騎竜の契り
この国に住む男であれば、誰しも竜騎士を一度は夢見る。あの雄々しく美しい竜を従え、それに跨り大空を舞う。そして国の為に戦う。まさに男の夢というやつだ。
しかし、竜騎士になれる人間は極小数で、夢やぶれた男達は羨望と嫉妬が入り混じった目で竜騎士を見ることになる。その中には教団に入り、魔物はワイバーンは悪だと声を上げるものも少なくはない。そうして自分の夢見たものを汚し、自尊心を保とうとする人だっている。それほどまでに竜騎士とは男達にとって強い憧れだ。
だから、幼い頃から竜騎士として未来を嘱望されてワイバーンと共に育った僕はとても恵まれた存在なのだろう。
この国のワイバーンの多くはタマゴから孵り、幼い頃から親ワイバーンと共に人間に馴染んでいくが例外はいくつかある。その一つが、親ワイバーンが戦死して子育てができなくなった場合だ。
そうした場合、誰がそのワイバーンを育てるのか。この国ではそれを選ぶ為に子ワイバーンと多くの子供を対面させるというシステムがある。母の愛に飢え、啼くワイバーンと対面させその泣き声を止める事が出来た少年がその竜を引き取ることが許されるのだ。
一体何がどうして僕が選ばれたのか、それは分からない。ただ幼い僕は泣き喚く彼女を見ていたら無性に悲しくなってきて、彼女と一緒に泣いてしまって。気がついたら泣いているのは僕だけで僕は彼女に頭を撫でられていた。
こうして彼女は僕の家に引き取られ、彼女は僕を兄と慕うようになった。弱虫で泣き虫な僕だったけれど、それでも彼女は僕を兄と呼ぶ。
僕を僻む人も多かった。多くは僕と同じ日に彼女に会って、選ばれなかった男の子だ。お前なんかそのうち竜になった妹に喰われるぞ、と言われ石を投げられ、泣きながらそんな事ないと言っても誰も彼女は化物だと言って憚らず、結局怒った妹がいじめっ子を追い散らす。そんな毎日。
それでも彼女は、僕を兄と呼ぶ。
大人になって竜騎士を志した。親も、妹もそれを歓迎してくれた。槍の使い方も、騎乗の仕方も必死になって覚えた。
しかし、僕が妹と戦い勝てた事も、発情した彼女を満足させて組み伏せた事も未だに無い。竜騎士に大切なのは主従の信頼関係だという。つまり、僕はまだ彼女に主人として誇れる事をしていないのだ。
僕は弱かった。幼い頃からずっと彼女に泣き顔ばかり見られて。彼女に守られてばかりで。こんな男よりもきっと彼女に相応しい竜騎士はいくらでもいるはずだ。認めざるを得ない。悲しいけれど、そして気が違いそうなほどに悔しいけれども。
それでも、まだ彼女は呼ぶのだ。僕のことを、兄と。
*
竜騎士見習いは城のすぐ近くに建設された訓練場で、日夜激しい訓練を課される。相方の竜とは別行動をとらされ、ワイバーンはワイバーン専用の訓練を施される。
朝早くに始まり、日が沈むまで。夜遅くまでやらないのは、パートナーとの親睦を深めるための配慮という名目だが、実際には騎竜の性処理をするためである。
その日も訓練に疲れた体を自室のベッドに横たえていると、控えめに扉をノックする音が聞こえた。
「兄者、すこしいい……?」
「ああ、いいよ」
返事を待ってから、妹が扉を開ける。すりすり、と床に尻尾を引きずる音が響く。
ベッドから状態だけ上げると、妹が僕に近づいてこちらを見下ろしていた。アッシュグレイの前髪の下から覗く瞳の色で要件を悟る。
「その、ガマン、できない、から」
途切れ途切れに言うなり、彼女が僕の上にのしかかってきた。瞳が劣情にぎらついていて、飢えた目線が僕の腰元に注ぎ込まれていた。器用に翼爪を動かし、僕の肌を傷つけないようにズボンを引きずり下ろす。
「するの?」
「うん、兄者は動かなく大丈夫」
彼女が発情し、こうして夜に相手をするたびに必ずこう言われる。彼女は僕に尽くしているつもりなのかもしれないが、なんとなくそれが寂しい。しかし、そんな気分とは裏腹に股間の逸物は固くなり始める。
その感触に表情を和らげながら、彼女は僕にしなだれかかった。せめて口づけは僕からしようと彼女の頭を抱き寄せ、唇に舌を差し込む。彼女は甘えたように鼻を鳴らしながら、僕の舌に応えて絡める。
ちゅっ、ちゅとお互いの唇を吸い合う音が二人きりの部屋に響く。その音がなんとも淫猥で、僕たちはその音に酔いしれるように互いの唾液を求め合い、さらに激しく絡まりあった。
彼女が焦れて、僕の上で軽く前後に腰を揺らす。彼女から滴る蜜がしとどに僕の肉棒を濡らし、秘所と重なり合ってねちねち、と湿っぽい音を立てる。
「ぷはぁっ。兄者、気持ちいい……?」
「ああ、すごくいいよ」
ようやく唇が離れ、彼女の唇から垂れた銀糸が僕の顎を汚した。キスと軽い素股だけでもう僕のモノは膨れ上がり、それを見た妹が妖艶に目を細める。それに、僕は素直に頷くしかなかった。
上に乗る彼女を抱きしめたまま乳房に手を伸ばし、先端を弄りまわす。彼女は嬉しそうに声を上げながらも素股を続け、僕のチンポを何度も何度も擦り上げた。その快楽に、彼女を撫でる手が止まりがちになる。
どうしても、主導権を握ることができない。彼女からもたらされる快楽に溺れて、彼女に甘えてしまう。
やがて、満足げにため息をついて、彼女が腰を浮かせた。先走り汁の滴る僕のモノに自分の割れ目をあてがう。
「兄者、入れちゃうね……?」
まるで自分が貫かれるのを見せつけるようなその仕草に僕は興奮し、熱に浮かされたように首を縦に振った。もうその頃には彼女にいつもどおり、犯されるかのように彼女が滅茶苦茶に腰を振ることを期待していたのだ。
「ふああああああっ……♥」
一気に体重をかけて彼女が僕の上に腰を落とす。それと同時に抑えきれなかった嬌声が妹の口を割って漏れ出た。そのあられもない嬌声に、そして肉壺を突き進む感触に僕は脳が痺れたような快感に酔いしれる。
僕が声を抑えて歯を食いしばっているのを見て、彼女が淫らに微笑む。
「兄者ぁ、きもちいい? 声なんてガマンしなくてもいいんだからね♥」
どうやら妹は僕が女のように喘ぐことを期待しているようだ。僕をさらに興奮させるために、腰を反らし、ふたりの結合部が見えやすいように示してみせる。
「ほら、兄者。わたしと兄者が繋がってるのよく見えるでしょ♥」
僕の視線が吸い寄せられるように彼女と僕のつなぎ目に注がれる。僕の視線に興奮したのか彼女の膣内がきゅっと一層強く僕の逸物を締め上げた。結合部はふたりの体液が混ざり合ったものが軽く泡立っており、その中で彼女の肉芽がツンと包皮を剥いて自己主張をしている。
「えへへ、兄者の目すごいえっちだ♥」
満足したように笑うと妹が腰を浮かせて、僕のモノを扱く。先端が彼女の中から飛び出すかどうかといったところで腰を止め、その高度を保ったまま小刻みに上下に揺らしはじめた。
くぽ、くぽといやらしい音をたてながら僕の亀頭が見え隠れする。膣の入口で僕の亀頭だけを的確に責めるやり方に思わず快楽の喘鳴が漏れた。それを耳にした妹がにんまりと笑う。
「兄者のその声、好きだなぁ……♥」
もっと声を聞かせてと言わんばかりに彼女が腰を揺する速度を早める。何度も何度も僕の亀頭が見え隠れし、彼女の豊満な胸が彼女の激しいリズムに合わせて上下に揺れた。それに手を伸ばし鷲掴みにしてもみほぐすと、彼女が淫らに笑う。
「もう、兄者は動かなくていいって言ったのにぃ♥」
彼女が今度は深く腰を下ろし、僕が触りやすいように胸を張った。僕に固くしこった乳首を弄らせながら今度は彼女が子宮口で僕の先端を撫で回すように腰をストロークさせる。
「ああっ、くうっ!」
「ほらほら、もっと声出していいんだからね♥」
僕の喘ぎ声を聞いて嬉しそうに彼女が円運動を早める。ぐりぐりと膣内で怒張を撫で回され、半ばイきながらも僕は必死に彼女の胸を揉みしだいた。子宮口と胸、両方からの快感に流されず、妹が僕を嬲る。
「妹のおっぱいそんなに触って、チンポビンビンにして、兄者もやっぱりえっちだね♥」
「そ、そんなことは」
「あ〜る〜で〜しょ〜♥」
ぐっ、と腰をおろし亀頭と子宮口を強く密着させて妹が僕の抗弁を遮る。思わず声が出てしまって、妹がそれを聞いて口角を持ち上げた。
「でも、そんな兄者も好きだよ♥」
そう言って、彼女は体を倒し僕に軽い口づけをする。ふにゅん、と彼女の胸が押し付けられる感触と柔らかな唇が重なった感触は一瞬。次の瞬間には彼女は上体を起こし、一層強く僕を責めあげていた。
「ほら、もうそろそろイきたいでしょ♥いいよ、わたしのおまんこにいっぱい兄者のチンポ汁だしていいからね♥」
ちゅぱん、ちゅぱん、と愛液が弾ける音が響き彼女が何度も何度も腰を打ち付けて僕を責め立てる。そのあまりの快楽に僕は思わず悲鳴を上げた。それに相まってさらに彼女の腰が激しく動く。
「ほらあ、女の子みたいにかわいい声だしちゃって♥ もう、兄者は可愛いな♥」
僕を言葉で煽り、愛でながらも彼女が僕を責める。もう快楽で何も考えられなかった。思考が麻痺して、与えられる快楽にただ流されて彼女の言葉に従う。兄として、騎手として失格のこの状況にかえって僕は酔いしれてその快楽をいつもどおりに受け止めていた。
「イくよ、もうダメ、イクっ!」
「兄者ぁ、わたしももうイきそう♥ 一緒にイこ? 兄者のどろどろ精子全部受け止めてあげるから、膣内でいっぱいザーメンぶちまけてねっ♥」
彼女も僕を攻め続けて限界が来たのか切羽詰まった声を上げ始める。お互いが腰をゆすり、彼女も僕もラストスパートをかけ始めた。
駆け上がる射精欲に背筋が冷たく感じる。思わず彼女の手を握った。彼女も翼の先端を握り返して僕に応じる。終末はすぐそこに来ていた。最後に強く彼女が腰を落として絶頂に備える。
「ふああああああっ、兄者ぁっ!」
彼女が絶頂に達し、それに引きずられるように僕も達した。お互いがお互いの手を強く握り合う。その手の感触がとても暖かくて心地よい。目の前が真っ白になるような快感と共に僕の全てを妹の膣内にぶちまける。びゅくびゅく、と何度も鳴動して僕は一度の射精で数度も白濁を吐き散らした。
絶頂の波に耐え切れなかった彼女が倒れこみ、僕に体を預ける。抱きとめてやると、彼女は幸せそうに微笑んだ。
「ホントにいっぱい出したね、兄者……」
彼女がお腹をさする。僕が逸物を抜き取ったそこからは収まりきらなかった精液がどろり、と垂れ出てベッドのシーツを汚した。
握り合った手を離さずに互いに抱き合う。そのまま、僕たちは浅い眠りに落ちていった。
*
目を覚ますと、まだ夜は明けていなかった。妹は僕のすぐとなりで、あられもない姿で寝ている。その姿に、僕は今日の痴態を思い出して、自己嫌悪に駆られた。
今日も騎手としてあるまじき内容だった。主導権は握られっぱなし、挙句責められて女の子のように啼いてしまった。男ぶりを見せておかないと騎竜に舐められるぞ、と教官にも言われているというのに。
「もう僕竜騎士向いてないんじゃないかな……」
正直、頑張ってはいるが戦闘もセックスも弱い。こんなことで彼女を乗りこなすことができるものか。
一人で凹んでいると、隣でもぞもぞと彼女が起き始めた。僕を見上げる瞳には心配の色が浮かんでいる。どうやら聞かれていたようだ。
「おはよう」
「おはよう、兄者」
ベッドに腰掛けて背を向ける僕に挨拶を返したが、彼女はそれ以上口を開かなかった。もしかしたら僕の心情を察して声をかけづらいのかもしれない。僕も彼女になんと声をかけたらいいか分からなかった。
気まずい沈黙があたりを漂う。彼女がどんな顔をしているのか、振り向いて確かめる勇気が出なかった。
「なあ」
背を向けたまま、彼女に声をかける。衣擦れの音が応えた。
「僕以外の人の騎竜になった方がいいと思うんだ」
彼女が息を呑む音が聞こえた。どんな顔をさせてしまったのか、もう見たくない。振り返らずに続ける。
「お前を乗りこなせないと思うんだ、僕には。僕より扱いが上手い人なんていくらでもいる。ただ昔から一緒だったってだけで、僕と一緒に冴えない騎竜扱いされるのも、嫌だろう?」
そこから先は何を言ったのか分かっていなかった。ただ言い訳のように自分がいかにダメであるかを吐露して、涙混じりに語って。もうここで終わりにした方がいいんだと、自分で自分を騙そうとあれこれ下らない理屈を並べる。
全て言い終わって、気がついた時には背後から抱きしめられていた。彼女の鉤爪が僕の胸に喰い込むほどに強く抱きしめられていた。
「いや、だ」
「お前――」
「いやだ、いやだ! 兄者以外とするくらいなら舌噛んで死ぬから! それとも兄者はわたしが、他の人の騎竜になるために股を開く尻軽とでも思ってるわけ!?」
彼女が泣き叫び、僕の肌に爪を立てる。くい込んだ肌に血が滲んで、それが彼女の鉤爪を濡らして、雫となって落ちた。
彼女が肩を思い切り掴んで無理やりこちらを振り向かせる。向き合った彼女の目は涙に濡れていて、僕に正面から抱きついて離れようとしなかった。
「そんな酷いこと、言わないでよぅ……兄者の騎竜になるなら私は、なんでも……」
「ごめん」
彼女の頭を撫でる。こうやって泣いている彼女をあやすのは初めてのことだった。初めて会ったときですら、彼女にこうやって頭を撫でられて慰められたというのに。
「……もっとなでて」
気に入ったのか、彼女がくぐもった声でねだる。彼女が落ち着くまでずっとこうしているつもりだった。
「ずびーっ!」
「おい、服で鼻をかむな」
「うるさい、ばか兄者」
やがて落ち着いたのか彼女は僕の服で涙と鼻水を拭ってから、顔を離した。
「なんで兄者が竜騎士に向いてないって思うのさ」
「だって僕は弱いし、お前を満足させることもできないし。竜の主人としては不適格だと思うんだよ」
「なんでそれが竜騎士に不適格だって聞いてるの!」
それは、と口ごもる。呆れたような目で彼女が僕を見た。
「兄者、私は兄者のことご主人ってちゃんと認めてるよ」
「それこそどうしてさ。だってそんな事は一度も――」
「私のこと、守ってくれたのはいつだって兄者だったんだよ?」
「え――?」
本当に分からないんだ、と妹は馬鹿な兄を一瞥してぱたぱたと尻尾で僕の足を叩き始めた。
「バケモノって言われても兄者はわたしのことを家族として扱ってくれたでしょ? お母さんがいなくなったわたしと会って私の為に泣いてくれて、わたしを本当の家族として扱ってくれた。寂しかったわたしがどれだけ嬉しかったと思ってるの?」
妹が尻尾でぺちぺちと僕を叩きながら、僕にしなだれかかって翼で僕の胸をくすぐるように突く。
「本当にそんなこともわかってなかったんだね」
妹の言葉に、僕は雷に打たれたような衝撃を受けていた。彼女のために何もできない、そんなコンプレックスが霧を払うように吹き飛んでいく。霧が晴れた先に、遥か昔の記憶の光景が浮かび上がった。
泣きじゃくる僕を、彼女が撫でる。あれは、僕に泣き止んで欲しかっただけじゃない。あの時、分からなかったけど僕に伝えようとしていたことは、ただ感謝だったのだ。ありがとう、というその一言だった。
愛しさがこみ上げて、彼女を抱きしめる。確かに、僕は馬鹿な兄だったようだ。僕の抱擁に彼女が応えてくすぐったそうに笑う。
「でもそっかぁ、兄者もやっぱりえっちの時に意地悪されるの嫌だったんだ?」
「嫌じゃないけど、その、自信を無くすというか」
兄としての威厳がなくなるというか。
「でも、イきそうな兄者の顔可愛いんだよ?」
兄としての威厳はやはり無いようだ。そのままセックスする際の不満を僕から並べていく。聞けば、あまり僕に動かさせないのは、僕の負担をなるべく減らしたかったかららしい。決して僕から責められるのは嫌じゃないようで、僕が下手だからという理由でもないらしかった。こんなところでも勘違いが起きていて、彼女がまた僕の胸を怒ったように翼で突く。
「もう、分かったよ。つまり、えっちで自身無くしたからご主人としての自身もなくなっちゃったんでしょ?」
むくれた彼女が乱暴にまとめるが、間違っていないから何も言えない。そして改めて言われるとなんとも恥ずかしい理由だ。素直に頷くと、彼女はため息をついて、僕に流し目を送った。
「じゃあ、兄者がご主人様だって証拠見せたげる」
そう言って、彼女はベットに仰向けになった。
*
「本当に何してもいいんだな?」
「いいよ、兄者だったら何されても嫌じゃないもん」
彼女を上から組み伏せて胸に手を這わせながら訊くと、流石にすこし恥ずかしいのか視線を逸らしながらも妹は頷いた。その仕草に僕の中で何か危ないスイッチが入った感じがした。
キスしながら、胸を揉みしだく。ぴくぴくと敏感に反応しながら、彼女が僕の足に自分のものを絡め、更なる快楽を求めて身を差し出す。いつもと違う従順なその反応に新鮮味を感じるとどうじにもっと思い通りにしてやりたいというどす黒い欲望が芽生えた。
唇を離して、今度は乳首を舌で転がしながら手を秘裂に沿わせる。愛液と、先ほど注ぎ込んだ精液でもうぐちゃぐちゃになっていた。
「すごいな」
「仕方ないでしょ、ばか」
からかってやると顔を赤くしながら彼女が噛み付いてくる。苦笑いしながら悪かった、と謝罪して僕は秘裂のさらに下に手を伸ばした。尻の窄まりに指を這わす。
「あ、兄者、そこは、ちがっ」
「お前の初めてが欲しい」
泡をくう妹を押さえつける。愛液で尻穴を濡らし、小指を入れて少しずつ解していく。なれない感覚に、彼女が戸惑う。
「初めてって……初キスも処女も兄者にあげたもん……」
「違う。僕がお前の初めてを“奪いたい”んだ」
「兄者、ちょっとワガママになったよ……」
「なにしてもいいんでしょ?」
「そうだけど……」
なんとか妹を言いくるめ、アナルに入れる指を増やしながら彼女の尻をほぐしていく。どうじに前の方も空いた手で弄り責め続けるのを忘れない。慣れない感覚と、快楽の板挟みにあって彼女の表情が溶けはじめた。
「兄者ぁ、痛くしないでね……♥」
「ああ、大丈夫」
今度は僕のモノを彼女のマンコに擦り付け、愛液をなじませる。僕のものと彼女のクリトリスが擦れるたびに彼女は小さく快楽の声を上げた。滑りを良くしたところで彼女の体を持ち上げて僕の膝の上に座らせる。
「う、後ろからっ……?」
「そうだ。ほら、前見てみて?」
身だしなみを整えるための姿見の前に僕らは座っていた。ベッドの端に腰掛けて彼女の両足を抱き上げてやると、彼女の蜜壺と菊門が鏡にはっきりと映し出される。
「あ、兄者。これは恥ずかしいよぉ……」
「大丈夫。綺麗だよ」
そのまま自分の男根を彼女の尻穴にあてがう。そのまま彼女の体を降ろし、少しずつ僕の怒張が彼女の中に飲み込まれていった。
「ああっ……♥これ、ヘンな感じ……♥」
「でも、気持ちいいだろう?」
鏡の中で、妹は顔を快楽にとろけさせながら肉棒を従順に受け入れている。塞いでいない前の穴からは精液がながれだし、まるで喘ぐようにくぱくぱと秘唇が動いていた。
そのまま肉棒が腸の奥まで達する。はあっ、と溢れ出る快楽に彼女がため息をついた。そこで鏡を見ながら思いついたことを言ってみる。今日はせっかくだから徹底的に妹を責め上げるつもりだった。
「このままオナニーしてみて?」
「ふえっ!? 兄者、それは――」
「いいから」
大人しく彼女が自分の指で自分を慰め出す。胸を揉み、肉豆を撫で回す。すぐに体から硬さが消えて、僕も動きやすくなって彼女の尻を小突き回した。
「ふあっ♥ やああっ♥」
一突きするたびに彼女の口から艶かしい喘ぎ声が漏れて指の動きが早まる。カクカクと腰を動かし、鏡に映し出された妹の痴態に僕も掻き立てられてさらに激しくうごく。
「いつもこんな風にオナニーしてるんだ? 膣内は弄らないのか?」
調子に乗って耳元で彼女を言葉で責め立てる。彼女はその言葉に鳥肌を立て、羞恥心を煽られながらも情欲に突き動かされる体は止められず、指の動きが激しくなるばかりだった。
ぐっちょぐっちょ、と卑猥な音をたてて彼女の指が膣内をほじくり回す。注がれた精液を掻き出し、自分で舐めて乳首に唾液を塗りたくる。見られている事も忘れたかのような激しいオナニーに答えるように僕も激しく腰を突き上げた。
「いつも何をオカズにしてるんだ?」
「あ、あにじゃ♥ あにじゃにいっぱいオマンコされるの、想像するのぉ……♥」
「尻穴突かれながらオナニー見せつけるなんて、やっぱり変態だな。こんなに激しくするとは思わなかった」
「ごめんなしゃい♥あにじゃぁ、きらいにならないでぇ♥」
「嫌いになんかなるものか!」
小刻みに何度も達しながら、彼女が許しを乞う。もはや理性のタガも外れて僕は彼女の腸内をひたすらに責め抜いた。ヒートアップして、彼女が愛液でネトネトになったオマンコをぐちゃぐちゃに弄りまわす。もう妹はイきすぎて、鏡に愛液の飛沫が飛び散っていた。
「あにじゃ、あにじゃ、だいしゅきぃ……♥」
「僕もだっ!」
互いに愛を囁きながら終末へ向けて上り詰めていく。ぱんぱんと互の体をぶつけ合う音が響く。興奮しきって妹が叫んだ。
「あにじゃあっ! だひて、おしりにおちんぽ汁いっぱいだひてぇっ!」
「ぐぅっ、出すぞ!」
「おひりじゅぼじゅぼされながら、おなにーして、イくぅ!♥」
普段より一層乱れた彼女がみっともなく叫んでまた絶頂に達する。腸が不規則に蠢き僕もまた絶頂に達した。後ろから彼女を抱きすくめ、深くまで突き刺して最奥で溜め込んだ精液を解き放つ。どくどくと僕の怒張が動くのに合わせて、彼女が小さく痙攣した。
思い切りだし終えて、ようやく僕が肉棒を妹の尻から引き抜く。イきすぎて気を失いそうになっている彼女を横たえると、前からも後ろからも精液が流れ出てきて、彼女の下半身はドロドロでひどいことになっていた。
「あにじゃぁ……♥」
蕩けきった顔をしながら妹が甘えて擦り寄ってくる。それを抱きしめてお互いに甘え合っているうちにまた意識が遠のいて、本日二回目の睡眠が訪れたのだった。
*
目を覚ますと、僕は早速妹に怒られた。流石に調子に乗りすぎたらしくお尻が痛いだの、恥ずかしすぎただの文句たらたらで彼女は僕を尻尾でべしべしと叩いた。
「兄者があんなに変態でいじわるだなんて思わなかった」
「あはは……ごめん」
思い返してみれば自分でも驚く程のサドっぷりだった。彼女とのセックスの主導権が握れないなんて思い悩んでいたことが嘘のように、体が彼女を求めて、彼女を啼かせるために動いた。
「でも、気持ち良かったでしょ?」
「う、そうだけど……」
自分の乱れぶりを覚えているのだろう。否定しきれずに、彼女がそっぽをむいたが、やがてちょこんと僕の膝の上に座った。
「ああいうのも、たまにはいいかも」
「そっか」
そう言って彼女を抱きすくめる。嬉しそうに彼女が尻尾をふった。
「兄者」
「なんだ?」
「ずっと守ってね? わたしも兄者をずっと守るから」
「ああ」
妹を押し倒して、上から口付ける。彼女は僕を受け入れて、僕に合わせて舌を差し出した。
しかし、竜騎士になれる人間は極小数で、夢やぶれた男達は羨望と嫉妬が入り混じった目で竜騎士を見ることになる。その中には教団に入り、魔物はワイバーンは悪だと声を上げるものも少なくはない。そうして自分の夢見たものを汚し、自尊心を保とうとする人だっている。それほどまでに竜騎士とは男達にとって強い憧れだ。
だから、幼い頃から竜騎士として未来を嘱望されてワイバーンと共に育った僕はとても恵まれた存在なのだろう。
この国のワイバーンの多くはタマゴから孵り、幼い頃から親ワイバーンと共に人間に馴染んでいくが例外はいくつかある。その一つが、親ワイバーンが戦死して子育てができなくなった場合だ。
そうした場合、誰がそのワイバーンを育てるのか。この国ではそれを選ぶ為に子ワイバーンと多くの子供を対面させるというシステムがある。母の愛に飢え、啼くワイバーンと対面させその泣き声を止める事が出来た少年がその竜を引き取ることが許されるのだ。
一体何がどうして僕が選ばれたのか、それは分からない。ただ幼い僕は泣き喚く彼女を見ていたら無性に悲しくなってきて、彼女と一緒に泣いてしまって。気がついたら泣いているのは僕だけで僕は彼女に頭を撫でられていた。
こうして彼女は僕の家に引き取られ、彼女は僕を兄と慕うようになった。弱虫で泣き虫な僕だったけれど、それでも彼女は僕を兄と呼ぶ。
僕を僻む人も多かった。多くは僕と同じ日に彼女に会って、選ばれなかった男の子だ。お前なんかそのうち竜になった妹に喰われるぞ、と言われ石を投げられ、泣きながらそんな事ないと言っても誰も彼女は化物だと言って憚らず、結局怒った妹がいじめっ子を追い散らす。そんな毎日。
それでも彼女は、僕を兄と呼ぶ。
大人になって竜騎士を志した。親も、妹もそれを歓迎してくれた。槍の使い方も、騎乗の仕方も必死になって覚えた。
しかし、僕が妹と戦い勝てた事も、発情した彼女を満足させて組み伏せた事も未だに無い。竜騎士に大切なのは主従の信頼関係だという。つまり、僕はまだ彼女に主人として誇れる事をしていないのだ。
僕は弱かった。幼い頃からずっと彼女に泣き顔ばかり見られて。彼女に守られてばかりで。こんな男よりもきっと彼女に相応しい竜騎士はいくらでもいるはずだ。認めざるを得ない。悲しいけれど、そして気が違いそうなほどに悔しいけれども。
それでも、まだ彼女は呼ぶのだ。僕のことを、兄と。
*
竜騎士見習いは城のすぐ近くに建設された訓練場で、日夜激しい訓練を課される。相方の竜とは別行動をとらされ、ワイバーンはワイバーン専用の訓練を施される。
朝早くに始まり、日が沈むまで。夜遅くまでやらないのは、パートナーとの親睦を深めるための配慮という名目だが、実際には騎竜の性処理をするためである。
その日も訓練に疲れた体を自室のベッドに横たえていると、控えめに扉をノックする音が聞こえた。
「兄者、すこしいい……?」
「ああ、いいよ」
返事を待ってから、妹が扉を開ける。すりすり、と床に尻尾を引きずる音が響く。
ベッドから状態だけ上げると、妹が僕に近づいてこちらを見下ろしていた。アッシュグレイの前髪の下から覗く瞳の色で要件を悟る。
「その、ガマン、できない、から」
途切れ途切れに言うなり、彼女が僕の上にのしかかってきた。瞳が劣情にぎらついていて、飢えた目線が僕の腰元に注ぎ込まれていた。器用に翼爪を動かし、僕の肌を傷つけないようにズボンを引きずり下ろす。
「するの?」
「うん、兄者は動かなく大丈夫」
彼女が発情し、こうして夜に相手をするたびに必ずこう言われる。彼女は僕に尽くしているつもりなのかもしれないが、なんとなくそれが寂しい。しかし、そんな気分とは裏腹に股間の逸物は固くなり始める。
その感触に表情を和らげながら、彼女は僕にしなだれかかった。せめて口づけは僕からしようと彼女の頭を抱き寄せ、唇に舌を差し込む。彼女は甘えたように鼻を鳴らしながら、僕の舌に応えて絡める。
ちゅっ、ちゅとお互いの唇を吸い合う音が二人きりの部屋に響く。その音がなんとも淫猥で、僕たちはその音に酔いしれるように互いの唾液を求め合い、さらに激しく絡まりあった。
彼女が焦れて、僕の上で軽く前後に腰を揺らす。彼女から滴る蜜がしとどに僕の肉棒を濡らし、秘所と重なり合ってねちねち、と湿っぽい音を立てる。
「ぷはぁっ。兄者、気持ちいい……?」
「ああ、すごくいいよ」
ようやく唇が離れ、彼女の唇から垂れた銀糸が僕の顎を汚した。キスと軽い素股だけでもう僕のモノは膨れ上がり、それを見た妹が妖艶に目を細める。それに、僕は素直に頷くしかなかった。
上に乗る彼女を抱きしめたまま乳房に手を伸ばし、先端を弄りまわす。彼女は嬉しそうに声を上げながらも素股を続け、僕のチンポを何度も何度も擦り上げた。その快楽に、彼女を撫でる手が止まりがちになる。
どうしても、主導権を握ることができない。彼女からもたらされる快楽に溺れて、彼女に甘えてしまう。
やがて、満足げにため息をついて、彼女が腰を浮かせた。先走り汁の滴る僕のモノに自分の割れ目をあてがう。
「兄者、入れちゃうね……?」
まるで自分が貫かれるのを見せつけるようなその仕草に僕は興奮し、熱に浮かされたように首を縦に振った。もうその頃には彼女にいつもどおり、犯されるかのように彼女が滅茶苦茶に腰を振ることを期待していたのだ。
「ふああああああっ……♥」
一気に体重をかけて彼女が僕の上に腰を落とす。それと同時に抑えきれなかった嬌声が妹の口を割って漏れ出た。そのあられもない嬌声に、そして肉壺を突き進む感触に僕は脳が痺れたような快感に酔いしれる。
僕が声を抑えて歯を食いしばっているのを見て、彼女が淫らに微笑む。
「兄者ぁ、きもちいい? 声なんてガマンしなくてもいいんだからね♥」
どうやら妹は僕が女のように喘ぐことを期待しているようだ。僕をさらに興奮させるために、腰を反らし、ふたりの結合部が見えやすいように示してみせる。
「ほら、兄者。わたしと兄者が繋がってるのよく見えるでしょ♥」
僕の視線が吸い寄せられるように彼女と僕のつなぎ目に注がれる。僕の視線に興奮したのか彼女の膣内がきゅっと一層強く僕の逸物を締め上げた。結合部はふたりの体液が混ざり合ったものが軽く泡立っており、その中で彼女の肉芽がツンと包皮を剥いて自己主張をしている。
「えへへ、兄者の目すごいえっちだ♥」
満足したように笑うと妹が腰を浮かせて、僕のモノを扱く。先端が彼女の中から飛び出すかどうかといったところで腰を止め、その高度を保ったまま小刻みに上下に揺らしはじめた。
くぽ、くぽといやらしい音をたてながら僕の亀頭が見え隠れする。膣の入口で僕の亀頭だけを的確に責めるやり方に思わず快楽の喘鳴が漏れた。それを耳にした妹がにんまりと笑う。
「兄者のその声、好きだなぁ……♥」
もっと声を聞かせてと言わんばかりに彼女が腰を揺する速度を早める。何度も何度も僕の亀頭が見え隠れし、彼女の豊満な胸が彼女の激しいリズムに合わせて上下に揺れた。それに手を伸ばし鷲掴みにしてもみほぐすと、彼女が淫らに笑う。
「もう、兄者は動かなくていいって言ったのにぃ♥」
彼女が今度は深く腰を下ろし、僕が触りやすいように胸を張った。僕に固くしこった乳首を弄らせながら今度は彼女が子宮口で僕の先端を撫で回すように腰をストロークさせる。
「ああっ、くうっ!」
「ほらほら、もっと声出していいんだからね♥」
僕の喘ぎ声を聞いて嬉しそうに彼女が円運動を早める。ぐりぐりと膣内で怒張を撫で回され、半ばイきながらも僕は必死に彼女の胸を揉みしだいた。子宮口と胸、両方からの快感に流されず、妹が僕を嬲る。
「妹のおっぱいそんなに触って、チンポビンビンにして、兄者もやっぱりえっちだね♥」
「そ、そんなことは」
「あ〜る〜で〜しょ〜♥」
ぐっ、と腰をおろし亀頭と子宮口を強く密着させて妹が僕の抗弁を遮る。思わず声が出てしまって、妹がそれを聞いて口角を持ち上げた。
「でも、そんな兄者も好きだよ♥」
そう言って、彼女は体を倒し僕に軽い口づけをする。ふにゅん、と彼女の胸が押し付けられる感触と柔らかな唇が重なった感触は一瞬。次の瞬間には彼女は上体を起こし、一層強く僕を責めあげていた。
「ほら、もうそろそろイきたいでしょ♥いいよ、わたしのおまんこにいっぱい兄者のチンポ汁だしていいからね♥」
ちゅぱん、ちゅぱん、と愛液が弾ける音が響き彼女が何度も何度も腰を打ち付けて僕を責め立てる。そのあまりの快楽に僕は思わず悲鳴を上げた。それに相まってさらに彼女の腰が激しく動く。
「ほらあ、女の子みたいにかわいい声だしちゃって♥ もう、兄者は可愛いな♥」
僕を言葉で煽り、愛でながらも彼女が僕を責める。もう快楽で何も考えられなかった。思考が麻痺して、与えられる快楽にただ流されて彼女の言葉に従う。兄として、騎手として失格のこの状況にかえって僕は酔いしれてその快楽をいつもどおりに受け止めていた。
「イくよ、もうダメ、イクっ!」
「兄者ぁ、わたしももうイきそう♥ 一緒にイこ? 兄者のどろどろ精子全部受け止めてあげるから、膣内でいっぱいザーメンぶちまけてねっ♥」
彼女も僕を攻め続けて限界が来たのか切羽詰まった声を上げ始める。お互いが腰をゆすり、彼女も僕もラストスパートをかけ始めた。
駆け上がる射精欲に背筋が冷たく感じる。思わず彼女の手を握った。彼女も翼の先端を握り返して僕に応じる。終末はすぐそこに来ていた。最後に強く彼女が腰を落として絶頂に備える。
「ふああああああっ、兄者ぁっ!」
彼女が絶頂に達し、それに引きずられるように僕も達した。お互いがお互いの手を強く握り合う。その手の感触がとても暖かくて心地よい。目の前が真っ白になるような快感と共に僕の全てを妹の膣内にぶちまける。びゅくびゅく、と何度も鳴動して僕は一度の射精で数度も白濁を吐き散らした。
絶頂の波に耐え切れなかった彼女が倒れこみ、僕に体を預ける。抱きとめてやると、彼女は幸せそうに微笑んだ。
「ホントにいっぱい出したね、兄者……」
彼女がお腹をさする。僕が逸物を抜き取ったそこからは収まりきらなかった精液がどろり、と垂れ出てベッドのシーツを汚した。
握り合った手を離さずに互いに抱き合う。そのまま、僕たちは浅い眠りに落ちていった。
*
目を覚ますと、まだ夜は明けていなかった。妹は僕のすぐとなりで、あられもない姿で寝ている。その姿に、僕は今日の痴態を思い出して、自己嫌悪に駆られた。
今日も騎手としてあるまじき内容だった。主導権は握られっぱなし、挙句責められて女の子のように啼いてしまった。男ぶりを見せておかないと騎竜に舐められるぞ、と教官にも言われているというのに。
「もう僕竜騎士向いてないんじゃないかな……」
正直、頑張ってはいるが戦闘もセックスも弱い。こんなことで彼女を乗りこなすことができるものか。
一人で凹んでいると、隣でもぞもぞと彼女が起き始めた。僕を見上げる瞳には心配の色が浮かんでいる。どうやら聞かれていたようだ。
「おはよう」
「おはよう、兄者」
ベッドに腰掛けて背を向ける僕に挨拶を返したが、彼女はそれ以上口を開かなかった。もしかしたら僕の心情を察して声をかけづらいのかもしれない。僕も彼女になんと声をかけたらいいか分からなかった。
気まずい沈黙があたりを漂う。彼女がどんな顔をしているのか、振り向いて確かめる勇気が出なかった。
「なあ」
背を向けたまま、彼女に声をかける。衣擦れの音が応えた。
「僕以外の人の騎竜になった方がいいと思うんだ」
彼女が息を呑む音が聞こえた。どんな顔をさせてしまったのか、もう見たくない。振り返らずに続ける。
「お前を乗りこなせないと思うんだ、僕には。僕より扱いが上手い人なんていくらでもいる。ただ昔から一緒だったってだけで、僕と一緒に冴えない騎竜扱いされるのも、嫌だろう?」
そこから先は何を言ったのか分かっていなかった。ただ言い訳のように自分がいかにダメであるかを吐露して、涙混じりに語って。もうここで終わりにした方がいいんだと、自分で自分を騙そうとあれこれ下らない理屈を並べる。
全て言い終わって、気がついた時には背後から抱きしめられていた。彼女の鉤爪が僕の胸に喰い込むほどに強く抱きしめられていた。
「いや、だ」
「お前――」
「いやだ、いやだ! 兄者以外とするくらいなら舌噛んで死ぬから! それとも兄者はわたしが、他の人の騎竜になるために股を開く尻軽とでも思ってるわけ!?」
彼女が泣き叫び、僕の肌に爪を立てる。くい込んだ肌に血が滲んで、それが彼女の鉤爪を濡らして、雫となって落ちた。
彼女が肩を思い切り掴んで無理やりこちらを振り向かせる。向き合った彼女の目は涙に濡れていて、僕に正面から抱きついて離れようとしなかった。
「そんな酷いこと、言わないでよぅ……兄者の騎竜になるなら私は、なんでも……」
「ごめん」
彼女の頭を撫でる。こうやって泣いている彼女をあやすのは初めてのことだった。初めて会ったときですら、彼女にこうやって頭を撫でられて慰められたというのに。
「……もっとなでて」
気に入ったのか、彼女がくぐもった声でねだる。彼女が落ち着くまでずっとこうしているつもりだった。
「ずびーっ!」
「おい、服で鼻をかむな」
「うるさい、ばか兄者」
やがて落ち着いたのか彼女は僕の服で涙と鼻水を拭ってから、顔を離した。
「なんで兄者が竜騎士に向いてないって思うのさ」
「だって僕は弱いし、お前を満足させることもできないし。竜の主人としては不適格だと思うんだよ」
「なんでそれが竜騎士に不適格だって聞いてるの!」
それは、と口ごもる。呆れたような目で彼女が僕を見た。
「兄者、私は兄者のことご主人ってちゃんと認めてるよ」
「それこそどうしてさ。だってそんな事は一度も――」
「私のこと、守ってくれたのはいつだって兄者だったんだよ?」
「え――?」
本当に分からないんだ、と妹は馬鹿な兄を一瞥してぱたぱたと尻尾で僕の足を叩き始めた。
「バケモノって言われても兄者はわたしのことを家族として扱ってくれたでしょ? お母さんがいなくなったわたしと会って私の為に泣いてくれて、わたしを本当の家族として扱ってくれた。寂しかったわたしがどれだけ嬉しかったと思ってるの?」
妹が尻尾でぺちぺちと僕を叩きながら、僕にしなだれかかって翼で僕の胸をくすぐるように突く。
「本当にそんなこともわかってなかったんだね」
妹の言葉に、僕は雷に打たれたような衝撃を受けていた。彼女のために何もできない、そんなコンプレックスが霧を払うように吹き飛んでいく。霧が晴れた先に、遥か昔の記憶の光景が浮かび上がった。
泣きじゃくる僕を、彼女が撫でる。あれは、僕に泣き止んで欲しかっただけじゃない。あの時、分からなかったけど僕に伝えようとしていたことは、ただ感謝だったのだ。ありがとう、というその一言だった。
愛しさがこみ上げて、彼女を抱きしめる。確かに、僕は馬鹿な兄だったようだ。僕の抱擁に彼女が応えてくすぐったそうに笑う。
「でもそっかぁ、兄者もやっぱりえっちの時に意地悪されるの嫌だったんだ?」
「嫌じゃないけど、その、自信を無くすというか」
兄としての威厳がなくなるというか。
「でも、イきそうな兄者の顔可愛いんだよ?」
兄としての威厳はやはり無いようだ。そのままセックスする際の不満を僕から並べていく。聞けば、あまり僕に動かさせないのは、僕の負担をなるべく減らしたかったかららしい。決して僕から責められるのは嫌じゃないようで、僕が下手だからという理由でもないらしかった。こんなところでも勘違いが起きていて、彼女がまた僕の胸を怒ったように翼で突く。
「もう、分かったよ。つまり、えっちで自身無くしたからご主人としての自身もなくなっちゃったんでしょ?」
むくれた彼女が乱暴にまとめるが、間違っていないから何も言えない。そして改めて言われるとなんとも恥ずかしい理由だ。素直に頷くと、彼女はため息をついて、僕に流し目を送った。
「じゃあ、兄者がご主人様だって証拠見せたげる」
そう言って、彼女はベットに仰向けになった。
*
「本当に何してもいいんだな?」
「いいよ、兄者だったら何されても嫌じゃないもん」
彼女を上から組み伏せて胸に手を這わせながら訊くと、流石にすこし恥ずかしいのか視線を逸らしながらも妹は頷いた。その仕草に僕の中で何か危ないスイッチが入った感じがした。
キスしながら、胸を揉みしだく。ぴくぴくと敏感に反応しながら、彼女が僕の足に自分のものを絡め、更なる快楽を求めて身を差し出す。いつもと違う従順なその反応に新鮮味を感じるとどうじにもっと思い通りにしてやりたいというどす黒い欲望が芽生えた。
唇を離して、今度は乳首を舌で転がしながら手を秘裂に沿わせる。愛液と、先ほど注ぎ込んだ精液でもうぐちゃぐちゃになっていた。
「すごいな」
「仕方ないでしょ、ばか」
からかってやると顔を赤くしながら彼女が噛み付いてくる。苦笑いしながら悪かった、と謝罪して僕は秘裂のさらに下に手を伸ばした。尻の窄まりに指を這わす。
「あ、兄者、そこは、ちがっ」
「お前の初めてが欲しい」
泡をくう妹を押さえつける。愛液で尻穴を濡らし、小指を入れて少しずつ解していく。なれない感覚に、彼女が戸惑う。
「初めてって……初キスも処女も兄者にあげたもん……」
「違う。僕がお前の初めてを“奪いたい”んだ」
「兄者、ちょっとワガママになったよ……」
「なにしてもいいんでしょ?」
「そうだけど……」
なんとか妹を言いくるめ、アナルに入れる指を増やしながら彼女の尻をほぐしていく。どうじに前の方も空いた手で弄り責め続けるのを忘れない。慣れない感覚と、快楽の板挟みにあって彼女の表情が溶けはじめた。
「兄者ぁ、痛くしないでね……♥」
「ああ、大丈夫」
今度は僕のモノを彼女のマンコに擦り付け、愛液をなじませる。僕のものと彼女のクリトリスが擦れるたびに彼女は小さく快楽の声を上げた。滑りを良くしたところで彼女の体を持ち上げて僕の膝の上に座らせる。
「う、後ろからっ……?」
「そうだ。ほら、前見てみて?」
身だしなみを整えるための姿見の前に僕らは座っていた。ベッドの端に腰掛けて彼女の両足を抱き上げてやると、彼女の蜜壺と菊門が鏡にはっきりと映し出される。
「あ、兄者。これは恥ずかしいよぉ……」
「大丈夫。綺麗だよ」
そのまま自分の男根を彼女の尻穴にあてがう。そのまま彼女の体を降ろし、少しずつ僕の怒張が彼女の中に飲み込まれていった。
「ああっ……♥これ、ヘンな感じ……♥」
「でも、気持ちいいだろう?」
鏡の中で、妹は顔を快楽にとろけさせながら肉棒を従順に受け入れている。塞いでいない前の穴からは精液がながれだし、まるで喘ぐようにくぱくぱと秘唇が動いていた。
そのまま肉棒が腸の奥まで達する。はあっ、と溢れ出る快楽に彼女がため息をついた。そこで鏡を見ながら思いついたことを言ってみる。今日はせっかくだから徹底的に妹を責め上げるつもりだった。
「このままオナニーしてみて?」
「ふえっ!? 兄者、それは――」
「いいから」
大人しく彼女が自分の指で自分を慰め出す。胸を揉み、肉豆を撫で回す。すぐに体から硬さが消えて、僕も動きやすくなって彼女の尻を小突き回した。
「ふあっ♥ やああっ♥」
一突きするたびに彼女の口から艶かしい喘ぎ声が漏れて指の動きが早まる。カクカクと腰を動かし、鏡に映し出された妹の痴態に僕も掻き立てられてさらに激しくうごく。
「いつもこんな風にオナニーしてるんだ? 膣内は弄らないのか?」
調子に乗って耳元で彼女を言葉で責め立てる。彼女はその言葉に鳥肌を立て、羞恥心を煽られながらも情欲に突き動かされる体は止められず、指の動きが激しくなるばかりだった。
ぐっちょぐっちょ、と卑猥な音をたてて彼女の指が膣内をほじくり回す。注がれた精液を掻き出し、自分で舐めて乳首に唾液を塗りたくる。見られている事も忘れたかのような激しいオナニーに答えるように僕も激しく腰を突き上げた。
「いつも何をオカズにしてるんだ?」
「あ、あにじゃ♥ あにじゃにいっぱいオマンコされるの、想像するのぉ……♥」
「尻穴突かれながらオナニー見せつけるなんて、やっぱり変態だな。こんなに激しくするとは思わなかった」
「ごめんなしゃい♥あにじゃぁ、きらいにならないでぇ♥」
「嫌いになんかなるものか!」
小刻みに何度も達しながら、彼女が許しを乞う。もはや理性のタガも外れて僕は彼女の腸内をひたすらに責め抜いた。ヒートアップして、彼女が愛液でネトネトになったオマンコをぐちゃぐちゃに弄りまわす。もう妹はイきすぎて、鏡に愛液の飛沫が飛び散っていた。
「あにじゃ、あにじゃ、だいしゅきぃ……♥」
「僕もだっ!」
互いに愛を囁きながら終末へ向けて上り詰めていく。ぱんぱんと互の体をぶつけ合う音が響く。興奮しきって妹が叫んだ。
「あにじゃあっ! だひて、おしりにおちんぽ汁いっぱいだひてぇっ!」
「ぐぅっ、出すぞ!」
「おひりじゅぼじゅぼされながら、おなにーして、イくぅ!♥」
普段より一層乱れた彼女がみっともなく叫んでまた絶頂に達する。腸が不規則に蠢き僕もまた絶頂に達した。後ろから彼女を抱きすくめ、深くまで突き刺して最奥で溜め込んだ精液を解き放つ。どくどくと僕の怒張が動くのに合わせて、彼女が小さく痙攣した。
思い切りだし終えて、ようやく僕が肉棒を妹の尻から引き抜く。イきすぎて気を失いそうになっている彼女を横たえると、前からも後ろからも精液が流れ出てきて、彼女の下半身はドロドロでひどいことになっていた。
「あにじゃぁ……♥」
蕩けきった顔をしながら妹が甘えて擦り寄ってくる。それを抱きしめてお互いに甘え合っているうちにまた意識が遠のいて、本日二回目の睡眠が訪れたのだった。
*
目を覚ますと、僕は早速妹に怒られた。流石に調子に乗りすぎたらしくお尻が痛いだの、恥ずかしすぎただの文句たらたらで彼女は僕を尻尾でべしべしと叩いた。
「兄者があんなに変態でいじわるだなんて思わなかった」
「あはは……ごめん」
思い返してみれば自分でも驚く程のサドっぷりだった。彼女とのセックスの主導権が握れないなんて思い悩んでいたことが嘘のように、体が彼女を求めて、彼女を啼かせるために動いた。
「でも、気持ち良かったでしょ?」
「う、そうだけど……」
自分の乱れぶりを覚えているのだろう。否定しきれずに、彼女がそっぽをむいたが、やがてちょこんと僕の膝の上に座った。
「ああいうのも、たまにはいいかも」
「そっか」
そう言って彼女を抱きすくめる。嬉しそうに彼女が尻尾をふった。
「兄者」
「なんだ?」
「ずっと守ってね? わたしも兄者をずっと守るから」
「ああ」
妹を押し倒して、上から口付ける。彼女は僕を受け入れて、僕に合わせて舌を差し出した。
14/01/03 18:57更新 / ご隠居