レンシュンマオさんの居酒屋ができるまで
「だからね! 見習い君、私はゆくゆくはこの店を五つ星くらいの名店にしたいんだけど…って聞いてるの?」
「はいはい聞いてますよ。ってかマオさん・・・」
どうもみなさん初めまして。俺の名前は神山亮(かみやま りょう)、今目の前にいる魔物娘『レンシュンマオ』のマオさんにこの店(?)『居酒屋 黒縁熊』の見習いとして雇われた20歳の男(独身)です。就職先もまだ決まっていません。さっきからこの人の店に対する想いのなんたるかを聞かされているのですが、問題があるのです。それが・・・
「――この店、まだ開いてすらいないじゃないですか」
「そこをツッコムんじゃありません!」
そう、この店ですが、まだ開店してすらいないのです。具体的には、材料等は揃っているようですが、人材が不足しているようです。というか、俺が見習い兼従業員1号だったりします。まっったく困ったものです。マオさんは魔物娘と人間共学の高校の先輩で、目をかけてもらっていたので、相談に乗ったのですが・・・半ば無理やり一員になってしまった・・・まああのころからこの人は向こう見ずというか、考えなしというか・・・もっと考えてから動いてほしいものです。
「で、どうするんですせんぱ・・・「女将と呼びなさい!」・・・じゃあ女将(仮)さん。どうするんですか? 人でも足りないのに居酒屋なんか無理っすよ」
「ふふふ・・・何のために君を呼んだと思っているんだい?」
「え」
◇
薄々嫌な予感はしてた・・・というか、考えたくなくて目をそらしていましたが、どうやら先輩・・・いや女将(仮)は、俺に人員集めを押し付けたようです。ていうかいきなり見習いに人員集めろとかブラック過ぎません? しかし土地勘もまるでない俺に見つけられるわけが・・・
「♪〜♪〜」
いた。
散歩の最中なのだろうか、女性が鼻歌を歌いながら歩いています。狐の尾を2本視認することができるということは『稲荷』の魔物娘だろう。とりあえず声をかけてみることにした。
「あのー・・・すみません」
「はい? なんでしょうか?」
「いきなりすみません・・・かくかくしかじかということなんです」
「はあ、なるほど、わたしにできることがあるかどうかは分かりませんがそれでもよければ・・・」
「マジすか?! あ、月給は見習いが257,300円で、従業員が325,700円です。福利厚生、休暇もしっかりついてるんで、超絶ホワイトな職場になる予定です。多分!」
今更ながらこんなハチャメチャな店の勧誘、普通の人間だったり魔物娘なら絶対怪しんで避けるのに・・・この方は聖人かなにか? あ、稲荷が聖人だったら色々とややこしいな・・・ああもう! こまけえことはいいんだよ!
「あ、それじゃあこっちなんで、一緒に来てもらえます?」
「はい〜。あ、そういえばお名前は? わたしはリナっていいます」
「あ、これはご丁寧にすいません。俺は神山亮っていいます。よろしくおねがいしますリナさん」
どうやらリナさんは先日ある高級料亭をクビになったそうで、再就職先を探していたときに俺に出会ったそう。なぜこんな怪しさがプンプンする話に乗り気なったのかというと「おもしろそうだから」ということと「俺が放っとけなかった」らしい。思わず「どんな感じだったんすか」と訊いたら「顔が死んでて負のオーラみたいなものが充満してた」らしい。ちなみに料亭では雑用から調理、配膳等なんでもできるスーパー稲荷(本人談)だったらしい。失礼かもしれませんが、そのとてもほのぼのした雰囲気からは想像できないんですが・・・。と、そうしているとケータイがなり、出てみると先輩だった。・・・ああ、確か高校のときに深夜テンションで交換したんだっけ・・・。
「もしもし、ああはいはい、ええ、1人来てくれるみたいです。ええ、なんかスーパー稲荷みたいなんで大丈夫っすよ。はーい、んじゃ切りまーす」
◇
そんなこんなで居酒屋前まで帰ってきました。どうやらマオさんは看板とのれんを書いていたようで、ところどころに墨をつけた顔で出てきた。しっかし看板ものれんも達筆である。もともと字がきれいなのもありますが、やはり棒状のものの扱いに長けている「レンシュンマオ」だということもあるのでしょうか。と、マオさんがリナさんに気づいた途端目をキラキラさせながら彼女の肩をグワングワン揺らしています。ってか、揺られて「あらあら」って言ってるリナさんもリナさんだな・・・。
「え、なに? なんなの?」
「この方はね! 私の目標としてた方で・・・ああもうお目にかかれて光栄です! 私マオっていいます! ここの女将です! よろしくおねがいします! マジ見習い君GJ! マジGJ! いやあこれから同じ職場で働けるとなるとテンションあがってきますよ!」
「楽しそうですね・・・ま、これで雑用係と女将さんと料理係が揃ったってことで・・・んん? なんすかこのシフト表の一番下に小さい字で書いてある快楽当番ってなに。何でこんな毒々しいピンク色で書いてあるの、ねえ」
「えー? だって従業員のみんなとか、女将さんの戦意高揚にと思って・・・」
「戦意高揚ってなんだよ!? え? これ従業員が増えるたびにするの? 「毎晩するよ」 毎晩?! 「深夜3時あたりから」 3時?! えええええええ!」
「んじゃ、とりあえず・・・君の棒で遊ばせていただきましょうかね・・・」
「わたしも少しつまみ食いを・・・」
「ちょ・・・2人とも待って・・・タンマ・・・ああああああああああああああ――」
こういうわけで、俺は晴れて(?)就職することができましたが・・・道のりはまだまだ険しいようです。
「はいはい聞いてますよ。ってかマオさん・・・」
どうもみなさん初めまして。俺の名前は神山亮(かみやま りょう)、今目の前にいる魔物娘『レンシュンマオ』のマオさんにこの店(?)『居酒屋 黒縁熊』の見習いとして雇われた20歳の男(独身)です。就職先もまだ決まっていません。さっきからこの人の店に対する想いのなんたるかを聞かされているのですが、問題があるのです。それが・・・
「――この店、まだ開いてすらいないじゃないですか」
「そこをツッコムんじゃありません!」
そう、この店ですが、まだ開店してすらいないのです。具体的には、材料等は揃っているようですが、人材が不足しているようです。というか、俺が見習い兼従業員1号だったりします。まっったく困ったものです。マオさんは魔物娘と人間共学の高校の先輩で、目をかけてもらっていたので、相談に乗ったのですが・・・半ば無理やり一員になってしまった・・・まああのころからこの人は向こう見ずというか、考えなしというか・・・もっと考えてから動いてほしいものです。
「で、どうするんですせんぱ・・・「女将と呼びなさい!」・・・じゃあ女将(仮)さん。どうするんですか? 人でも足りないのに居酒屋なんか無理っすよ」
「ふふふ・・・何のために君を呼んだと思っているんだい?」
「え」
◇
薄々嫌な予感はしてた・・・というか、考えたくなくて目をそらしていましたが、どうやら先輩・・・いや女将(仮)は、俺に人員集めを押し付けたようです。ていうかいきなり見習いに人員集めろとかブラック過ぎません? しかし土地勘もまるでない俺に見つけられるわけが・・・
「♪〜♪〜」
いた。
散歩の最中なのだろうか、女性が鼻歌を歌いながら歩いています。狐の尾を2本視認することができるということは『稲荷』の魔物娘だろう。とりあえず声をかけてみることにした。
「あのー・・・すみません」
「はい? なんでしょうか?」
「いきなりすみません・・・かくかくしかじかということなんです」
「はあ、なるほど、わたしにできることがあるかどうかは分かりませんがそれでもよければ・・・」
「マジすか?! あ、月給は見習いが257,300円で、従業員が325,700円です。福利厚生、休暇もしっかりついてるんで、超絶ホワイトな職場になる予定です。多分!」
今更ながらこんなハチャメチャな店の勧誘、普通の人間だったり魔物娘なら絶対怪しんで避けるのに・・・この方は聖人かなにか? あ、稲荷が聖人だったら色々とややこしいな・・・ああもう! こまけえことはいいんだよ!
「あ、それじゃあこっちなんで、一緒に来てもらえます?」
「はい〜。あ、そういえばお名前は? わたしはリナっていいます」
「あ、これはご丁寧にすいません。俺は神山亮っていいます。よろしくおねがいしますリナさん」
どうやらリナさんは先日ある高級料亭をクビになったそうで、再就職先を探していたときに俺に出会ったそう。なぜこんな怪しさがプンプンする話に乗り気なったのかというと「おもしろそうだから」ということと「俺が放っとけなかった」らしい。思わず「どんな感じだったんすか」と訊いたら「顔が死んでて負のオーラみたいなものが充満してた」らしい。ちなみに料亭では雑用から調理、配膳等なんでもできるスーパー稲荷(本人談)だったらしい。失礼かもしれませんが、そのとてもほのぼのした雰囲気からは想像できないんですが・・・。と、そうしているとケータイがなり、出てみると先輩だった。・・・ああ、確か高校のときに深夜テンションで交換したんだっけ・・・。
「もしもし、ああはいはい、ええ、1人来てくれるみたいです。ええ、なんかスーパー稲荷みたいなんで大丈夫っすよ。はーい、んじゃ切りまーす」
◇
そんなこんなで居酒屋前まで帰ってきました。どうやらマオさんは看板とのれんを書いていたようで、ところどころに墨をつけた顔で出てきた。しっかし看板ものれんも達筆である。もともと字がきれいなのもありますが、やはり棒状のものの扱いに長けている「レンシュンマオ」だということもあるのでしょうか。と、マオさんがリナさんに気づいた途端目をキラキラさせながら彼女の肩をグワングワン揺らしています。ってか、揺られて「あらあら」って言ってるリナさんもリナさんだな・・・。
「え、なに? なんなの?」
「この方はね! 私の目標としてた方で・・・ああもうお目にかかれて光栄です! 私マオっていいます! ここの女将です! よろしくおねがいします! マジ見習い君GJ! マジGJ! いやあこれから同じ職場で働けるとなるとテンションあがってきますよ!」
「楽しそうですね・・・ま、これで雑用係と女将さんと料理係が揃ったってことで・・・んん? なんすかこのシフト表の一番下に小さい字で書いてある快楽当番ってなに。何でこんな毒々しいピンク色で書いてあるの、ねえ」
「えー? だって従業員のみんなとか、女将さんの戦意高揚にと思って・・・」
「戦意高揚ってなんだよ!? え? これ従業員が増えるたびにするの? 「毎晩するよ」 毎晩?! 「深夜3時あたりから」 3時?! えええええええ!」
「んじゃ、とりあえず・・・君の棒で遊ばせていただきましょうかね・・・」
「わたしも少しつまみ食いを・・・」
「ちょ・・・2人とも待って・・・タンマ・・・ああああああああああああああ――」
こういうわけで、俺は晴れて(?)就職することができましたが・・・道のりはまだまだ険しいようです。
16/03/14 23:10更新 / あぼかど