Merry Christmas Dear Losers
今日は12月22日。
マヤ文明の予言だのなんだので騒いでたのが嘘みたいな浮かれようだ。
もうすぐクリスマス。イエス・キリストが生まれたもうた日の聖なる夜。
俺がバイトしているファミレスも装飾でクリスマス一色だ。
掃除も終わって今日はこれで帰れるわけだが。
休憩所で袖をクイクイと引かれた。
バイトの同期の女子だった。
彼女の体型は華奢で小柄……所謂ロリにカテコライズされるわけだが、これでも高校生らしい。
クリクリとした目が魅力的で、思わず抱きしめたくなるが、俺はロリコンではないのでそんなことはしない。
何故なら俺は紳士だからだ。
繰り返して言うが俺はロリコンではない。断じてだ。
「ねぇ、クリスマスって、予定あいてる?」
「え、あぁ。空いてるよ」
お、これはひょっとして……?!
俺にもチャンスが来たのか?!
「じゃぁさ、バイトのシフト変わってくれない?
ボク、先輩とデートがあるんだ♪」
「あ、あぁ。そうか……。じゃぁ、変わってやるよ」
だろうと思ったよ畜生……。
こいつ先輩に首っ丈だもんな。
あの人イケメンだし、背高いし、ガタイ良いし。
ワンチャンすらないに決まってんじゃねぇかよ、畜生。
……泣いてなんかない。
ちょっと視界が霞むが、そう、これは心の汗だ。
暖房が利きすぎて暑いから汗が流れ落ちたんだっ!
クソが……。
地球ごと爆発しねぇかな……。
なんて淡い希望など叶うわけもなく、12月25日。
今年もまた例年より寒くなるらしい。
とか思ってたら雪が降っていた。
ホワイトクリスマスだ。
今日は一日中バイト漬けだったが、休む暇もないぐらいの賑わいぶりだった。
家族連れやカップルが席を埋めていくのをみて、一度も「爆発しろ」とこぼさなかったことを誇りたい。
そうして何とか苦行を耐えきって、後かたづけが終われば帰れる。
今休憩所でユニフォームから着替えて帰る準備をしているのは俺ともう一人、同僚だけだ。
いつもおちゃらけているこいつは、今日トナカイの格好をしている。
赤鼻も再現しているが、鼻眼鏡でやる必要はなかったんじゃねぇかな。
「クーリスマスが今年もやーってくる♪
悲しーかった、出来事も、消し去るように♪」
「単調で歌うな」
消し去るが別の意味合いに聞こえるだろうが。
「Last christmas フフフフフーン♪」
「歌詞はちゃんといえ」
後、それは失恋ソングだ。
「きーっと君は来ない♪
一人きりのクリスマス・イブ♪」
「やめろ」
くそが。
こいつ、さっきから気が滅入るような歌ばっかり歌いやがって。
「今年も独りだからって俺まで巻き込むんじゃねぇよ」
おっと、思わず口が滑ってしまった。
悪気はなかったんだ、許しておくれ(笑)。
「え、言わなかったっけ。僕、彼女出来たって」
ん?何言ってるんだこいつ。
ははは。冗談きついぜ。
なぁ、冗談だろ?冗談なんだろ?
冗談だと言ってくれ。言え。言うんだ。言って下さい。
「ほら、この子」
こいつが取り出したケータイの待ち受けに写っていたのは、満面の笑みを浮かべる女の子だった。
近所の学園の制服を着ている。
清楚で可憐で、可愛らしい、まさしく美少女だった。
「いやぁ、非リア充の気持ちで歌うのは今年が最後だからさぁ」
嘘……、だろ……。
「あー、そっか。まだだったんだね。そのー、ごめん。
お先に失礼します」
「何……、だと……?」
こいつには絶対に負けてないと思ってたのに。
こいつにだけは……っ!
「き、貴様……!」
「ま、まぁ、君にもきっと出会いがあるさ。
じゃあね!バイバイ!」
「待て、この……!」
もう遠くにいきやがった……。
こんな時ばっかり何であんな足はえーんだよ、畜生。
……何だってんだよ、あの去り際の笑顔。
何かスッゲー爽やかで腹立つわぁ……。
くそが……。
クソが……!
「Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuck!!!!」
あぁ、スッキリしねぇ……。
シャウトでもしなきゃやってらんねぇよ畜生。
ちなみに、その時屋根に積もった雪が一気に落ちたときビビったのは内緒だ。
冷たい風が頬を刺す。
牡丹雪が顔にかかる。
「あぁ、畜生」
町ゆくカップルが手をつないでいる。
その一部は同じマフラーを首に巻いている。
駅のホームではキスしている組もあった。
チキン売場のショーケースの札には「是非ご家族や恋人とどうぞ!」
町中のイルミネーションの下、悪夢のような光景だ。
まさしく独身地獄(シングルヘル)。
白い髭に赤い帽子の悪魔が次々と独り身を殺す、苦離棲魔巣が襲いかかってくる。
同僚(リア充)に同情され、今年もまた独りきりのメリークリスマス。
だから、涙が頬を伝うのも当然だと思うんだよ。
早く拭わないと大惨事になるのにな。
何で次から次へと溢れてくるんだろうな。
人間って不思議だよな。
あぁ、ほんとマジで滅亡してくれればよかったのに。
畜生。リア充もイケメンも死んでしまえ。
或いは爆発しろ。
残り物のホール売りされたケーキを衝動買いしてしまった。
やけ食いしてやる。
いつも通り一人で帰宅。
一人暮らしのアパートだから空しくなるだけなので「ただいま」なんて言わないし、言えない。
ケーキは半分だけ食べて、残りは明日に回そう。
やけ食いしてやろうと思ったけど、ケーキ1ホールって意外にキツいんだな。
決して寂しさで胸が一杯になったからとかそんな理由じゃない。
一人食べさせっこみたいな事して死にたくなったからとか、そんなんじゃない。
こんな気持ちになるのも全部クリスマスが悪いんだ、畜生。
もうやることもないし、明日もバイトあるし、寝るか。
両隣からベッドの軋む音や喘ぎ声が聞こえるからとか、壁殴る力も度胸もないとか、そんな理由の不貞寝じゃないんだからなっ!!
畜生……。
畜生ぉ……。
ガチャ
んん……?
今、ドアが開いたような……。
そういや鍵閉めて無い気もするな……。
「メリークリスマス、なのじゃ!」
布団から起きあがって、玄関の方を向くとそこには!
サンタコスの美幼女が大きな袋を担いで立っていた。
冬着るには厳しいほど、肌が露出していた。
上は胸しか隠せてないし、スカートも見えるか見えないか際どいラインだ。
頭に乗っけてるだけにしか見えない赤い三角帽子に、山羊の角らしき装飾(多分、ネコミミカチューシャ的な何か)、手足には赤いグローブやブーツではなく、もふもふした獣のような何か。
最近はこんなのが流行っているのか。
全くけしからん。いいぞ、もっとやれ。
「むふふふ。今日はお主にクリスマスプレゼントじゃ」
え、何、俺に?
プレゼント?
良い子の皆なんて言える歳じゃない俺に?
「もう今日からはクリスマスを寂しく迎えなくてもよいのじゃぞ?」
ん?それは「プレゼントは私」的なアレか?
初対面の美幼女が俺のプレゼント?
……あぁ。
そうか、これは夢だ。夢なんだろ?
「む、何を黙っておる?」
夢なら何したっていいよな。良いはずだ。良いんだろ?
おまけにそんなナリして、誘ってるとしか思えないぜ。
「ほほぅ、お主もワシのこのろりぼでーに魅了されたのじゃな?」
OKOK
ヤる。
「な、何をする!
やめんか、この、や、やめ……、はぁぁぁぁあん!」
チュンチュン
何だ、もう朝なのか。
いい夢だったのにな。
チュッチュッ
今日は鳥がよく鳴くぜ。
鳴き声にしてはちょっと水っぽいが。
チュプチュプ
っていうか何かすげえ近くから聞こえる気がするんだが……って!
「ふう?ふぁんひゃ、ふぃふぁふぉおおひふぁのふぁ?
(ん?何じゃ、今頃起きたのか?)」
今起きていることを説明するぜ……!
夢で色々ヤったロリっ娘が朝フェラしてやがる……!
何言ってるかわからねーかもしれねーが、明晰夢だの幻覚だのじゃ断じてねぇ。
もっと恐ろしい物の……って現実逃避してる場合じゃねぇよな。
「な、なぁ。俺ひょっとして……」
大丈夫だ、俺は紳士。
こんな可愛らしいコスプレロリっ娘に変態行為するなんてことは妄想の中だけだ。
イエスロリータ、ノータッチ。これは絶対d
「き、昨日はその、激しかったのぅ……」
はいアウトー。俺アウトー。
顔赤らめて「昨晩はお楽しみでしたね」みたいな感想言われるとか完全に事後じゃねぇか……。
「責任はとってもらうからの、お兄さま♪」
その言葉と同時に、赤い液体と白い液体を別々の口から出したのは言うまでもない。
お・わ・れ
12/12/30 13:27更新 / 宗 靈