プロローグ:望まれる王と望まない王
魔界の砂漠地帯に、一つの王国が栄えていた。
その名はケピアカーナ。恵みの嵐に揺られる船と言う意味の国である。
その国には多大な富があった。それは国民に貧困層が出なかった程だ。
それはケピアカーナの王、ファラオであるナヌタビアの威光による。
だが、その威光も永くは続かなかった。
宵闇の蛇、アポピスに堕とされたのだ。
アポピスの名はネテプシェリティ。彼女は一人でケピアカーナの兵、そしてナヌタビアに真っ向から挑み、国を勝ち取った。
以来、ケピアカーナに太陽が登る事は無くなった。
そして、ケピアカーナ宮殿の玉座の間。
「……あ、ハン!……ンン!ぁあもっとぉ!♥」
「…………はっ、ナヌタビア!」
本来神聖な筈のそのでは、元王のナヌタビア、そしてその夫、エムハブの営みが行われていた。
アポピスであるネテプシェリティこと私は、玉座に腰かけ、それを眺めていた。
そして大きく溜め息を吐く。
「かつての王の威光等、微塵もないな。ナヌタビア」
それは嘲笑ではなく、ただ単に呆れ果てた声音。
ナヌタビアは蕩けた瞳で私を見る。
「アン、ンン!汝とて、ハァ!……同じであろう……?今やぁ、汝がこの国の王だぞぉ?」
嬌声を響かせるナヌタビアは、それでも毅然とした王の顔を垣間見せる。
私は思わず狼狽える。
「……っ!私は王になったつもりはない!」
「我を……、『王の力』を破りぃ、ンン!我を打ち、負かした汝がぁ!王でないと?は、はげしっ!」
「……そうだ」
ナヌタビアはまるで面白いものを見るように笑う。
「ほう?だが、民は言う、アァ、だろう。この国の、…王はっ!汝だと……」
「ーー!私は王ではない!」
私は憤り、ナヌタビアに飛び付いて首筋を噛んで毒を流す。
ナヌタビアの表情がさらに恍惚さを増した。
「ア、ソレダメッ、イッちゃ!アア、ああああああああああああああ!!!♥」
ナヌタビアは突然沸き上がる熱と快感に堪えきれず果てる。
「私は、王なぞ望んでいない……」
黄金の瞳は、果ててもなお快楽を貪ろうとする元王の醜態を映していた。
宮殿のベランダから国を見渡す。
明けることのない闇色の空。聴こえてくる魔物娘達の喘ぎ声。蟻のように小さく見える彼女達の醜態。
一見、国とは言えないこの地も、結局国として形を残している。
何故か。私がここに王として崇められているからだ。
全ては私がナヌタビアを撃ち破ったからだ。
現魔王が魔王に就任して世界が変わった様に、私が前王を撃ち破り、まるで国が私を王と認めたとばかりに私の魔力がケピアカーナ全域に広がった。
そして全ての民が私を国王として崇め始めた。
「何故、皆王を求める?」
交わり合う一組の夫婦が私を視認し、笑顔と共に手を振った。
皆互いしか見ていないと言うのに、何故それでも王を求めるのか?
「ただ互いを愛し合えば良いだろう」
もう一組の夫婦は私を見るなり頭を垂れた。
何故私を見る。
私は、自分を慕う国民を見て、歯噛みした。
何故、私を慕う!国を滅ぼした私を!
私はただ、『王を倒す』と言う宿命から解放されたかっただけだった。
それなのに……!
「…………ん?」
今、光が見えた。灯された炎とは別の、強い光を。
「何だ、今のは?」
一瞬だけ、太陽の様な強い光が瞬いた。
明けることのない夜に、何故。
私は気になって宮殿を出た。
光を放ったその場所へ。
その名はケピアカーナ。恵みの嵐に揺られる船と言う意味の国である。
その国には多大な富があった。それは国民に貧困層が出なかった程だ。
それはケピアカーナの王、ファラオであるナヌタビアの威光による。
だが、その威光も永くは続かなかった。
宵闇の蛇、アポピスに堕とされたのだ。
アポピスの名はネテプシェリティ。彼女は一人でケピアカーナの兵、そしてナヌタビアに真っ向から挑み、国を勝ち取った。
以来、ケピアカーナに太陽が登る事は無くなった。
そして、ケピアカーナ宮殿の玉座の間。
「……あ、ハン!……ンン!ぁあもっとぉ!♥」
「…………はっ、ナヌタビア!」
本来神聖な筈のそのでは、元王のナヌタビア、そしてその夫、エムハブの営みが行われていた。
アポピスであるネテプシェリティこと私は、玉座に腰かけ、それを眺めていた。
そして大きく溜め息を吐く。
「かつての王の威光等、微塵もないな。ナヌタビア」
それは嘲笑ではなく、ただ単に呆れ果てた声音。
ナヌタビアは蕩けた瞳で私を見る。
「アン、ンン!汝とて、ハァ!……同じであろう……?今やぁ、汝がこの国の王だぞぉ?」
嬌声を響かせるナヌタビアは、それでも毅然とした王の顔を垣間見せる。
私は思わず狼狽える。
「……っ!私は王になったつもりはない!」
「我を……、『王の力』を破りぃ、ンン!我を打ち、負かした汝がぁ!王でないと?は、はげしっ!」
「……そうだ」
ナヌタビアはまるで面白いものを見るように笑う。
「ほう?だが、民は言う、アァ、だろう。この国の、…王はっ!汝だと……」
「ーー!私は王ではない!」
私は憤り、ナヌタビアに飛び付いて首筋を噛んで毒を流す。
ナヌタビアの表情がさらに恍惚さを増した。
「ア、ソレダメッ、イッちゃ!アア、ああああああああああああああ!!!♥」
ナヌタビアは突然沸き上がる熱と快感に堪えきれず果てる。
「私は、王なぞ望んでいない……」
黄金の瞳は、果ててもなお快楽を貪ろうとする元王の醜態を映していた。
宮殿のベランダから国を見渡す。
明けることのない闇色の空。聴こえてくる魔物娘達の喘ぎ声。蟻のように小さく見える彼女達の醜態。
一見、国とは言えないこの地も、結局国として形を残している。
何故か。私がここに王として崇められているからだ。
全ては私がナヌタビアを撃ち破ったからだ。
現魔王が魔王に就任して世界が変わった様に、私が前王を撃ち破り、まるで国が私を王と認めたとばかりに私の魔力がケピアカーナ全域に広がった。
そして全ての民が私を国王として崇め始めた。
「何故、皆王を求める?」
交わり合う一組の夫婦が私を視認し、笑顔と共に手を振った。
皆互いしか見ていないと言うのに、何故それでも王を求めるのか?
「ただ互いを愛し合えば良いだろう」
もう一組の夫婦は私を見るなり頭を垂れた。
何故私を見る。
私は、自分を慕う国民を見て、歯噛みした。
何故、私を慕う!国を滅ぼした私を!
私はただ、『王を倒す』と言う宿命から解放されたかっただけだった。
それなのに……!
「…………ん?」
今、光が見えた。灯された炎とは別の、強い光を。
「何だ、今のは?」
一瞬だけ、太陽の様な強い光が瞬いた。
明けることのない夜に、何故。
私は気になって宮殿を出た。
光を放ったその場所へ。
16/03/03 00:39更新 / アスク
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