読切小説
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今日は何の日ー?

ああいや、言わなくて結構分かってるよ。クリスマスだろ?今年もクリスマス中止のお知らせは誤報だったようだな。俺もそう書き込んだ一人だけど。

予定はあるかって?あるよ。女の子と一緒にコンサートに行くんだ。ステージに立ってな。

あぁそうだよ発表する側だよおまけに俺だけピアノ独奏だよ畜生。女の子は譜捲りだよ演奏の邪魔にならないようちょっと離れたところに座って待機するんだよ。

それでも女の子が傍に座ってくれるなら羨ましいって?お前その女の子が他の男とくっついてるって聞いてもまだ俺のこと羨ましいとか思っちゃうわけ?

何?俺みたいな非モテボッチにはそれがお似合いだろって?HAHAHAぶっ飛ばすぞこら。

全くさ、なんでこんなに惨めな思いしなきゃならないわけ?

資本主義に毒された大企業がキリスト降誕祭に乗じて金儲け企んでるだけじゃないか。

本来キリスト教徒はどんちゃん騒ぎなんてしないから。祈りをささげるか教会で賛美歌歌うかぐらいだから。

大体さ、聖書読んでたら分かることだけどイエスキリストの誕生日がいつかなんて一切書いてないから。そもそもただのしがない大工とその辺の町娘との子の誕生日なんていちいち記録されてるわけねぇじゃんか。

あーもう何かすごい虚しくなる。これって言えば言うほど「負け犬の遠吠え乙w」とか言われるんだろうなー。すごい傷ついちゃうなー。

よし決めた。

コンサート始まる前にホール近くの公園でクリスマスソングを悉く短調にしたゲリラライブしてやる。

デート気分で来たカップルを残念な気分にさせてやる。リハ済んだ後の本番前の最後の練習と言えば理屈は通るしな。屁理屈でも理屈は理屈だ。

今に見てろよリア充ども。ボッチの苦しみを知らしめてやる。

普段は練習用に使ってるキーボードも持ち運べるよう準備したし、本番が楽しみですなー(棒)

…え?なんでコンサートで弾く曲を短調にしないかって?馬鹿野郎そんなことしたら怒られちまうだろうがこれでも一応サークル内じゃ真面目な大学生で通ってるんだよ俺は。


リハーサルも順調だったし、演奏は滞りなくできるだろう。コンサートに関してはもう問題ない。

だが俺の本番はもうすぐそこまで差し迫っているのだ。おもむろにキーボードを用意しだした俺に段々と好奇の視線が向けられる。集客は上々だ。

目当てのカップルもいるじゃないか、イチャイチャしながらこっち来やがっていい気なもんだな全く。独身(おれら)の気持ちも知らないで。

さーて、じゃ本番と参りましょうか!ゲリラライブ 〜クリスマス終了のお知らせ〜 はっじまるよー!

〜♪(演奏中)

ちなみに、長調の曲を短調にするには調号(楽譜の最初についてる♯や♭)に♭を3つ付け足せばいい。♭が3つなら♭を6つに、♯2つなら♭1つに、という具合にな。

それだけで陽気な音楽があっという間に陰鬱な音楽に早変わりってな。

見ろよあのカップルの「いい演奏なんだけど弾いてる曲が曲だから素直に楽しめない」って顔。最高だぜざまあみやがれ。

っと、そろそろコンサートの本番の時間か。遅れるわけにもいかないし撤収しますかね。いい加減にしとかないと後で自治体やらにお叱り受けちまうし。

あーでも集まった客の中にあんな可愛い子と目が合うなんてなー。なんか一人みたいだったけど、あんだけ可愛かったらどうせ彼氏持ちなんだろうし?俺に興味なんて持たないだろうし?どうせなにやってんだこいつとか哀れに思ってただけだろうし?

…何でこんな事したんだろ俺。やってて空しくなるだけじゃないかくそったれ。もう二度としないぞこんなこと。

あー、彼女ほしい。



コンサートもつつがなく終了っと。

なんか割とあっけなかったな。ステージから客席までは結構距離あるし公園の時とは恰好が違うからよもや公園で短調のクリスマスソングを弾いた奴とステージでピアノソロ弾いた奴がお同一人物だなんて誰も思わんだろ。

コンサート事態はうまくいったし、打ち上げなんて気分じゃないしでさっさと帰りましょかね。これ以上この場にいたら惨めなだけだ。

見ろよこのあふれんばかりのリア充とカップル共。一仕事終わったって顔してやがんの。あれだろ?どうせホテルにでも行ってもう一仕事(意味深)ヤるんだろ?

今年も一人寂しく滅入り苦しみますってな。畜生。



あぁ疲れた。酒でも飲んでなきゃやってらんねぇぜ、ったく。

――ピンポーン

誰だよこんな時間にインターフォン鳴らしやがって。押し売りはお断りですよー…おぉう!?

え、ええ、いや、いやいやいや。

なんで公園で目が合った女の子がこんなところに来てるんですかねぇ。え、何?俺つけられてたの?何のために?

一目惚れって、いやいや、そんなことフィクションの中でしか起こらんだろ普通。

え?曲に感動した?短調にしただけだし弾く動機も不純だったしピアノの腕に惚れたって言われても俺なんか三流だし私のために曲を弾いてほしいって言われても君とはほぼ初対面なわけだしいきなりバンド組むとか言われてもそんな。

そんなこと関係ないって言われてもねぇ。――んん?!

え、なに、何されたの俺、え?キス?キスされた?

何キミの恰好どうしたのなんか両腕が翼みたいっていうか翼そのものになってるんだけどどうなってるの?!っていうか何そのどこの国のものかわからないような謎言語の歌!聞こえた途端何かすごいムラムラするんですけど!

え、ええ、やだやだこの子怖いちょっとちょっとベッドに連れ込もうとしないでっていうかここ俺の部屋だから!家主俺だから!

あぁそんなまって俺まだ心の準備が…。

アッ――――――!



――というわけで、俺にも彼女が出来ました。ついでに子供も出来たようです。

性の6時間ってすごい。改めてそう思いました。



終わり。



14/12/25 23:26更新 / 宗 靈

■作者メッセージ
ま、間に合った?ギリギリセーフ?
でも厳密にいえば25日の夜の時点でクリスマスって終わってるんだよね…。
はいごめんなさい油断してました。構想の時はまだあと一か月あるんだし余裕っしょとか思ってたんです。
慢心駄目絶対。

…もう一つクリスマスssあるんだけどどうしよう。書いてたら完成するのは年越してからになってしまう…。

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