決してデートスポットではありません(前編)
柔い風が顔にかかり、目が覚めてくる。
朝…なのだろう。多分。日差しを浴びない朝にもやっと慣れてきた。
地下での生活を始めてから、どれくらいたっただろうか?あまり日に当たらない生活で、はじめはかなり苦労した。夜眠りにくく、朝起きづらい。だから今も、朝といっても、昼よりの朝なのだろう。
「……ん」
ふわり、と風がまた顔をなでる。…風ではないな。リウムの吐息だ。目と鼻の先。お互いの息が触れ合う場所に、穏やかな少女の寝顔があった。その細身をさらに小さく丸め、俺の胸元で眠っている。
「……ん…あふ」
夢でも見ているのか、その体は時折ピクピクと震え、口からは悩ましげな声が漏れる。まるで主人の手で眠る猫のようだ。少し赤めのほほは吐く息に合わせて上下している。
「…………」
ぷにっ
「……んぅ」
リウムの柔らかそうなほっぺをつついてみよう!
寝ているならいいよね!
ぷにぷに
「…ん……んんっ」
すげえ…なんて弾力だ。病みつきになりそうな肌触りだ。俺がつつくと、リウムはつられて声を漏らす。
ぐりぐり
「……む……ひゅう」
指を押し込むと、口の中の空気が押し出されて、おかしな声になる。素晴らしい!これほど可愛さと楽しさを混ぜ込んだ生き物がこれまでいただろうか!?いるはずもないな!いて欲しくもない!リウムは俺だけの物だ。
「…………」
ここに来てからほぼ毎日、リウムよりも早く起きている。この可愛い生き物が起きる前に、そのほっぺにいたずらするのが日課になっていた。
「…………」
毎日やっても飽きないこの柔らかいほっぺも素晴らしいけど、ここまでやっても一度として目覚めないリウムもすごいと思う。その方が俺としては都合がいいんだけどね。
「……はむ」
「お、つついていた指が急にあったかくなった。ほっぺにはそんな機能もあったんだな!本当、どこまで魅力的なほっぺなんだ!」
「……もりょってきへ」
がりっ
「いっつ…!!」
人差し指に何かが突き立てられる。その衝撃は俺を妄想の世界から引き戻す。
見ると、リウムが俺の指をくわえ、歯を立てていた。リウムの眠たげな双眸が、しっかりと俺を見つめている。なんだろう、何も言われていないのに、責められている気分。
「おはよう、リウム」
「……おひゃおう」
「朝ごはんの時間だよ」
「……ん」
「はなしてくれ」
「……やら」
「……なぜですか?」
「…………」
がりっ
「なんでっ!?」
質問の返答に、咀嚼で返すリウム。何をそんなにご立腹なのでしょうか?
「…ん……はむ…んふ」
そのままもぐもぐと咀嚼を始めるリウム。今度のはさっきと違って甘噛みだから痛くはない。
「……っむ……あむ…」
理由はわからないけど、何やら一生懸命に俺の指を噛み続ける。指をつたってリウムのよだれが垂れてくる。……え、エロい!
「……ひゅ…るい……んむ」
「?」
「…リューばっかり、いたうら……ひて」
いたうら……いたずら?舐めながら喋るので、上手く発音できていない。
「……わたひ…も……ひゅる」
そう言って、リウムは指をはなし、俺にまたがってきた。
俺の視界には、大きく自己主張をしてくる二つの大きなおっぱいと、その大きさに反して、少々可愛らしく見えるリウムの顔があった。いつもは上からしか見ることのなかった。顔とおっぱいが、今俺を見下ろしている。
「……絶景」
「…………ん♥」
恥ずかしそうに顔をそらすリウム。
「顔が赤いぞ?」
「……朝日のせい」
「地下に陽の光は来な…むぐっ」
「………うるひゃい」
文句を言おうとした俺の口は、リウムの唇で塞がれた。
「んん……ちゅ……んむ…」
「……んふ…ちゅる……んあ♥、ん………」
ゆっくりと唇をはなし、リウムの視線は俺の股間に向けられる。そこには天高くそびえる俺のモノが……
リウムはゆっくりと腰を上げ、汁の垂れる自分の割れ目へ押し付ける。
「……んんんっ!!」
「お、おいリウム!?」
珍しい、リウムの悲鳴に似た声が喉から溢れた。リウムはこれまで、自分から入れてきたことはなかった。それだけに、俺は一抹の不安を感じた。
「……だい…じょぶ……んんっ!!」
そう言って、リウムは一気に腰を落とす。俺のモノが暖かいリウムの内側に包み込まれた。
「……ん…ほら、だいじょ…ぶ」
はじめ、苦しげに聞こえたリウムの声は、俺のモノを包み込む頃には、すっかりゆるんでいた。そのままリウムは腰を動かし始める。
「んっ♥……ふっ♥……あんっ♥……」
「……っく……これは……また……」
一回上下する事に、締めつけは強くなり、リウムの声も大きくなっていく。俺は手が暇だったので、目の前で揺れる、大きな乳房を掴んだ。しっとりと汗ばむそれを、優しく揉みしだく。
「……んあっ……ルー?……だめ……っ♥♥」
リウムが抵抗する素振りを見せたが、おかまいなしだ。
「くっ……リウム…おれ……もう……」
「うん……きてっ……ルー…いっしょ、にっ」
「うっうあああぁぁぁっ」
「あああぁぁぁ……♥」
限界が来て、俺はリウムに射精をする。リウムはいつもどおり、しっかりと受け止めてくれた。
「……はあっ……はあっ」
「あ……ああ♥……」
糸が切れたかのように、リウムが俺にもたれてくる。
「どうしたんだ?急に」
俺としては嬉しい限りなんだけどな。嫁(暫定)と朝から出来るなんて。
「……いたずら♥」
そう言って俺にキスを求めてくるリウムは、まだリウムに収まっている俺のモノを復活させるのには十分だった。
………………
「リウムーこの木箱はどこに持ってくんだ?」
「…三号室の右の棚」
「あいよー……よっ…と」
俺は空のビンが詰まった木箱を持ち上げ、部屋を出た。別に一日中部屋でイチャついているわけじゃあない。そういう日がないとは言わないが。
……今日もそうなりかけたわけだが。
普段の俺は、リウムの助手である。初めて会った時に頼まれたことだ。一人ではできないリウムの研究を補助し、支える。これが俺の今の仕事だ。主に今のような荷物運びなどの肉体労働。ここに来る前から畑仕事で体を酷使していたので、あまり苦ではない。むしろ…
「置いてきたぞー」
「…ありがと」
「……ぐふっ」
いかん。また息が詰まってしまった。最近は特に笑顔が眩しいぜ。
この笑顔が見られるんだったら、俺は例え死ねと言われても、喜んで首をかっ切る自信がある!
「ほ、ほかに何かできることは?」
「…今は、大丈夫……だから、休んでて…いいよ」
ふわっ ズキューン
「わ…わかった……じゃあ休憩してるわ。」
「……ん」
あれだな。心臓に右ストレートを食らった気分だ。普通のパンチとの違いは、恐ろしい程に幸せな気分になれること……かな?
ソファにどかっと座り、体から力を抜く。先程辛くはないといったばかりだが…朝に二、三発ヤってからの労働はちょっと疲れた。
「…ふああぁぁっ……」
大きなあくびが出た。まぶたが重たくなる。少しだけ眠るかな。作業をするリウムの背中を見つめながら、俺は目を閉じた。
………………
どれくらいたっただろうか?俺はふと、目を開けた。寝る前にリウムが立っていたところには誰もおらず、膝の上に書き置きがあった。
『野草の採取に行ってくる:リウム』
簡潔な文章。間違いなくリウムだ。正直、ちょっとほっとした。ここに来てから今日まで、リウムが俺の視界に入らなかったことは、ほとんどなかったからだ。
「依存してんなあ……」
しみじみとつぶやく。この地下室での思い出は、リウムとの思い出だ。リウムは、様々なことを教えてくれた。そして、俺の話す様々な話題に、熱心に耳を傾けてくれた。
「リウム、村に行きたいって、言ってたなあ」
俺の育ったところを見てみたい。リウムはそう言って俺を見つめた。
「そしたら誰に紹介すればいいんだ?」
俺に両親はいない。……となると、村長か?あの人にはお世話になったし、話しておくべきだろうな。
「被害にあった俺が、その原因を連れて戻ってくるなんてな」
きっと驚くだろう。でもすぐに歓迎してくれる。うちの村は妙に懐の広い連中が多い。俺が無事だとわかれば、リウムを責めるやつなんていないだろう。そしたら早速教会で……
「あれ?」
今気がついた。俺、一度もリウムに告白してない。好きだ、とも、愛している、とも言ったことがない。もはや、お互いに言うまでもないという感じだったので、全く考えつかなかった。
そう考えると、途端に言ってみたくなる。言いたいなー。どうやって言おうかなー。どんな反応するかな?赤くなってうつむくもよし、そっけなく好きだと返すもよし、だ!どっちだとしても、俺的にはグッドですから!
「大好きだぞーリウムー!!……これがいいかな?いやいや……」
リウムへの告白方法を思案している俺の視界に、何かが入り込んだ。
「……ん?」
目の端、物置に使っている他の部屋の一つ。その中でも一番奥の部屋。そこで何かが光っているのが見えた。ビンやら鏡やらが、この地下室には散乱しているので、光が反射してくるのは珍しくはない。しかし、今の光は明らかにそれとは違っていた。何でもない木で出来た扉そのものが赤く光って見えた。
「火事か?」
ビンの底に残っていた薬品が、反応を起こして発火したのかも。最悪の事態が頭をよぎる。とりあえず、水の入ったビンを抱え、恐る恐るドアの前に立つ。そこまで近付いて、やっとわかった。ドアの木が剥がれ、そこから部屋の中の光が漏れているのだ。
ギギィィ……
ゆっくりとドアを押しあけ、部屋に入る。そこには乱雑に置かれた木箱の山と、ボロボロの書物、そしてそれが積まれているいくつかの机があった。そして、もう一つ。
「……ロケット?」
打ち上げる方ではなく、首から下げるアレである。一番手前の机に置いてあるロケットが、赤い光を発していた。その光は、俺が近づくとさらに力を増し、俺を包み込むように部屋中に広がっていく。
「あったかい、な」
不思議な気分だった。ただの光なのに、誰かに抱きしめられているような、そんな気分になる。先程までの緊張がほぐれ、リラックスしていると自分でもわかった。
「リウム……」
無意識にその名を呼んだ。特に意味はなく、ただ、そんな気がしたというだけである。
だが、俺がその言葉を口にした途端、光は力を失い、ロケットの中に吸い込まれていった。俺は無言でそのロケットを拾い上げた。何の道具か、リウムに聞くためだ。ついでにロケットを開けてみる。が、ロケットは長年放置されたためか、全く動かず、俺は開けるのを諦めた。
部屋に戻るために物置を出ると、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。リウムが帰ってきたのだ。
「……!そうだ!告白!」
忘れかけていたが、俺はリウムに言いたいことがあったんだ。とりあえず、ロケットは後回しだ。
俺は急いで玄関に行った。今しがたドアを閉めて振り返えろうとするリウムに、構えの姿勢をとった。振り返った瞬間……抱きつく!
「……ただい…ま」
そう言って振り向いたリウムに対し、俺は動けなかった。リウムの方から、抱きついてきたから。いや、倒れ込んできたから。
「リウ……ム?」
俺の腕の中にうずくまり、ハアハアと荒い息をはくリウムは、体全体がじっとりと汗で濡れ、額には今も脂汗が浮かび、頬をつたって流れ落ちていた。
「リウム!?リウム!?」
「……ん」
俺の呼びかけにかすかな返事と小さな微笑みをを返し、リウムの体から力が抜けた。
朝…なのだろう。多分。日差しを浴びない朝にもやっと慣れてきた。
地下での生活を始めてから、どれくらいたっただろうか?あまり日に当たらない生活で、はじめはかなり苦労した。夜眠りにくく、朝起きづらい。だから今も、朝といっても、昼よりの朝なのだろう。
「……ん」
ふわり、と風がまた顔をなでる。…風ではないな。リウムの吐息だ。目と鼻の先。お互いの息が触れ合う場所に、穏やかな少女の寝顔があった。その細身をさらに小さく丸め、俺の胸元で眠っている。
「……ん…あふ」
夢でも見ているのか、その体は時折ピクピクと震え、口からは悩ましげな声が漏れる。まるで主人の手で眠る猫のようだ。少し赤めのほほは吐く息に合わせて上下している。
「…………」
ぷにっ
「……んぅ」
リウムの柔らかそうなほっぺをつついてみよう!
寝ているならいいよね!
ぷにぷに
「…ん……んんっ」
すげえ…なんて弾力だ。病みつきになりそうな肌触りだ。俺がつつくと、リウムはつられて声を漏らす。
ぐりぐり
「……む……ひゅう」
指を押し込むと、口の中の空気が押し出されて、おかしな声になる。素晴らしい!これほど可愛さと楽しさを混ぜ込んだ生き物がこれまでいただろうか!?いるはずもないな!いて欲しくもない!リウムは俺だけの物だ。
「…………」
ここに来てからほぼ毎日、リウムよりも早く起きている。この可愛い生き物が起きる前に、そのほっぺにいたずらするのが日課になっていた。
「…………」
毎日やっても飽きないこの柔らかいほっぺも素晴らしいけど、ここまでやっても一度として目覚めないリウムもすごいと思う。その方が俺としては都合がいいんだけどね。
「……はむ」
「お、つついていた指が急にあったかくなった。ほっぺにはそんな機能もあったんだな!本当、どこまで魅力的なほっぺなんだ!」
「……もりょってきへ」
がりっ
「いっつ…!!」
人差し指に何かが突き立てられる。その衝撃は俺を妄想の世界から引き戻す。
見ると、リウムが俺の指をくわえ、歯を立てていた。リウムの眠たげな双眸が、しっかりと俺を見つめている。なんだろう、何も言われていないのに、責められている気分。
「おはよう、リウム」
「……おひゃおう」
「朝ごはんの時間だよ」
「……ん」
「はなしてくれ」
「……やら」
「……なぜですか?」
「…………」
がりっ
「なんでっ!?」
質問の返答に、咀嚼で返すリウム。何をそんなにご立腹なのでしょうか?
「…ん……はむ…んふ」
そのままもぐもぐと咀嚼を始めるリウム。今度のはさっきと違って甘噛みだから痛くはない。
「……っむ……あむ…」
理由はわからないけど、何やら一生懸命に俺の指を噛み続ける。指をつたってリウムのよだれが垂れてくる。……え、エロい!
「……ひゅ…るい……んむ」
「?」
「…リューばっかり、いたうら……ひて」
いたうら……いたずら?舐めながら喋るので、上手く発音できていない。
「……わたひ…も……ひゅる」
そう言って、リウムは指をはなし、俺にまたがってきた。
俺の視界には、大きく自己主張をしてくる二つの大きなおっぱいと、その大きさに反して、少々可愛らしく見えるリウムの顔があった。いつもは上からしか見ることのなかった。顔とおっぱいが、今俺を見下ろしている。
「……絶景」
「…………ん♥」
恥ずかしそうに顔をそらすリウム。
「顔が赤いぞ?」
「……朝日のせい」
「地下に陽の光は来な…むぐっ」
「………うるひゃい」
文句を言おうとした俺の口は、リウムの唇で塞がれた。
「んん……ちゅ……んむ…」
「……んふ…ちゅる……んあ♥、ん………」
ゆっくりと唇をはなし、リウムの視線は俺の股間に向けられる。そこには天高くそびえる俺のモノが……
リウムはゆっくりと腰を上げ、汁の垂れる自分の割れ目へ押し付ける。
「……んんんっ!!」
「お、おいリウム!?」
珍しい、リウムの悲鳴に似た声が喉から溢れた。リウムはこれまで、自分から入れてきたことはなかった。それだけに、俺は一抹の不安を感じた。
「……だい…じょぶ……んんっ!!」
そう言って、リウムは一気に腰を落とす。俺のモノが暖かいリウムの内側に包み込まれた。
「……ん…ほら、だいじょ…ぶ」
はじめ、苦しげに聞こえたリウムの声は、俺のモノを包み込む頃には、すっかりゆるんでいた。そのままリウムは腰を動かし始める。
「んっ♥……ふっ♥……あんっ♥……」
「……っく……これは……また……」
一回上下する事に、締めつけは強くなり、リウムの声も大きくなっていく。俺は手が暇だったので、目の前で揺れる、大きな乳房を掴んだ。しっとりと汗ばむそれを、優しく揉みしだく。
「……んあっ……ルー?……だめ……っ♥♥」
リウムが抵抗する素振りを見せたが、おかまいなしだ。
「くっ……リウム…おれ……もう……」
「うん……きてっ……ルー…いっしょ、にっ」
「うっうあああぁぁぁっ」
「あああぁぁぁ……♥」
限界が来て、俺はリウムに射精をする。リウムはいつもどおり、しっかりと受け止めてくれた。
「……はあっ……はあっ」
「あ……ああ♥……」
糸が切れたかのように、リウムが俺にもたれてくる。
「どうしたんだ?急に」
俺としては嬉しい限りなんだけどな。嫁(暫定)と朝から出来るなんて。
「……いたずら♥」
そう言って俺にキスを求めてくるリウムは、まだリウムに収まっている俺のモノを復活させるのには十分だった。
………………
「リウムーこの木箱はどこに持ってくんだ?」
「…三号室の右の棚」
「あいよー……よっ…と」
俺は空のビンが詰まった木箱を持ち上げ、部屋を出た。別に一日中部屋でイチャついているわけじゃあない。そういう日がないとは言わないが。
……今日もそうなりかけたわけだが。
普段の俺は、リウムの助手である。初めて会った時に頼まれたことだ。一人ではできないリウムの研究を補助し、支える。これが俺の今の仕事だ。主に今のような荷物運びなどの肉体労働。ここに来る前から畑仕事で体を酷使していたので、あまり苦ではない。むしろ…
「置いてきたぞー」
「…ありがと」
「……ぐふっ」
いかん。また息が詰まってしまった。最近は特に笑顔が眩しいぜ。
この笑顔が見られるんだったら、俺は例え死ねと言われても、喜んで首をかっ切る自信がある!
「ほ、ほかに何かできることは?」
「…今は、大丈夫……だから、休んでて…いいよ」
ふわっ ズキューン
「わ…わかった……じゃあ休憩してるわ。」
「……ん」
あれだな。心臓に右ストレートを食らった気分だ。普通のパンチとの違いは、恐ろしい程に幸せな気分になれること……かな?
ソファにどかっと座り、体から力を抜く。先程辛くはないといったばかりだが…朝に二、三発ヤってからの労働はちょっと疲れた。
「…ふああぁぁっ……」
大きなあくびが出た。まぶたが重たくなる。少しだけ眠るかな。作業をするリウムの背中を見つめながら、俺は目を閉じた。
………………
どれくらいたっただろうか?俺はふと、目を開けた。寝る前にリウムが立っていたところには誰もおらず、膝の上に書き置きがあった。
『野草の採取に行ってくる:リウム』
簡潔な文章。間違いなくリウムだ。正直、ちょっとほっとした。ここに来てから今日まで、リウムが俺の視界に入らなかったことは、ほとんどなかったからだ。
「依存してんなあ……」
しみじみとつぶやく。この地下室での思い出は、リウムとの思い出だ。リウムは、様々なことを教えてくれた。そして、俺の話す様々な話題に、熱心に耳を傾けてくれた。
「リウム、村に行きたいって、言ってたなあ」
俺の育ったところを見てみたい。リウムはそう言って俺を見つめた。
「そしたら誰に紹介すればいいんだ?」
俺に両親はいない。……となると、村長か?あの人にはお世話になったし、話しておくべきだろうな。
「被害にあった俺が、その原因を連れて戻ってくるなんてな」
きっと驚くだろう。でもすぐに歓迎してくれる。うちの村は妙に懐の広い連中が多い。俺が無事だとわかれば、リウムを責めるやつなんていないだろう。そしたら早速教会で……
「あれ?」
今気がついた。俺、一度もリウムに告白してない。好きだ、とも、愛している、とも言ったことがない。もはや、お互いに言うまでもないという感じだったので、全く考えつかなかった。
そう考えると、途端に言ってみたくなる。言いたいなー。どうやって言おうかなー。どんな反応するかな?赤くなってうつむくもよし、そっけなく好きだと返すもよし、だ!どっちだとしても、俺的にはグッドですから!
「大好きだぞーリウムー!!……これがいいかな?いやいや……」
リウムへの告白方法を思案している俺の視界に、何かが入り込んだ。
「……ん?」
目の端、物置に使っている他の部屋の一つ。その中でも一番奥の部屋。そこで何かが光っているのが見えた。ビンやら鏡やらが、この地下室には散乱しているので、光が反射してくるのは珍しくはない。しかし、今の光は明らかにそれとは違っていた。何でもない木で出来た扉そのものが赤く光って見えた。
「火事か?」
ビンの底に残っていた薬品が、反応を起こして発火したのかも。最悪の事態が頭をよぎる。とりあえず、水の入ったビンを抱え、恐る恐るドアの前に立つ。そこまで近付いて、やっとわかった。ドアの木が剥がれ、そこから部屋の中の光が漏れているのだ。
ギギィィ……
ゆっくりとドアを押しあけ、部屋に入る。そこには乱雑に置かれた木箱の山と、ボロボロの書物、そしてそれが積まれているいくつかの机があった。そして、もう一つ。
「……ロケット?」
打ち上げる方ではなく、首から下げるアレである。一番手前の机に置いてあるロケットが、赤い光を発していた。その光は、俺が近づくとさらに力を増し、俺を包み込むように部屋中に広がっていく。
「あったかい、な」
不思議な気分だった。ただの光なのに、誰かに抱きしめられているような、そんな気分になる。先程までの緊張がほぐれ、リラックスしていると自分でもわかった。
「リウム……」
無意識にその名を呼んだ。特に意味はなく、ただ、そんな気がしたというだけである。
だが、俺がその言葉を口にした途端、光は力を失い、ロケットの中に吸い込まれていった。俺は無言でそのロケットを拾い上げた。何の道具か、リウムに聞くためだ。ついでにロケットを開けてみる。が、ロケットは長年放置されたためか、全く動かず、俺は開けるのを諦めた。
部屋に戻るために物置を出ると、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。リウムが帰ってきたのだ。
「……!そうだ!告白!」
忘れかけていたが、俺はリウムに言いたいことがあったんだ。とりあえず、ロケットは後回しだ。
俺は急いで玄関に行った。今しがたドアを閉めて振り返えろうとするリウムに、構えの姿勢をとった。振り返った瞬間……抱きつく!
「……ただい…ま」
そう言って振り向いたリウムに対し、俺は動けなかった。リウムの方から、抱きついてきたから。いや、倒れ込んできたから。
「リウ……ム?」
俺の腕の中にうずくまり、ハアハアと荒い息をはくリウムは、体全体がじっとりと汗で濡れ、額には今も脂汗が浮かび、頬をつたって流れ落ちていた。
「リウム!?リウム!?」
「……ん」
俺の呼びかけにかすかな返事と小さな微笑みをを返し、リウムの体から力が抜けた。
13/08/31 13:33更新 / 山茶花永
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