連載小説
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『家族の愛』
昔、ある家に一人の少年が居た。
少年は裕福な家に育ったが、人一倍厳しく育てられた。
父は政治家で、その中でも重要な役割を受け持っている人物だった。そして少年も政治家として育てられた。
学校が終われば、学校で習わない分野を勉強し、休日も勉強以外の事はほとんどさせてもらえなかった。
一日のほとんどは勉強だった。
それ故に不満もあった。

家族だ。

母は赤ん坊の頃に亡くなり、父は一日のほとんどが仕事で、家にいるのは毎日日替わりで来る家政婦と家庭教師。
そのせいで少年は『家族の愛』を受けなかった。
故に少年は愛を知らない。
誕生日だってろくに祝われた事がない。たった二人だけの家族なのに。
顔を合わせれば政治の話か勉強の話のみ。ろくに世間話をしたことがなかった。聴いても貰えなかった。
学校であった出来事や、最近知った出来事の話をしたかったのに。
少年は成長と同時に父に対して心を閉ざした。
だが、学校に居れば嫌でも人と関わる。つまり刺激を受ける訳だ。
クラスメイトの口から出る「家族との旅行」「家族でパーティー」「家族で、家族で家族で家族家族家族……………………。
少年は周りから浮くようになった。一人だけ家族との思い出が一切ないからだ。家族が居ない訳でもないのに。
そのせいで人に冷たく接し、ことさら勉強に勤しんだ。
時には虐めを受けもした。教師に言いつければそれもすぐ納まったが。
だが、少年は孤独になった。
だが、それも今更で、少年の中で何かが変わる訳でもなかった。

ある日少年は、父に反抗した。
それは月に数回しかない二人での食事の時の事だった。
「……父さん」
「何だ?」
「僕は、何故政治家にならなければいけないのでしょうか?」
「何が言いたい?」
父は、普段から冷たかった。この時も、少年には目も向けずに聴いた。
「僕は、幼い頃からずっと政治家になる為の勉強をしてーー」
「前置きは良い。要件を言え」
「僕には、政治家になる理由が見出だせません」
「見出ださなくて良い。政治家がお前の居場所だと思え」
「政治家が、僕の居場所ですか?」
「そうだ。お前の居場所は政治家だけだ」
「……政治家『だけ』……ですか」
キッパリと良い放たれ、少年は咄嗟に口をつぐんだ。
それでも、少年は言いたかった。
様子を見て悟ったのか父が指摘する。
「言いたい事があるならはっきり言え」
少年は意を決して問うた。
「……僕に『家族』と言う居場所はないのですか?」
「…………」
「別に今更遊びたい等と言うつもりはありません。ですが、僕には『家族』の思い出も、何故政治家にならなければいけないのか、その動機も与えられて居ません」
父は複雑な表情を浮かべ、押し黙った。そして視線を附せ、短い溜め息を吐いた。
少年にはその溜め息が呆れから来るものなのか、それとも別の理由からか解らなかった。
父はその日、何も言わず夕飯を残して部屋へと戻っていった。

後日、少年は父に言われた。
「お前が政治家が嫌だと言うのなら、止めても良い。だがせめて大学に受かってから決めろ。それまでは政治家を目指せ」
大学に受かったなら、好きに道を選べと。そう言うことだった。
少年はその言葉に内心歓喜した。
別に政治家になりたくない訳ではない。だが、今までは押し付けるだけだった父が、初めて譲歩してくれた事が嬉かった。

例え本当の願いを聞き届けてくれなくても。

少年は政治家と言う一本道から脱け出すために政治家になる道を進んだ。
いつも以上に勉強に勤しみ、高校では常に上位に立つ代わりに、常に孤独だった。
それも今の内だけだ。
少年は高校を卒業するといよいよ大学の入学試験を受けた。
結果は文句なしに合格だった。
結果を受けた父は珍しくパーティーを開くと言った。
僕の合格を祝って。
僕はその時、心から嬉しかった。
食堂へ向かえば豪勢な食事やケーキが並んでいた。
家政婦も僕の様子に笑顔を浮かべ、「良かったですね」と祝福してくれた。
生まれて初めて、父と『家族』の思い出が作れる。
僕は父が帰ってくるのを心待ちにした。

だが、父は帰ってこなかった。
後日会った時の父は、冷たく動かなくなった状態だった。
交通事故に逢ったらしい。


僕は、『家族の愛』を受ける事はなかった。


僕は入学を取り消して貰った。
違う大学で政治家以外の道を歩もうと決意した。
そしていざ外の世界に触れたとき、僕は身動きが取れなかった。
学門が違えばとことん無知で、就職先も見つからず、バイトもろくに出来ない。
僕は、結局試験を受け直し、政治家への道を歩き直した。
僕には父が言ったように政治家にしか居場所がなくなっていたのだ。
分かれ道など、とっくに過ぎていたのだ。
これはただの逆恨みや八つ当たりでしかない。
でも僕は、父を心から恨んだ。不可抗力で、もうどうしようもないのに。
選択肢を奪い、求めていた居場所さえも与えてくれなかった父を心の底から恨んだ。





「…………」
体を締め付けられる感触が僕を起こした。
横に目を向ければ、気持ち良さそうに寝息を立てる美女の寝顔。
甘い香りが鼻をくすぐり、吐息が肌にかかる。
……僕の新しい『家族』で、散々嫌がっていた『王』に仕立て上げてしまったネテプシェリティ。
「ネテプ、僕は君が羨ましい」
彼女は、僕と同じだ。親に義務や責任を押し付けられ、苦しんだ。
だが、僕と彼女には、一つだけ違う所がある。
『家族の愛』を受けていた事だ。
両親の愛情を注がれ、愛情によって縛り付けられていた所が、僕と彼女の決定的な相違だった。
愛を知っている分余計に苦しかったのだろう。それは分かっている。
でも、愛を知らない僕には彼女が非情に羨ましかった。これ以上無く。
「……止めよう」
これ以上考えたら、僕は彼女さえも恨んでしまうかも知れない。
それは駄目だ。
もう終わった事だ。
これからは彼女が、僕の『家族』なんだ。
彼女は僕を愛してくれている。ここが僕の居場所になる。それで十分じゃないか。

何を羨み、恨む必要があるんだ。

「ネテプ……」
僕は眠るネテプを抱き締め、キスをする。
「……んみゅ……ジュード……?」
ネテプは目を覚まし、まだ虚ろな目を、僕に向けた。
「……ネテプ……、ん」
「……む、んむ……チュッ、……はむ……ちゅ♥」
貪るように舌を絡ませる。
「……ん、ジュードォ、今日はやけに積極的だな」
「……駄目か?」
「いや、嬉しい」
妖艶に笑むネテプに僕はまたキスを落とす。
そのまま体を重ね、彼女の熱を感じる。
「フフ、前は近付くことすら出来なかった癖に」
「君が僕をこうしたんだ」
「お前が私にそうさせたんだ」
ネテプの豊満な胸を撫でるように揉み、同時に首筋を舐め、そのまま上に行き耳を舐める。
「……ん、ジュード耳は、ぁ、止めろ」
「感じてるじゃないか」
「……馬鹿」
ネテプは耳が弱い。舐めれば身を捩って顔を赤くする。
「はぁ、ん、っぁ……♥」
ネテプの感じている姿が、表情が、声が、視線が、僕の鼓動を早める。
「……ネテプ」
「ぁ、……何だ?」
「君は、僕を愛してくれているか?」
「愚問だ」
ネテプは優しく微笑む。
僕は何故か安堵した。
「……ありがとう」
僕はキスをして、いきり立ったものをネテプの秘部に挿入した。
「はんんッ!む、ふぁぁあああ♥!」
思わず挿入れてしまったが、濡れていたためにすんなり入ってしまった。
「ック、ぁっ!」
ネテプの中は気持ち良く温かい。
彼女の熱をもっと感じたくて、僕はネテプを抱き締め密着した。
「んっ、ジュード?」
「ネテプ……、これからもずっと、……ずっと、僕を愛してくれるか?」
「……当たり前だろう?私は永遠に、お前を愛し続けるよ」
ネテプから紡がれる言葉が、僕を満たし、同時に何故か切なくさせた。
「はんんッ♥!な、何大きくしてっーー!?」
「もう一度、言ってくれ」
ネテプの言葉が、もっと欲しい。
僕は腰を動かし始めた。
「あ、アン!はっ、……あ、愛してる♥!」
「はっ、っもう一回!」
ネテプの熱が、もっと欲しい。
「あ、っはぁ♥!愛してる、愛してるぅ♥!」
「もっと、……もっと言ってくれ!」

ネテプの『愛』が、もっと欲しい。

「はあ、愛してぇ、る♥!っっはぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ♥!!!!!」
「はっく…ぁぁ……!」

僕の熱がネテプに注がれていく。
ぐったりと彼女に被さると、僕の内側で響く心臓の音とネテプの鼓動の音が重なりあっていくのが分かる。
「…………はぁ、はぁ、……激しかったな」
「…………」
ネテプの肌は、綺麗で、滑る様に滑らかな感触をしていた。
もっと触りたい。
「……ん、どうした?」
胸は柔らかく弾力があって、ずっと触っていたくなる。
「あ、ジュード、そこ、ん♥!」
鱗の感触も肌とは違う滑らかさで、心地良い。何を恐れていたのだろうと昔の自分が不思議になる。
「ネテプ」
「なんだ……、んっ、じゅ、ジュード?」
ネテプの恥ずかしがる表情が、まるで誘っているように見える。
僕の中で、欲望が次第に膨れ上がる。
「もっと、……シないか?」

ネテプが欲しい。
16/05/24 03:06更新 / アスク
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■作者メッセージ
と言う訳で始まりましたジュード編!
今までは「義務と責任」をテーマにやっていましたが、ここからは「認識と愛」とその他諸々をテーマにやって行きます!
「認識と愛」ってまとまりないですね。気にしない!

え、ジュード君病んできてないかって?
……さあ?

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