読切小説
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Merry Christmas Dear Losers あなざぁ



 クリスマスを五日後に控え、街はより一層賑やかさを増しておる。
 今年もまた例年より寒くなるというのに人通りは多い。というよりカップルが寄り添って暖めあって歩いておったではないか!うぐぐ!!
 あぁいや別に羨ましいとかではなくて二人して横並びになられると他の人達の通行の邪魔じゃし歩きにくくなって転倒してしまったら余計邪魔になるからの!見てて自分が独り身であるということを実感してしまってイヤになるとか妬ましいとかそんなんでは決してないのじゃぞ。何故ならワシはバフォメット。サバトの長じゃからの。先を越されたからといって悔しがるほど器は小さくないのじゃ!
 アーッハハハハ!
 ハハハ、ハ…。

「はぁ…」

 もうよそう。何だか悲しくなってきおった…。

「どうした?ため息なんぞつきおって」

 そうやってワシに話しかけてきたこいつは独身同盟の盟友であるドラゴンじゃ。名前は…まぁいいじゃろ。長いし。
 独身同盟とは、独り身の寂しさをみんなで集まって忘れ去ろうという未婚者同士の集まりじゃ。参加資格は独身であること。それだけじゃ。
 ちなみに独身同盟のメンバーは二人。ワシとこいつじゃ。創立当時はもっとおったんじゃがの。裏切って抜け出した者ばかりじゃった。薄情者どもめ。

「ワシの理想のお兄ちゃんは一体どこにいるんじゃ…」

 いくら探してもいっこうに見つからん。ため息も出るわ。
 部下達にはもう全員にお兄ちゃんがおると言うのに。ワシだけお兄ちゃんがおらんようでは示しがつかん。

「またその話か」

 そんな呆れたように言うでない。余計悲しくなるじゃろうが。

「いいじゃろ別に、それにそっちだって同じじゃろうが。
 それで、話とはなんじゃ?」

 わざわざ寒い中歩いて来てやったのじゃ。クリスマスはワシら二人でどう過ごすかを決めるだけではないのじゃろう?
 ちなみに、うちのサバトではクリスマスに黒ミサは行わん。各自思い思いのクリスマスを過ごすように、というワシのありがたーい気遣いなのじゃ。
 決して未だに独り身なのを晒したくないとか、いつにもまして激しくなるまぐわいを見て泣きたくなるとか、そんなわけじゃないのじゃ。

「…大変言いにくいが、もう同じ、という訳ではなくなったんだ」
「はぁ?」

 聞き捨てならん言葉が聞こえた気がするのう。はて、耳が遠くなってしまったか?

「一足先に失礼する、ということだ。私にも旦那様ができたのだよ」
「ウソじゃろ…?」

 そうじゃ嘘にきまっとるだってこいつはやけにプライドが高くて「自分より弱い男に靡くつもりなぞない」といつも豪語しておる上に指をはじいた風圧だけで教団の騎士一個大隊を吹き飛ばすほどの戦闘能力を持っておるだからこそ彼氏いない歴=年齢というワシとおなじキャリアなのじゃがまぁワシはその気になればいつだって理想のお兄ちゃんを見つけられるしこいつは妥協なんぞしないだろうから正真正銘こいつを負かせるほどの力の持ち主などほぼこの世界にはおらんのだからワシの方が早いし大丈夫と思っておったのになんでなんで

「おい、聞いているのか?」

 おっといかんいかん。あまりにもショッキングな内容に現実逃避してしまった。
 どうせ力では屈服させることはできなかったから薬を盛られたとかその辺なんじゃろ?ん?言ってみ?グチがあるのなら聞いてやるぞ?
 
「なれそめはどうだったのじゃ?」

 ほれほれ、どうせ遺恨だのなんだのはあるんじゃろ?勝負に負けたわけではないのじゃから不満だってあるんじゃろ?そうなんじゃろ?そうと言ってくれ頼むから。お願いですからそう言って下さい。

「元からご主人様は私を嫁にしにきたのだそうだ。もちろん私より弱い男など御免だったから真剣勝負を行ったわけだ」

 ん?聞き間違いじゃろうか?聞こえてはならぬ言葉が聞こえた気がするのう。ご主人様じゃったか?

「戦闘は熾烈を極めたが、結果私は組み伏せられたよ。慢心などなかったし旧魔王時代の姿になってまでしても勝てなかったのだ」

 笑えない冗談じゃな。そいつもうワシ等魔物娘よりバケモノではないか。
 というかそんな戦いどこでやったんじゃ。周囲だって無事じゃすまんだろうに。被害報告は聞いておらんが。
 まぁ、結界を張った中で行ったと考えることにしておこう。なんかこれ以上追求すると惚気けられてしまうしな。

「そのまま身動きできない私にあのお方は、耳元で「俺の物になれ」と囁いたのだ」

 あー、それで堕ちたのか。わりとあっさり陥落したんじゃの。

「もちろんそれに従うつもりだったさ。ただ踏ん切りがつかなくて少しの間黙ってしまったんだ。
 それで返答しようと息を吸おうとしたらいきなり口づけをされたよ」

 と思っていた時期がワシにもありました。
 あれ?ワシ地雷踏んじゃった?自爆系の。

「更に舌まで入れられて…。そのまま犯されるのかと思えば接吻したまま体を撫で回されるだけ。
 ご主人様が口を離してくれたころにはもう私の体は出来上がっていて、それでやっと挿入れられると思ったら今度は全身を舐め回され、
 後ろから抱きすくめられる形で耳を舐められながら愛を囁かれ、ようやく肉棒を取り出したと思いきや今度は延々と素股をされるだけ。
 それが終わってようやく繋がることができると思えば先っぽだけを抜き差しするのみで焦らされ続け、恥も外聞も捨てておねだりして、ようやく膣内に入れてもらえたんだ」

 …なんでこう延々と惚気られとるんじゃろうかワシは。
 おまけに割と、というか相当な鬼畜じゃったようじゃな。
 こいつももいつで語っている間に顔が完全にメスの顔になってしまっておるし。

「ご主人様が射精される頃には、私の心も体も完全に堕ちきっていた。子宮まで明け渡して、射精されるのと同時に私も果てて、そのまま失神してしまった。
 もう私は、あのお方の前ではただのメストカゲなのだ…」

「そっかー、それはよかったのー。
 …ってなるかぁぁぁぁ!!」

 裏切られて先を越された挙句鬼畜凌辱調教という名の惚気話を聞かされたこちらの身にもなってみろ!
 敵じゃ!お主はもう敵じゃぁ!畜生祝ってやるぅ!!

「うわぁあぁぁぁぁぁん!みんなしかるのち滅びりぇぇぇ!」

 こんな所にいられるか!ワシは家に帰るぞぉぉぉぉっ!
 独身地獄(シングルヘル)はいやじゃぁぁぁぁぁぁ!




 と、そんな願いもむなしくクリスマスが今年もやってきてしまった。
 あの後バーへ駈け込んでヤケ酒しようとしたら年齢確認されて、身分証明書なんて持ってないワシは門前払い。
 腹いせにケーキを片っ端から買い叩こうとしたら財布にお金がそんなになくて、全種類を中途半端に買うという情けない様になってしまった。
 …嫌な、事件じゃったな。

 でもでも、今日こそは収穫があったのじゃ!
 ワシの理想のお兄ちゃんレーダーがびんびん反応しておる!
 おまけに誰も唾を付けておらん!童貞じゃ!
 更に今日同僚(リア充)に裏切られた上同情されて傷心!すぐにでも落とせる状態なのじゃ!
 待っててねお兄ちゃん!今すぐ迎えにいくからの!
 そうと決まれば早速おめかしなのじゃ!





 うぅっ、寒い寒い。流石に露出度高すぎたかの。
 でも、これできっとお兄ちゃんもワシにメロメロなのじゃ。
 お兄ちゃんが住んでいるのはこのアパートの目の前の部屋で間違いないはずじゃ。
 ん?鍵があいておるではないか。全く、無用心じゃのう。
 まぁ良い。それなら早く部屋に入れてもらって心も体も暖めてもらうとするかの♪


ガチャ


「メリークリスマス、なのじゃ!」






「と、いうことじゃったのじゃよ」
「そういう事だったのか…」

 射精と同時に吐血したお兄さまにこれまでの説明をして、今に至るのじゃ。
 まさか理性を無くしたお兄さまがあんなに激しいだなんて思ってもみなかったのじゃ…。
 もうお兄さまをちゃん付けで呼べないのじゃ…。
 メロメロにするつもりがメロメロにされてしまったのじゃよ…。
 でも、これでワシも晴れて独身ではなくなったのじゃ!もういきおくれなどではないのじゃ!
 これからの性活、もとい生活が楽しみなのじゃ!
 …あぁ、でもまず最初に決めておかねばならんことがあるの。

「ちょっと気が早いかもしれんが、来年のクリスマスはどう過ごそうかの?」





 お・わ・り、なのじゃ! 


13/12/20 20:10更新 / 宗 靈

■作者メッセージ
皆様覚えておいででしょうか、お久しぶりです。宗 靈と申します。
ほぼ一年振りの作品投稿が一年前の作品のアナザーストーリーという始末。
煩悩を払った結果が御覧の有様(投稿停滞)だよ!
大学に入学したらゆっくり時間がとれる、そう思っていた時期が私にもありました。

ごめんなさい嘘です私のやる気のなさのせいですモチベーションの問題なんですだってしょうがないじゃないですか書きたい話やシーンはいくつもあるのにそれを文章にできなかったりつなぎの文が思い浮かばなかったりで筆が進まないんですもんこの前だって(以下略

…来年からがんばります。
それでは一足お先に
Merry Cristmas & Happy New Year



あぁ、それと

         *注意*
この小説はキャラ崩壊が激しい可能性があります。
キャラクターのイメージを崩されたくない方は画面をそっと閉じて下さい。

と序文に書きそびれてしまったことと、エロありと表記しておきながら肝心のエロがドラゴンさんの口頭のみであったことを心から謝罪させていただきます。まことに申し訳ございませんでした。

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