連載小説
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第1話〜異世界〜
〜とある城塞〜

......コッコッコッコッコッコッコッコ

石造りの廊下に2つの足音が響く。
廊下は暗く、一定間隔ごとに明かりが灯されているが、それでも薄暗く感じるほどだ。
その廊下2つの人影が並んで歩いている。
しばらく歩いていると

「今度は成功するでしょうか?」
「わからん、そればかりはやらねばわからんよ。」
「ですが今回も失敗したら...」
「また次を待てば良いだけの話だろう。」

不意に一人が口を開きもう1人に質問した。
質問をした方はまだ若さの残る青年の声
もう1人は何処か威厳を感じさせる低い老人の声

コッコッコッコッコッコッコッコ......

やがて、二つの人影は木製の両扉の前で止まった。
扉の上の壁には『円卓会議室』と書かれた固定されている。

ガチャ...ギィィ...

「どうぞ、中へ」
「うむ」

その扉を青年が開け、老人に声をかけた。

ギィィ...バタン...

老人が入ったのを確認すると自らも部屋に入り扉を閉めた。
2人の入った部屋には部屋ほどの大きさのあるであろう円卓とそれを囲う20ほどの椅子が置いてある。
その円卓を挟んで反対の壁には巨大な窓があり外の景色を見ることができた。
2人はその円卓の扉から向かって右側の席に並んで腰を下ろした。
ここで再び青年が口を開く。

「まだ始まらないのですか?」
「そう焦るな、まだ時間ではない。」
「ですが、あと5分足らずで始まります、だというのに...」
「5分もあれば『向こう側』も来るだろう。」
「来ますかね...」
「来る、来ない理由がないからな。」

老人の言葉に半ば納得で出来ず、ふと外の景色に目をやるが...
黒雲に覆われ陽の光が届かない空
閃光を放ち轟く雷鳴
窓に激しく打ち付ける豪雨
お世辞にもいい天気とは言えなかった。
と、その時

バタンッ!

「やぁやぁ、少々遅れてしまいましたかな?」

勢いよく扉が開けられ2つの人影が会議室に入ってきた。

「まだ始まってはいない、若造。」
「相変わらずですなぁ、それほど私がお嫌いですかな?」
「・・・・・・」

パタン...

老人に『若造』と呼ばれた人物と若造に続き会議室に入り彼の開けた扉を閉めた『若者』の2人だ。
彼らは先に来ていた2人の存在を確認すると、先に来ていた2人の向かい側の席に腰を下ろした。

「あなたは相変わらず時間ギリギリに来ますね。」
「『時間』までには来ているのですから問題はないでしょう?」
「間に合う間に合わぬの問題では...」
「でしたら何の問題だというのですかな?是非ともお答え頂きたい。」
「貴様の意識の問題だ、と言ったらどうする?」

青年と若造の口論に老人が割って入る

「フフフ、どうしても私に非がある。と言いたげな意見ですなぁ。」
「それでは訂正しよう、貴様のその態度が気に食わんとな...!」
「ほぉ? 言ってくれるじゃあないですか、何なら今すぐここで決着をつけて差し上げましょうか?」

口論から武力衝突に発展しかけたその時

「ククク...威勢の良いことは喜ばしいが、ここで決着と付ける程の事でも無かろう?」
「「「「!?」」」」

円卓の窓の壁を背にした円卓の中央の席から声がした。
そこには黒いボロ布を纏い、漆黒の鎧を身に着け、その顔には鉄仮面を被った人物が座っていた。
その人物の登場に口論をしていた3人は静まり会議室には沈黙が流れた。

「指導者様、いつからそこに...」
「初めからだ...貴様らがくだらない言い争いを始める前からな」
「御見苦しい所を...」
「いやいや、中々愉快なものだったぞ?」
「指導者様、先ほどの発言ですが」
「あの程度は耳には入らぬが...貴様に『忠誠心』とやらがあるのならば少し態度は正した方がいいのではないか?」
「・・・・・・」
「貴様は相変わらず無口だな...喋れないのか? それとも喋るのが嫌いか?」

再び沈黙が訪れ、『指導者』が再び口を開く

「さて...今宵、諸君らに集まってもらったのはほかでもない、我々の大いなる前進の証人となってもらうためであることは承知しているな?」

指導者が4人を見渡す

「ですが指導者様、あの実験は幾度となく失敗しております。今回が成功するとはとても思えません...」
「私も全く同意見ですなぁ、失敗した実験を何度も試みるのは得策とは言い難いと思いますが?」

青年の反論に若造が続いた。

「そうか、ならば聞こう...一体何処の誰が次も失敗すると決めつけたのだ?貴様らには失敗するとわかるのか?」
「「・・・・・・」」

指導者の質問に二人は答えられ無かった。

「わかるまい、だから今回も結果を知るべく行うのだ、良いな?」
「はっ...」
「仰せのままに...」

反論してきた2人の同意を確認し、指導者は自分の席に内蔵されている端末を操作した、すると会議室の中心あたりが直径2メートル、高さ50センチほどにせり上がり台座のようになりその台座をちょうど円卓で囲うような形になった。
指導者が台座が完成したことを確認すると再び端末を操作した。
すると台座の上面が光り、防護服を着た研究員らしき人物のホログラムが映し出された。

「会議室より実験場、進行状況を報告せよ」
『こちら実験場、現在実験フェーズ3へシフト中、問題なく実行中です。』
「搭乗員への指示はどうなっている?」
『すでに出しました、先ほど全員の搭乗を確認しました。』
「それで、あとどれほどで実験を開始できるか?」
『指示があれば直ぐにでも開始が可能です。』
「よろしい、『ゲート』を開けろ。」
『了解しました。』

ゲートの開放指示を出し、指導者は再び4人に向き直る。

「諸君、待ちに待った時だ。」

〜実験場〜

実験場と呼ばれた施設内には大量に機材が置いてある。
その機材のすべてがパイプやコードで繋がれ、そのすべてが1つの装置に集中していた。
直径30メートルはあるであろう巨大な輪っかを6つの柱のようなもので支えている形をした装置。『ゲート発生装置』 研究員たちはそう呼んでいる。
その発生装置と対峙するように約50メートルほど離れた場所に黒い戦闘機のような機体が待機していた、これが『実験機』と呼ばれる特別生産された高機動偵察機、搭乗者数18名、搭乗者たちに与えられたコードネームは『ゴースト・アイ』
役割はゲート開放後に飛び込み偵察活動を行うこと...
ゲートの開放が指示されると同時に研究員たちはせわしなく動き回る。

「ジェネレーター始動!」
「ジェネレーター出力安定、エネルギー抽送開始!」
「『ゲート発生装置』へのエネルギー充填確認、30%、40%、増加中!」
「起動準備完了、ゲート発生装置起動!」


ある者は端末を操作し、ある者は数値を報告し、ある者は発生装置を起動させ
そしてついに...

「反重力場の生成確認、ゲートが開きます!」

発生装置がバチッバチッと紫電と閃光を放ち輪っかの中心で黒いもやのようなものが生成される、そのもやが輪の内側を向こう側が見えなくなるほど覆う。
紫電と閃光が次第に弱くなり収まると中心から黒いもやが晴れていき一面青の景色が現れた、おそらく『空』だろう。

「ゲートが開いた!実験機突入せよ!」
「了解した、こちらゴースト・アイ・リーダー、作戦を開始する。」

研究員から出された指示に実験機の搭乗部隊の隊長が答える。

「ジェネレーターを起動、出力安定後垂直離陸。」
「了解ジェネレーター起動、出力・・・安定確認、垂直離陸開始。」

ヒュオオオォォォォォォォォォォォォン...............

隊長が指示を出しパイロットが操作し機体がその場で5メートルほど浮く。

「ゲートに向けて微速前進、ナビゲートシステムに従え。」
「了解」

機体が少しずつ前進しゲートに接近する。

ピピピッピピピッ!ピピピッピピピツ!

距離30メートル地点でナビゲートシステムからアラームが鳴り
『機体軸同調』の表示が出る。

「よし、加速しゲートに突っ込め!」
「了解、突っ込みます!」

ヒィィィィィィィ......ヒュゴオオオォォォォォ!!!

隊長の指示とともに加速しゲートの中に突入する。

〜会議室〜

実験機突入直後、指導者と研究員の交信は再開された。

「結果はどうなった、報告せよ」
『実験機はゲートへの突入に成功しました。』
「第一次段階は無事終了か...実験機から報告は?」
『まだ入っておりません、もうしばらくお待ちください。』
「うむ、今回こそは...」

突入成功の報告を聞き安心からか、指導者は独り言を漏らした。
そのようすを4人は黙って見守っていた。


〜ゲート接続世界〜

実験機と搭乗員ことゴースト・アイは異世界の空を飛んでいた。

「各電子系統、及び各システムに異常がないかチェックしろ。」
「現在スキャナーにかけています、しばしお待ちを。」

ゲートを越えた直後にすることは機体に異常がないかを確認することだ。
コックピットに座る隊長とパイロットは協力し手際よく作業を進める。

「各システム、電子系統、機体各所に異常は見られません。」
「そうか、今回は何もなかったか。」
「ええ...それより、空が青いですね、それに雲も白い。」
「あぁ、我々のとは違う穏やかな世界だな。」

彼らの世界と比べようがないほど穏やかな空に2人は感嘆の声を漏らす。
だが彼らは任務を忘れたわけではない。

「ゴースト・アイ全員に次ぐ、平和な空に見とれている場合じゃないぞ。
我々の任務を果たすぞ。」
『了解!!』

隊長の命令に全員が同時に返事をした。

しばらく飛ぶと眼下に町が見えた。周りは石の壁に囲われ、町の中心に城がある町田。この実験機は高度10キロメートル地点を飛行しているため、町からは見えることはないだろう。
隊長はここで部下に指示を出す。

「本機直下に都市を確認、距離はあるがステルスシステム起動」
「ステルス起動!」

ステルスシステム
実験機に搭載されているシステム、作動すると機体表面にステルス迷彩が作動し、更に飛行時に伴う飛行音を減らし、敵から発見されにくくなるシステムである。

システムが完全に作動した直後に町上空に差し掛かった

「都市上空を通過、旋回します。」
「周辺に巨大な金属反応は?」
「ありません、地上にある構造物のほとんどは石造りです。」
「ここにはないか...偵察地点を移動する、進路を北東へ。」
「進路北東了解。」

ここには目的のものはない、そう考えた隊長の命令により実験機は北東を目指す。しばらく飛び、地上の風景も変わってきたところで再び町が見えてきた。
先ほどと同じように石の壁に囲われ、町の中心に立っている城が目立つ。だがその街には『十字の旗』が掲げられており、その大きさは先ほどの町より何倍もあり、城も壁も固く大きい。

「さっきよりも巨大な都市だな...ここには何か手掛かりがあるかもしれん、各員周辺警戒を怠るな。」
「隊長、この町十字架の旗を掲げてます、何かしでかしたのでしょうか?」
「わからん、だが今は偵察に集中しろ」

彼らにとって十字架は罪に対する懺悔、罪人の証として認識されている。

「隊長センサーに金属反応です!」
「見間違いじゃないのか?」
「ですが、ほかの構造物とは違い、純金属性ですが...」
「何!?こっちに映像を回せ!」

隊員の一人から報告を受け隊長が映像を確認する。
映像に移されていたのは、町の中心部、城に近い場所にある金属物質で出来ているであろう箱のような建物、だが隊長が目を見張ったのはその建物自体ではなくその建物に掲げられている旗だった。
旗は2つ掲げられており、1つは先ほどの十字の旗そしてもう一つは
旗の下半分には100本ほどの縦線が並びその上に十字架をあしらった王冠が乗っているという変わった旗だった、だが隊長はその旗を見た瞬間

「本国に連絡しろ!『我らが求めたものはこの世界にあり』と!!」
「了解!!」

〜会議室〜

『指導者様、実験機からの報告が入りました。』

突然ホログラムが起動し研究員が現れそう言い放った。

「何と言っている?」
『はっ、実験機から電文が届きました。
 『我らが求めたものはこの世界にあり』
という内容です。』

その言葉を聞いた瞬間、指導者は目を見開いた。
黙り込んでいた4人もそれぞれ反応を示していた。
老人は薄ら笑みを浮かべ。
青年は歓喜に満ちた表情をし。
若造は「ほぉ」と声を漏らし。
青年は目を丸くしている。

「彼らに伝えよ、貴様らの功績は我らが歴史の果てまで語り継がれる偉業だとな」
『はっ、それでは...何...?本当かそれは!?』
「何があった?報告せよ」
『実験機が何者かに攻撃を受け通信不能との報告が入りました...!』

〜ゲート接続世界〜

実験機とゴースト・アイの隊員たちは撤退の航路についていた。
任務を終えあとは帰還するだけだ。
だが...

「未確認機本機の後ろにくっついて離れません!!」
「銃座手、敵は何だ!攻撃は当たったか!?」
「わかりません!早くて攻撃が当たりません!」

未確認機の追撃に遭ったいた...

バララララララララララ!!

機体の各所に取り付けられた銃座を使い銃座手が応戦するが一発も当たらない、そうこうしているうちに敵が機体に取り付いた、そして

バシュン!!

おもむろに右腕を右スラスターに向けたかと思ったら青い光弾が放たれスラスターが撃ち抜かれた。

「右スラスター撃ち抜かれました!!」
「なっ...!」

ここでスラスター失えば彼らの帰還は確率は絶望的だったのだ。

「この野郎!!」

キュイィーン...バララララララララララ!!

銃座手の1人がが敵に攻撃を集中した、弾は敵にあたると火花を上げた。
敵は連続して当たる弾丸の集中砲火に耐えられなかったのか、弾丸に押されるように吹き飛んだ。
だが新たな問題が起こった...

「制御不能です!墜落します!!」
「くそ...!全員対ショック姿勢!何かに掴まれ!!」

撃ち抜かれたスラスターから煙を吹き、減速もほとんどせず、実験機と彼らは森に不時着した...

〜会議室〜

「・・・・・・諸君」

実験機の通信不能報告を聞いてから言葉を失っていた指導者が声を発した。

「ゲートの向こう側に赴き、行方不明となった彼らを捜索、発見し実験機とともに回収しろ!!なお、救出部隊は貴様らの直轄から編成せよ!!」

怒号にも似た声で命令を下した、その命令に4人は

「御意!」「はっ!」「仰せのままに!」「・・・・・・」

膝をつき肯定した。
15/09/22 05:05更新 / @サイエンティスト
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■作者メッセージ
初めまして、@サイエンティストと申します。
人生初小説で初連載で今更ながら大丈夫かと思っております。
第1話が詰め込みすぎてしまい恐ろしく長くなってしまいました...
申し訳ございません...(約5700字)
次からは魔物娘を登場させますので何卒よろしくお願いいたします。

P.S.作者は精神的防御力が豆腐以下なので温かい目で見守っていただければ幸いです。

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