一つ目、『傲慢』

リリム「『傲慢』って要はプライドが高いって事よね？」
バフォメット「そうじゃな。という事でゲストにエルフを呼んでおいたぞ」
エルフ「……不名誉極まりないな」
リリム「まぁまぁ、別に誇り高いのは悪い事じゃないのよ？」
バフォメット「まぁ、プライドが高い者は他の者からすれば嫌な奴にしか見えんがな」
エルフ「……」
リリム「いきなり空気が重いわね。……相当する悪魔はルシファーだそうよ」
バフォメット「ルシファーはその昔、神からアダムに従うよう命を受けたが逆らったそうじゃ。そのせいで堕天したと言われておる」
リリム「プライドが許せなかったのかしら？」
エルフ「アダムは粘土から造られたとされているからな。土人形に頭を下げたくないのも分からなくはない」
リリム「そこから傲慢って罪に当てはめられているのね」
エルフ「……だが、気に入らんな」
リリム「何が？」
エルフ「プライドは要は自信だ。自信がない者は行動力に欠け、何も出来なくなる」
リリム「プライドがないのも考え物ね」
バフォメット「自信が有りすぎるのもどうかと思うがの」
エルフ「何故私を見る？」
リリム「じゃあ、魔物で考えるとどの娘になると思う？」
バフォメット「やはりこやつじゃろ」
エルフ「……さっきからお前は何故私に対してそうケンカ腰なんだ！？」
バフォメット「五月蝿い五月蝿い！だいたいお主らエルフやヴァンパイアは美しいだの何だの大人びおって、成長も早いし身長も高いし、いや成長が早いのが一番ムカつくんじゃあ‼」
リリム「あー(これはあれね。幼女のプライドって奴ね)」
エルフ「……そうか。そうかそうか。分かった。なるほど。お前も随分傲慢じゃないか」
バフォメット「お主に言われたくないのじゃ！」
リリム「あぁもうケンカしないの！仲良くね？」
バフォメット「にゅわ！？」
エルフ「な、抱き寄せるな！」

ポヨンポヨン。

バフォメット「……」
エルフ「……」
リリム「な、何、二人とも黙って？」
バフォメット「いつも崩れる事のない余裕の態度」
エルフ「王族としての整った気品」
バフォメット「魔王の娘であると言う自負」
エルフ「そして何よりこの胸……」
バフォメット「一番傲慢なのはお主じゃ」
リリム「何でよ！？」


二つ目、『憤怒』

リリム「『憤怒』ねぇ」
バフォメット「どうしたのじゃ？」
リリム「いえ、私達魔物からすれば縁遠いなって」
龍「そうでもないですよ」
バフォメット「そうかの？」
龍「ええ、以前あなたはエルフとケンカしていたでしょう？あれは『憤怒』だと思いますが？」
リリム「あー、確かに」
バフォメット「……そう、じゃの」
リリム「相当する悪魔はサタンですって」
バフォメット「じゃが、サタンはいくつかの説でルシファーと同一視されておるの」
龍「そう考えると、『憤怒』と『傲慢』って関連深いですね」
リリム「そうね。前のケンカだって『傲慢』から『憤怒』が出たものね」
バフォメット「一説にはサタンの堕天前の名前がルシファーだったとされるの。つまりルシファー(傲慢)からサタン(憤怒)が生まれたと解釈できるのぉ」
リリム「面白いわね」
バフォメット「『憤怒』と言えば、龍には触れたら怒り狂うとされる『逆鱗』があるのじゃろ？」
龍「ええ。正確には盛り狂いますが。あ、触れたら相手が女の子でも容赦なく犯しますからね？」
バフォメット「……分かったのじゃ」


三つ目、『嫉妬』

リリム「これは……(なかなか怖い題材が……)」
バフォメット「そうじゃな……」
白蛇「どうかいたしました？」
リリム「ひっｰｰ！」
バフォメット「なな何でもないのじゃ！」
白蛇「そうですか」
リリム「(よ、寄りにも寄って何で白蛇なのよ！)」
バフォメット「(嫉妬深そうな魔物で一番反応が怖そうなのじゃ……！)」
リリム「……じゃあ、まず『嫉妬』って言えば、『あれ良いな』とか『羨ましいな』って思う、羨望の事よね」
白蛇「『羨ましい』……ですか」
バフォメット「人の物が欲しくなるのはあまり良いとは言えぬの」
白蛇「そうですね。私も良くないと思います。でも……」
バフォメット「でも？」
白蛇「好きになってしなったら、人のものでも欲しくなりますね」
リリム「ビクゥ！(怖い、笑顔が怖いわ！)」
バフォメット「だ、ダメじゃぞ？そう言うのは」
白蛇「フフ、分かっていますわ」
リリム「相当する悪魔はレヴィアタンですって」
バフォメット「レヴィアタン……。別名リヴァイアサンじゃな」
白蛇「海の大蛇ですね。しかし、何故レヴィアタンが『嫉妬』を司るのでしょうか？」
リリム「……蛇だからじゃないかしら……………………？」
プルプル。
白蛇「蛇？」
ビクゥ！
バフォメット「で、伝承によるとレヴィアタンは最強の怪物だったそうじゃ！しかしあまりにも凶暴だったせいで雄は殺され雌だけになり、子供が作れなくなったそうじゃよ！？」
白蛇「ああ、それは可愛そうに。つまり自分に夫が居ないから夫が居る娘に嫉妬するのですね？」
バフォメット「そうじゃそうじゃ！」
リリム「(な、ナイスバフォメット！)」
白蛇「納得がいきました」
リリム「それは良かったわ」
白蛇「所で」
リリム「はい？」
白蛇「先程の『蛇』と言うのは何ですか？」
リリム「……」


四つ目、『怠惰』

リリム「ぐうたらね」
バフォメット「ぐうたらじゃな」
ワーキャット「ぐうたらにゃ」
リリム「動かないのってあまり良くないわよね」
バフォメット「そうじゃな」
リリム「やっぱりそう言う時は運動に限るわね」
ワーキャット「でも日向でゴロゴロするのも良いもんにゃ」
リリム「キモチ〜わよね〜」
バフォメット「いつの間にか眠ってて起きたら日が落ちておったり」
リリム「分かる〜」
バフォメット「もう何かしらの魔力で動けないのじゃ」
リリム「そうそうｰｰって、はっ！いけないいけない！続けましょう」
バフォメット「はっ！これも魔力なのか！？」
リリム「えっと、相当する悪魔はベルフェゴールですって」
バフォメット「……『幸せな結婚などない』と言いよったうつけものじゃな」
リリム「そうね。最低ね」
ワーキャット「酷い言われようにゃ」
リリム「しかもそれが観察の結果って言うのが腹立つわ‼今の結婚性活を見せてやりたいわ‼」
バフォメット「所でリリムや」
リリム「何かしら？」
バフォメット「そのベルフェゴールは何処が『怠惰』なのじゃ？」
リリム「え？えっと……」
ワーキャット「ただの暇をもて余した悪魔の遊びにゃ。テレビ見てテキトーに批評する紐と変わりないにゃ」
バフォメット「なるほどの」
リリム「流石いつも暇をもて余してるワーキャットね……」


五つ目、『強欲』

リリム「『強欲』って、魔物はみんな強欲よね」
バフォメット「誰もが夫を欲しがっておるのじゃ」
ドラゴン「だが欲と言うのは生きる上で欠かせない要素の一つだな」
リリム「ただそれが強すぎると良くないわね」
バフォメット「そうじゃな」
ドラゴン「何故私を見る？」
リリム「知っているわよ。あなた住みかにお宝を一杯溜め込んでいる様じゃない」
ドラゴン「な！？いや、あれは先祖代々受け継がれた物でｰｰ」
バフォメット「じゃがもともとは人から奪った物じゃろ？」
ドラゴン「……確かにそうだが」
リリム「ギルティね」
バフォメット「ギルティじゃ」
ドラゴン「何故だ！？」
リリム「まぁそれは置いといて、相当する悪魔はマモンよ」
バフォメット「お金に盲目じゃったり、はたまたそれをばらまいたり、よくわからんの」
ドラゴン「金をばらまくのは、単に自己顕示ではないのか？」
リリム「『私はお金を持ってるぞー‼』って？」
ドラゴン「有り余るほど持ちすぎると、つい人に見せびらかしてしまう物だ」
リリム「それは経験談かしら」
ドラゴン「そんな訳あるか！」


六つ目、『色欲』

リリム「これの何処が罪なのか私には分からないわ」
バフォメット「昔は罪だったんじゃろう。今では推奨される事じゃな」
リリム「じゃあ今じゃ『六つの大罪』になってるのね」
ダークヴァルキリー「馬鹿者。人間にとっては充分に大罪になりうる」
リリム「きゃあ！」
バフォメット「おう、いきなりじゃの」
ダークヴァルキリー「確かに我々魔物は色欲こそ求められるものだが、人間にとっては充分大罪になりうる」
リリム「何でよ？」
ダークヴァルキリー「行き過ぎた行動は生命をも危うくする。特に人間の男は魔物の介入がなければ腹上死する」
バフォメット「あー」
リリム「あー」
ダークヴァルキリー「まぁ、今では『腹上死』と言う単語すら聴いたこともないがな」
リリム「まさに死語ね」
バフォメット「じゃな」
リリム「と言う訳で、次は悪魔ね。相当するのはアスモデウスよ」
バフォメット「またよくわからんの。『色欲』に繋がりそうな逸話など聴いたこともないのじゃ」
リリム「そうね。でも激情と情欲の魔神だったらしいから『色欲』に当てられているらしいわ」
バフォメット「姿形は牛、人、羊の頭とガチョウの足、それと蛇の尻尾を持つとされておる」
ダークヴァルキリー「キマイラか？」
リリム「キマイラね」
バフォメット「キマイラじゃな」
リリム「じゃあ、何でダークヴァルキリーがいるの？」
ダークヴァルキリー「……堕ちたからか？」
リリム「あー」
バフォメット「あー」


六つ目、『暴食』

リリム「いよいよ最後です。『暴食』と言えば、この方ですね。どうぞ」
ベルゼブブ「呼ばれて飛び出てベルゼブブ〜‼」
リリム「相当する悪魔もベルゼブブね」
バフォメット「まさにそのままじゃな」
リリム「もう詳しい事は図鑑に載ってるでしょう。終わりましょう」
バフォメット「ご苦労様じゃったな。気をつけて変えるのじゃぞ」
ベルゼブブ「おぃい！」