連載小説
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剣なき世を求めて
私は鳥だった。
空を駆ける為の群青の翼を両肩から生やした鳥だった。

私は歌を歌った。
喉奥の声帯を震わせ音を奏でる。人としての身体から放たられる美声はあらゆる生物を歓喜させ、時には狂わせたりもした。

狂わせるのは好きじゃなかったけど、軍からの命令だから仕方なく歌った。
楽しい歌、明るい歌、元気が出る歌、悲しい歌、暗い歌、寂しい歌。

色々歌った。

中でも私は明るい歌が好きだった。歌うとなんだか身体の底から幸福感が滲み出てくるような、心が満たされる様な感覚に陥った。それに嫌な事を全部忘れさせてくれる。戦場で見た凄惨な光景も、誰かの死も、側にいてくれる人が居ない寂しさも…。
全部忘れられた。

歌声を聞いた他の皆も同じ気持ちになると言っていた。

戦いが終わった後は、もう一つの仕事がある。
今日1日戦った仲間達に労いの気持ちを込めて歌を歌う事だ。
正直私はこっちの仕事の方が好きだ。血生臭い戦場で人が殺し殺されて、怒りと憎しみと悲しみだけが支配する地獄の後始末はもうたくさん。






私は歌姫。
みんなを幸せにするために今日も歌う。



15/06/19 21:17
中編15/07/23 20:57
16/10/10 23:20

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