Chapter3 真紅の凶刃・前編
村正 -千子村正-
日本人の誰もが耳にしたことがあろう妖刀
舞い落ちる木の葉が村正に吸い付くように落下し、真っ二つに切れる。
血を吸う。測定器を近づけると目盛りがブレる。なぜか刃こぼれしない...
数えきれない逸話を持っている刀
室町時代に作成された日本刀である
この刀は古き日本の歴史の裏で常に暗躍していた
手にした者に揺るぎない力を与え名武将、将軍を屠り、名誉を我が物とするだろう
この刀の獲物となった者は破滅の運命を辿るのだ
そう、たとえ持ち主でさえも。
―妖刀よ、魔の現にても宵闇に赫を散らすか
ジパング、千子村
ここはせせらぎの村の反対の位置にある村
あまり裕福とは言えず、まだまだ古いしきたりがある
ジパングと言えば魔物に好意的であるが、この村は異界の者に厳しいままだ
あまり長く居座りたくはない
そんな印象を受ける
真久(まく)「桜〜お前何日同じ着物なんだよ〜」
凉灯(すずひ)「ふふっwしょうがないでしょwww」
秀(しゅう)「ああ!だって家無しだもんな!」
凛(りん)「私はぁまた新しい花輪の下駄を買ってもらっちゃったしぃ、かわいそぉ」
「「「「ははははは!!!!」」」」
桜(さくら)「...」
「...チッ五月蝿いガキ共が」
村の治安、雰囲気もせせらぎ村とは正反対だった
直接的な殺人や悪質な裏博打をするヤクザは居ないものの陰湿なイジメと怠け者な役人が
この反吐が出る環境に拍車をかけていた、学校の教師も見て見ぬ振りだ
優(ゆう)「お前ら!また寄ってたかって桜をイジめて!
やめろっつってんだろうが!」
俺、真田優はいつもいじめられるクラスの女の子、小松桜を助けに向かう
「あw出た出たw正義のヒーロー優くん!w」「わ〜かっこいいぃ〜」
「凉灯、凛ちゃん見ときなよ。俺の方がつえーから〜」
「凛!あとデートしようぜ!コイツをノシてからな!」
ポカスカ!ドタバタ!
ドッシ〜ン!!!
「イテテテ...ちくしょう...」
「「二人共かっこいいよぉ〜」」チュッ
「「はっはっはー!いこうぜ二人共!ダブルデートだ!」」
「...やっと終わったか、マセガキ共が」
役人がうっとおしそうにした後、また居眠りをし始めた
ボロボロの二人を一瞥することもなく
「真田くん...」「情けねぇ...ごめんな、桜」
「そんなっ!情けなくなんか...私なんて」
真田くん、貧乏で家もない私を気遣ってくれる男の子
私は彼が大好き
でも
「優っ!またこんな娘と絡んでっ!」「はやく向こうに行かんか!」
「母さん!桜は悪い娘なんかじゃ...」
ビシイッ!
「痛って...なんでぶつんだよ!」
「貧乏と言うだけで悪なのだ!負け犬!弱者!搾取される側の人間なのだぞ!」
「私達真田一族は勝つことを義務付けられた一族!こんな薄汚れた娘と遊ぶ暇はないのよ
あなたはその跡継ぎ、真田の長男。剣のお稽古とお勉強をしていればいいの!」
「さあこいっ!さっそく剣の稽古をするからな!」
「桜...」
私の恋は叶わないみたい
文無しと武家じゃ"人間の価値"が違うんだって、真田くんのお母さんが言っていた
私がいるから真田くんは傷つくのかな、私が居なければ真田くんは...
_/_/_/_/_/_/_/
無人の廃墟
「お父さん、ただいま」「おお、桜お帰り。学校はどうだった?」
「いつもどおり、楽しかったよ」
私のお父さん、とっても優しくて働き者
汗水たらして私を学校に通わせて、着物も買ってくれたお父さん
お父さんがチラリと私の着物を見る
「桜、ごめんな...とうちゃんが無能なばっかりに...
お前にこんな苦しい思いをさせてしまって」
顔を伏せて苦い表情をするお父さん
いつもそう、私がボロボロになって帰ってくるとこの顔を見せる
「そんなことない、私は優しいお父さんが大好き
それにお父さん、役人さんや学校の先生より一生懸命働いてる」
「お父さんばかりに大変な思いはさせないから
じゃあちゃちゃっと柴刈りに行ってくるね、すぐ帰るよ」
「桜...お前は...本当に椿によく似た娘になったな...」
椿、私のお母さん、3年前に病気で死んじゃった
お父さんと私は街中でお医者さんを探したけど誰も助けてくれなかった
地面に頭をこすり付けて泣くお父さんと私を煙たそうに見て
「よしっ、準備も出来たし行こう」
勝手に寝床にしている廃墟を出ると啜り泣く声が聞こえ始める
「椿ぃ...すまねぇなぁ...俺はあの娘までも不幸にしちまう...」
私がいるからお父さんは傷つくのかな、私が居なければお父さんは...
幸せになれたのかな
_/_/_/_/_/_/_/
父の声を聞いて早まる心臓の鼓動を抑え、柴刈りをする
大分ボロの鎌だから大変だ、だけどコレをやっていると嫌なことを忘れられるから
「ふぅ...あれ?洞窟?」
何年も歩き慣れた山道にぽつん、と広い洞窟が穴を開けていた
よく見れば石の灯篭も入り口にある、苔に塗れ相当年季が経ったものだと分かるが確かにそれは人工的に作られたものだ
「誰かが住んだ後なの?入ってみようか...」
子供の好奇心の強さが恐怖心に勝り、桜は洞窟を探索することにした
幸い一本道で灯も持っているようなので迷うことは無いだろう
「えらく小奇麗...虫の一匹も居ないじゃない」
不思議だった、明らかに人の痕跡もなく手入れもないであろう洞窟が
壁を磨かれたように綺麗なのだ。
そして暫く桜が歩いていると
「!?!?!?!?!?」
金、金、金、宝、宝、宝
洞窟の先が見えないほどの金銀財宝で視界が埋め尽くされる
「なにこれえっ!?す、すごすぎる!誰かのま、ま、埋蔵金なの!?!?」
これだけの金があれば一体何ができるだろうか
ジパング最高のご飯だって着物だって、呆れるほどの豪邸だって、村の権力者にだってなれる
「あは...は...ぐすん...」
天国のような光景に桜は自然と涙を流す
これはきっと神様の施しだ、辛くても一生懸命学校にいって柴刈りをしてたのを見てくれたに違いない
「こっちはレスカティエのカラクリ置き時計!これは霧の大陸の金屏風ね!!...ん?」
目も眩むような高級調度品を見ている時、一つの宝が目に入った
異様な雰囲気、しかし手に取らずには居られない雰囲気
宝の山で舞い上がっている心は警戒することもなくそれに近づく
「鞘に入っている刀みたい...これも名のあるお宝なのかな?見てみよう」
チキンッ、スゥゥゥゥゥ
静水の流れの如く刀身が晒されてゆく
不思議なことに刃は赤く、刃こぼれが一切ない
桜には分かる、これが名刀だと
彼女はいつも刃物専門店で高そうな鎌や包丁を見ている
これは相当に上質な鋼で打たれた業物だ、赤い刀身の素材は一体?
誰がこんな者を作成したのだろう
しかしとにかく物凄いお宝であることには変わりないはず
「よしっ、このお宝と刀をお父さんのところへもってかえ...」
ドズッ!
「え?」
妙な音のした胴体に目をやる
ひとりでに刀が突き刺さっているではないか、私の心臓に
「か...ふっ...?」
後ろには誰も居ない、抜かれた鞘と財宝だけが転がっていた
訳がわからないがこれは祟りの仕業、そう桜は結論付けざるを得なかった
「ぁ...ぅ...」
もう意識を保つことも出来ない、
(やっぱり神様なんていなかったんだ、貧乏で欲深かな私へのバチだったんだ
もうちょっと...なが...いき...お父さんお母さん...ゆう...く)
目の前が真っ暗になる瞬間、声が聞こえた
『見つけたぞ...妾に相応しき器...』
_/_/_/_/_/_/_/
「真っ暗...私、やっぱりあの時に死んだんだ」
目が覚めて辺りを見回す
足元、360°真っ暗な空間、それに少しの浮遊している感覚
あの出来事の後だ、きっとここは死後の世界
それにこの様子じゃとても天国なんて場所じゃないだろう
『お〜桜、起きたか』「ひいっ!?」
何も居なかったはずの後ろから唐突に名前を呼ばれる
死ぬ寸前に聞いた声だ
「あなたはっ...死神なの?まさか私を地獄に...」
『妾が死神?くすくす...はずれじゃ、それにお前は死んでもいないしここは地獄でもない』
謎の女、赤い着物に金の簪、真っ白な肌に潤った唇には紅が点してある
死神と言うよりは花魁?それに私は死んでいない?
全てが意味不明で発狂してしまいそうな頭を押さえつけ
彼女に一体何がどうなっているのか強い口調で尋問し始める
「何が面白くて笑っているの!?ここはどこ!あなたは何者!?
私は一体どうなって...!」
『もーそうカッカするでない、可愛い顔が皺だらけになっちまう』
「ふざけないでッ...!」
『あーはいはい、妾は"ムラマサ"さっきお前を斬った刀じゃ
お前さんが随分見とれてたのを覚えとるぞ♥』
人を斬ったと言いながらこの女...
絶対に正気じゃない
「っ!じゃあアンタが私を殺した祟りなのね!」
『これこれそう睨むでない、妾はこの剣に宿りし魔物じゃ
確かに斬ったが殺そうと思ったわけではないわ、妾を持つにふさわしい器
そう、おぬしが現れて...』
「持つにふさわしい...?何わけのわからない事いってるの!?
こんな魔物に呪われて一人でに動く刀なんかもういらないよっ!」
「あなたにはもう関与しないしここには来ない!
私は死んではいないんでしょ?だったらもう早くここから出して!」
気が気じゃない、一刻もはやくお父さんの所に帰りたい
こんな洞窟入るんじゃなかった、頭の中で何度も後悔する
『それは出来ぬ相談じゃな、妾はお前に力を授け一体となると決めた
それまでは家に返せぬ、それに...』
『また負け犬の人生を歩むのは嫌であろう?』「なっ?!」
心の奥底、桜が常に考えぬようにしていた言葉
たとえ自分がそうであっても考えないよう心の底に押し込んでいた言葉を
この女は目の前でほじくり返した
この女はなんで私の心が見える?
「ッ...このぉー!」
いつも気丈に振舞っている桜も堪忍袋の緒が切れる
何故見ず知らずの自分を襲った魔物にまでコケにされなくてはいけない?
そう思った時には体が動いていた
『家も無く貧乏で、齢の同じ学徒にはいじめられ恋い焦がれる男には
身分不相応と門前払い、助けてくれる人はだぁーれもいない』
スカッ
怒りのこもった拳はムラマサに届かない、煙を殴っているようだ
『母は死に絶え父も生きるのがやっと、歳相応のお洒落もできない桜よ
お前は一生懸命働いて、誰より手をボロボロにしてるのに報われないねぇ』
「ううっ...くぅ...」
『父が死んだらどうなるんだろうねぇ
死ぬまで柴刈りをして野垂れ死ぬか、淫売になって梅毒で死んじまうのかね』
「ぐすっ...うわああぁん!」
『可哀想な桜、自分がたまたま弱者側として生まれただけでこんな人生を歩んでる』
『辛いねぇ、苦しいねぇ、哀れだねぇ』
『でも』
急に煙のように漂っていたムラマサが実態を持ち始めた
慈母のような表情で近寄り、自分に絶望して泣いた桜を抱きしめる
『妾はお前に力を与えてあげることができる』
「ぐすっ...?」
『天まで届く大きな城、一生使い切れないような金、いままでお前をいじめていた連中が足元にも及ばなくなるような権力を手に入れられる』
『屑共を力で黙らせ、服従させ、お前の操り人形にできるんだよ
お前が欲しいといったものは手に入る世界になるんだよ』
「...!」
桜は泣き止む、目に光が宿る
強く逞しい、生者の目に変わった
『そう、全てはお前次第だよ。あの頃の家族との幸せな一時
これからの優との甘い永遠、全てお前の好きにできる
不幸で理不尽な世界からの開放だってね』
「私は...私だってえッ!」
瞳が赤く染まる、村正の刀身のように
決意を宿した捕食者側の瞳に
『―妾を取れ、小松桜』
「うおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!」
天下無双、此処に在り
_/_/_/_/_/_/_/
夜
「はぁ...だりぃなぁ給料も増えねーってのに...」
昼間の役人、さんざん昼寝をしておいて職務中に怠いと言い放つ
悪行を見て見ぬふりをする狼藉者、腰には無銘の刀を差している
「お兄さん、お仕事中にその態度はダメだよ」「うォわぁ?!」
本当に気を抜いていたようで間抜けな声を上げてすっ転びそうになる
いい気味だ
「てめぇいきなり...ん!?昼間の娘か?」「うん、お兄さんが嫌そうに見てたね」
桜は不気味な微笑を続ける、白々しく振る舞いながら
「小娘が...なっ!?お前そ、その腰のは!?」
「刀だよ、よく知ってるでしょ?おにーさんみたいな人をぶった斬るど・う・ぐ」
役人が一気に距離を取る、体がこの小娘から逃げろと
これは危険だと信号を送った
「ぐっ...たかが帯刀した小娘に...
ふん、まぁいーか、お前は廃刀令に背いた、遠慮無く斬り殺してやるよ」
「へぇ、ちゃんと仕事する気もあるんだね」
「黙れよぉ...乞食のガキイィ!」
刀を振り上げた瞬間桜が消えた、最初から無人だったかのように
辺りに静かな虫の音と刀を振るう音が響く
「ははっ、役人のお兄さんも案外大したことないね
そんな蝸牛みたいな速さじゃ当たらないって、腕で抜刀してるね
腰で一気に抜かなきゃダメダメ〜」
桜は役人の後方数メートル先で彼の帯を見せびらかした
一体どんな速さで、いつの間にスリ取ったのか
「私がお手本を見せてあげる」「うっ...!ま、待って」
居合の構え、稲光のような速さで抜刀し対象を両断する
先手必勝の技
「魔剣・赫燕」
ドンッ!と地面が桜の踏み込みに耐えきれず抉れると再び桜が消える
次の瞬間には役人の真横に現れた
そして桜は彼の背中めがけて回転しながら抜刀する
神速の回転居合い斬りは二度彼の背中を切り裂いた
そして、背中の傷2箇所から赤い液体が噴出する
真っ赤な翼の燕(つばめ)のように
「う、うわァああぁァァァ〜?!血、血がァ〜?!死んじまうよォ〜〜〜」
「あー大丈夫大丈夫、それ血じゃなくて精ってやつだから
人間の生命の源って感じかな?とりあえず死なないから落ち着いてよ」
「あぁア〜〜〜!まだ俺はぁ〜〜〜〜!!!」
「こらこら、そんなに騒ぐと...」
一応男に忠告をしておいてやる
まぁ斬られた時点で助かる見込みはないんだけどね
乾きとアレからは逃れられないから
「んはぁ...ふぅ...乾くぅ♥ムズムズとまらないのぉ♥」
「ほ〜ら言わんこっちゃない...」
メガネを掛けたグラマラスの女性、ムンムンとメスの匂いを撒き散らしながら役人に歩み寄る、下着をつけていないのか彼女の通り道には愛液の水たまりができていた、この淫乱な女性、正体はいじめを黙認していた桜の教師だったものだ
精とはいえ赤い液体を噴出して倒れる男を見ても平然と発情し続けている
役人はこの女達から逃げてやろうと思っていたが、なんだか変な気分になる
(この女...滅茶苦茶にマンコを濡らして...すげぇ...それに...体がの奥底まで...乾くような...)
女教師が役人の顔に尻を下ろし、股間に顔を押し付けて下着の上から思い切り深呼吸をし始める
「すんすん♥すうぅぅぅぅ...はあぁぁん♥この人の...ステキぃ♥
洗ってないおちんぽぉ♥あたまがクラクラするうぅ♥」
「わたしぃ、あなたの事がすきになっちゃったみたい♥
もう我慢出来ないのぉ、ちんぽしゃぶるうううぅぅ〜♥」
ずるり、ぴちゃ♥ぴちゃぁ♥
じゅぶるるるるるぅぅ♥じゅっぽ♥ずぞぞぞっ♥ちゅっばぁ♥
「うおおぉっ?!すご...すぎる俺もアンタを気持ちよくしてやりてぇ...」
男は熱い溶岩のようなマンコを一心不乱にクンニしはじめる
宵闇にちんぽとまんこをしゃぶる音が響くのだった
「あはっ♥やーっぱりはじまった♥二人共、末永くお幸せに♪」
二人は桜に斬られた、サキュバスとインキュバスになったのだ
桜は魔物、カースドソードとなり揺るぎない力を手に入れた
彼女は人を斬り殺すのではなく、人々の理性を断ち斬る
精の枯渇した人間は互いを求め交尾し、魔となって結ばれる
新魔王時代、妖刀村正は人を殺す事は無かった
桜は誰も傷つく人の必要の無い世界のために生まれ変わる
刀を腰に携えて。
日本人の誰もが耳にしたことがあろう妖刀
舞い落ちる木の葉が村正に吸い付くように落下し、真っ二つに切れる。
血を吸う。測定器を近づけると目盛りがブレる。なぜか刃こぼれしない...
数えきれない逸話を持っている刀
室町時代に作成された日本刀である
この刀は古き日本の歴史の裏で常に暗躍していた
手にした者に揺るぎない力を与え名武将、将軍を屠り、名誉を我が物とするだろう
この刀の獲物となった者は破滅の運命を辿るのだ
そう、たとえ持ち主でさえも。
―妖刀よ、魔の現にても宵闇に赫を散らすか
ジパング、千子村
ここはせせらぎの村の反対の位置にある村
あまり裕福とは言えず、まだまだ古いしきたりがある
ジパングと言えば魔物に好意的であるが、この村は異界の者に厳しいままだ
あまり長く居座りたくはない
そんな印象を受ける
真久(まく)「桜〜お前何日同じ着物なんだよ〜」
凉灯(すずひ)「ふふっwしょうがないでしょwww」
秀(しゅう)「ああ!だって家無しだもんな!」
凛(りん)「私はぁまた新しい花輪の下駄を買ってもらっちゃったしぃ、かわいそぉ」
「「「「ははははは!!!!」」」」
桜(さくら)「...」
「...チッ五月蝿いガキ共が」
村の治安、雰囲気もせせらぎ村とは正反対だった
直接的な殺人や悪質な裏博打をするヤクザは居ないものの陰湿なイジメと怠け者な役人が
この反吐が出る環境に拍車をかけていた、学校の教師も見て見ぬ振りだ
優(ゆう)「お前ら!また寄ってたかって桜をイジめて!
やめろっつってんだろうが!」
俺、真田優はいつもいじめられるクラスの女の子、小松桜を助けに向かう
「あw出た出たw正義のヒーロー優くん!w」「わ〜かっこいいぃ〜」
「凉灯、凛ちゃん見ときなよ。俺の方がつえーから〜」
「凛!あとデートしようぜ!コイツをノシてからな!」
ポカスカ!ドタバタ!
ドッシ〜ン!!!
「イテテテ...ちくしょう...」
「「二人共かっこいいよぉ〜」」チュッ
「「はっはっはー!いこうぜ二人共!ダブルデートだ!」」
「...やっと終わったか、マセガキ共が」
役人がうっとおしそうにした後、また居眠りをし始めた
ボロボロの二人を一瞥することもなく
「真田くん...」「情けねぇ...ごめんな、桜」
「そんなっ!情けなくなんか...私なんて」
真田くん、貧乏で家もない私を気遣ってくれる男の子
私は彼が大好き
でも
「優っ!またこんな娘と絡んでっ!」「はやく向こうに行かんか!」
「母さん!桜は悪い娘なんかじゃ...」
ビシイッ!
「痛って...なんでぶつんだよ!」
「貧乏と言うだけで悪なのだ!負け犬!弱者!搾取される側の人間なのだぞ!」
「私達真田一族は勝つことを義務付けられた一族!こんな薄汚れた娘と遊ぶ暇はないのよ
あなたはその跡継ぎ、真田の長男。剣のお稽古とお勉強をしていればいいの!」
「さあこいっ!さっそく剣の稽古をするからな!」
「桜...」
私の恋は叶わないみたい
文無しと武家じゃ"人間の価値"が違うんだって、真田くんのお母さんが言っていた
私がいるから真田くんは傷つくのかな、私が居なければ真田くんは...
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無人の廃墟
「お父さん、ただいま」「おお、桜お帰り。学校はどうだった?」
「いつもどおり、楽しかったよ」
私のお父さん、とっても優しくて働き者
汗水たらして私を学校に通わせて、着物も買ってくれたお父さん
お父さんがチラリと私の着物を見る
「桜、ごめんな...とうちゃんが無能なばっかりに...
お前にこんな苦しい思いをさせてしまって」
顔を伏せて苦い表情をするお父さん
いつもそう、私がボロボロになって帰ってくるとこの顔を見せる
「そんなことない、私は優しいお父さんが大好き
それにお父さん、役人さんや学校の先生より一生懸命働いてる」
「お父さんばかりに大変な思いはさせないから
じゃあちゃちゃっと柴刈りに行ってくるね、すぐ帰るよ」
「桜...お前は...本当に椿によく似た娘になったな...」
椿、私のお母さん、3年前に病気で死んじゃった
お父さんと私は街中でお医者さんを探したけど誰も助けてくれなかった
地面に頭をこすり付けて泣くお父さんと私を煙たそうに見て
「よしっ、準備も出来たし行こう」
勝手に寝床にしている廃墟を出ると啜り泣く声が聞こえ始める
「椿ぃ...すまねぇなぁ...俺はあの娘までも不幸にしちまう...」
私がいるからお父さんは傷つくのかな、私が居なければお父さんは...
幸せになれたのかな
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父の声を聞いて早まる心臓の鼓動を抑え、柴刈りをする
大分ボロの鎌だから大変だ、だけどコレをやっていると嫌なことを忘れられるから
「ふぅ...あれ?洞窟?」
何年も歩き慣れた山道にぽつん、と広い洞窟が穴を開けていた
よく見れば石の灯篭も入り口にある、苔に塗れ相当年季が経ったものだと分かるが確かにそれは人工的に作られたものだ
「誰かが住んだ後なの?入ってみようか...」
子供の好奇心の強さが恐怖心に勝り、桜は洞窟を探索することにした
幸い一本道で灯も持っているようなので迷うことは無いだろう
「えらく小奇麗...虫の一匹も居ないじゃない」
不思議だった、明らかに人の痕跡もなく手入れもないであろう洞窟が
壁を磨かれたように綺麗なのだ。
そして暫く桜が歩いていると
「!?!?!?!?!?」
金、金、金、宝、宝、宝
洞窟の先が見えないほどの金銀財宝で視界が埋め尽くされる
「なにこれえっ!?す、すごすぎる!誰かのま、ま、埋蔵金なの!?!?」
これだけの金があれば一体何ができるだろうか
ジパング最高のご飯だって着物だって、呆れるほどの豪邸だって、村の権力者にだってなれる
「あは...は...ぐすん...」
天国のような光景に桜は自然と涙を流す
これはきっと神様の施しだ、辛くても一生懸命学校にいって柴刈りをしてたのを見てくれたに違いない
「こっちはレスカティエのカラクリ置き時計!これは霧の大陸の金屏風ね!!...ん?」
目も眩むような高級調度品を見ている時、一つの宝が目に入った
異様な雰囲気、しかし手に取らずには居られない雰囲気
宝の山で舞い上がっている心は警戒することもなくそれに近づく
「鞘に入っている刀みたい...これも名のあるお宝なのかな?見てみよう」
チキンッ、スゥゥゥゥゥ
静水の流れの如く刀身が晒されてゆく
不思議なことに刃は赤く、刃こぼれが一切ない
桜には分かる、これが名刀だと
彼女はいつも刃物専門店で高そうな鎌や包丁を見ている
これは相当に上質な鋼で打たれた業物だ、赤い刀身の素材は一体?
誰がこんな者を作成したのだろう
しかしとにかく物凄いお宝であることには変わりないはず
「よしっ、このお宝と刀をお父さんのところへもってかえ...」
ドズッ!
「え?」
妙な音のした胴体に目をやる
ひとりでに刀が突き刺さっているではないか、私の心臓に
「か...ふっ...?」
後ろには誰も居ない、抜かれた鞘と財宝だけが転がっていた
訳がわからないがこれは祟りの仕業、そう桜は結論付けざるを得なかった
「ぁ...ぅ...」
もう意識を保つことも出来ない、
(やっぱり神様なんていなかったんだ、貧乏で欲深かな私へのバチだったんだ
もうちょっと...なが...いき...お父さんお母さん...ゆう...く)
目の前が真っ暗になる瞬間、声が聞こえた
『見つけたぞ...妾に相応しき器...』
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「真っ暗...私、やっぱりあの時に死んだんだ」
目が覚めて辺りを見回す
足元、360°真っ暗な空間、それに少しの浮遊している感覚
あの出来事の後だ、きっとここは死後の世界
それにこの様子じゃとても天国なんて場所じゃないだろう
『お〜桜、起きたか』「ひいっ!?」
何も居なかったはずの後ろから唐突に名前を呼ばれる
死ぬ寸前に聞いた声だ
「あなたはっ...死神なの?まさか私を地獄に...」
『妾が死神?くすくす...はずれじゃ、それにお前は死んでもいないしここは地獄でもない』
謎の女、赤い着物に金の簪、真っ白な肌に潤った唇には紅が点してある
死神と言うよりは花魁?それに私は死んでいない?
全てが意味不明で発狂してしまいそうな頭を押さえつけ
彼女に一体何がどうなっているのか強い口調で尋問し始める
「何が面白くて笑っているの!?ここはどこ!あなたは何者!?
私は一体どうなって...!」
『もーそうカッカするでない、可愛い顔が皺だらけになっちまう』
「ふざけないでッ...!」
『あーはいはい、妾は"ムラマサ"さっきお前を斬った刀じゃ
お前さんが随分見とれてたのを覚えとるぞ♥』
人を斬ったと言いながらこの女...
絶対に正気じゃない
「っ!じゃあアンタが私を殺した祟りなのね!」
『これこれそう睨むでない、妾はこの剣に宿りし魔物じゃ
確かに斬ったが殺そうと思ったわけではないわ、妾を持つにふさわしい器
そう、おぬしが現れて...』
「持つにふさわしい...?何わけのわからない事いってるの!?
こんな魔物に呪われて一人でに動く刀なんかもういらないよっ!」
「あなたにはもう関与しないしここには来ない!
私は死んではいないんでしょ?だったらもう早くここから出して!」
気が気じゃない、一刻もはやくお父さんの所に帰りたい
こんな洞窟入るんじゃなかった、頭の中で何度も後悔する
『それは出来ぬ相談じゃな、妾はお前に力を授け一体となると決めた
それまでは家に返せぬ、それに...』
『また負け犬の人生を歩むのは嫌であろう?』「なっ?!」
心の奥底、桜が常に考えぬようにしていた言葉
たとえ自分がそうであっても考えないよう心の底に押し込んでいた言葉を
この女は目の前でほじくり返した
この女はなんで私の心が見える?
「ッ...このぉー!」
いつも気丈に振舞っている桜も堪忍袋の緒が切れる
何故見ず知らずの自分を襲った魔物にまでコケにされなくてはいけない?
そう思った時には体が動いていた
『家も無く貧乏で、齢の同じ学徒にはいじめられ恋い焦がれる男には
身分不相応と門前払い、助けてくれる人はだぁーれもいない』
スカッ
怒りのこもった拳はムラマサに届かない、煙を殴っているようだ
『母は死に絶え父も生きるのがやっと、歳相応のお洒落もできない桜よ
お前は一生懸命働いて、誰より手をボロボロにしてるのに報われないねぇ』
「ううっ...くぅ...」
『父が死んだらどうなるんだろうねぇ
死ぬまで柴刈りをして野垂れ死ぬか、淫売になって梅毒で死んじまうのかね』
「ぐすっ...うわああぁん!」
『可哀想な桜、自分がたまたま弱者側として生まれただけでこんな人生を歩んでる』
『辛いねぇ、苦しいねぇ、哀れだねぇ』
『でも』
急に煙のように漂っていたムラマサが実態を持ち始めた
慈母のような表情で近寄り、自分に絶望して泣いた桜を抱きしめる
『妾はお前に力を与えてあげることができる』
「ぐすっ...?」
『天まで届く大きな城、一生使い切れないような金、いままでお前をいじめていた連中が足元にも及ばなくなるような権力を手に入れられる』
『屑共を力で黙らせ、服従させ、お前の操り人形にできるんだよ
お前が欲しいといったものは手に入る世界になるんだよ』
「...!」
桜は泣き止む、目に光が宿る
強く逞しい、生者の目に変わった
『そう、全てはお前次第だよ。あの頃の家族との幸せな一時
これからの優との甘い永遠、全てお前の好きにできる
不幸で理不尽な世界からの開放だってね』
「私は...私だってえッ!」
瞳が赤く染まる、村正の刀身のように
決意を宿した捕食者側の瞳に
『―妾を取れ、小松桜』
「うおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!」
天下無双、此処に在り
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夜
「はぁ...だりぃなぁ給料も増えねーってのに...」
昼間の役人、さんざん昼寝をしておいて職務中に怠いと言い放つ
悪行を見て見ぬふりをする狼藉者、腰には無銘の刀を差している
「お兄さん、お仕事中にその態度はダメだよ」「うォわぁ?!」
本当に気を抜いていたようで間抜けな声を上げてすっ転びそうになる
いい気味だ
「てめぇいきなり...ん!?昼間の娘か?」「うん、お兄さんが嫌そうに見てたね」
桜は不気味な微笑を続ける、白々しく振る舞いながら
「小娘が...なっ!?お前そ、その腰のは!?」
「刀だよ、よく知ってるでしょ?おにーさんみたいな人をぶった斬るど・う・ぐ」
役人が一気に距離を取る、体がこの小娘から逃げろと
これは危険だと信号を送った
「ぐっ...たかが帯刀した小娘に...
ふん、まぁいーか、お前は廃刀令に背いた、遠慮無く斬り殺してやるよ」
「へぇ、ちゃんと仕事する気もあるんだね」
「黙れよぉ...乞食のガキイィ!」
刀を振り上げた瞬間桜が消えた、最初から無人だったかのように
辺りに静かな虫の音と刀を振るう音が響く
「ははっ、役人のお兄さんも案外大したことないね
そんな蝸牛みたいな速さじゃ当たらないって、腕で抜刀してるね
腰で一気に抜かなきゃダメダメ〜」
桜は役人の後方数メートル先で彼の帯を見せびらかした
一体どんな速さで、いつの間にスリ取ったのか
「私がお手本を見せてあげる」「うっ...!ま、待って」
居合の構え、稲光のような速さで抜刀し対象を両断する
先手必勝の技
「魔剣・赫燕」
ドンッ!と地面が桜の踏み込みに耐えきれず抉れると再び桜が消える
次の瞬間には役人の真横に現れた
そして桜は彼の背中めがけて回転しながら抜刀する
神速の回転居合い斬りは二度彼の背中を切り裂いた
そして、背中の傷2箇所から赤い液体が噴出する
真っ赤な翼の燕(つばめ)のように
「う、うわァああぁァァァ〜?!血、血がァ〜?!死んじまうよォ〜〜〜」
「あー大丈夫大丈夫、それ血じゃなくて精ってやつだから
人間の生命の源って感じかな?とりあえず死なないから落ち着いてよ」
「あぁア〜〜〜!まだ俺はぁ〜〜〜〜!!!」
「こらこら、そんなに騒ぐと...」
一応男に忠告をしておいてやる
まぁ斬られた時点で助かる見込みはないんだけどね
乾きとアレからは逃れられないから
「んはぁ...ふぅ...乾くぅ♥ムズムズとまらないのぉ♥」
「ほ〜ら言わんこっちゃない...」
メガネを掛けたグラマラスの女性、ムンムンとメスの匂いを撒き散らしながら役人に歩み寄る、下着をつけていないのか彼女の通り道には愛液の水たまりができていた、この淫乱な女性、正体はいじめを黙認していた桜の教師だったものだ
精とはいえ赤い液体を噴出して倒れる男を見ても平然と発情し続けている
役人はこの女達から逃げてやろうと思っていたが、なんだか変な気分になる
(この女...滅茶苦茶にマンコを濡らして...すげぇ...それに...体がの奥底まで...乾くような...)
女教師が役人の顔に尻を下ろし、股間に顔を押し付けて下着の上から思い切り深呼吸をし始める
「すんすん♥すうぅぅぅぅ...はあぁぁん♥この人の...ステキぃ♥
洗ってないおちんぽぉ♥あたまがクラクラするうぅ♥」
「わたしぃ、あなたの事がすきになっちゃったみたい♥
もう我慢出来ないのぉ、ちんぽしゃぶるうううぅぅ〜♥」
ずるり、ぴちゃ♥ぴちゃぁ♥
じゅぶるるるるるぅぅ♥じゅっぽ♥ずぞぞぞっ♥ちゅっばぁ♥
「うおおぉっ?!すご...すぎる俺もアンタを気持ちよくしてやりてぇ...」
男は熱い溶岩のようなマンコを一心不乱にクンニしはじめる
宵闇にちんぽとまんこをしゃぶる音が響くのだった
「あはっ♥やーっぱりはじまった♥二人共、末永くお幸せに♪」
二人は桜に斬られた、サキュバスとインキュバスになったのだ
桜は魔物、カースドソードとなり揺るぎない力を手に入れた
彼女は人を斬り殺すのではなく、人々の理性を断ち斬る
精の枯渇した人間は互いを求め交尾し、魔となって結ばれる
新魔王時代、妖刀村正は人を殺す事は無かった
桜は誰も傷つく人の必要の無い世界のために生まれ変わる
刀を腰に携えて。
16/09/26 06:58更新 / もけもけ
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