈るだけだ。
(頼む、出てきてくれよ...)
彼がそう願っていると
ガサガサ...
草をかき分ける音とともに3つの人影が出てきた。
1人は鎧を着こみ剣を持っている。
1人は褐色肌が特徴的で、軽装、1人目と同じように剣を持っている。
1人は白肌に金の髪、弓矢を持っている。
(これがニンゲンか? いや違うな、3人とも耳が長い...)
自分たちに忍び寄っていた人物を目の当たりにしながらも冷静にそう判断した。
何から聞こうかと迷っていると、先に向こうから口を開いた。
「本当に命までは取らないのだな?」
「ん? あぁ、我々の目的は目撃者の殲滅ではないからな。」
「ならば何故我々に降伏を促した?」
「こちらもいろいろと聞きたいことがあるからだ。」
「答えられることなら答えよう、その代わりこちらも聞きたいことがある。」
「いいだろう、ならば質問は交互にするというのはどうだ?」
(向こうの発した一言からあっという間にお互い情報交換をできる状態まで来てしまった、流れとは恐ろしいものだ。)
「だが、その前にその杖を下ろしてもらおうか?」
「おっと、これは失礼した。」
部下に銃を下ろすように合図する。
全員が銃を下ろし終えたところで1つ目の質問。
「まず1つ目、君たちは何者だ?」
「我々は、この森のすぐ南にある町の部隊の者だ、お前たちのその鳥が落ちてきたので調査をしに来た。後ろの2人は私の部下だ。」
「人間ではなさそうだが?」
「ああ、我々は魔物と言われる種族だ。」
ノーマはハキハキと答える。
「次はこちらの番だな、お前たちは何者なんだ?」
(我々と同じ質問か、まぁあたりまえだろう)
「我々は...異世界においてその世界の支配者を名乗っているものだ。」
「この世界でいう人間のようなものか?」
「それに近い何か、といった方が正しい。」
隊長も答える
(人間に近い何か?何者なんだ...)
「2つ目の質問だ、君たちは3人とも見た目が若干異なるが、種族は異なるものなのか?」
「そうだ、種族名でいうならば私はデュラハンだ、後ろに2人はアマゾネスとエルフだ。」
「いくつもの種族が共存している、ということかな?」
「そうだ。」
(いくつもの種族が共存か...中々興味の引かれる御方々だ...)
「次は私だな、お前たちの乗ってきた鳥のようなものは何なのだ?」
「これか? これは...実験機、そう聞かされている。」
「ジッケンキ? 実験ということは何かを試しているのか?」
「あぁ、異世界における強行上空偵察を目的に作られているとかなんとか...詳しいことはわからん。」
「そうか...」
(異世界から来たということで間違いなさそうだな...)
「3つ目の質問だ、十字を掲げている連中との関係は?」
「十字...教団の事か?」
「教団? 宗教組織か何かか?」
「我々魔物を一方的に敵視している連中だ、我々は共存を望んでいるというのに...」
「なるほど...」
(一方的に敵視か...まるで『奴ら』だな)
「今度はこっちだ、お前たちの目的は何だ?」
「目的...か、それはな」
彼がそう答えようとしたとき、突然陽の光が遮られた。
何かと思い上を見ると巨大な箱をぶら下げた何かがそこにあった。
(な、何だ! あれは!?)
テュールもメリッサも驚いていた。
困惑している彼女たちをよそに彼らは。
「カーゴシップ! 助けが来たぞ!!」
どうやらあれはカーゴシップと呼ばれる物らしい、私たちがその場で呆けているとカーゴシップにつりさげられた箱が開き黒い鳥...実験機に光を浴びせた。
すると、実験機が浮かび上がり箱の中に吸い込まれるように少しずつ上昇していく。
「実験機を回収するのか! 全員機体に掴まれ、置いてかれるぞ!!」
隊長格の彼がそう叫ぶ、すると部下たちは次々に実験機に飛び乗った。
そこで我に返り隊長格に叫ぶ。
「待て! 最後の質問に答えてないぞ、お前たちの目的は何だ!!」
「それはいずれ分かる、その時に答えよう。さらばだ諸君!またいずれどこかで会おう!!」
そう言い終えた直後に箱が閉じ彼らは飛び去ってしまった。
私たちはそれを見ていることしかできなかった。
「結局何が目的だったんですかねあいつら?」
「だけど『またいずれ』ってまたこの世界に来るってことかな...」
「恐らくな、だが...」
ふと地面に目をやると実験機の破片のようなものが転がっていた。
ノーマはそれを拾い上げ、彼らが去った方角を見て。
「敵でないことを願おう。」
そう言った。
〜カーゴシップ内〜
『ゴースト・アイ諸君ご苦労だった、帰還途中で済まないが次の作戦についてなんだが...。』
「早速か、少しは休ませてほしいものなんですがね。」
『そういうな、次の作戦内容の説明場所は『会議室』だ。』
「おい待ってくれ、それって...」
『次の作戦説明は指導者様が行う。』
15/10/05 01:18更新 / @サイエンティスト
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