後ろの二人
僕とナルはクラスでは「後ろの二人」なんて呼ばれてる。理由は単純な事で、何度席替えしても僕らが必ず一番後ろの列になるからだ。あんまりに何度も二人が同じ列になるものだから、周りは「恋人同士」と認定している。
実際、僕とナルは恋人同士だ。恋人になった理由は、周りが色々と推したということもあるけど、僕らはそれ以外でもピッタリと合ったからだ。二人ともクラスではいつも後ろの列になる以外はほとんど目立たない、あまり騒いだりせず大人しくしている、地味な存在なのだ。
僕の容姿は、取り立てて美男ではない、ごくありふれた男子のそれだ。体格も真ん中ぐらいで体育はさほどできない。勉強も赤点は取らず、日本史と美術がそこそこ良い程度だ。さらに僕は喋るのは少々苦手で、休みの時はもっぱら図書室に行ってるか、教室にある文庫本を読んでるかのいずれかだ。だから必然的に活発で社交的な友達は少ない(男友達はいるにはいる)。でも僕は脚光を浴びるような事はあまりしたくない性分だから構わない。だからずっと目立たないわけである。
一方のナルはすごく小柄で、位置と合わさって先生が出席を取る際、少し手間がかかったりする。顔は、ハッキリ言ってかわいい方だ。しかし、それでも周りの女子と比べると豪華な庭園にポツンと紛れ込んだコスモスみたいなもので、慎ましい雰囲気だ。しかも髪は短くしており、その割りに前髪がよく伸びてることが慎ましさに拍車をかけている。ついでに趣味は読書、しかも中島敦とか、古い格調高いものを好んで読んでる。だから周りの女子の話題に合わせられることはほとんどできない(十代女子が「山月記」の話で盛り上がるだろうか)。何より彼女は女子、というか、魔物娘にしては恥ずかしがり屋で控えめな性格であること大きい。しかも、ナイトメアとかではなくサキュバスなのだ。多分だが、種族の中でもこういう子は珍しいだろう。それ故、彼女も休み時間はもっぱら読書に費やされる。
そんな訳で、僕らがくっつくのは、まあ至極当然だった。教室で、しかもいつも同じ列で、図書室でもよく会う、となるとお互い気になるわけで、ちょっとずつ距離が近くなって行き、肌を重ねる仲になったということとである。
そう、僕らは普通にそういうことのできる仲だ。控えめと言えど彼女はサキュバスな訳で、恋仲になったその日の夜に食べられたのだ。
さて、今日も授業が終わった。ある人は授業の厳しさと宿題の量の愚痴を大声でもらし、ある人はカラオケでなに歌おうか相談し、またある人はすでに恋人と甘い空気を漂わせている。僕とナルはそんな中、静かにそそくさと教室を出て、まっすぐに校門に向かった。途中で部活動と生殖活動の声が聞こえた。
校門を抜けた所でナルが口を開いた。
「今日はどうしよっか」
僕はちょっと考える。
「今日でた数学の宿題、大変そうだから一緒にやる?」
「うん」
彼女はこくんと頷いた。
「……かっくんの所でする?」
かっくん、は僕の事だ。
「いいよ」
「やたっ♪」
小さな彼女が小さく跳ねた。彼女の尻尾も腰あたりに生える羽も嬉しそうに動いてた。
僕は寮で一人暮らしをしている。普通、寮というものは女の子を連れ込むの禁止だが、僕の高校は女子がほぼ全員魔物娘なので、学校の生徒ならば連れ込んでなにしても大丈夫ってことになってる。実におおらかだ。ちなみにナルはナルで別の寮で暮らしてる。
かちゃりと鍵を開け、部屋に入る。
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
「どうぞー」
これはいつもやってるやり取りだ。最初にふざけて僕が「どうぞ」と言ったところ、ナルがクスリと笑って面白がって以来習慣化してる。
僕はまず冷蔵庫に向かった。
「何か飲む?」
「うーん……ジュース、あるかな?」
「レモネードあるけど」
「ん、それで」
僕が飲み物を持ってきたら、彼女はすでに一緒に宿題する準備を済ませてた。
「気が早くない?」
「えと、早くにしといた方が、いいかなって」
「ちょっとは休んだら?」
「でもそうしてたら…さ」
「あー……」
前髪から見える、彼女の目を見て、言わんとしてることを理解した。
「それじゃ、飲んだら始めますか」
「……ごめんね」
「いや、いいよ、早めに済ませた方がいいしね」
別に謝ることはないけど、謝ってしまうのもナルを可愛いと思える理由だったりする。
そこから、僕らは着替えもせずに宿題に取り掛かった。本当にただただ宿題するだけ。でも、お互いそばにいるだけで嬉しいのだ。
「うーん……」
ナルがちょっと詰まったらしい。
「どしたの?」
「ここ……どうしたらいいか、わかんなくて」
見ると先程僕が解いたばかりの問題だった。
「あー、ここはこう、微分して…ここはこういう風に…ここまでいったらもう基本の部分で解けるから」
「ん、ありがとう♪」
そう言って彼女は笑顔を見せた。普段の学校では見せないような、飛び切りの笑顔。それもまた、サキュバスらしからぬ、無垢なものだ。それを見て僕も思わず頬がほころんだ。
その後もお互い協力しながら、宿題を進めた。途中でファミレスの出前を取って夕食を済ませ、だいたい9時ぐらいになった時だ。
「ここは……こう……で、ここは……」
「あ、うん、もう大丈夫かな……うし、できた!!」
「かっくんおつかれさまー」
「ナルもおつかれー」
そう言って僕らは互いにぺこりと頭を下げた。
「今回はナルが先に終えたかー」
「てへへ……」
宿題をする時は互いに協力しつつもちょっとしたレースみたくする。それで、先に終えた方がもう一方になんでもお願いできるのだ。
「んで、どうするの?」
「そうだね……んと……」
ナルが考えてると、急にもじもじし始め、顔が赤くなって行った。
「ん?どした?」
「んとね……ちょっと謝りたいなって」
「え?」
その時、だんだんと甘い香りがしてきた。
「ちょっと……我慢できなくて、その……かっくんがトイレ行ってる間に少しいじって……その手で触っちゃって……許してくれるかな?」
「……」
確かにちょっとこっちをチラチラ見てると思ったらそういうことだったか。別に、謝らなくてもいいのに。男と同じ部屋で二人きり入るのに、我慢できるサキュバスなんてまずいないのだ。
「うん、ナルが勝ったしね。それに全然大丈夫だから」
「んふふ、ありがとう」
また彼女が屈託のない笑顔を浮かべる。でも顔は赤いままで、息もちょっと深くなっている。甘い香りが強くなった、そろそろ、か。
「……じゃ、今夜もしようか」
「ん……」
彼女はサキュバス。これはしょうがないことなのだ。お腹が空いたり眠くなったりするのとなんら変わらない。
「風呂はどうしよう? なんなら入りながらする?」
「んー……お互い綺麗になってからベッドで、かな」
「ん、わかった」
そう言って僕は浴室に向かった。
風呂から上がり、僕は裸で布団にくるまりながら彼女を待っていた。裸でいるにはやはり肌寒いのだ。すると浴室の扉が開いた音がした。
「……お待たせ♪」
ナルが産まれたままの姿で部屋に来た。肌はまだ上気しており、ほんのり湯気が出てる。
顔は笑顔だが、目尻を下げて微笑んだ表情は何時もの愛らしさよりも、色っぽさが漂っていた。そして服のしたに隠れていた彼女の肢体は、例え小柄であっても、やはり男性を欲情させるそれだ。いかにも弾力のありそうな肌、大きくも美しく形の整った胸、小ぶりでもハリのある尻、かぶりつきたくなるその身体は何度見ても息を飲んでしまう。そして彼女の秘部からすでに粘性のある液体がぽた、ぽた、と感覚を開けて滴っていた。
「……興奮してる?」
「……うん」
さっきまで、彼女の方が赤かったが、今は僕の方が赤くなっているだろう。そして僕の陰茎はすでに硬くなり、上を向いていた。
甘い香り……サキュバスの、人の心を蝕む香りが近づいてくる。彼女の尻尾も羽も、心なしか艶やかだ。
「かっくん……」
「ん……」
「いただきます♥︎」
そう言ってナルは僕を押し倒し、上に乗っかった。彼女はこうして上になるのが好きだ、小柄でいつも見上げてばかりだから。そして僕の顔を両手で持ちながら口づけした。
ちゅ、ちゅぷ、くちゅ……
「ん……♥︎んふ……♥︎ぷあ……♥︎」
僕の唇を奪うとほぼ同時に彼女は舌を絡ませた。僕は抵抗せずにそれを受け入れる。唇をハムハムと動かし、彼女は僕の口内をクチュクチュと弄ぶ。器用に僕の舌を外に引っ張り出すと、それを咥えてフェラみたいに出し入れし、一番深く咥え込むとまた自分の舌と絡ませた。既に彼女の顔は、快楽に狂う淫魔のものになっていた。彼女がまたがっている部分が、粘っこい液体に濡れていった。
そのうち自然と彼女の背中を抱いていた腕が動き、僕の胸に押し付けられた乳房に触れた。
「ん……」
そのまま僕は彼女の胸を両手でいじり始める。最初は優しく、段々激しく。親指でピンと勃った彼女の乳首に触れつつ、柔らかくも弾力のある乳房の感触を楽しむ。
「や……♥︎はぁ……♥︎」
それに反応してナルが口を離す。舌と舌の間で唾液の橋ができた。その瞬間に、僕は彼女を抱き寄せて、彼女の右の乳首に口付けた。
「やああっ……んん……んーっ♥︎」
彼女がビクビクと震えた。欲情する彼女を僕は責めたて、嬌声をあげさせる。
「ひう……♥︎か、かっくん……♥︎手、だひて……♥︎」
不意に彼女が変わったことを要求した。言われるがままに僕は左手を彼女に差し出すと、彼女はそれを手に取り、人差し指を舐めた。
「うあ……」
「んふふ……♥︎」
僕の反応を見ると、ナルは微笑み、そのまま僕の人差し指を咥えてねぶり始めた。僕も負けじと彼女を舐め、右手を彼女の恥部に寄せた。
「んく……んんっ♥︎」
既に彼女の陰唇はトロトロになってて、指でいじると愛液が染み出してるのがわかった。そしてお互いに身体を楽しむのを続けた。僕は口で彼女の乳房を、右手で彼女の恥部を味わい、彼女は僕の左手人差し指を舐め回す。
「はっ……♥︎かっくん、次……」
「ん……」
そう言ってお互いの行為を止めると、ナルは僕の身体中を啄ばむように口付けながら、僕の下半身の方に移動する。僕のすっかり勃ちきった陰茎に、彼女は顔を寄せた。
「いい匂い……♥︎んむ……」
「うあっ……」
彼女に亀頭を舐められて、僕はたまらず声を漏らした。その反応を見て彼女は嬉しそうに、淫靡に微笑む。そして彼女は僕の陰茎をアイスのように舐め回し始めた。粘っこくなめられるたびに、僕は快楽でのたうった。彼女はそんな僕に構うことなく、鈴口をチロチロと舐める。
「それじゃ……はむっ♥︎」
とうとう彼女は僕の陰茎を咥えて、フェラを始める。サキュバスの口内はまるで拷問のように僕を狂わせる。
「あう……あ、ああ……」
「ぷあ……はふ……♥︎ひもひいい?」
僕のを咥えながら彼女は話しかける。その間も口で犯し続けるから、呻きながらうなづくしかできない。それを見て彼女はペースを早める。段々と陰茎の中で何かが登ってくるのを感じた。
「むう♥︎んく♥︎だひて、いっひゃいだひて、あっうん♥︎」
もう、限界だ。
「あひ、あ 、出るっ、ナル、出るっ!!」
「んっ♥︎んーーっ♥︎うむ♥︎んんー♥︎んーーーっ♥︎」
陰茎がビクビクと彼女の口の中で爆ぜ、精液を彼女の口内に撒き散らした。ナルは動く僕のを一切離さず、嬌声を上げながら全て受け止める。
ひとしきり精を吐き出すと、彼女は精液を口に含んだまま慎重に僕の陰茎から口から離した。
そしてそのまま僕の目の前までにじり寄ると、彼女は口を大きく開けた。
「うわ……」
彼女の口の中は、僕の精液と彼女の唾液が混ざりあい、白い沼のようになっていた。あまりに淫靡で、僕は生唾を飲み、陰茎がピクリと跳ねた。僕の反応を見た後、彼女はぐちゅぐちゅと精液を攪拌すると、それをゴクリと飲み込み、少し横に垂れた分を舌で舐めとった。再び僕に口の中を見せると綺麗になくなっていた。
「美味しかったよ……♥︎」
「どうも……」
「くす……次はこっちだね♥︎」
ナルが半身を起こし、膝立ちになると、彼女の割れ目が僕の陰茎に重なった位置にあった。既に愛液が割れ目から糸を引いていた。そこに彼女が二本の指を押し当て、恥丘を押し広げた。その瞬間に溜まっていた愛液がこぼれ落ち、陰茎にかかった。甘い匂いが更に広がった。彼女は態勢を変えて、割れ目を鈴口に付けた。それだけでも電気が走る。
「んしょ……大丈夫、かな……?」
「う……ん、大丈夫」
「じゃ、いくね♥︎」
それで、僕のは彼女の中に入っていった。彼女が嬌声を上げながら腰を沈めていく度に、彼女の膣が蠢き、僕の陰茎を奥に奥に取り込んで行く。
「んんっ……♥︎あっ……♥︎奥まで、入った……♥︎」
「こっちも全部……」
僕とナルは完全に繋がった。彼女の膣内はトロトロとしてて暖かく、ゆっくりと収縮を繰り返し、襞が絡みついてくる。
「ん……かっくん、凄く気持ち良さそう♥︎」
上から僕を見下ろす彼女の目も、快楽にとろけていた。彼女は動かずに膣内だけ動かして、僕の感触を楽しんでいた。僕は我慢するのに精一杯で、既に結合部からトロリとした液がジワジワと広がってきていた。
「……動くね♥︎」
僕の声を待たずに、ナルは腰を動かし始めた。
深く呼吸をしながら、ゆっくりと上下させ、子宮口に陰茎をノックさせる。その度にきゅっと締まるから、僕もその度に反応してしまう。それが呼び水となって、彼女の興奮が増していき、段々と激しくなって行く。愛液はとめどなく溢れて、じゅぶじゅぶと音をたてる。
「かっくんっ♥︎」
「んっ!!?」
たまらなくなったのだろう、ナルは覆いかぶさって僕の唇に吸いついた。腰を激しく動かしながら、最初のキスよりも貪欲に僕を蹂躙する。
「ふむ……ぷあ……あんっ♥︎」
僕の胸の上で動く、彼女の乳房を捕まえ、こねくりまわす。それと同時に僕は腰を跳ね上げ、彼女を思い切りつく。奥に挿れるとぎゅっと締め付け、引き抜く時は襞が絡みつく。口で、膣で、腕で、体全体で僕を抱きしめる。それはとても淫靡だけど、とても愛らしくって。
「ん……♥︎ふうっ♥︎んんっ♥︎」
僕も彼女も嬌声を上げるだけでろくに喋られない。でも、愛してる人と繋がって感じてることがとても嬉しい。
彼女の目に涙が溜まって行き、段々と余裕がなくなっている……僕も、もうすぐだ。
「ぷあっ……♥︎はあっ♥︎かっくんっ♥︎いく♥︎いっちゃう♥︎」
「僕も……出るっ」
「んっ♥︎いっしょに、いこ♥︎」
彼女は更に激しく動き、膣内を激しくくねらせて僕の射精を推し進める。さっきよりも、激しい、感覚が、僕の中を駆け上がり、僕を突き動かした。
「!!!♥︎ひああっ♥︎あああああん♥︎
「ふあっ!!!!くうっ!!!!」
子宮口をつきながら、僕はナルの中で爆発した。熱い精液が噴き出す度に、彼女はビクと反応し、更に僕を絞り上げる。膣をキュンと締めながら、ナルは力なく僕の上に倒れこんだ。
「はあ……♥︎かっくんの……♥︎熱い……♥︎いっぱいでてる……♥︎」
深く息する彼女はうっとりと嬉しそうに笑っていた。まだ、肉襞が陰茎に絡みつき、熱を持たせる。
「あう♥︎まだ、でるんだね……♥︎」
「貪欲だね、ナルは」
「ふふふ……♥︎」
そう言って屈託無く笑う彼女は、とてもサキュバスらしく、僕を興奮に導いて行く。
「ん……また硬くなってきた……♥︎」
「……よっと」
「ひあ……」
僕は彼女と繋がったままひっくり返る。さっきとは上下逆の態勢だ。彼女はビックリしたけど、すぐに両脚で僕を捕まえた。
「今度は僕の番だよ」
「ん……お願い♥︎」
そしてまた絶頂へと向かっていく。
「あ……っと、や、とと」
最終的に、僕は彼女の中に三回出した。流石に疲れて、僕は布団にくるまって横になったが、ナルはそばで脚を開き、人差し指全体で秘部を抑えていた。ちょっと出しすぎたみたいで、膣から零れちゃいそうだかららしい。彼女曰く、もったいないし、シーツをできるだけ汚したくないとか。
零れた液も入れて、人差し指で抑えると、彼女は深呼吸をしながらじっとしていた。
「……ん、吸収できたよ」
そう言ってナルは嬉しそうに尻尾を振りながら布団に潜り込んできた。
「いつも美味しい精、ありがとう」
「ん、美味しくて何より」
「えへへ……」
さっきの淫靡な彼女は消えていた。昼間の、少し照れ屋な少女の顔だ。
「……僕のって美味しいの?」
なんとなく、意地悪な質問をしてみた。
「……世界で一番好きな人の精が、世界で一番美味しいんだよ?」
「……」
「ってお母さんが言ってた」
「……そう」
「私はかっくんのしか知らない、でもかっくんのしか受けつけないよ」
「それを言うなら、僕も一緒だよ。僕もナルのじゃないときっといけないと思う」
「思う?」
自分の方が少し困ってしまった。
「ナルの体しか知らないから、でも僕はナルに魅了されてる、これからも、ナルしか求めないよ」
「……なんか、ごめんね」
僕が先にちょっと意地悪したのに、彼女は謝る……僕を信用してないと思ってしまったのだろう。
「いいよ、僕がちょっと変な事聞いたのが悪いからね」
「でも、本当に美味しいよ、かっくんの精。だから……」
「ん?」
「……」
急にナルがモジモジと黙ってしまった。ちょっと気になって、僕は彼女の顔を覗く。
「……これからも愛しあおうね」
「……」
「……」
ああ、もう。可愛いなあ。
「……くす」
「……あははっ」
自分でもちょっと柄じゃなかったみたいで、彼女は照れた笑いを浮かべる。前髪から覗く、彼女の目は恋に恋する少女のものだ。
大人しい読書少女の顔と淫靡極まるサキュバスの顔……二つの顔を持つ彼女は本当に素敵に可愛く艶やかだ。だから、僕は彼女を…
「……うん、ずっと愛するよ」
「……ん♥︎」
彼女が僕に抱きつき、僕の胸に顔をうずめた。
「……朝ごはんも、ね♥︎」
「……わかった」
これはちょっと苦笑い。
ーーーとあるハーピーとラミアの会話。
「ねえねえ、理想のカップルってだれ?」
「決まってるじゃん、後ろの二人でしょ?」
実際、僕とナルは恋人同士だ。恋人になった理由は、周りが色々と推したということもあるけど、僕らはそれ以外でもピッタリと合ったからだ。二人ともクラスではいつも後ろの列になる以外はほとんど目立たない、あまり騒いだりせず大人しくしている、地味な存在なのだ。
僕の容姿は、取り立てて美男ではない、ごくありふれた男子のそれだ。体格も真ん中ぐらいで体育はさほどできない。勉強も赤点は取らず、日本史と美術がそこそこ良い程度だ。さらに僕は喋るのは少々苦手で、休みの時はもっぱら図書室に行ってるか、教室にある文庫本を読んでるかのいずれかだ。だから必然的に活発で社交的な友達は少ない(男友達はいるにはいる)。でも僕は脚光を浴びるような事はあまりしたくない性分だから構わない。だからずっと目立たないわけである。
一方のナルはすごく小柄で、位置と合わさって先生が出席を取る際、少し手間がかかったりする。顔は、ハッキリ言ってかわいい方だ。しかし、それでも周りの女子と比べると豪華な庭園にポツンと紛れ込んだコスモスみたいなもので、慎ましい雰囲気だ。しかも髪は短くしており、その割りに前髪がよく伸びてることが慎ましさに拍車をかけている。ついでに趣味は読書、しかも中島敦とか、古い格調高いものを好んで読んでる。だから周りの女子の話題に合わせられることはほとんどできない(十代女子が「山月記」の話で盛り上がるだろうか)。何より彼女は女子、というか、魔物娘にしては恥ずかしがり屋で控えめな性格であること大きい。しかも、ナイトメアとかではなくサキュバスなのだ。多分だが、種族の中でもこういう子は珍しいだろう。それ故、彼女も休み時間はもっぱら読書に費やされる。
そんな訳で、僕らがくっつくのは、まあ至極当然だった。教室で、しかもいつも同じ列で、図書室でもよく会う、となるとお互い気になるわけで、ちょっとずつ距離が近くなって行き、肌を重ねる仲になったということとである。
そう、僕らは普通にそういうことのできる仲だ。控えめと言えど彼女はサキュバスな訳で、恋仲になったその日の夜に食べられたのだ。
さて、今日も授業が終わった。ある人は授業の厳しさと宿題の量の愚痴を大声でもらし、ある人はカラオケでなに歌おうか相談し、またある人はすでに恋人と甘い空気を漂わせている。僕とナルはそんな中、静かにそそくさと教室を出て、まっすぐに校門に向かった。途中で部活動と生殖活動の声が聞こえた。
校門を抜けた所でナルが口を開いた。
「今日はどうしよっか」
僕はちょっと考える。
「今日でた数学の宿題、大変そうだから一緒にやる?」
「うん」
彼女はこくんと頷いた。
「……かっくんの所でする?」
かっくん、は僕の事だ。
「いいよ」
「やたっ♪」
小さな彼女が小さく跳ねた。彼女の尻尾も腰あたりに生える羽も嬉しそうに動いてた。
僕は寮で一人暮らしをしている。普通、寮というものは女の子を連れ込むの禁止だが、僕の高校は女子がほぼ全員魔物娘なので、学校の生徒ならば連れ込んでなにしても大丈夫ってことになってる。実におおらかだ。ちなみにナルはナルで別の寮で暮らしてる。
かちゃりと鍵を開け、部屋に入る。
「ただいまー」
「おじゃましまーす」
「どうぞー」
これはいつもやってるやり取りだ。最初にふざけて僕が「どうぞ」と言ったところ、ナルがクスリと笑って面白がって以来習慣化してる。
僕はまず冷蔵庫に向かった。
「何か飲む?」
「うーん……ジュース、あるかな?」
「レモネードあるけど」
「ん、それで」
僕が飲み物を持ってきたら、彼女はすでに一緒に宿題する準備を済ませてた。
「気が早くない?」
「えと、早くにしといた方が、いいかなって」
「ちょっとは休んだら?」
「でもそうしてたら…さ」
「あー……」
前髪から見える、彼女の目を見て、言わんとしてることを理解した。
「それじゃ、飲んだら始めますか」
「……ごめんね」
「いや、いいよ、早めに済ませた方がいいしね」
別に謝ることはないけど、謝ってしまうのもナルを可愛いと思える理由だったりする。
そこから、僕らは着替えもせずに宿題に取り掛かった。本当にただただ宿題するだけ。でも、お互いそばにいるだけで嬉しいのだ。
「うーん……」
ナルがちょっと詰まったらしい。
「どしたの?」
「ここ……どうしたらいいか、わかんなくて」
見ると先程僕が解いたばかりの問題だった。
「あー、ここはこう、微分して…ここはこういう風に…ここまでいったらもう基本の部分で解けるから」
「ん、ありがとう♪」
そう言って彼女は笑顔を見せた。普段の学校では見せないような、飛び切りの笑顔。それもまた、サキュバスらしからぬ、無垢なものだ。それを見て僕も思わず頬がほころんだ。
その後もお互い協力しながら、宿題を進めた。途中でファミレスの出前を取って夕食を済ませ、だいたい9時ぐらいになった時だ。
「ここは……こう……で、ここは……」
「あ、うん、もう大丈夫かな……うし、できた!!」
「かっくんおつかれさまー」
「ナルもおつかれー」
そう言って僕らは互いにぺこりと頭を下げた。
「今回はナルが先に終えたかー」
「てへへ……」
宿題をする時は互いに協力しつつもちょっとしたレースみたくする。それで、先に終えた方がもう一方になんでもお願いできるのだ。
「んで、どうするの?」
「そうだね……んと……」
ナルが考えてると、急にもじもじし始め、顔が赤くなって行った。
「ん?どした?」
「んとね……ちょっと謝りたいなって」
「え?」
その時、だんだんと甘い香りがしてきた。
「ちょっと……我慢できなくて、その……かっくんがトイレ行ってる間に少しいじって……その手で触っちゃって……許してくれるかな?」
「……」
確かにちょっとこっちをチラチラ見てると思ったらそういうことだったか。別に、謝らなくてもいいのに。男と同じ部屋で二人きり入るのに、我慢できるサキュバスなんてまずいないのだ。
「うん、ナルが勝ったしね。それに全然大丈夫だから」
「んふふ、ありがとう」
また彼女が屈託のない笑顔を浮かべる。でも顔は赤いままで、息もちょっと深くなっている。甘い香りが強くなった、そろそろ、か。
「……じゃ、今夜もしようか」
「ん……」
彼女はサキュバス。これはしょうがないことなのだ。お腹が空いたり眠くなったりするのとなんら変わらない。
「風呂はどうしよう? なんなら入りながらする?」
「んー……お互い綺麗になってからベッドで、かな」
「ん、わかった」
そう言って僕は浴室に向かった。
風呂から上がり、僕は裸で布団にくるまりながら彼女を待っていた。裸でいるにはやはり肌寒いのだ。すると浴室の扉が開いた音がした。
「……お待たせ♪」
ナルが産まれたままの姿で部屋に来た。肌はまだ上気しており、ほんのり湯気が出てる。
顔は笑顔だが、目尻を下げて微笑んだ表情は何時もの愛らしさよりも、色っぽさが漂っていた。そして服のしたに隠れていた彼女の肢体は、例え小柄であっても、やはり男性を欲情させるそれだ。いかにも弾力のありそうな肌、大きくも美しく形の整った胸、小ぶりでもハリのある尻、かぶりつきたくなるその身体は何度見ても息を飲んでしまう。そして彼女の秘部からすでに粘性のある液体がぽた、ぽた、と感覚を開けて滴っていた。
「……興奮してる?」
「……うん」
さっきまで、彼女の方が赤かったが、今は僕の方が赤くなっているだろう。そして僕の陰茎はすでに硬くなり、上を向いていた。
甘い香り……サキュバスの、人の心を蝕む香りが近づいてくる。彼女の尻尾も羽も、心なしか艶やかだ。
「かっくん……」
「ん……」
「いただきます♥︎」
そう言ってナルは僕を押し倒し、上に乗っかった。彼女はこうして上になるのが好きだ、小柄でいつも見上げてばかりだから。そして僕の顔を両手で持ちながら口づけした。
ちゅ、ちゅぷ、くちゅ……
「ん……♥︎んふ……♥︎ぷあ……♥︎」
僕の唇を奪うとほぼ同時に彼女は舌を絡ませた。僕は抵抗せずにそれを受け入れる。唇をハムハムと動かし、彼女は僕の口内をクチュクチュと弄ぶ。器用に僕の舌を外に引っ張り出すと、それを咥えてフェラみたいに出し入れし、一番深く咥え込むとまた自分の舌と絡ませた。既に彼女の顔は、快楽に狂う淫魔のものになっていた。彼女がまたがっている部分が、粘っこい液体に濡れていった。
そのうち自然と彼女の背中を抱いていた腕が動き、僕の胸に押し付けられた乳房に触れた。
「ん……」
そのまま僕は彼女の胸を両手でいじり始める。最初は優しく、段々激しく。親指でピンと勃った彼女の乳首に触れつつ、柔らかくも弾力のある乳房の感触を楽しむ。
「や……♥︎はぁ……♥︎」
それに反応してナルが口を離す。舌と舌の間で唾液の橋ができた。その瞬間に、僕は彼女を抱き寄せて、彼女の右の乳首に口付けた。
「やああっ……んん……んーっ♥︎」
彼女がビクビクと震えた。欲情する彼女を僕は責めたて、嬌声をあげさせる。
「ひう……♥︎か、かっくん……♥︎手、だひて……♥︎」
不意に彼女が変わったことを要求した。言われるがままに僕は左手を彼女に差し出すと、彼女はそれを手に取り、人差し指を舐めた。
「うあ……」
「んふふ……♥︎」
僕の反応を見ると、ナルは微笑み、そのまま僕の人差し指を咥えてねぶり始めた。僕も負けじと彼女を舐め、右手を彼女の恥部に寄せた。
「んく……んんっ♥︎」
既に彼女の陰唇はトロトロになってて、指でいじると愛液が染み出してるのがわかった。そしてお互いに身体を楽しむのを続けた。僕は口で彼女の乳房を、右手で彼女の恥部を味わい、彼女は僕の左手人差し指を舐め回す。
「はっ……♥︎かっくん、次……」
「ん……」
そう言ってお互いの行為を止めると、ナルは僕の身体中を啄ばむように口付けながら、僕の下半身の方に移動する。僕のすっかり勃ちきった陰茎に、彼女は顔を寄せた。
「いい匂い……♥︎んむ……」
「うあっ……」
彼女に亀頭を舐められて、僕はたまらず声を漏らした。その反応を見て彼女は嬉しそうに、淫靡に微笑む。そして彼女は僕の陰茎をアイスのように舐め回し始めた。粘っこくなめられるたびに、僕は快楽でのたうった。彼女はそんな僕に構うことなく、鈴口をチロチロと舐める。
「それじゃ……はむっ♥︎」
とうとう彼女は僕の陰茎を咥えて、フェラを始める。サキュバスの口内はまるで拷問のように僕を狂わせる。
「あう……あ、ああ……」
「ぷあ……はふ……♥︎ひもひいい?」
僕のを咥えながら彼女は話しかける。その間も口で犯し続けるから、呻きながらうなづくしかできない。それを見て彼女はペースを早める。段々と陰茎の中で何かが登ってくるのを感じた。
「むう♥︎んく♥︎だひて、いっひゃいだひて、あっうん♥︎」
もう、限界だ。
「あひ、あ 、出るっ、ナル、出るっ!!」
「んっ♥︎んーーっ♥︎うむ♥︎んんー♥︎んーーーっ♥︎」
陰茎がビクビクと彼女の口の中で爆ぜ、精液を彼女の口内に撒き散らした。ナルは動く僕のを一切離さず、嬌声を上げながら全て受け止める。
ひとしきり精を吐き出すと、彼女は精液を口に含んだまま慎重に僕の陰茎から口から離した。
そしてそのまま僕の目の前までにじり寄ると、彼女は口を大きく開けた。
「うわ……」
彼女の口の中は、僕の精液と彼女の唾液が混ざりあい、白い沼のようになっていた。あまりに淫靡で、僕は生唾を飲み、陰茎がピクリと跳ねた。僕の反応を見た後、彼女はぐちゅぐちゅと精液を攪拌すると、それをゴクリと飲み込み、少し横に垂れた分を舌で舐めとった。再び僕に口の中を見せると綺麗になくなっていた。
「美味しかったよ……♥︎」
「どうも……」
「くす……次はこっちだね♥︎」
ナルが半身を起こし、膝立ちになると、彼女の割れ目が僕の陰茎に重なった位置にあった。既に愛液が割れ目から糸を引いていた。そこに彼女が二本の指を押し当て、恥丘を押し広げた。その瞬間に溜まっていた愛液がこぼれ落ち、陰茎にかかった。甘い匂いが更に広がった。彼女は態勢を変えて、割れ目を鈴口に付けた。それだけでも電気が走る。
「んしょ……大丈夫、かな……?」
「う……ん、大丈夫」
「じゃ、いくね♥︎」
それで、僕のは彼女の中に入っていった。彼女が嬌声を上げながら腰を沈めていく度に、彼女の膣が蠢き、僕の陰茎を奥に奥に取り込んで行く。
「んんっ……♥︎あっ……♥︎奥まで、入った……♥︎」
「こっちも全部……」
僕とナルは完全に繋がった。彼女の膣内はトロトロとしてて暖かく、ゆっくりと収縮を繰り返し、襞が絡みついてくる。
「ん……かっくん、凄く気持ち良さそう♥︎」
上から僕を見下ろす彼女の目も、快楽にとろけていた。彼女は動かずに膣内だけ動かして、僕の感触を楽しんでいた。僕は我慢するのに精一杯で、既に結合部からトロリとした液がジワジワと広がってきていた。
「……動くね♥︎」
僕の声を待たずに、ナルは腰を動かし始めた。
深く呼吸をしながら、ゆっくりと上下させ、子宮口に陰茎をノックさせる。その度にきゅっと締まるから、僕もその度に反応してしまう。それが呼び水となって、彼女の興奮が増していき、段々と激しくなって行く。愛液はとめどなく溢れて、じゅぶじゅぶと音をたてる。
「かっくんっ♥︎」
「んっ!!?」
たまらなくなったのだろう、ナルは覆いかぶさって僕の唇に吸いついた。腰を激しく動かしながら、最初のキスよりも貪欲に僕を蹂躙する。
「ふむ……ぷあ……あんっ♥︎」
僕の胸の上で動く、彼女の乳房を捕まえ、こねくりまわす。それと同時に僕は腰を跳ね上げ、彼女を思い切りつく。奥に挿れるとぎゅっと締め付け、引き抜く時は襞が絡みつく。口で、膣で、腕で、体全体で僕を抱きしめる。それはとても淫靡だけど、とても愛らしくって。
「ん……♥︎ふうっ♥︎んんっ♥︎」
僕も彼女も嬌声を上げるだけでろくに喋られない。でも、愛してる人と繋がって感じてることがとても嬉しい。
彼女の目に涙が溜まって行き、段々と余裕がなくなっている……僕も、もうすぐだ。
「ぷあっ……♥︎はあっ♥︎かっくんっ♥︎いく♥︎いっちゃう♥︎」
「僕も……出るっ」
「んっ♥︎いっしょに、いこ♥︎」
彼女は更に激しく動き、膣内を激しくくねらせて僕の射精を推し進める。さっきよりも、激しい、感覚が、僕の中を駆け上がり、僕を突き動かした。
「!!!♥︎ひああっ♥︎あああああん♥︎
「ふあっ!!!!くうっ!!!!」
子宮口をつきながら、僕はナルの中で爆発した。熱い精液が噴き出す度に、彼女はビクと反応し、更に僕を絞り上げる。膣をキュンと締めながら、ナルは力なく僕の上に倒れこんだ。
「はあ……♥︎かっくんの……♥︎熱い……♥︎いっぱいでてる……♥︎」
深く息する彼女はうっとりと嬉しそうに笑っていた。まだ、肉襞が陰茎に絡みつき、熱を持たせる。
「あう♥︎まだ、でるんだね……♥︎」
「貪欲だね、ナルは」
「ふふふ……♥︎」
そう言って屈託無く笑う彼女は、とてもサキュバスらしく、僕を興奮に導いて行く。
「ん……また硬くなってきた……♥︎」
「……よっと」
「ひあ……」
僕は彼女と繋がったままひっくり返る。さっきとは上下逆の態勢だ。彼女はビックリしたけど、すぐに両脚で僕を捕まえた。
「今度は僕の番だよ」
「ん……お願い♥︎」
そしてまた絶頂へと向かっていく。
「あ……っと、や、とと」
最終的に、僕は彼女の中に三回出した。流石に疲れて、僕は布団にくるまって横になったが、ナルはそばで脚を開き、人差し指全体で秘部を抑えていた。ちょっと出しすぎたみたいで、膣から零れちゃいそうだかららしい。彼女曰く、もったいないし、シーツをできるだけ汚したくないとか。
零れた液も入れて、人差し指で抑えると、彼女は深呼吸をしながらじっとしていた。
「……ん、吸収できたよ」
そう言ってナルは嬉しそうに尻尾を振りながら布団に潜り込んできた。
「いつも美味しい精、ありがとう」
「ん、美味しくて何より」
「えへへ……」
さっきの淫靡な彼女は消えていた。昼間の、少し照れ屋な少女の顔だ。
「……僕のって美味しいの?」
なんとなく、意地悪な質問をしてみた。
「……世界で一番好きな人の精が、世界で一番美味しいんだよ?」
「……」
「ってお母さんが言ってた」
「……そう」
「私はかっくんのしか知らない、でもかっくんのしか受けつけないよ」
「それを言うなら、僕も一緒だよ。僕もナルのじゃないときっといけないと思う」
「思う?」
自分の方が少し困ってしまった。
「ナルの体しか知らないから、でも僕はナルに魅了されてる、これからも、ナルしか求めないよ」
「……なんか、ごめんね」
僕が先にちょっと意地悪したのに、彼女は謝る……僕を信用してないと思ってしまったのだろう。
「いいよ、僕がちょっと変な事聞いたのが悪いからね」
「でも、本当に美味しいよ、かっくんの精。だから……」
「ん?」
「……」
急にナルがモジモジと黙ってしまった。ちょっと気になって、僕は彼女の顔を覗く。
「……これからも愛しあおうね」
「……」
「……」
ああ、もう。可愛いなあ。
「……くす」
「……あははっ」
自分でもちょっと柄じゃなかったみたいで、彼女は照れた笑いを浮かべる。前髪から覗く、彼女の目は恋に恋する少女のものだ。
大人しい読書少女の顔と淫靡極まるサキュバスの顔……二つの顔を持つ彼女は本当に素敵に可愛く艶やかだ。だから、僕は彼女を…
「……うん、ずっと愛するよ」
「……ん♥︎」
彼女が僕に抱きつき、僕の胸に顔をうずめた。
「……朝ごはんも、ね♥︎」
「……わかった」
これはちょっと苦笑い。
ーーーとあるハーピーとラミアの会話。
「ねえねえ、理想のカップルってだれ?」
「決まってるじゃん、後ろの二人でしょ?」
14/02/18 01:58更新 / 長月ヤモリ