青春と忍
先日、友人に彼女が出来た。
お相手は同じクラスのサキュバス娘。
彼女さんの一目惚れだそうで、4ヶ月間にわたりアタックを続けたところ友人がついに折れたらしい。
彼らから「付き合いはじめました」という報告を受けてまず頭に浮かんだのは、祝いの言葉よりも交際までの期間の長さへの疑問だった。
魔物娘、それも生粋のサキュバスであれば男などイチコロのようにも思うが。
一体全体どういうことかしら、などと考えていると
「最近は恋愛型の求愛が流行りだそうですよ」
と、我が部唯一の部員であるヒナさんが答えを教えてくれた。
「うわっ、ヒナさん帰ってたんだ」
「たった今こちらに。部長お疲れ様です」
部室の引き戸を閉じ、手にしていた書類を机に置くヒナさん。
彼女には放課後すぐの部活動会議に出席してもらっていたところだった。
「はいお疲れ様です、ヒナさん。…それで今言った恋愛...型?の求愛というのは」
「魔物娘たちの間で流行っている求愛過程、とでも言うべきでしょうか。なんでも人間同士の恋愛の如く、意中の殿方と時間をかけて仲を深めることでロマンチックな雰囲気を味わえるのだそうですよ」
近頃はプラトニックな出会いに憧れる魔物娘が増えているらしく、好きな人を襲いたい気持ちを抑えつつ清楚な純愛を楽しむのがトレンドなのだとか。
情欲を我慢しながらの恋愛期間は、魔物娘にとって永遠に愛し合うためのちょっとしたスパイスになるのだろう。
ヒナさんの周りにも「恋愛」に明け暮れる魔物娘は多いようで、最近のトレンド、というのは彼女たちから教えてもらった情報だそうだ。
「どうりで甘酸っぱい雰囲気が漂ってたわけだ…。なんだか青春しててイイですね」
(そういえば文化祭でも、体育祭でも、ついでにその他各種イベントでも、あの二人ずっと一緒だったな)
よくよく考えれば二人の動向にはいくつも心当たりはあった。
ただ当の本人からは「魔物娘と付き合っている」なんて話は一度も聞いていなかったので、恋愛に疎い自分からしてみれば友人がサキュバスとイチャイチャしているだなんて想像もしていなかった話だった。
「部長はそういうの、好きなんですか?」
するとヒナさんが興味ありげに、こちらを覗き込むようにして尋ねてくる。
僕の方に大きく踏み込んだ影響で、彼女の長く綺麗な黒髪がふわり、と揺れる。
職人がはたで織り上げたような髪の毛からは、心地良くもドキドキする香りが漂っていた。
整った目鼻立ちに透き通るほど白い肌。
パチリと開かれた目は僕の瞳を捉えて離さない。
未だに慣れない彼女の美貌に、僕は思わずたじろいでしまう。
「へ!?ま、まぁ憧れみたいなものはありますけど…」
「……なるほど」
意外な質問だった。
今まで友人の恋愛事情ばかりが頭にあったので、まさか自分のことを尋ねられるとは思っていなかったからだ。
その上、回答に対する反応が意味深すぎる。
まるでこちらの発言を参考にするかのような返事に、僕は否応なしに彼女を意識してしまう。
「で、でもなかなか僕はね…。あいつはスポーツ得意だし人付き合いもいいですから」
「そうですか?部長も素敵だと思いますよ」
「いやいや!自分なんて半分同好会の会長みたいなものですし!部員もヒナさんだけだし…」
「私だけではご不満ですか?」
「けっ決してそういう訳では!ほら!部員が多いと活動もはかどりますしね!」
「私は部長とご一緒出来るだけで幸せですよ」
「う、うお〜」
ああ言えばこう言う、の要領で僕はヒナさんにグイグイと迫られる。
気付けば言葉だけでなく物理的な距離も縮められており、先ほどまでほのかに感じ取れた彼女の匂いは、今や鼻腔を満たすほどに強くなっていた。
緊張と多幸感が同時に押し寄せては、理性の枷を外そうとしてくる。
少し腕を前に差し出せば触れそうな位置にまで“それ”は迫っていた。
ブレザーを押し出すほど豊かなふくらみ。
普段から隙あらばチラチラと視線を送っていたヒナさんの胸。
触りたい。
倫理とか理性とか知ったことではない。
放課後の部室。
二人きりの空間で。
部屋中に甘い空気が立ち込める。
目の前の女性はどうしてこんなに魅力的なのだろう…。
(僕は…)
「なーんて」
と、舌を出すヒナさん。
甘く張り詰めた部室の空気が元の穏やかな日常のものへと引き戻される。
ハッと我を取り戻すと、からかうような表情でヒナさんがこちらを見つめていた。
細く美しい唇からひょっこりと姿を見せる舌が妙に艶めかしい。
「すみません。部長の反応が可愛くて、つい」
「かわっ…!だっダメですよヒナさん!さっ、部活ですよ部活!来月は大会だって控えてるんですから、少しずつ準備してかないと」
普段の彼女から想像もできない一連の言動。
気にはなるが、まずは目の前の物事に集中せねば。
部として今は重要な時期にある。
来月の大会は、年に一度の我が部の実績作りのチャンスだ。
この機会を逃してしまうと生徒会への実績報告が出来なくなり、部活動が存続の危機に立たされてしまう。
雑談もこのくらいにして練習練習──
「部長、そのことなのですが」
「私、明日からちょっとだけ部活に来れません」
---------
『え、それはまたどうして』
『たった今お仕事が入った、といいますか…。その準備をしないといけませんので』
『あれ?ヒナさんアルバイトしてたんですか?』
『いえ、そういう訳ではないのですが…。私自身の種族の本能が、とでもお伝えすれば良いでしょうか…。申し訳ありませんが急ぎますので。失礼します』
そう言い残して早三日。
あれから彼女は一度も部活に顔を出していない。
毎日欠かさず活動に参加してくれた今までの彼女からは想像も出来ない事態だった。
「──っていう訳なんだよ。急な話で部活動どころじゃなくて」
彼女の唐突な失踪が気になって仕方がない。
第一ひとりでは練習も何もあったものではない。
しびれを切らした僕は、友人とその彼女であるサキュバスに相談することにした。
「つっても“ちょっとだけ”なんだろ?しばらくすれば戻ってくるんじゃないのか」
「たしかにそうなんだけど…。『お仕事』と『種族の本能』ってのが気になってさ」
「それで私たちに話をした、ってわけね」
魔物娘のことであれば魔物娘に尋ねるのが一番だ。
それもおそらく同種であるサキュバス娘であれば参考になることも多いだろう。
「『種族の本能』ってのはなんとなくだけど分かるわよ。サキュバスの性ってやつかしら。私も今までピュアなお付き合いがやりたくて精々肩を寄せるくらいのアプローチしかしてこなかったけど。その間何度この人を襲いそうになったことか」
「そ、そうだったのか…?初めて手が触れた時だって、お前さん顔を真っ赤にしてたじゃないか」
「あれは興奮を抑えるので精一杯だったのよ。照れというより発情よねあれは…」
「え!?じゃ、じゃあ文化祭で二人きりになった時も…!」
「もう襲いたくて襲いたくて。あなたのチンポの形とか想像しまくってたわね。いやほんとあの時の私ってばよく耐えたわ〜」
なんだか凄いことを耳にした気がする…。
とはいえ友人とサキュバス彼女の会話を聞く限りでは、『種族の本能』とは好きな男性を襲いたくなる衝動のことで間違いないようだ。
「ま、とにかく。ヒナちゃん…だっけ?彼女にはきっと好きな男の子が出来たのよ。それも、とびっきり愛しい運命の人が」
その言葉を聞いて胸がどきり、とする。
ヒナさんに好きな人。
放課後の部室で彼女と会話することが楽しかっただけに、ヒナさんがどこか遠くへ行ってしまったように思えて寂しい。
いや、寂しい気持ちだけではない、胸に穴がぽっかりと開いたような虚無感。
そうと決まったわけではないが、別の男性の下に行ってしまったと思うだけで心が締め付けられてしまう。
「「ふ〜ん」」
ふと目線を前に向けると、こちらをにやけ顔で見つめるカップルが一組。
「な、なんだよ」
「別に〜?ただ天然真面目部長にもついに春が来たか〜って思っただけだよ」
「そうそう」
「いや、むしろ逆だろ…。僕は失恋したんだよ。彼女は僕以外の誰かが好きで、それで部活に来なくなったんだ」
僕は僕なりの結論を話す。
友人はこの内容に不服なのか、呆れたような口調で僕に反論をしてきた。
「それは違うぞ。仮にヒナさんがお前以外の誰かを好きなったのなら彼女は二度と部活には戻らないはずだ」
「何せ運命の人を見つけたんだもの。別の男の所になんか行く暇無いくらい好きな人を愛し続けるわ」
「じゃっ、じゃあなんでヒナさんは部活に来てないんだ」
「そう、そこ。大事なのは『お仕事』についてなんじゃないかしら」
そうだ。
彼女が去り際に話した『お仕事』も自分を悩ませている要素だった。
「…で。私の考えなんだけど」
先ほどまでのにやけ顔とは違って真剣に語るサキュバス彼女。
他人の恋路とはいえ同じ魔物娘の恋の行方は気になる様子だった。
彼女の考えはこうだ。
ヒナさんはサキュバス属の別の種族かもしれないということ。
そして『お仕事』を本能として生きるサキュバス種には《クノイチ》が挙げられる、ということ。
《クノイチ》であれば里からの呼び出しによって暫く学校を離れることにも、また『種族の本能』である『お仕事』にも説明がつく。
僕はサキュバス彼女の考えに一定の納得を示しつつも、湧いて出た疑問をぶつけずにはいられなかった。
「でも彼女がクノイチだったとして、どうして今まで部活を休んだことが無かったんだ?里から呼び出しを受けるんなら今までだって部室に来られなくなることがあってもいいじゃないか」
僕からの質問に、二人はまたニヤケ顔をこちらへと向ける。
「まあそれはだな」
「いずれわかるわよ」
・
・
・
煮え切らない返事に僕は釈然としなかったが、二人は「これからデートだから」と言い残して教室を出ていってしまった。
放課後夕陽の射す教室には僕だけがひとり。
教室の窓からグラウンドを見下ろすと部活を終えてこれから帰路につくカップルが数多く確認できた。
この学校の女子は全て魔物娘である。
それ故にほとんどの男子が既に彼女持ちであり、中には複数の魔物娘と同時に付き合っている猛者も存在する。
(今まで一度もこんなこと思ったことなかったのに。みんな羨ましいなあ、おい)
これまでもこれからもヒナさんとは『部長と部員』という関係が続くものだとばかり考えていた。
彼女のことを意識することはあれど、恋焦がれたり付き合いたいと考えたりすることはなかった。
でも今は違う。
ヒナさんと添い遂げたい。
ヒナさんのことをもっともっと知りたい。
僕はただひとり、グラウンドの喧騒を眺めながら彼女の帰りを冀うことしかできなかった。
―――
――
―
ヒナさんが部室に現れなくなって一週間が経過した。
僕は彼女への思いを募らせるばかりで、部室にも活動目的ではなく、もしかすると彼女が戻っているのではという淡い期待だけを胸に顔をのぞかせていた。
「やっぱりヒナさん、別の人の所に行っちゃったのかな」
堂々巡りの思考が思わず言葉として垂れ出てしまう。
今日もダメかと諦めかけていたその時。
「それは違いますよ、主」
彼女の声。
心臓が跳ね上がるように全身に血を巡らせる。
色褪せかけていた景色が再び色づき始める。
僕は教室に響く彼女の声が消えてしまうより早く振り向き、その麗姿を視界に捉えた。
「ヒナさん!」
「はい、ヒナでございます」
そう言って彼女は僕の前に跪く。
久しぶりに再会した愛しい人はあまりにも大胆な格好をしていた。
僕はそんなヒナさんをまじまじと見つめてしまう。
忍び装束だろうか。
豊満な胸は開放的な襟の内部で蠱惑的な谷間を創り出し、もはや隠す気も無い裾からはムチっとした太ももが自己主張をしている。
長く綺麗な髪は後ろの方で結ばれ、これまで隠れていたうなじが得も言えぬ色気を放っている。
一方で髪留めは花柄のリボンであり、少女らしい趣味が垣間見えて非常にかわいらしい。
その姿形ばかりに見惚れてしまい、彼女の雰囲気がいつもと異なることに遅ればせながら気付いた。
まるで主人の下に帰ってきたかのような、従者を想像してしまうような立ち振る舞い。
なにより僕のことを「主」と呼んでいたことに今更ながら違和感を覚えた。
「ちょ、ちょっと…!ヒナさん頭を上げてください!急にいなくなったと思ったら突然姿を見せて…。そうかと思えば今度は傅くなんて!」
「申し訳ありません主。既にある程度お気付きかもしれませんが、私はクノイチと呼ばれる種族。主に黙って部室を留守にしていたのには訳がございます」
「訳…?」
「はい。主を暗殺する準備を整えておりました」
物凄く衝撃的な言葉を聞いた気がする。
ショッキングな内容と状況を前にして僕は言葉の意味を正しく咀嚼できないでいた。
「あ…暗殺って。もしかして僕、死ぬんですか?」
「いえ、違うのです。暗殺というのは──」
──こうして、主の青春をいただくのです
ヒナさんはそう言うと僕の身体に自身の肉体をぴったりと寄せ付け、耳元で囁き始める。
その一連の動きがあまりにも高速だったので、僕は一瞬何が起こったのかを認識できなかった。
むにっとした柔らかい感触を感じたのはそれから一拍子遅れてからのことだった。
全身の感覚という感覚が目の前の女性の柔肌を、大きい胸を、甘美な息遣いを必死に知覚しようとする。
それに呼応する形で僕の股間が激しい勢いで膨張した。
事のあらましを尋ねようとしたその時には僕の口は彼女の唇で塞がれ、あの時艶めかしく思えた彼女の舌が自分の舌と淫らに交わっていた。
はむっ…じゅるっ…んむっ…ちゅぅぅ…
およそファーストキスらしからぬ濃厚すぎるキスが思考の巡りを悪くする。
二人の唾液はどちらのものなのか区別が付かないほどに混じり合っていて、キスのたびにびちゃ、びちゃと互いの口元から零れ落ちていた。
何時間キスしたのだろう。
実際には数分のキスタイムが永遠の時のように感じられて、押し寄せる快楽の波を前にして、僕は彼女に抱くありとあらゆる疑問を忘れてしまっていた。
「ちゅぅぅっ…ぷはぁ…♡ 主のここ、とても苦しそうにしてらっしゃいます…」
大きく屹立した股間を愛おしそうに撫でるヒナさん。
ヒナさんはビンビンに膨れ上がった山の麓に優しく指を添えると、つーっと指を登らせ始めた。
微小だがはっきりと伝わるその快感に僕は身を悶える。
一直線に山の頂に達するや否や、今度は爪を使ったカリ、カリ、という刺激が加えられた。
さわっさわっ
カリっカリっ
初めて味わう彼女の柔らかな感触に加え、好きな女子から喰らう股間への刺激に、僕は思わず絶頂を迎えそうになる。
「ふふっ、主ったら可愛い…。私の主への愛、今にお見せいたしますね…」
イキそうになっていたところで指の動きが止まる。
物惜しげな僕の表情を察したのか、目にハートを浮かばせるヒナさん。
気付けば僕の身体は彼女に持ち上げられ、机の上で横になっていた。
腰全体が浮き上がり、瞬く間にズボンと下着が脱がされる。
露になった僕のペニスは、これまで見たことのないほどに大きく硬くなっている。
「主の逞しいおちんちん…♡ まずはこちらにも挨拶をさせて頂きます…♡」
そう言うとヒナさんは股間に顔を埋め、鼻と口両方で息を吸い始めた。
特に彼女の鼻は雄の臭いが最も強いであろう陰嚢の裏に当てられており、スーッ、スーッという音ともに物凄い勢いでフェロモンを味わっている。
腰を持ち上げられ成す術のない僕は、ただただペニスから喜びの我慢汁を出すことしかできなかった。
しばらくするとホールド状態だった身体が解放され、今度はヒナさんの身体が覆いかぶさるようにして僕の上にのしかかる。
妄想の中で何度も慰めの対象にしていた彼女の胸を胸板全体で感じていたが、彼女の太ももはそれ以上の快楽を与えてきた。
裾を大きくめくり、太ももが僕のペニスを飲み込む。
むにむにとした感触と程よく引き締まった筋肉との緩急により恐ろしく気持ちが良い。
これに耳舐めが加わり、全身を使った奉仕が行われる。
むにゅっ…すりすり…
れろっ…ぢゅうっ…れろれろれろ…
くちゅくちゅ…ちゅこちゅこ…ぎゅううっ…
真面目で、おしとやかで、清楚で、たしかに身体はとてもアダルティだけど。
貪るように身体を擦り付けるヒナさんを全身に感じてしまえば、『僕だけのエロい女』以外の表現が出てこない。
またもやイキそうになったところで、足による締め付けが緩められた。
「主のおちんちん、そろそろイキそうなのですね。これ以上の我慢は毒でしょう…。子種はどうぞ、こちらのほとにお出しください♡」
ヒナさんはめくれ上がった裾をさらにたくし上げ、自身の女性器を見せつけてきた。
つるりとした彼女の股間には一本の綺麗なスジが入っていて、よだれのように蜜を垂らしながら僕のペニスを待ち望んでいるようだった。
ヒナさんがこれを両手で広げると、くぱぁ、という音と共に蜜に塗れた粘膜とピンク色の膣肉が晒される。
「私のおまんこも主のおちんちんが欲しいと叫んでいます♡少々はしたないですが、さっそくいただきますね…♡」
彼女はまずペニスの先端ほどまでに腰を落とし、陰唇と亀頭を擦り合わせた。
愛液と我慢汁がクチュクチュ、と混ざり合う様子は先ほどまでのヒナさんとのキスを思い出すようで余計に興奮を誘う。
性器同士のキスを終え、ヒナさんは更に腰を落とし込むことで僕のペニスは彼女の蜜壺へと導かれた。
ぶちゅ、ずずずずず…
勢いよく腰を落としたせいで、彼女の尻肉が僕の腰に激しく打ち付けられる。
膣内ではゴリゴリと膣肉を掻き分けて進むペニスに、淫靡なヒダたちが歓迎するように絡みついている。
押し寄せる絶頂の波を制御しようと今までの責めにはギリギリのところで耐えてきたが、この快感は別格すぎる。
気を失いそうな快楽に僕の蛇口はその役目を放棄し、一発目の射精が行われた。
びゅるるるっびゅーーーっっ
過去に見ないほどの量の粘液が彼女の奥深くで吐き出される。
全身の精を捧げてしまっているのではないか、と恐怖さえ覚えるほどの射精。
「はぁぁぁん…♡」
そんな僕の感情を知ってか知らでか、注ぎ込まれる精液の快感にこれ以上のない嬌声を上げるヒナさん。
「んんっ…!ふーっ!ふーっ!」
どうやら先ほどの膣内射精で彼女も絶頂を迎えたようで、雪崩れ込む快楽に耐えきれないでいたようだ。
彼女への思いを射精に載せて吐露しきった僕といえば、ヒナさんに種付けしたという経験をじわじわと受け入れることで完全に発情してしまい、二発目の装填を既に終えていた。
未だ膣内でギンギンに反り返る僕のペニスをヒダで感じ取った彼女もまた、二回戦を受け入れるようにして僕を抱き込む。
「ふふ…♡主のおちんちんはまだまだ元気でございますね…♡どうぞ、どうぞ心ゆくまでご射精くださいませ」
彼女の言葉を皮切りに、二人の理性を縛る箍が外れる。
導かれるように果てた一回目とは異なり、今度は逆に彼女を押し倒し激しく腰を打ち付ける僕。
1回目の時よりもさらに肥大化した亀頭は何度も何度も子宮口とキスを重ねている。
胸を揉みしだき、乳首に吸い付き、僕のモノだと誰かに主張するかのように膣を責め立てる。
一見僕が優位に見える光景だったが、彼女の膣肉が見えないところでぎゅうぎゅうとペニスを締め付けるので、射精のタイミングは完全にヒナさんのコントロール下に置かれていた。
組みしだいていたはずの体勢も、腰に足を巻き付けられ、絶対にペニスを膣外に逃がさないというレベルにホールドを決め込まれていた。
「んっ…ん!主の…腰降り…気持ち良いです…。もっと突いて…!ください!」
喘ぎ声を含みながらの彼女からのおねだりが、僕の獣としての本能を加速させる。
これ以上はセックスとは呼べないような、欲をぶちまけるためだけの交尾。
二度目の射精を前にして、僕は彼女の美しい顔──唇に自らの唇を落とす。
今だけは僕とヒナさんを分け隔てる境界線を忌々しく思う。
少しでも彼女と一つになりたいという気持ちそれだけで、彼女の唇、歯茎、舌、粘膜のすべてを貪る言い訳として成立してしまっていた。
教室はむせ返るほどの淫靡な空気に満たされ、じゅる、びちゃ、じゅぽ、といった水音はもはや二人のどの部分から発せられているのか分からないほどに交り極まっていた。
そうして、僕は二度目の射精を迎えることとなる。
どくっどくっどくっ
びゅーーーーーっちびゅるびゅるびゅるびゅるっ!
信じられない量の精液がポンプのようにヒナさんの膣奥へと送り出される。
種付けと呼ぶにはあまりにもオーバーパワーすぎるその量を、ヒナさんは恍惚の笑みと共に迎え入れる。
しかしさすがに量が多すぎたのか、ペニスが差し込まれた状態でさえ彼女の裂け目からは在り得ない量の精液が零れ落ちていた。
「♡♡♡…!主のちんぽ好きっ!好きっ!もう絶対に離しません!どこに行きません…!だから…もっと、主を感じさせてください…!」
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あれから僕らは半日以上交わり続け、なんと部室で朝を迎えてしまった。
学校には朝礼チャイムが鳴り響き、廊下からは行きかう生徒の声が聞こえる。
厄介なことに昨日放課後から今朝に至るまでの長い長い交尾の記憶はハッキリと覚えている。
流石にヤりすぎだ。
自分が頗る元気であることに多少の違和感を覚えつつも、あれだけの長いセックスでヒナさんに負担をかけてしまったのではないか、という心配から彼女の方に目をやる。
すっかり裸になっていた彼女はこちらの目線に気付いたのか、顔を真っ赤にさせて何度も頭を下げ始めた。
ほどけきった髪の毛をブンブンと上下に揺らしながら、今朝に至るまでの情事について申し訳なく思っているようだった。
「優しく、優しく主の筆おろしをするつもりでございましたのに…。やはり実戦となると上手くいかないものですね…」
「ま、まあ僕もかなり空気に当てられてましたから…」
「それに私、主が憧れていた青春だとか甘酸っぱさだとか、欠片も無くて…」
「…そうかな?僕はヒナさんと過ごした日常も、ヒナさんがいなくなってからの毎日も、ドキドキして過ごしてましたよ?」
「そ、それは私の『暗殺』を実行するための準備であって…!決して青春を目的とした行為では…」
そういってヒナさんは暗い表情を浮かべた。
僕はそんな彼女の表情をどうにかしようと、ずっと想い続けてきた気持ちをぶつける。
「……ヒナさん、あなたのことが好きです!僕と付き合ってください!」
「なっ!!!」
唐突な僕の告白にますます頬を紅潮させるヒナさん。
自分としては遅すぎる告白だとは思うが、彼女と過ごした時間が『青春』であったことには間違いないと、そう感じたから。
だから最後は、恋愛型の求愛でこの青春を締めようじゃないか。
───
──
私は俯いて黙り込んでしまう。
クノイチの役目である『暗殺』を終えたはずだったが、ここにきてお付き合いの提言をされることは夢にも思わぬ事態だった。
淫魔くノ一の末裔として忍術から魔術から房中術に至るまであらゆる技術を身に付けたはずなのに。
一人の乙女として告白にどのようにお返事を返すべきなのかという術は習ったことなどなかった。
でも。
でもこれだけは言える。
大好きな部長への精一杯の恩返し。
あなただけに会いたくて、《クノイチ》であることさえ忘れて部室に行っていたあの日々のこと思い浮かべながら。
私はありったけの想いを込めてこう言った。
「はい…!喜んで…!」
お相手は同じクラスのサキュバス娘。
彼女さんの一目惚れだそうで、4ヶ月間にわたりアタックを続けたところ友人がついに折れたらしい。
彼らから「付き合いはじめました」という報告を受けてまず頭に浮かんだのは、祝いの言葉よりも交際までの期間の長さへの疑問だった。
魔物娘、それも生粋のサキュバスであれば男などイチコロのようにも思うが。
一体全体どういうことかしら、などと考えていると
「最近は恋愛型の求愛が流行りだそうですよ」
と、我が部唯一の部員であるヒナさんが答えを教えてくれた。
「うわっ、ヒナさん帰ってたんだ」
「たった今こちらに。部長お疲れ様です」
部室の引き戸を閉じ、手にしていた書類を机に置くヒナさん。
彼女には放課後すぐの部活動会議に出席してもらっていたところだった。
「はいお疲れ様です、ヒナさん。…それで今言った恋愛...型?の求愛というのは」
「魔物娘たちの間で流行っている求愛過程、とでも言うべきでしょうか。なんでも人間同士の恋愛の如く、意中の殿方と時間をかけて仲を深めることでロマンチックな雰囲気を味わえるのだそうですよ」
近頃はプラトニックな出会いに憧れる魔物娘が増えているらしく、好きな人を襲いたい気持ちを抑えつつ清楚な純愛を楽しむのがトレンドなのだとか。
情欲を我慢しながらの恋愛期間は、魔物娘にとって永遠に愛し合うためのちょっとしたスパイスになるのだろう。
ヒナさんの周りにも「恋愛」に明け暮れる魔物娘は多いようで、最近のトレンド、というのは彼女たちから教えてもらった情報だそうだ。
「どうりで甘酸っぱい雰囲気が漂ってたわけだ…。なんだか青春しててイイですね」
(そういえば文化祭でも、体育祭でも、ついでにその他各種イベントでも、あの二人ずっと一緒だったな)
よくよく考えれば二人の動向にはいくつも心当たりはあった。
ただ当の本人からは「魔物娘と付き合っている」なんて話は一度も聞いていなかったので、恋愛に疎い自分からしてみれば友人がサキュバスとイチャイチャしているだなんて想像もしていなかった話だった。
「部長はそういうの、好きなんですか?」
するとヒナさんが興味ありげに、こちらを覗き込むようにして尋ねてくる。
僕の方に大きく踏み込んだ影響で、彼女の長く綺麗な黒髪がふわり、と揺れる。
職人がはたで織り上げたような髪の毛からは、心地良くもドキドキする香りが漂っていた。
整った目鼻立ちに透き通るほど白い肌。
パチリと開かれた目は僕の瞳を捉えて離さない。
未だに慣れない彼女の美貌に、僕は思わずたじろいでしまう。
「へ!?ま、まぁ憧れみたいなものはありますけど…」
「……なるほど」
意外な質問だった。
今まで友人の恋愛事情ばかりが頭にあったので、まさか自分のことを尋ねられるとは思っていなかったからだ。
その上、回答に対する反応が意味深すぎる。
まるでこちらの発言を参考にするかのような返事に、僕は否応なしに彼女を意識してしまう。
「で、でもなかなか僕はね…。あいつはスポーツ得意だし人付き合いもいいですから」
「そうですか?部長も素敵だと思いますよ」
「いやいや!自分なんて半分同好会の会長みたいなものですし!部員もヒナさんだけだし…」
「私だけではご不満ですか?」
「けっ決してそういう訳では!ほら!部員が多いと活動もはかどりますしね!」
「私は部長とご一緒出来るだけで幸せですよ」
「う、うお〜」
ああ言えばこう言う、の要領で僕はヒナさんにグイグイと迫られる。
気付けば言葉だけでなく物理的な距離も縮められており、先ほどまでほのかに感じ取れた彼女の匂いは、今や鼻腔を満たすほどに強くなっていた。
緊張と多幸感が同時に押し寄せては、理性の枷を外そうとしてくる。
少し腕を前に差し出せば触れそうな位置にまで“それ”は迫っていた。
ブレザーを押し出すほど豊かなふくらみ。
普段から隙あらばチラチラと視線を送っていたヒナさんの胸。
触りたい。
倫理とか理性とか知ったことではない。
放課後の部室。
二人きりの空間で。
部屋中に甘い空気が立ち込める。
目の前の女性はどうしてこんなに魅力的なのだろう…。
(僕は…)
「なーんて」
と、舌を出すヒナさん。
甘く張り詰めた部室の空気が元の穏やかな日常のものへと引き戻される。
ハッと我を取り戻すと、からかうような表情でヒナさんがこちらを見つめていた。
細く美しい唇からひょっこりと姿を見せる舌が妙に艶めかしい。
「すみません。部長の反応が可愛くて、つい」
「かわっ…!だっダメですよヒナさん!さっ、部活ですよ部活!来月は大会だって控えてるんですから、少しずつ準備してかないと」
普段の彼女から想像もできない一連の言動。
気にはなるが、まずは目の前の物事に集中せねば。
部として今は重要な時期にある。
来月の大会は、年に一度の我が部の実績作りのチャンスだ。
この機会を逃してしまうと生徒会への実績報告が出来なくなり、部活動が存続の危機に立たされてしまう。
雑談もこのくらいにして練習練習──
「部長、そのことなのですが」
「私、明日からちょっとだけ部活に来れません」
---------
『え、それはまたどうして』
『たった今お仕事が入った、といいますか…。その準備をしないといけませんので』
『あれ?ヒナさんアルバイトしてたんですか?』
『いえ、そういう訳ではないのですが…。私自身の種族の本能が、とでもお伝えすれば良いでしょうか…。申し訳ありませんが急ぎますので。失礼します』
そう言い残して早三日。
あれから彼女は一度も部活に顔を出していない。
毎日欠かさず活動に参加してくれた今までの彼女からは想像も出来ない事態だった。
「──っていう訳なんだよ。急な話で部活動どころじゃなくて」
彼女の唐突な失踪が気になって仕方がない。
第一ひとりでは練習も何もあったものではない。
しびれを切らした僕は、友人とその彼女であるサキュバスに相談することにした。
「つっても“ちょっとだけ”なんだろ?しばらくすれば戻ってくるんじゃないのか」
「たしかにそうなんだけど…。『お仕事』と『種族の本能』ってのが気になってさ」
「それで私たちに話をした、ってわけね」
魔物娘のことであれば魔物娘に尋ねるのが一番だ。
それもおそらく同種であるサキュバス娘であれば参考になることも多いだろう。
「『種族の本能』ってのはなんとなくだけど分かるわよ。サキュバスの性ってやつかしら。私も今までピュアなお付き合いがやりたくて精々肩を寄せるくらいのアプローチしかしてこなかったけど。その間何度この人を襲いそうになったことか」
「そ、そうだったのか…?初めて手が触れた時だって、お前さん顔を真っ赤にしてたじゃないか」
「あれは興奮を抑えるので精一杯だったのよ。照れというより発情よねあれは…」
「え!?じゃ、じゃあ文化祭で二人きりになった時も…!」
「もう襲いたくて襲いたくて。あなたのチンポの形とか想像しまくってたわね。いやほんとあの時の私ってばよく耐えたわ〜」
なんだか凄いことを耳にした気がする…。
とはいえ友人とサキュバス彼女の会話を聞く限りでは、『種族の本能』とは好きな男性を襲いたくなる衝動のことで間違いないようだ。
「ま、とにかく。ヒナちゃん…だっけ?彼女にはきっと好きな男の子が出来たのよ。それも、とびっきり愛しい運命の人が」
その言葉を聞いて胸がどきり、とする。
ヒナさんに好きな人。
放課後の部室で彼女と会話することが楽しかっただけに、ヒナさんがどこか遠くへ行ってしまったように思えて寂しい。
いや、寂しい気持ちだけではない、胸に穴がぽっかりと開いたような虚無感。
そうと決まったわけではないが、別の男性の下に行ってしまったと思うだけで心が締め付けられてしまう。
「「ふ〜ん」」
ふと目線を前に向けると、こちらをにやけ顔で見つめるカップルが一組。
「な、なんだよ」
「別に〜?ただ天然真面目部長にもついに春が来たか〜って思っただけだよ」
「そうそう」
「いや、むしろ逆だろ…。僕は失恋したんだよ。彼女は僕以外の誰かが好きで、それで部活に来なくなったんだ」
僕は僕なりの結論を話す。
友人はこの内容に不服なのか、呆れたような口調で僕に反論をしてきた。
「それは違うぞ。仮にヒナさんがお前以外の誰かを好きなったのなら彼女は二度と部活には戻らないはずだ」
「何せ運命の人を見つけたんだもの。別の男の所になんか行く暇無いくらい好きな人を愛し続けるわ」
「じゃっ、じゃあなんでヒナさんは部活に来てないんだ」
「そう、そこ。大事なのは『お仕事』についてなんじゃないかしら」
そうだ。
彼女が去り際に話した『お仕事』も自分を悩ませている要素だった。
「…で。私の考えなんだけど」
先ほどまでのにやけ顔とは違って真剣に語るサキュバス彼女。
他人の恋路とはいえ同じ魔物娘の恋の行方は気になる様子だった。
彼女の考えはこうだ。
ヒナさんはサキュバス属の別の種族かもしれないということ。
そして『お仕事』を本能として生きるサキュバス種には《クノイチ》が挙げられる、ということ。
《クノイチ》であれば里からの呼び出しによって暫く学校を離れることにも、また『種族の本能』である『お仕事』にも説明がつく。
僕はサキュバス彼女の考えに一定の納得を示しつつも、湧いて出た疑問をぶつけずにはいられなかった。
「でも彼女がクノイチだったとして、どうして今まで部活を休んだことが無かったんだ?里から呼び出しを受けるんなら今までだって部室に来られなくなることがあってもいいじゃないか」
僕からの質問に、二人はまたニヤケ顔をこちらへと向ける。
「まあそれはだな」
「いずれわかるわよ」
・
・
・
煮え切らない返事に僕は釈然としなかったが、二人は「これからデートだから」と言い残して教室を出ていってしまった。
放課後夕陽の射す教室には僕だけがひとり。
教室の窓からグラウンドを見下ろすと部活を終えてこれから帰路につくカップルが数多く確認できた。
この学校の女子は全て魔物娘である。
それ故にほとんどの男子が既に彼女持ちであり、中には複数の魔物娘と同時に付き合っている猛者も存在する。
(今まで一度もこんなこと思ったことなかったのに。みんな羨ましいなあ、おい)
これまでもこれからもヒナさんとは『部長と部員』という関係が続くものだとばかり考えていた。
彼女のことを意識することはあれど、恋焦がれたり付き合いたいと考えたりすることはなかった。
でも今は違う。
ヒナさんと添い遂げたい。
ヒナさんのことをもっともっと知りたい。
僕はただひとり、グラウンドの喧騒を眺めながら彼女の帰りを冀うことしかできなかった。
―――
――
―
ヒナさんが部室に現れなくなって一週間が経過した。
僕は彼女への思いを募らせるばかりで、部室にも活動目的ではなく、もしかすると彼女が戻っているのではという淡い期待だけを胸に顔をのぞかせていた。
「やっぱりヒナさん、別の人の所に行っちゃったのかな」
堂々巡りの思考が思わず言葉として垂れ出てしまう。
今日もダメかと諦めかけていたその時。
「それは違いますよ、主」
彼女の声。
心臓が跳ね上がるように全身に血を巡らせる。
色褪せかけていた景色が再び色づき始める。
僕は教室に響く彼女の声が消えてしまうより早く振り向き、その麗姿を視界に捉えた。
「ヒナさん!」
「はい、ヒナでございます」
そう言って彼女は僕の前に跪く。
久しぶりに再会した愛しい人はあまりにも大胆な格好をしていた。
僕はそんなヒナさんをまじまじと見つめてしまう。
忍び装束だろうか。
豊満な胸は開放的な襟の内部で蠱惑的な谷間を創り出し、もはや隠す気も無い裾からはムチっとした太ももが自己主張をしている。
長く綺麗な髪は後ろの方で結ばれ、これまで隠れていたうなじが得も言えぬ色気を放っている。
一方で髪留めは花柄のリボンであり、少女らしい趣味が垣間見えて非常にかわいらしい。
その姿形ばかりに見惚れてしまい、彼女の雰囲気がいつもと異なることに遅ればせながら気付いた。
まるで主人の下に帰ってきたかのような、従者を想像してしまうような立ち振る舞い。
なにより僕のことを「主」と呼んでいたことに今更ながら違和感を覚えた。
「ちょ、ちょっと…!ヒナさん頭を上げてください!急にいなくなったと思ったら突然姿を見せて…。そうかと思えば今度は傅くなんて!」
「申し訳ありません主。既にある程度お気付きかもしれませんが、私はクノイチと呼ばれる種族。主に黙って部室を留守にしていたのには訳がございます」
「訳…?」
「はい。主を暗殺する準備を整えておりました」
物凄く衝撃的な言葉を聞いた気がする。
ショッキングな内容と状況を前にして僕は言葉の意味を正しく咀嚼できないでいた。
「あ…暗殺って。もしかして僕、死ぬんですか?」
「いえ、違うのです。暗殺というのは──」
──こうして、主の青春をいただくのです
ヒナさんはそう言うと僕の身体に自身の肉体をぴったりと寄せ付け、耳元で囁き始める。
その一連の動きがあまりにも高速だったので、僕は一瞬何が起こったのかを認識できなかった。
むにっとした柔らかい感触を感じたのはそれから一拍子遅れてからのことだった。
全身の感覚という感覚が目の前の女性の柔肌を、大きい胸を、甘美な息遣いを必死に知覚しようとする。
それに呼応する形で僕の股間が激しい勢いで膨張した。
事のあらましを尋ねようとしたその時には僕の口は彼女の唇で塞がれ、あの時艶めかしく思えた彼女の舌が自分の舌と淫らに交わっていた。
はむっ…じゅるっ…んむっ…ちゅぅぅ…
およそファーストキスらしからぬ濃厚すぎるキスが思考の巡りを悪くする。
二人の唾液はどちらのものなのか区別が付かないほどに混じり合っていて、キスのたびにびちゃ、びちゃと互いの口元から零れ落ちていた。
何時間キスしたのだろう。
実際には数分のキスタイムが永遠の時のように感じられて、押し寄せる快楽の波を前にして、僕は彼女に抱くありとあらゆる疑問を忘れてしまっていた。
「ちゅぅぅっ…ぷはぁ…♡ 主のここ、とても苦しそうにしてらっしゃいます…」
大きく屹立した股間を愛おしそうに撫でるヒナさん。
ヒナさんはビンビンに膨れ上がった山の麓に優しく指を添えると、つーっと指を登らせ始めた。
微小だがはっきりと伝わるその快感に僕は身を悶える。
一直線に山の頂に達するや否や、今度は爪を使ったカリ、カリ、という刺激が加えられた。
さわっさわっ
カリっカリっ
初めて味わう彼女の柔らかな感触に加え、好きな女子から喰らう股間への刺激に、僕は思わず絶頂を迎えそうになる。
「ふふっ、主ったら可愛い…。私の主への愛、今にお見せいたしますね…」
イキそうになっていたところで指の動きが止まる。
物惜しげな僕の表情を察したのか、目にハートを浮かばせるヒナさん。
気付けば僕の身体は彼女に持ち上げられ、机の上で横になっていた。
腰全体が浮き上がり、瞬く間にズボンと下着が脱がされる。
露になった僕のペニスは、これまで見たことのないほどに大きく硬くなっている。
「主の逞しいおちんちん…♡ まずはこちらにも挨拶をさせて頂きます…♡」
そう言うとヒナさんは股間に顔を埋め、鼻と口両方で息を吸い始めた。
特に彼女の鼻は雄の臭いが最も強いであろう陰嚢の裏に当てられており、スーッ、スーッという音ともに物凄い勢いでフェロモンを味わっている。
腰を持ち上げられ成す術のない僕は、ただただペニスから喜びの我慢汁を出すことしかできなかった。
しばらくするとホールド状態だった身体が解放され、今度はヒナさんの身体が覆いかぶさるようにして僕の上にのしかかる。
妄想の中で何度も慰めの対象にしていた彼女の胸を胸板全体で感じていたが、彼女の太ももはそれ以上の快楽を与えてきた。
裾を大きくめくり、太ももが僕のペニスを飲み込む。
むにむにとした感触と程よく引き締まった筋肉との緩急により恐ろしく気持ちが良い。
これに耳舐めが加わり、全身を使った奉仕が行われる。
むにゅっ…すりすり…
れろっ…ぢゅうっ…れろれろれろ…
くちゅくちゅ…ちゅこちゅこ…ぎゅううっ…
真面目で、おしとやかで、清楚で、たしかに身体はとてもアダルティだけど。
貪るように身体を擦り付けるヒナさんを全身に感じてしまえば、『僕だけのエロい女』以外の表現が出てこない。
またもやイキそうになったところで、足による締め付けが緩められた。
「主のおちんちん、そろそろイキそうなのですね。これ以上の我慢は毒でしょう…。子種はどうぞ、こちらのほとにお出しください♡」
ヒナさんはめくれ上がった裾をさらにたくし上げ、自身の女性器を見せつけてきた。
つるりとした彼女の股間には一本の綺麗なスジが入っていて、よだれのように蜜を垂らしながら僕のペニスを待ち望んでいるようだった。
ヒナさんがこれを両手で広げると、くぱぁ、という音と共に蜜に塗れた粘膜とピンク色の膣肉が晒される。
「私のおまんこも主のおちんちんが欲しいと叫んでいます♡少々はしたないですが、さっそくいただきますね…♡」
彼女はまずペニスの先端ほどまでに腰を落とし、陰唇と亀頭を擦り合わせた。
愛液と我慢汁がクチュクチュ、と混ざり合う様子は先ほどまでのヒナさんとのキスを思い出すようで余計に興奮を誘う。
性器同士のキスを終え、ヒナさんは更に腰を落とし込むことで僕のペニスは彼女の蜜壺へと導かれた。
ぶちゅ、ずずずずず…
勢いよく腰を落としたせいで、彼女の尻肉が僕の腰に激しく打ち付けられる。
膣内ではゴリゴリと膣肉を掻き分けて進むペニスに、淫靡なヒダたちが歓迎するように絡みついている。
押し寄せる絶頂の波を制御しようと今までの責めにはギリギリのところで耐えてきたが、この快感は別格すぎる。
気を失いそうな快楽に僕の蛇口はその役目を放棄し、一発目の射精が行われた。
びゅるるるっびゅーーーっっ
過去に見ないほどの量の粘液が彼女の奥深くで吐き出される。
全身の精を捧げてしまっているのではないか、と恐怖さえ覚えるほどの射精。
「はぁぁぁん…♡」
そんな僕の感情を知ってか知らでか、注ぎ込まれる精液の快感にこれ以上のない嬌声を上げるヒナさん。
「んんっ…!ふーっ!ふーっ!」
どうやら先ほどの膣内射精で彼女も絶頂を迎えたようで、雪崩れ込む快楽に耐えきれないでいたようだ。
彼女への思いを射精に載せて吐露しきった僕といえば、ヒナさんに種付けしたという経験をじわじわと受け入れることで完全に発情してしまい、二発目の装填を既に終えていた。
未だ膣内でギンギンに反り返る僕のペニスをヒダで感じ取った彼女もまた、二回戦を受け入れるようにして僕を抱き込む。
「ふふ…♡主のおちんちんはまだまだ元気でございますね…♡どうぞ、どうぞ心ゆくまでご射精くださいませ」
彼女の言葉を皮切りに、二人の理性を縛る箍が外れる。
導かれるように果てた一回目とは異なり、今度は逆に彼女を押し倒し激しく腰を打ち付ける僕。
1回目の時よりもさらに肥大化した亀頭は何度も何度も子宮口とキスを重ねている。
胸を揉みしだき、乳首に吸い付き、僕のモノだと誰かに主張するかのように膣を責め立てる。
一見僕が優位に見える光景だったが、彼女の膣肉が見えないところでぎゅうぎゅうとペニスを締め付けるので、射精のタイミングは完全にヒナさんのコントロール下に置かれていた。
組みしだいていたはずの体勢も、腰に足を巻き付けられ、絶対にペニスを膣外に逃がさないというレベルにホールドを決め込まれていた。
「んっ…ん!主の…腰降り…気持ち良いです…。もっと突いて…!ください!」
喘ぎ声を含みながらの彼女からのおねだりが、僕の獣としての本能を加速させる。
これ以上はセックスとは呼べないような、欲をぶちまけるためだけの交尾。
二度目の射精を前にして、僕は彼女の美しい顔──唇に自らの唇を落とす。
今だけは僕とヒナさんを分け隔てる境界線を忌々しく思う。
少しでも彼女と一つになりたいという気持ちそれだけで、彼女の唇、歯茎、舌、粘膜のすべてを貪る言い訳として成立してしまっていた。
教室はむせ返るほどの淫靡な空気に満たされ、じゅる、びちゃ、じゅぽ、といった水音はもはや二人のどの部分から発せられているのか分からないほどに交り極まっていた。
そうして、僕は二度目の射精を迎えることとなる。
どくっどくっどくっ
びゅーーーーーっちびゅるびゅるびゅるびゅるっ!
信じられない量の精液がポンプのようにヒナさんの膣奥へと送り出される。
種付けと呼ぶにはあまりにもオーバーパワーすぎるその量を、ヒナさんは恍惚の笑みと共に迎え入れる。
しかしさすがに量が多すぎたのか、ペニスが差し込まれた状態でさえ彼女の裂け目からは在り得ない量の精液が零れ落ちていた。
「♡♡♡…!主のちんぽ好きっ!好きっ!もう絶対に離しません!どこに行きません…!だから…もっと、主を感じさせてください…!」
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あれから僕らは半日以上交わり続け、なんと部室で朝を迎えてしまった。
学校には朝礼チャイムが鳴り響き、廊下からは行きかう生徒の声が聞こえる。
厄介なことに昨日放課後から今朝に至るまでの長い長い交尾の記憶はハッキリと覚えている。
流石にヤりすぎだ。
自分が頗る元気であることに多少の違和感を覚えつつも、あれだけの長いセックスでヒナさんに負担をかけてしまったのではないか、という心配から彼女の方に目をやる。
すっかり裸になっていた彼女はこちらの目線に気付いたのか、顔を真っ赤にさせて何度も頭を下げ始めた。
ほどけきった髪の毛をブンブンと上下に揺らしながら、今朝に至るまでの情事について申し訳なく思っているようだった。
「優しく、優しく主の筆おろしをするつもりでございましたのに…。やはり実戦となると上手くいかないものですね…」
「ま、まあ僕もかなり空気に当てられてましたから…」
「それに私、主が憧れていた青春だとか甘酸っぱさだとか、欠片も無くて…」
「…そうかな?僕はヒナさんと過ごした日常も、ヒナさんがいなくなってからの毎日も、ドキドキして過ごしてましたよ?」
「そ、それは私の『暗殺』を実行するための準備であって…!決して青春を目的とした行為では…」
そういってヒナさんは暗い表情を浮かべた。
僕はそんな彼女の表情をどうにかしようと、ずっと想い続けてきた気持ちをぶつける。
「……ヒナさん、あなたのことが好きです!僕と付き合ってください!」
「なっ!!!」
唐突な僕の告白にますます頬を紅潮させるヒナさん。
自分としては遅すぎる告白だとは思うが、彼女と過ごした時間が『青春』であったことには間違いないと、そう感じたから。
だから最後は、恋愛型の求愛でこの青春を締めようじゃないか。
───
──
私は俯いて黙り込んでしまう。
クノイチの役目である『暗殺』を終えたはずだったが、ここにきてお付き合いの提言をされることは夢にも思わぬ事態だった。
淫魔くノ一の末裔として忍術から魔術から房中術に至るまであらゆる技術を身に付けたはずなのに。
一人の乙女として告白にどのようにお返事を返すべきなのかという術は習ったことなどなかった。
でも。
でもこれだけは言える。
大好きな部長への精一杯の恩返し。
あなただけに会いたくて、《クノイチ》であることさえ忘れて部室に行っていたあの日々のこと思い浮かべながら。
私はありったけの想いを込めてこう言った。
「はい…!喜んで…!」
19/11/19 14:29更新 / 孀婦顰蹙